153回 景気分析と予測:速報版
<トランプ関税により内需の景気牽引役は一層限定的 -関税引き上げ幅は縮小するがセンチメントへの影響は大->

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ABSTRACT

  1. 5月16日発表のGDP1次速報によれば、1-3月期の実質GDPは前期比年率-0.7%と4四半期ぶりのマイナス成長。実績は市場コンセンサス(ESPフォーキャスト)最終予測(同-0.19%)から幾分下振れ、CQM最終予測(支出サイド)は同+0.3%となった。
  2. 結果、2024年度の実質GDP成長率は前年比+0.8%と4年連続のプラス。国内需要は+1.2%ポイント、純輸出は-0.4%ポイントの寄与度である。国内需要のうち、民間最終消費支出(同+0.4%ポイント)、民間企業設備(同+0.4%ポイント)、公的需要(同+0.4%)はともにプラス成長に寄与した。
  3. 1-3月期の実質GDP成長率(前期比-0.2%)への寄与度を見ると、国内需要は同+0.7%ポイントと2四半期ぶりのプラス寄与となった。うち、民間需要は同+0.7%ポイントと2四半期ぶりのプラス寄与。ただ、民間在庫変動(+0.3%ポイント)が中心で民間家計消費支出の寄与はほぼゼロであった、一方、純輸出は同-0.8%ポイントと2四半期ぶりのマイナス寄与。駆け込み需要の拡大が期待されたが、財貨・サービスの実質輸出が前期比-0.6%と4四半期ぶりの減少となったためである。
  4. 1-3月期の名目雇用者報酬は前期比+0.6%と7四半期連続のプラスだが、実質雇用者報酬は同-0.9%と6四半期ぶりのマイナス。結果、実質民間最終消費支出は同+0.0%と4四半期連続の増加だが、前期からさらに減速してほぼ横ばいとなった。
  5. 1-3月期GDP1次速報と新たな外生変数の想定を織り込み、2025-26年度日本経済の見通しを改定した。実質GDP成長率を25年度+0.4%、26年度+0.8%と予測。前回(152回予測)から、25年度を-0.8%、26年度を-0.5%ポイント大幅下方修正
  6. 2025の賃上げは前年に匹敵する伸びが実現でき、消費者物価インフレが減速する年度後半には、実質賃金の増加幅は緩やかな拡大が期待できよう。ただ純輸出については景気下押しのリスクが一層高まっている。このため、25-26年度は内需の景気牽引役は一層限定的となる
  7. 米国トランプ大統領の関税政策は貿易やサプライチェーンに抑制的効果をもたらすが、その影響の幅については不確実性が高いのが特徴的である。企業や家計のセンチメントに与える間接的な影響も大きい。第2四半期以降の日本の輸出にとっては、自動車関税の大幅引き上げ(25%)とともに相互関税(10%)が大きな影響を与える。対米輸出関数による推計では、対米輸出の減少幅の名目GDP比は-0.2%から-0.3%となる。輸出減による乗数効果を考慮すればその影響は看過できない
  8. 消費者物価コア指数のインフレ率を、2025年度+2.4%、26年度+1.7%と予測する。足下の食料価格の高止まりから25年度を前回予測より+0.1%ポイント上方修正した。GDPデフレータ25年度+2.4%、26年度+1.8%となる。

※本レポートの詳細版については5/28(水)に公表予定

予測結果の概要

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