都道府県別訪日外客数と訪問率:3月レポート No.70

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ABSTRACT

【ポイント】

・JNTO訪日外客統計によれば、3月の訪日外客総数(推計値)は349万7,600人。桜の開花シーズンに入り訪日旅行需要が高まった影響もあり、3月として過去最高値を更新した。

・1-3月期の訪日外客数は1,053万7,329人となり、四半期ベースで初めて1,000万人を突破した。

・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば1月は378万1,629人。うち、観光客は345万5,149人となり、過去最高値を更新した。

・大阪・関西万博が開幕してから1カ月が経過し、関西自治体による観光誘客政策が積極的に展開されている。今回は鳥取県の「とっとリアル・パビリオン」事例を取り上げて、その内容を紹介した。このような誘客政策の取組で万博来場者の周遊が促進されれば、より一層地域での消費拡大に繋がることが期待できよう。

 

【トピックス1】

・関西3月の輸出額は6カ月連続で増加。また、輸入額は2カ月ぶりに増加した。結果、関西の貿易収支は2カ月連続の黒字だが、黒字幅は縮小した。

・3月の関空への訪日外客数は85万2,180人。1-3月期では263万4,771人と、6四半期連続で200万人超えが続いており、外国人入国者数は堅調に推移している。

・2月のサービス業の活動は一進一退で推移している。第3次産業活動指数は前月から横ばい。一方、対面型サービス業指数は「運輸業、郵便業」や「学習支援業」が低下した影響もあり小幅ながら4カ月ぶりに低下した。観光関連指数は「劇場・興行団」や「公園、遊園地・テーマパーク」等が上昇に寄与し、4カ月連続のプラスとなった。

 

【トピックス2】

・1月の関西2府8県の延べ宿泊者数は10,132.1千人泊。前年同月比でみると2021年11月以降、増加が続いており、増加幅は2カ月連続で拡大した。

・うち、日本人延べ宿泊者数は2カ月連続の前年比増加。また、外国人延べ宿泊者数は春節休暇の影響もあり、前月から増加幅は拡大した。

 

【トピックス3】

・2025年1-3月期の訪日外国人消費額(速報、全目的ベース)は2兆2,720億円となり、2四半期連続で2兆円を超えた。円安基調が続いていることに加え、1人当たりの消費単価が着実に増加している影響が表れた。前年同期比でみると5四半期連続で2桁の伸びが続いているが、増加幅は前期から縮小した。

・一般客1人1泊当たり旅行支出(全目的)は2万4,602円となった。国・地域別では、香港が最も高く、次いで、シンガポール、タイ、台湾、中国と続いている。

・1-3月期の1人1泊当たり旅行支出を費目別にみれば、宿泊費が最も多く、次いで買物代、飲食費、交通費、娯楽等サービス費と続いている。

 

 

DETAIL

ポイント

4月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数

▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表4)、3月の訪日外客総数(推計値)は349万7,600人であった(前年同月比+13.5%)。桜の開花シーズンに入り訪日旅行需要が高まった影響もあり、3月として過去最高値を更新した。また、同月の出国日本人数は142万3,400人(同+16.7%)、2カ月連続で100万人超の水準となった。なお、2019年同月比では-26.2%で、減少幅は前月(同-23.0%)から拡大しており、アウトバウンド需要の回復は依然遅れている。1-3月期の訪日外客数は1,053万7,329人となり、四半期ベースで初めて1,000万人を突破した。前年同期比+23.1%と13四半期連続の増加だが、10-12月期(同+29.9%)から増加幅は縮小した。一方、同期の出国日本人数は351万6,760人であった(同+15.8%)。

 

 

 

 

▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると(図2及び表4)、3月は韓国が69万1,700人(前年同月比+4.3%)と最多であった。次いで中国が66万1,700人(同+46.2%)、台湾が52万2,900人(同+7.9%)、米国が34万2,800人(同+18.2%)、香港が20万8,400人(同-9.9%)と続く。なお、米国、カナダ、ドイツ、インド等が単月として過去最高値を更新した。

 

 

 

▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(図3及び表5)、1月は378万1,629人となった(前年同月比+40.7%)。うち、観光客は345万5,149人となり、過去最高値を更新した(同+44.8%)。また、その他客は24万1,704人(同+13.4%)、商用客は8万4,776人(同-4.5%)であった。

 

 

 

 

▶大阪・関西万博が開幕してから1カ月が経過し、関西自治体による観光誘客政策が積極的に展開されている。今回は鳥取県の事例を取り上げてみよう(前回は徳島県)。鳥取県では、県全体をパビリオンに見立てた誘客プログラム「とっとリアル・パビリオン」を実施している(詳細はURLを参照 https://tottorealpavilion.jp/ )。具体的な施策内容としては、(1)万博会場の鳥取県ゾーンに来場した人へ「おもて梨パスポート」の配布、(2)同プログラムをテーマにした万博期間中の個人型旅行商品「まるごとテーマパーク!鳥取県へでかけよう!」の発売である。本プログラムの特徴としては、万博来場者の鳥取県への周遊を促進し、旅行消費の拡大を意図していることである。このような誘客政策の取組で万博来場者の周遊が促進されれば、より一層地域での消費拡大に繋がることが期待できよう。

 

トピックス1

3月関西の財貨・サービス貿易及び2月のサービス産業動向

▶関西3月の輸出額は前年同月比+4.8%と6カ月連続で増加した(前月:同+10.7%)。また、輸入額は同+13.1%と2カ月ぶりの増加となった(前月:同-4.3%)。関西の貿易収支は+4,162億円と2カ月連続の黒字だが、黒字幅は同-18.4%縮小した(前月:同+123.2%)(図4)。結果、1-3月期の貿易収支は+5,631億円と10四半期連続の黒字だが、黒字幅は前年同期比-14.6%縮小した(1012 月期:同+20.5%)。

 

 

 

▶対中貿易動向をみると(図 5)、関西 3 月の対中輸出は前年同月比1.3%と2カ月ぶりに減少した(前月:同+18.0%)。輸出減に寄与したのは半導体等製造装置や映像機器等であった。一方、対中輸入は同+16.6%と 2 カ月ぶりの増加(前月:同-10.9%)。輸入増に寄与したのは通信機や有機化合物等であった。1-3 月期の対中輸出は前年同期比+1.2%と2四半期ぶりに増加(前期:同-1.1%)。一方、対中輸入は同+9.5%と4四半期連続で増加し、前期から増加幅は拡大した(同+6.0%)。

 

 

▶3月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は85万2,180人となった(前年同月比+10.3%)。桜の開花シーズンに入り訪日旅行需要が高まった影響が表れた。また、同月の日本人出国者数は 29万 3,346 人であった(図 6)。同+20.9%と増加幅は前月(同+26.0%)から縮小。なお、2019年同月比では-27.5%となり、アウトバウンド需要は依然低迷している。1-3月期の外国人入国者数は263万4,771 人となった(前年同期比+20.4%)。6四半期連続で200 万人超えが続いており、外国人入国者数は堅調に推移している。なお、同期の日本人出国者数は69万1,101人であった(同+19.9%)。

 

 

 

▶2 月のサービス業の活動は一進一退で推移している(図 7)。サービス業の生産活動を示す第 3 次産業活動指数(季節調整済み:201920 年平均=100)をみれば、2 月は 104.2 で前月比 0.0%と横ばいとなった(前月:同+1.4%)。なお、2月データ公表時に基準年がコロナ禍の影響を平準化した2019-20年=100に変更された。また、対面型サービス業指数*は106.4で同-0.1%小幅低下し、4カ月ぶりのマイナス(前月:同+1.6%)。うち、運輸業、郵便業(同-2.7%、3 カ月ぶり)や学習支援業(同-1.8%、3カ月ぶり)が低下に寄与した。

 

 

 

▶観光関連指数**(季節調整済み:2019-20 年平均=100)は(図 7)、116.3 と前月比+2.4%上昇し、4 カ月連続のプラス(前月:同+1.7%)。うち、劇場・興行団(同+21.1%、3カ月連続)や公園、遊園地・テーマパーク(同+8.1%、2カ月連続)が上昇に寄与した。

*対面型サービス業は、「運輸業、郵便業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「学習支援業」及び「医療、福祉」を指す。

**観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、「旅客運送業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「旅行業」、「映画館」、「劇場・興行団」及び「公園、遊園地・テーマパーク」の各指数の加重平均。

 

トピックス2

1月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県

▶観光庁によれば、1月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は10,132.1千人泊であった(表1)。前年同月比では+12.1%と2021年11月以降増加しており、増加幅は2カ月連続で拡大(前月:同+4.4%)。

 

 

 

▶日本人延べ宿泊者数は6,514.9千人泊となった。前年同月比+4.6%と2カ月連続で増加した(前月:同+1.9%)(表1及び図8)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,453.9千人泊、京都府1,122.8千人泊、兵庫県1,053.3千人泊、三重県660.8千人泊、滋賀県277.8千人泊、和歌山県275.1千人泊、福井県218.9千人泊、徳島県156.4千人泊、奈良県149.4千人泊、鳥取県146.5千人泊であった。前年同月比でみると、大阪府(同+6.7%、2カ月連続)、福井県(同+24.2%、6カ月連続)、兵庫県(同+4.2%、8カ月連続)等が、日本人延べ宿泊者の増加に寄与した。なお、京都府は同-2.0%と20カ月連続の減少だが、減少幅は前月(同-17.9%)から縮小した。

 

 

 

▶外国人延べ宿泊者数は3,617.1千人泊となった(表1及び図9)。春節休暇(1月28日~2月4日)の影響もあり、前年同月比+28.8%と増加幅は前月(同+9.8%)から拡大した。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,164.8千人泊、京都府1,165.0千人泊、兵庫県140.4千人泊、和歌山県39.7千人泊、奈良県28.0千人泊、滋賀県22.4千人泊、三重県19.0千人泊、徳島県14.2千人泊、鳥取県13.1千人泊、福井県10.5千人泊であった。前年同月比をみれば、大阪府(同+23.3%、36カ月連続)、京都府(同+34.8%、34カ月連続)、兵庫県(同+54.5%、30カ月連続)等、9府県が外国人延べ宿泊者の増加に寄与した。

 

 

 

▶なお、宿泊料金と賃金との交易条件(現金給与総額/宿泊料金:2019年=100)をみれば、2025年3月は66.3となった。前年同月比-4.4%と24カ月連続で悪化しており、日本人宿泊者にとって厳しい状況が依然続いている(図10)。

 

 

トピックス3

2025年1-3月期訪日外国人消費の動向

▶観光庁によれば、2025年1-3月期の訪日外国人消費額(速報、全目的ベース)は2兆2,720億円となり(図11)、2四半期連続で2兆円を超える水準となった(10-12月期:2兆3,108億円)。円安基調が続いていることに加え、1人当たりの消費単価が着実に増加している影響が表れた。前年同期比+28.4%と5四半期連続で2桁の伸びが続いているが、増加幅は前期(同+37.6%)から縮小した。

 

 

 

▶1-3月期の訪日外国人消費のトップ5を国・地域別にみれば(図12)、中国が5,443億円(前年同期比+52.3%)と最多であった。次いで、台湾が3,168億円(同+21.6%)、韓国が2,824億円(同+16.9%)、米国が2,188億円(同+29.7%)、香港が1,534億円(同-3.3%)と続く。

 

 

 

▶一般客1人1泊当たり旅行支出(全目的)は2万4,602円となり、前年同期比+10.2%増加した(10-12月期:同+5.8%)。国・地域別にみれば、香港が3万8,892円(同+5.2%)と最も高い。次いで、シンガポールが3万3,808円(同-0.9%)、タイが3万2,364円(同+23.9%)、台湾が3万2,228円(同+11.0%)、中国が3万1,110円(同+28.4%)となっている(表2)。

 

 

 

▶1-3月期の1人1泊当たり旅行支出を費目別でみれば(表3)、
宿泊費が8,242円(同+13.8%)と最も多く、次いで買物代が7,165円(同+9.7%)、飲食費が5,557円(同+15.5%)、交通費が2,471円(同+4.9%)、娯楽等サービス費が1,149円(同16.6%)と続いている。なお、平均泊数は9.0泊と、前年同期差-0.4泊小幅減少した。

 

 

 

*トピックス3は四半期ごとの掲載である。

**「全目的」とは、観光・レジャー目的以外に、業務、留学、親族・知人訪問等の目的の旅行者を含む。ただし、1年未満の滞在者が対象である。

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