研究者紹介
野村 亮輔2021年2月現在
APIR副主任研究員
学歴
- 甲南大学経済学部経済学科卒業
- 甲南大学大学院社会科学研究科経済学専攻修了
職歴
- 2018 - 2019年 近畿運輸局 観光部 観光地域振興課 政策調査員
主な著作物
- 『令和時代の「所有」と「利用」』(共同通信『Kyodo Weekly』、11月4日号、2019年11月)
- 『サバ缶ブームをどう考えるか』(共同通信『Kyodo Weekly』、2月3日号、2020年2月)
- 『冷静な頭脳と温かい心』(共同通信『Kyodo Weekly』、5月4・11日号、2020年5月)
- 『新常態とビアガーデン』(共同通信『Kyodo Weekly』、9月7日号、2020年9月)
- 『地域の魅力を再発見』(共同通信『Kyodo Weekly』、12月28日&1月4日号、2021年1月)
その他
- <講演>
- 2019年12月5日 北陸経済連合会・(一社)中央日本総合観光機構 合同セミナー 第9回 北陸観光(HOT)サロン:「オープンデータを利用したインバウンド・ビジネス戦略の分析」
- 2020年11月11日 大阪府・大阪市経済動向報告会:「関西経済白書2020について」
論文一覧
-
Kansai Economic Insight Monthly Vol.125-景気は足下改善、先行きは足踏みの兆し: 輸出停滞と生産伸び悩みによる景気下押し圧力に注意-
経済予測
経済予測 » Monthly Report(関西)
/ DATE :
ABSTRACT
・関西の景気は足下改善、先行きは足踏みの兆しがみられる。足下、生産は2カ月ぶりの減産となり、低調な動きとなった。雇用環境は失業率が悪化したが、労働力人口と就業者数の増加で、持ち直しの動きを維持している。消費は百貨店を中心に回復しており、景況感はインバウンド需要の増加もあり改善。先行きは海外経済悪化による輸出の停滞と生産の伸び悩みが景気の下押し圧力となっており、足踏みの兆しがみられる。
・7月の生産は2カ月ぶりに前月比低下。生産用機械、汎用・業務用機械や化学(除.医薬品)等が減産に寄与しており、生産は低調な動きとなった。
・7月の失業率は4カ月ぶりに悪化したが、労働力人口と就業者数はいずれも増加した。雇用情勢は持ち直しの動きを維持している。また、新規求人数と新規求職者数がともに大幅増加し、足下労働需給の動きが活発となっている。
・6月の現金給与総額は19カ月連続の前年比増加となり、伸びは前月より縮小した。一方、実質ベースでは減少が続き、減少幅は前月より拡大した。
・7月の大型小売店販売額は22カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店は衣料品とその他の商品などが高い伸びを示し、インバウンド需要も堅調。スーパーは10カ月連続で拡大した。
・7月の新設住宅着工戸数は2カ月連続で前月比減少。マンションの大幅減少により全体が押し下げられた。
・7月の建設工事は前年比増加が続くものの、関西は減速、全国は加速となった。うち公共工事については依然として全国より関西のほうが伸びは高いが、減速が目立つ。また、8月の公共工事請負は、前年比減少に転じた。
・8月の景気ウォッチャー現状判断は2カ月連続の前月比改善。インバウンド需要の増加や行動制限のない夏祭り等のイベントの開催が好影響した。一方、先行き判断は円安進行や原油価格高騰への懸念から2カ月ぶりに悪化した。
・8月の関西の貿易は輸出入ともに前年比減少だが、どちらも減少幅は前月から縮小となった。輸出は4カ月連続で1桁の減少にとどまる。なお、対中食料品輸出の動向については、p.14【BOX】において分析を行っている。
・8月の関空への外国人入国者数はコロナ禍前の9割に迫る水準となり、コロナ禍前をほぼ回復した。
・8月の中国経済は、生産と消費はともに増加し、回復ペースは前月より加速した。ただし、住宅販売の不振による影響で耐久財消費の低迷が続いている。長引く雇用情勢の悪化と不動産市場の不況は景気回復の足かせとなっているため、7-9月期の経済成長率は前期より減速する可能性が高い。 -
2023年阪神タイガース優勝の地域別経済効果:速報版 -APIR関西地域間産業連関表による分析-
インサイト
インサイト » トレンドウォッチ
/ DATE :
ABSTRACT
今回の阪神タイガース優勝は慶賀に堪えない。本稿では、阪神タイガース優勝により発生する新規需要を球場観戦時の消費及び球場外の消費(優勝セール含む)に分けて想定した上で、APIR関西地域間産業連関表を用いてその経済波及効果を計測した。その際、地域経済に与える影響という視点が重要であり、この観点から分析を行った。分析結果を整理し、得られた内容は以下の通りである。
1. 阪神タイガースの優勝により全国で発生する経済効果総計は1,051億2,400万円、うち直接効果465億8,700万円、間接効果585億3,800万円となった。
2. うち、関西(2府8県ベース)の経済効果は686億9,600万円、関西を除くその他地域では364億2,800万円となる。
3. 地域間交易を考慮した関西地域間産業連関表の分析によれば、全体の効果は、関西に65.3%、その他地域に34.7%配分される。関西を除く地域では364億円の経済効果を発生させているが、その大部分は間接効果である。すなわち、関西での直接需要を満たすため、関西以外の他府県で一定程度の需要が発生していることを意味している。
4. 次に関西各府県での効果をみると、大阪府は306億4,400万円(29.2%)、兵庫県は172億7,000万円(16.4%)と圧倒的に2府県に効果が集中している。
5. 阪神のファン数は減少しているにもかかわらず、今回の優勝は一定の経済効果をあげている。これから得られる含意としては、新たなファン層の拡大やリピーター率の向上によりファン数の減少トレンドを抑制し、加えてファンサービスの高付加価値化による消費単価の引き上げにより一層の経済効果が期待できよう。
-
都道府県別訪日外客数と訪問率:7月レポート No.50
インバウンド
インバウンド
/ DATE :
ABSTRACT
【ポイント】
・JNTO訪日外客統計によれば、7月の訪日外客総数(推計値)は232万600人となり、2カ月連続で200万人を超え、コロナ禍前の8割に迫る水準まで回復。なお、中国人客を除いた総数ではコロナ禍前を回復した。
・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば5月は189万9,176人。うち、観光客は165万6,118人、商用客は9万5,468人、その他客は14万7,590人であった。
・訪日外客の先行きについては、中国人客がどの程度回復するかが気になるところである。中国人客の団体旅行が解禁されたものの、日中関係の変化や中国経済の減速などのリスク要因で回復のペースが緩慢となる可能性がある。今後の課題は、団体旅行解禁による消費単価の低下を避けるとともに、急増するインバウンド需要に対して日本の労働供給制約をいかに解消するかである。
【トピックス1】
・関西7月の輸出は3カ月連続の前年比減少。また、輸入は4カ月連続で同減少し、3カ月連続で2桁のマイナスとなった。輸入の減少幅が輸出のそれを大きく上回ったため、貿易収支は6カ月連続の黒字となった。
・7月の関西国際空港への60万1,246人となり、コロナ禍前の8割に迫る水準まで回復。
・6月のサービス業の活動は前月から悪化したが、持ち直し傾向は維持。第3次産業活動指数、観光関連指数はいずれも3カ月ぶりの前月比低。一方、対面型サービス業指数は2カ月ぶりに同上昇した。
【トピックス2】
・5月の関西2府8県の延べ宿泊者数は10,486千人泊。2019年同月比では5カ月連続の減少だが、前月から減少幅は縮小。
・うち、日本人延べ宿泊者数は7,818.9千人泊と2カ月連続で2019年同月の水準を下回った。一方、外外国人延べ宿泊者数は2,667千人泊で、2019年同月比-8.6%と減少幅は前月から縮小。日本人延べ宿泊者の回復は停滞した一方で、外国人延べ宿泊者数は回復しているようである。
【トピックス3】
・2023年4-6月期の関西の国内旅行消費額は1兆2,052億円であった。2019年同期比-15.7%と3四半期ぶりのマイナス。4-6月期の観光関連指数が示すように、低調な国内旅行消費と指数の動きとは整合的である。うち、宿泊旅行消費額は8,389億円と3四半期ぶりにコロナ禍前を下回った。また、日帰り旅行額は2,109億円となり、19年同期比で減少幅が1-3月期から拡大した。
-
中国人客の回復とインバウンド戦略について
インサイト
インサイト » トレンドウォッチ
/ DATE :
ABSTRACT
2023年8月10日に中国政府は日本への団体旅行を解禁した。そのため、23年後半以降、インバウンド需要の加速が期待される。本稿では中国人客の団体旅行解禁が日本及び関西に与える経済的影響を一定の仮定を置き分析した。分析内容を整理し、得られた含意は以下の通りである。
1. 水際対策が大幅緩和された2022年10月以降訪日外客数は急拡大し、中国人客を除けば23年7月に2019年同月の水準を上回った。この間、回復には3四半期程度を要した。
2. 中国人客の回復については、2023年8月の団体旅行解禁から3四半期をかけて中国人客が100%回復するCase1を想定。なお、回復パターンについてはこのベースラインに対して中国経済や対日関係の変化の影響をも考慮し、回復が遅れる2つのケースを想定した。
3. 各Caseに基づいて訪日中国人旅行消費額を推計すれば、2023年度においてCase1では全国で1兆7,631億円、関西で6,044億円となる。Case2では全国で1兆4,926億円、関西で5,114億円。Case3では全国で1兆2,222億円、関西で4,183億円と試算される。
4. 中国人客の回復は、コロナ禍により鮮明になってきた労働供給制約の課題を一層強く意識させる。このため、生産性向上を目指し、DX推進に向けた投資の一層の拡大が必要となろう。
5. 今回のケースはこれまでのインバウンド戦略を再考するにあたり重要な教訓となる。団体旅行解禁により、上昇した消費単価を低下させないよう、高付加価値サービスを提供することが一層重要となろう。すなわち、これまでのモノ消費からコト消費への転換を一層推進する仕組みづくり(インバウンド戦略)が必要となろう。
6. また、団体旅行客の増加による観光地におけるオーバーツーリズム現象の解消も課題である。観光地への観光客集中を避けるためにも、他地域への周遊促進が一層重要となる。 -
Kansai Economic Insight Quarterly No.65 -緩やかな回復が続くが力強い回復には未だ至らず:米欧中の経済動向に注視が必要-
経済予測
経済予測 » Quarterly Report(関西)
/ DATE :
ABSTRACT
1. 2023年4-6月期の関西経済は、緩やかな回復が続いている。家計部門では一部弱含みとなっているが、総じて緩やかに持ち直している。企業部門では、生産や景況感は底堅く推移しており、設備投資計画も旺盛である。海外部門では、中国経済の停滞が影響し輸出・輸入ともに前年を下回った。インバウンド需要はコロナ禍前の水準をほぼ回復した。先行きは、物価の動向および米欧中の経済動向に注視が必要である。
2. 家計部門は前期に引き続いて緩やかに持ち直している。センチメント、大型小売店販売は堅調に推移している。ただし物価高に伴う実質所得の減少や節約志向の高まりにより、本格的な回復には至っていない。所得・雇用環境、住宅市場などでは回復に一服感が見られ、弱含みとなっている。
3. 企業部門は、製造業・非製造業ともに底堅く推移している。製造業は、原材料価格の高騰や海外経済の減速などから弱含みではあるが、緩やかに改善している。非製造業は、経済活動再開やインバウンド需要の回復で、宿泊・飲食など対面型サービスを中心に総じて復調している。また23年度の設備投資計画は製造業・非製造業とも旺盛で、増勢となった前年度からさらなる加速が見込まれている。
4. 対外部門のうち、財の貿易については輸出・輸入ともに前年を下回った。輸出を地域別に見ると、欧米向けは前年比プラスを維持し堅調であったが、中国向けは低調で2四半期連続のマイナスとなった。インバウンド需要は順調で、関空経由の外国人入国者数や免税売上高はコロナ禍前の水準をほぼ回復した。
5. 公的部門は前期から引き続き、堅調に推移している。特に4-6月期は前年比で大幅増加となった。
6. 関西の実質GRP成長率を2023年度+1.6%、24年度+1.4%と予測。21年度以降は1~2%の緩やかな回復基調を維持し、23年度にコロナ禍前(19年度)のGRP水準を回復する。前回予測(5月30日公表)に比べて、23年度は+0.3%ポイントの上方修正、24年度は-0.3%ポイントの下方修正とした。
7. 成長に対する寄与度を見ると、民間需要は23年度+1.0%ポイント、24年度+1.2%と成長の牽引役となる。また公的需要も23年度・24年度ともに+0.4%ポイントと成長を下支える。域外需要は23年度+0.2%ポイント、24年度-0.1%ポイントと低調に推移する。
8. 日本経済予測と比較すると、23年度の外需では、足下での中国向け輸出の停滞を反映し、関西では日本経済予測より小幅の寄与にとどまる見通し。24年度は次年度に万博開催を控えていることから公的需要の押し上げが大きく、日本経済を上回る成長となる。
9. 今号のトピックスでは、「コロナ禍と関西のホテル建設」および「インバウンド戦略と中国人客の回復」を取り上げる。※説明動画は下記の通り5つのパートに分かれています。
①00’00”~02’37”: Executive summary
②02’37”~24’43”: 第144回「景気分析と予測」
<財輸入の減少、サービス輸出の拡大で実質GDPはコロナ禍前のピークを超える>
③24’43”~34’38: Kansai Economic Insight Quarterly No.65
<緩やかな回復が続くが力強い回復には未だ至らず:物価高と米欧中の経済動向に注視が必要>
④34’38”~39’20”: トピックス<コロナ禍とホテル建設>
⑤39’20”~44’26”: トピックス<インバウンド戦略と中国人客の回復>