都道府県別訪日外客数と訪問率:4月レポート No.71

洞察・意見 » インバウンドレポート

ABSTRACT

【ポイント】

・JNTO訪日外客統計によれば、4月の訪日外客総数(推計値)は390万8,900人。春の桜シーズンに加え、イースター休暇で訪日旅行需要が高まった影響もあり、過去最高値を更新した。

・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば2月は325万8,491人、2月として過去最高値を更新した。うち、観光客は296万5,065人であった。

・大阪・関西万博が開幕してから3カ月が経過し、累計一般来場者数は685万1,429人(6/15日時点)と、順調に増加。関西自治体は、万博来場者を自府県へ誘客するための施策に取り組んでおり、今回は三重県の「みえ旅 三重から未来につなぐ旅」の事例を取り上げ、その内容を紹介した。

 

【トピックス1】

・関西4月の輸出額は7カ月連続で、輸入額は2カ月連続でいずれも前年を上回った。結果、関西の貿易収支は3カ月連続の黒字だが、黒字幅は2カ月連続で縮小した。

・4月の関空への訪日外客数は99万2,188人となり、過去最高値を更新。桜の開花時期で訪日旅行需要が高まった影響が表れた。

・4月のサービス業の活動は一進一退で推移している。第3次産業活動指数は2カ月ぶりに上昇した一方、対面型サービス業指数は「運輸業、郵便業」や「医療、福祉」が低下した影響もあり6カ月ぶりに低下した。また、観光関連指数は「劇場・興行団」や「宿泊業、飲食サービス業」等が低下した影響で、2カ月連続の低下となった。

 

【トピックス2】

・2月の関西2府8県の延べ宿泊者数は9,492.4千人泊。前年同月比でみると2021年11月以降、増加が続いているが、増加幅は前月から縮小した。

・うち、日本人延べ宿泊者数は3カ月ぶりに前年を下回ったが、外国人延べ宿泊者数は35カ月連続で前年を上回った。

 

【トピックス3】

・2025年1-3月期関西(2府8県ベース)の国内旅行消費額(速報)は1兆1,375億円。5四半期連続で前年を上回ったが、伸びは2四半期連続で1桁台にとどまった。

・国内旅行消費額のうち、宿泊旅行消費額は9,468億円と5四半期連続で前年を上回ったが、日帰り旅行消費額は1,907億円と6四半期ぶりに前年を下回った。

 

 

DETAIL

ポイント

5月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数

▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表4)、4月の訪日外客総数(推計値)は390万8,900人であった(前年同月比+28.5%)。春の桜シーズンに加え、イースター休暇で訪日旅行需要が高まった影響もあり、過去最高値を更新した。また、同月の出国日本人数は96万1,400人であった(同+8.2%)。なお、2019年同月比では-42.3%と、減少幅は前月(同-26.2%)から大幅拡大しており、アウトバウンド需要の回復ペースは緩慢である。

 

 

 

 

▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると(図2及び表4)、4月は中国が76万5,100人(前年同月比+43.4%)と最多であった。次いで韓国が72万1,600人(同+9.1%)、台湾が53万7,600人(同+16.9%)、米国が32万7,500人(同+43.1%)、香港が26万3,600人(同+42.9%)と続く。なお、カナダ、英国、ドイツ、フランス等が単月として過去最高値を更新した。

 

 

 

▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(図3及び表5)、2月は325万8,491人で、2月として過去最高値を更新した(前年同月比+16.9%)。うち、観光客は296万5,065人(同+16.4%)、その他客は19万9,384人(同+27.6%)、商用客は9万4,042人(同+12.2%)であった。

 

 

 

 

▶大阪・関西万博が開幕してから3カ月が経過し、累計一般来場者数は685万1,429人(6/15日時点)と、順調に増加している。
関西自治体は、万博来場者を自府県へ誘客するための施策に取り組んでいる。今回は三重県の事例を取り上げてみよう(前回は鳥取県)。

 

▶三重県では、万博来場者の誘客促進政策の一つとして「みえ旅三重から未来につなぐ旅」を実施している(詳細はURLを参照 https://www.kankomie.or.jp/special/mietabi2025/ )。具体的な施策内容としては、(1)交通事業者と連携した万博開催期間中に使用できるデジタルきっぷ、(2)万博期間中に利用できる旅行商品の販売促進である。(1)については、Kansai MaaSアプリ等を活用した周遊パスであり、購入者には数量限定のプレゼントや観光施設で使用できるクーポンが配布される。(2)については、関西圏並びに首都圏から出発する旅行商品であり、万博訪問後の来場者を自県へ誘客するコンテンツとなっている。本旅行商品の特徴は、関西圏のみならず首都圏をも対象としていることである。このようなプログラムを契機に、首都圏からの誘客が促進できれば、より一層万博の波及効果が期待されよう。

 

 

トピックス1

4月関西の財貨・サービス貿易及びサービス産業動向

▶関西 4 月の輸出額は前年同月比+6.0%と 7 カ月連続で増加した(前月:同+4.8%)。また、輸入額は同+7.8%と2カ月連続の増加となった(前月:同+13.1%)。結果、関西の貿易収支は+1,644 億円と 3 カ月連続の黒字だが、黒字幅は同-9.8%と2カ月連続で縮小した(前月:同-18.4%)(図4)。

 

 

▶対中貿易動向をみると(図 5)、関西 4 月の対中輸出は前年同月比+3.0%と2カ月ぶりに増加した(前月:同-1.3%)。輸出増に寄与したのはプラスチックや非鉄金属等であった。一方、対中輸入は同+14.8%と 2 カ月連続の増加(前月:同+16.6%)。輸入増に寄与したのはがん具及び遊戯用具や通信機等であった。

 

 

▶4月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は99万2,188人となり、過去最高値を更新した(前年同月比+28.4%)。桜の開花時期で訪日旅行需要が高まった影響が表れた。同月の日本人出国者数は17万2,765人であった。前年同月比+9.3%と増加幅は前月(同+20.9%)から縮小し、1桁の伸びにとどまった。なお、2019年同月比では-48.9%となり、アウトバウンド需要の低迷が続く。

 

 

▶4月のサービス業の活動は一進一退で推移している(図7)。サービス業の生産活動を示す第 3 次産業活動指数(季節調整済み:2019-20年平均=100)をみれば、4月は104.1で前月比+0.3%と2カ月ぶりのプラスとなった(前月:同-1.0%)。また、対面型サービス業指数*は 105.6 で同-1.2%と、6 カ月ぶりのマイナス(前月:同+0.5%)。うち、運輸業、郵便業(同-3.4%、2カ月ぶり)や医療、福祉(同-0.4%、2 カ月連続)が低下に寄与した。4 月を1-3月平均と比較すると、第3次産業活動指数は-0.2%(1-3 月期:前期比+1.6%)、対面型サービス業指数は-0.9%(13 月期:同+2.2%)、それぞれ低下した。

 

 

▶観光関連指数**(季節調整済み:2019-20 年平均=100)は(図7)、110.6 と前月比-2.0%低下し、2カ月連続のマイナスとなった(前月:同-3.5%)。うち、劇場・興行団(同-15.6%、2カ月連続)や宿泊業、飲食サービス業(同-1.3%、2 カ月連続)が低下に寄与した。4月の観光関連指数は1-3月平均比-3.3%低下した(1-3 月期:前期比+3.7%)。

 

*対面型サービス業は、「運輸業、郵便業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「学習支援業」及び「医療、福祉」を指す。
**観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、「旅客運送業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「旅行業」、「映画館」、「劇場・興行団」及び「公園、遊園地・テーマパーク」の各指数の加重平均。

 

 

トピックス2

2月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県

▶観光庁によれば、2月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は9,492.4千人泊であった(表1)。前年同月比では+1.5%と2021年11月以降増加が続いているが、増加幅は前月(同+12.1%)から縮小した。

 

 

 

▶日本人延べ宿泊者数は6,307.2千人泊となった。前年同月比4.1%と3カ月ぶりに減少した(前月:同+4.6%)(表1及び図8)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,378.1千人泊、京都府1,086.2千人泊、兵庫県1,019.7千人泊、三重県578.9千人泊、和歌山県274.0千人泊、滋賀県263.1千人泊、福井県235.0千人泊、奈良県163.5千人泊、徳島県162.2千人泊、鳥取県146.5千人泊であった。前年同月比でみると、京都府(同12.5%、21カ月連続)、三重県(同-9.6%、11カ月ぶり)、和歌山県(同-9.0%、2カ月連続)等の7府県が日本人延べ宿泊者の減少に寄与した。うち、京都府は前月(同-2.0%)から減少幅は拡大し、2桁の大幅減少となった。

 

 

 

▶外国人延べ宿泊者数は3,185.2千人泊となった(表1及び図9)。前年同月比+14.6%と35カ月連続で増加した。増加幅は前月(同+28.8%)から縮小したが、2カ月連続で2桁の伸びとなった。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府1,905.1千人泊、京都府1,030.9千人泊、兵庫県119.4千人泊、和歌山県30.0千人泊、奈良県28.2千人泊、滋賀県21.8千人泊、三重県15.9千人泊、徳島県13.0千人泊、鳥取県11.0千人泊、福井県9.9千人泊であった。前年同月比をみれば、大阪府(同+12.2%、37カ月連続)、京都府(同+19.2%、35カ月連続)、兵庫県(同+13.0%、31カ月連続)等、9府県が外国人延べ宿泊者の増加に寄与した。

 

 

 

▶なお、宿泊料金と賃金との交易条件(現金給与総額/宿泊料金:2019年=100)をみれば、2025年4月は65.5となった。前年同月比-3.2%と25カ月連続の悪化だが、悪化幅は前月(同-4.2%)から小幅縮小した。しかし、依然として宿泊料金の高騰に対して賃金の伸びは緩慢であるため、日本人宿泊者にとって厳しい状況が依然続いている(図10)。

 

 

 

トピックス3

2025年1-3月期国内旅行消費の動向:関西2府8県*

▶観光庁によれば、2025年1-3月期関西(2府8県ベース)の国内旅行消費額(速報)は1兆1,375億円となった(表2)。前年同期比+8.5%と5四半期連続のプラスだが、伸びは2四半期連続で1桁台にとどまっている(10-12月期:同+6.5%)。

 

 

 

▶国内旅行消費額のうち、1-3月期の宿泊旅行消費額は9,468億円であった。前年同期比+15.5%と5四半期連続のプラスとなり、10-12月期(同+4.0%)から増加幅は拡大した(図11及び表2)。府県別に消費額を降順にみれば、大阪府3,208億円(同+15.0%)、京都府1,668億円(同+2.6%)、兵庫県1,462億円(同+19.5%)、三重県858億円(同-4.4%)、和歌山県676億円(同+96.4%)、滋賀県635億円(同+140.2%)、徳島県296億円(同+494.8%)、奈良県250億円(同-35.1%)、鳥取県237億円(同+41.3%)、福井県178億円(同-60.0%)であった。

 

▶国内旅行消費額のうち、1-3月期の日帰り旅行消費額は1,907億円であった。前年同期比-16.7%と6四半期ぶりのマイナスとなった(10-12月期:同+16.7%)(図12及び表2)。府県別に消費額を降順にみれば、大阪府634億円(同-4.7%)、兵庫県475億円(同-0.5%)、京都府265億円(同-31.8%)、三重県175億円(同-23.0%)、滋賀県90億円(同-46.9%)、福井県81億円(同-56.6%)、奈良県60億円(同-12.5%)、徳島県55億円(同19.6%)、和歌山県49億円(同+73.0%)、鳥取県23億円(同+113.1%)であった。

 

*トピックス3は四半期ごとの掲載である。

pagetop
loading