ABSTRACT
【ポイント】
・JNTO訪日外客統計によれば、8月の訪日外客総数(推計値)は342万8,000人、前年同月比+16.9%と増加幅は前月(同+4.4%)から拡大し、伸びは3カ月ぶりに2桁台に回復した。アジアや欧米豪地域においてスクールホリデーが重なった影響が表れた。
・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、6月は337万7,985人。うち、観光客は311万559人と6月として過去最高値を更新した。
・大阪・関西万博が10月13日に閉幕した。累計一般来場者数は2,557万8,986人と、想定来場者数2,820万人を幾分下回ったが、2005年の愛・地球博の来場者数(2,205万人)は上回った。万博閉幕後、関西への観光を促進する取組が開始されている。今回は一事例として、JR西日本が実施するキャンペーンを取り上げ、その特徴を紹介した。
【トピックス1】
・関西8月の輸出額は11カ月連続の増加だが、輸入額は2カ月連続の減少となった。結果、関西の貿易収支は7カ月連続の黒字となり、黒字幅は2カ月連続で大幅拡大した。
・8月の関空への訪日外客数は91万7,658人となり、2019年6月以来、成田空港の外国人入国者数を上回った。
・8月の第3次産業活動指数は2カ月ぶりの低下となった。また、対面型サービス業指数は「宿泊業、飲食サービス業」などが上昇に寄与し、小幅ながら3カ月ぶりの上昇。また、観光関連指数は「劇場・興行団」等が上昇した影響で、3カ月ぶりに上昇した。
【トピックス2】
・6月の関西2府8県の延べ宿泊者数は10,807.1千人泊。前年同月比でみると2021年11月以降増加が続いているが、増加幅は前月から縮小した。
・うち、日本人延べ宿泊者数は2カ月連続で前年を上回った。また、外国人延べ宿泊者数は39カ月連続で前年を上回ったものの、増加幅は縮小し、2022年2月以来の低い伸びにとどまった。
【トピックス3】
・2025年4-6月期における関西各府県の訪問率をみると、大阪府44.6.%が最も高く、次いで、次いで京都府32.7%、奈良県10.7%等が続く。管区別に訪問率をみると、北海道、中部、九州が小幅の伸びにとどまっているのに対して、近畿は大幅上昇している。なお、近畿については、過去2年間の平均値を上回っており、大阪・関西万博の影響がうかがわれる。
・2025年4-6月期の関西における訪日外国人消費単価をみると、関西2府4県では前年同期比+4.0%増加。費目別にみれば、買物代(同-16.4%)が減少する一方で、娯楽等サービス費(同+20.1%)、宿泊代(同+19.7%)が大幅増加した。
・2025年4-6月期の関西における訪日外客消費額は7,250億円となり、前年同期比+33.7%増加した。同期の全国の消費額は2兆2,826億円、同+21.2%となり、関西は全国の伸びを上回った。
DETAIL
ポイント
9月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数
▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表4)、8月の訪日外客総数(推計値)は342万8,000人であった。前年同月比+16.9%と増加幅は前月(同+4.4%)から拡大し、伸びは3カ月ぶりに2桁台に回復した。アジアや欧米豪地域においてスクールホリデーが重なった影響が表れた。また、同月の出国日本人数は164万8,300人であった(同+14.7%)。なお、2019年同月比では-21.9%と、減少幅は前月(同-27.3%)から縮小した。


▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると(図2及び表4)、8月は中国が101万8,600人(前年同月比+36.5%)と最多であった。次いで韓国が66万900人(同+8.0%)、台湾が62万700人(同+10.0%)、香港が22万6,100人(同-8.3%)、米国が19万4,500人(同+11.7%)と続く。SNS等による誤情報の影響から、香港は4カ月連続の減少。しかし減少幅は前月(同-36.9%)から縮小した。

▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(図3及び表5)、6月は337万7,985人(前年同月比+7.6%)。うち、観光客は311万559人(同+6.8%)となり、6月として過去最高値を更新した。その他客は15万9,289人(同+28.0%)、商用客は10万8,137人(同+5.5%)であった。



▶大阪・関西万博が10月13日に閉幕した。累計一般来場者数は2, 557万8,986人と、想定来場者数2,820万人を幾分下回ったが、2005年の愛・地球博の来場者数(2,205万人)は上回った。万博閉幕後、関西への観光を促進する取組が開始されている。今回は一事例として、JR西日本が実施するキャンペーンを取り上げ、その特徴をみよう。
▶JR西日本では、10月15日から万博後も国内外の客を西日本エリアへの誘客を促進するため、「動け、好奇心。」キャンペーンを実施した。本キャンペーンは、約70の企業・団体と連携し、グルメや地場産業の体験などコト消費に合わせた旅行商品やイベントを順次展開する予定である。具体的な内容としては、1)大阪府から関西各府県へ出発し、冬の味覚や当地の味覚を体験できるツアーや、2)訪日客向けのプランとして、福井県の伝統工芸体験ツアーや広島県の宮島などを巡るツアーなどの提供である。本キャンペーンの特徴は、国内外の旅行者を対象とし、関西のみならず中国地方、九州地方など西日本全体を周遊させるものとなっていることである。こうした「西のゴールデンルート」を活用した取組を推進することで、広域観光が促進され、より一層地域へ効果が均霑されることにつながろう。
トピックス1
8月関西の財貨・サービス貿易及びサービス産業動向
▶関西8月の輸出額は前年同月比+0.7%と11カ月連続の増加だが、増加幅は前月と同程度(同+1.3%)の小幅にとどまった。一方、輸入額は同-8.9%と2カ月連続で減少した(前月:同-6.4%)。このため、関西の貿易収支は+3,081 億円と 7 カ月連続の黒字となり、黒字幅は同+101.3%と 2 カ月連続で大幅拡大した(前月:同+128.1%)(図4)。

▶対中貿易動向をみると(図5)、関西8月の対中国輸出は前年同月比-0.2%と 2 カ月ぶりに小幅減少した(前月:同+0.1%)。輸出減に寄与したのは半導体等製造装置、通信機等であった。一方、対中国輸入は同+0.8%と3カ月ぶりの増加(前月:同-2.7%)。輸入増に寄与したのは事務用機器、がん具及び遊戯用具等であった。

▶8月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は91万7,658人であった。前年同月比+20.3%と増加幅は前月(同+7.6%)から拡大し、3カ月ぶりに2桁の伸びとなった。結果、2019年6月以来、成田空港の外国人入国者数を上回った。なお、同月の日本人出国者数は32万5,350人であった(図6)。同+17.9%と増加幅は前月(同+17.5%)とほぼ同程度であった。なお、2019年同月比では-21.7%と減少幅は前月(同-28.7%)から縮小したが、アウトバウンド需要の回復は緩慢である。

▶サービス業の生産活動を示す第 3 次産業活動指数(季節調整済み:2019-20 年平均=100)をみれば(図7)、8月は104.3で前月比-0.4%と2カ月ぶりのマイナスとなった(前月:同+0.2%)。経済産業省は基調判断を「一部に足踏みがみられるものの、持ち直しの動き」と前月から据え置いた。また、同月の対面型サービス業指数*は105.2で同+0.0%と、小幅ながら3カ月ぶりのプラス(前月:同-0.4%)。うち、宿泊業、飲食サービス業(同+4.3%、3 カ月ぶり)や医療、福祉(同+0.4%、4カ月ぶり)等が上昇に寄与した。7-8月平均を4-6月平均と比較すると、第3次産業活動指数は横ばい(4-6月期:前期比+0.4%)、対面型サービス業指数は-0.3%(4-6月期:同-0.5%)低下した。
▶8月の観光関連指数**(季節調整済み:2019-20年平均=100)は(図7)、114.9 と前月比+4.3%上昇し、3カ月ぶりのプラス(前月:同-2.9%)。うち、宿泊業、飲食サービス業や劇場・興行団(同+10.1%、3カ月ぶり)等が上昇に寄与した。7-8月平均の観光関連指数は 4-6 月平均比-0.3%低下した(4-6 月期:前期比1.1%)。 *対面型サービス業は、「運輸業、郵便業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「学習支援業」及び「医療、福祉」を指す。 **観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、「旅客運送業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「旅行業」、「映画館」、「劇場・興行団」及び「公園、遊園地・テーマパーク」の各指数の加重平均。

トピックス2
6月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県
▶観光庁によれば、6月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は10,807.1千人泊(表1)。前年同月比+0.3%と2021年11月以降増加が続いているが、増加幅は前月(同+5.0%)から縮小した。

▶日本人延べ宿泊者数は6,881.9千人泊となった。前年同月比+0.4%と小幅ながら2カ月連続で増加した(前月:同+1.1%)(表1及び図8)。結果、4-6月期は前年同期比-1.4%と2四半期連続で減少した。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,613.1千人泊、京都府1,231.1千人泊、兵庫県1,053.5千人泊、三重県571.8千人泊、和歌山県310.6千人泊、滋賀県300.5千人泊、福井県259.8千人泊、奈良県207.1千人泊、鳥取県172.2千人泊、徳島県162.3千人泊であった。関西6月の前年同月比(+1.1%)に対する寄与度をみれば、大阪府(同+3.1%ポイント)、三重県(同+0.6%ポイント)や奈良県(同+0.4%ポイント)等、5府県が増加に寄与した。一方、減少に寄与したのは、京都府(同-2.6%ポイント)、滋賀県(同-0.7%ポイント)、福井県(同-0.6%ポイント)等、5府県であった。なお、京都府は2023年6月以降、前年割れが続いている。

▶外国人延べ宿泊者数は3,925.2千人泊であった(表1及び図9)。前年同月比+0.2%と39カ月連続のプラスだが、増加幅は前月(同+12.6%)から大幅縮小し、2022年2月(同+0.9%)以来の低い伸びにとどまった。結果、4-6月期は前年同期比+11.7%と13四半期連続で増加した。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,021.9千人泊、京都府1,556.2千人泊、兵庫県141.4千人泊、和歌山県67.3千人泊、奈良県45.7千人泊、三重県32.2千人泊、滋賀県20.3千人泊、徳島県16.0千人泊、鳥取県15.9千人泊、福井県8.2千人泊であった。前年同月比(+0.2%)への寄与度をみれば、京都府(同+4.2%ポイント)、兵庫県(同+0.8%ポイント)、奈良県(同+0.5%ポイント)等、8府県が外国人延べ宿泊者の増加に寄与した。

▶なお、宿泊料金と賃金との交易条件(現金給与総額/宿泊料金:2019年=100)をみれば、2025年8月は58.9となった。前年同月比-3.4%と29カ月連続で悪化し、前月(同-2.4%)から悪化幅は拡大した。依然として日本人宿泊者にとっては厳しい状況が続いている(図10)。

トピックス3
2025年4-6月期訪日外国人訪問率と消費単価:関西
▶観光庁によれば、2025年4-6月期における関西各府県の訪問率をみると(図11)、大阪府44.6%が最も高く、次いで京都府32.7%、奈良県10.7%、兵庫県5.5%、和歌山県1.4%、三重県0.8%、滋賀県0.5%、鳥取県0.3%、福井県0.2%、徳島県0.2%と続く。前年同期と比較すると(表2)、大阪府+3.5%ポイント、奈良県+2.0%ポイント、京都府+1.8%ポイント、兵庫県+0.1%ポイント、福井県、三重県、滋賀県、鳥取県+0.0%ポイントと、それぞれ上昇した。一方、徳島県-0.1%ポイント、和歌山県-0.0%ポイントといずれも小幅低下となった。管区別に訪問率をみると、北海道、中部、九州が小幅の伸びにとどまっているのに対して、近畿は同+3.1%ポイントと大幅上昇している。また、関東は同-1.0%ポイントと低下している。なお、近畿については、4-6月期(47.6%)は過去2年間(23年4-6月期~25年1-3月期)の平均値(42.5%)を+5.1%ポイント上回っており、大阪・関西万博の影響がうかがわれる。


▶当該期間の各府県の訪問率に訪日外客数を乗じて推計した関西における訪日外客数をみよう。2025年4-6月期の訪問者数を降順にみれば(表2)、大阪府489万9,446人(前年同期比+29.1%)と最も多く、次いで京都府359万5,147人(同+26.1%)、奈良県117万2,871人(同+47.0%)、兵庫県60万5,662人(同+21.3%)、和歌山県14万9,217人(同+16.8%)、三重県8万5,617人(同+22.6%)、滋賀県5万61人(同+32.5%)、鳥取県2万9,209人(同+21.3%)、福井県2万4,772人(同+47.0%)、徳島県2万3,169人(同-18.7%)と続く。
▶観光庁によれば、2025年4-6月期の関西における訪日外国人消費単価(旅行者1人1回当たりの旅行消費金額)をみると(表3)、関西2府4県では前年同期比+4.0%増加した。費目別にみれば、買物代(同-16.4%)が減少する一方で、娯楽等サービス費(同+20.1%)、宿泊代(同+19.7%)が大幅増加した。
▶観光庁によれば、2025年4-6月期の関西における訪日外客消費額は7,250億円となり(表3)、前年同期比+33.7%増加した(25年1-3月期:同+47.8%)。同期の全国の消費額*は2兆2,826億円、同+21.2%となり(25年1-3月期:同+28.8%)、関西は全国の伸びを上回った。 *全国の消費額については本レポートNo.73を参照。

