ABSTRACT
【ポイント】
・JNTO訪日外客統計によれば、5月の訪日外客総数(推計値)は369万3,300人。中国の労働節(5月1日~5日)やスクールホリデーで訪日旅行需要が高まった影響もあり、同月過去最高値を更新した。
・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば3月は349万7,755人、3月として過去最高値を更新した。うち、観光客は314万9,434人であった。
・大阪・関西万博の折り返しを迎え(7/13日)、累計一般来場者数は1,027万9,824人となり、1,000万人を超えた。関西自治体は、万博来場者を自府県へ誘客するための施策に取り組んでおり、今回は滋賀県の観光キャンペーン「いこうぜ 滋賀・びわ湖」の事例を取り上げ、その内容を紹介した。
【トピックス1】
・関西5月の輸出額は小幅ながら8カ月連続で増加した一方、輸入額は3カ月ぶりに減少した。結果、関西の貿易収支は4カ月連続の黒字となり、黒字幅は3カ月ぶりに拡大した。
・5月の関空への訪日外客数は95万3,902人となり、全国と同様に5月として過去最高値を更新した。
・5月の第3次産業活動指数は2カ月連続で上昇した。また、対面型サービス業指数は「運輸業、郵便業」や「宿泊業、飲食サービス業」が上昇に寄与し、3カ月ぶりの上昇となった。また、観光関連指数は「劇場・興行団」や「宿泊業、飲食サービス業」等が上昇した影響で、3カ月ぶりのプラスとなった。
【トピックス2】
・3月の関西2府8県の延べ宿泊者数は12,125.1千人泊。前年同月比でみると2021年11月以降、増加が続いており、増加幅は前月から拡大した。
・うち、日本人延べ宿泊者数は2カ月ぶりに、外国人延べ宿泊者数は36カ月連続でそれぞれ前年を上回った。
【トピックス3】
・2025年1-3月期における関西各府県の訪問率をみれば、大阪府37.6%が最も高く、次いで京都府27.6%、奈良県6.9%、兵庫県4.8%、和歌山県0.6%、三重県0.7%滋賀県0.6%、三重県0.6%、鳥取県0.2%、徳島県0.2%、福井県0.1%と続く
・2025年1-3月期の関西2府4県の訪日外国人消費単価(旅行者1人1回当たりの旅行消費金額)は前年同期比+21.3%増加。費目別では、買い物代、飲食費や宿泊費が増加となった。
・2025年1-3月期の関西2府4県の訪日外客消費額は5,464億円、前年同期比+47.8%増加した。
DETAIL
ポイント
6月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数
▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表4)、5月の訪日外客総数(推計値)は369万3,300人であった(前年同月比+21.5%)。中国の労働節(5月1日~5日)やスクールホリデーで訪日旅行需要が高まった影響もあり、同月過去最高値を更新した。また、同月の出国日本人数は107万6,800人であった(同+14.3%)。なお、2019年同月比では-25.1%と、減少幅は前月(同-42.3%)から縮小した。
▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると(図2及び表4)、5月は韓国が82万5,800人(前年同月比+11.8%)と最多であった。次いで中国が78万9,900人(同+44.8%)、台湾が53万8,400人(同+15.5%)、米国が31万1,900人(同+26.3%)、香港が19万3,100人(同-11.2%)と続く。なお、他の国が堅調な動きを示す中、香港は2025年に入り、1月と4月を除けばマイナス基調にある。
▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(図3及び表5)、3月は349万7,755人で、3月として過去最高値を更新した(前年同月比+13.5%)。うち、観光客は314万9,434人(同+13.7%)、その他客は23万8,972人(同+16.1%)、商用客は10万9,349人(同+4.2%)であった。
▶大阪・関西万博の折り返しを迎え(7/13日)、累計一般来場者数は1,027万9,824人となり、1,000万人を超えた。関西自治体は、万博来場者を自府県へ誘客するための施策を積極的に実施している。今回は、奈良県、和歌山県、徳島県、三重県に続き、滋賀県の事例を取り上げてみよう。
▶滋賀県では、観光キャンペーンとして「いこうぜ 滋賀・びわ湖」を2024年9月21日から2025年10月31日まで実施している(詳細はURLを参照https://goshiga.biwako-visitors.jp/)。具体的な施策内容としては、(1)県内の観光地と万博会場を連動させたデジタル周遊企画、(2)東海道新幹線と宿泊をセットにした旅行商品の造成である。(1)については、万博会場(関西パビリオンの滋賀県ブース)と彦根城などの観光地でそれぞれデジタルスタンプを入手すると、特別なデジタルスタンプ(NFT:Non-Fungible Token)が入手可能である。(2)については、6月23日から10月13日まで発売される首都圏を出発とした旅行商品であり、びわ湖周遊クルーズや彦根城の観覧など現地体験プランも選択可能となっている。こうした観光キャンペーンによって万博からの誘客のみならず、首都圏からの誘客の促進も意図しているのが特徴的である。
トピックス1
5月関西の財貨・サービス貿易及びサービス産業動向
▶関西5月の輸出額は前年同月比+0.8%と小幅ながら8カ月連続で増加した(前月:同+6.0%)。一方、輸入額は同-2.6%と3カ月ぶりの減少となった(前月:同+7.8%)。結果、関西の貿易収支は+1,634 億円と 4 カ月連続の黒字となり、黒字幅は同+51.1%と3カ月ぶりに拡大した(前月:同-9.7%)(図4)。
▶対中貿易動向をみると(図5)、関西5月の対中輸出は前年同月比-4.6%と2カ月ぶりに減少した(前月:同+3.0%)。輸出減に寄与したのは半導体等電子部品や映像機器等であった。一方、対中輸入は同+2.0%と3カ月連続の増加(前月:同+14.8%)。輸入増に寄与したのはがん具及び遊戯用具や事務用機器等であった。
▶5 月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は 95 万3,902 人となり、5月として過去最高値を更新した(前年同月比+19.4%)。同月の日本人出国者数は20万3,108人であった。前年同月比+15.6%と増加幅は前月(同+9.3%)から拡大した。なお、2019年同月比では-28.3%となり、アウトバウンド需要の回復ペースは依然緩慢である。
▶サービス業の生産活動を示す第 3 次産業活動指数(季節調整済み:2019-20年平均=100)をみれば(図7)、5月は104.4で前月比+0.6%と2カ月連続のプラスとなった(前月:同+0.5%)。また、対面型サービス業指数*は107.0で同+2.6%と、3カ月ぶりのプラス(前月:同-1.4%)。うち、運輸業、郵便業(同+6.4%、2カ月ぶり)や宿泊業、飲食サービス業(同+3.4%、3カ月ぶり)が上昇に寄与した。4-5月平均を1-3月平均と比較すると、第3次産業活動指数は-0.0%(1-3 月期:前期比+1.4%)、対面型サービス業指数は-0.5%(1-3 月期:同+1.8%)、それぞれ小幅ながら低下した。
▶5月の観光関連指数**(季節調整済み:2019-20年平均=100)は(図7)、114.0と前月比+3.6%上昇し、3カ月ぶりのプラスとなった(前月:同-1.9%)。うち、劇場・興行団(同+20.7%、3 カ月ぶり)や宿泊業、飲食サービス業が上昇に寄与した。4-5月平均の観光関連指数は 1-3 月平均比-1.8%低下した(1-3 月期:前期比+3.5%)。
*対面型サービス業は、「運輸業、郵便業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「学習支援業」及び「医療、福祉」を指す。
**観光関連指数は第 3 次産業活動指数のうち、「旅客運送業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「旅行業」、「映画館」、「劇場・興行団」及び「公園、遊園地・テーマパーク」の各指数の加重平均。
トピックス2
3月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県
▶観光庁によれば、3月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は12,125.1千人泊であった(表1)。前年同月比では+4.0%と2021年11月以降増加しており、増加幅は前月(同+1.5%)から拡大した。
▶日本人延べ宿泊者数は8,209.1千人泊となった。前年同月比+2.1%と2カ月ぶりに増加した(前月:同-4.1%)(表1及び図8)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府3,006.1千人泊、京都府1,299.4千人泊、兵庫県1,324.1千人泊、三重県824.7千人泊、和歌山県403.9千人泊、滋賀県386.4千人泊、福井県323.7千人泊、奈良県237.5千人泊、徳島県207.8千人泊、鳥取県195.6千人泊であった。関西の前年同月比(+2.1%)に対する寄与度をみれば、大阪府(同+3.4%ポイント)、三重県(同+1.2%ポイント)や福井県(同+0.5%ポイント)等、7府県が増加に寄与した。一方、減少に寄与したのは、京都府(同-2.2%ポイント)、兵庫県(同-1.3%ポイント)と鳥取県(同-0.4%ポイント)である。特に京都府では2025年1月を除けば23年9月以降、前年比2桁減少が続いており、日本人宿泊者数の低迷が続いている。
▶外国人延べ宿泊者数は3,916.0千人泊となった(表1及び図9)。前年同月比+8.2%と36カ月連続の増加だが、増加幅は前月(同+14.6%)から縮小し、1桁の伸びにとどまった。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府1,994.6千人泊、京都府1,567.1千人泊、兵庫県131.7千人泊、和歌山県74.0千人泊、奈良県44.0千人泊、三重県28.9千人泊、滋賀県28.7千人泊、徳島県25.4千人泊、鳥取県12.4千人泊、福井県9.2千人泊であった。なお、徳島県の延べ宿泊者数は単月過去最高値を更新。前年同月比への寄与度をみれば、京都府(同+3.8%ポイント)、大阪府(同+3.8%ポイント)、和歌山県(同+0.5%ポイント)等、滋賀県(同-0.8%ポイント)を除く9府県が外国人延べ宿泊者の増加に寄与した。
▶なお、宿泊料金と賃金との交易条件(現金給与総額/宿泊料金:2019年=100)をみれば、2025年5月は64.1となった。前年同月比6.2%と26カ月連続の悪化。依然として日本人宿泊者にとっては厳しい状況が依然続いている(図10)。
トピックス3
2025年1-3月期訪日外国人訪問率と消費単価:関西
▶観光庁によれば、2025年1-3月期における関西各府県の訪問率をみると(図11)、大阪府37.6%が最も高く、次いで京都府26.7%、奈良県6.9%、兵庫県4.8%、和歌山県0.6%、滋賀県0.6%、三重県0.6%、鳥取県0.2%、徳島県0.2%、福井県0.1%と続く。前年同期と比較すると(表2)、大阪府+1.4%ポイント、滋賀県+0.2%ポイント、鳥取県、徳島県+0.0%ポイントと、それぞれ上昇した。一方、奈良県-0.8%ポイント、京都府-0.6%ポイント、三重県-0.2%ポイント、兵庫県-0.1%ポイント、和歌山県-0.1%ポイント、福井県-0.0%ポイントといずれも低下となった。
▶当該期間の各府県の訪問率に訪日外客数を乗じて推計した関西における訪日外客数をみよう。2025年1-3月期の訪問者数を降順にみれば(表2)、大阪府396万3,569人(前年同期比+27.9%)と最も多く、次いで京都府281万1,790人(同+20.2%)、奈良県72万8,536人(同+10.1%)、兵庫県50万4,269人(同+20.0%)、和歌山県6万8,033人(同+3.5%)、滋賀県6万2,880人(同+73.3%)、三重県6万614人(同-11.1%)、鳥取県2万2,909人(同+38.5%)、徳島県1万6,281人(同+45.3%)、福井県1万2,867人(同+9.9%)と続く。
▶観光庁によれば、2025年1-3月期の関西における訪日外国人消費単価(旅行者1人1回当たりの旅行消費金額)をみると(表3)、関西2府4県では前年同期比+21.3%増加した。費目別にみれば、買物代(同+26.5%)、飲食費(同+21.3%)、宿泊費(同+15.3%)が大幅増加した。
▶観光庁によれば、2025年1-3月期の関西における訪日外客消費額は5,464億円となり(表3)、前年同期比+47.8%増加した(24年10-12月期:同+39.2%)。同期の全国の消費額*は2兆2,803億円、同+28.8%となり(24年10-12月期:同+36.5%)、関西は全国の伸びを上回った。
*全国の消費額については本レポートNo.67を参照。