研究者紹介

熊坂 侑三 プロフィール写真

熊坂 侑三

  • ITeconomy Advisors, LLC CEO
  • 日米の超短期経済予測

学歴

東京工業大学卒業
ペンシルヴァニア大学でPh.D.を取得

職歴

ウォートン経済予測研究所
国際国連経済社会局エコノミスト
ニッセイ基礎研究所主席研究員(ニューヨーク駐在)を経て、現在、ITeconomy Advisors,Inc.代表

主な著作物

クリントンの米国経済(共著、日本経済新聞社、1993年)
ITエコノミー(共著、日本評論社、2001年)
2001年度大川出版賞受賞
Accelerating Japan's Economic Growth: Resolving Japan's Growth (共著、Routledge社、2008年)

論文一覧

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2015年2月)<議会証言にみるYellen連銀議長の金融政策への考え方>

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2015-03-02

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次

熊坂 侑三

インサイト

Yellen新連銀議長による出口戦略は成功するか?

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-01-28

PDF_direct

Abstract/Keywords

Yellen、連銀議長、出口戦略

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2014年8月1日)<2014Q2(4-6月)GDP予測レビュー>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-08-04

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2014年1月)<CQM 予測の精確度>

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-02-03

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2014年2月7日)<連銀によるフォワード ミスガイダンス>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-02-10

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2015年3月13日)<3月17-18日のFOMCを前に沈黙を守る連銀エコノミスト>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2015-03-16

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2014年10月)<CQM 予測 vs. 速報値2014Q3(7-9 月期)GDP>

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-11-04

PDF_direct

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2013年4月)<日米の超金融緩和政策は雇用を増やすか?>

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-04-30

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2013年3月)

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-04

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

▶3 月29 日のCQM は2012 年10-12 月期 (2012Q4)のGDP 統計(確定値)とそれ に対応する2 月の国民所得・消費支出のみ を更新した。 ▶その結果、支出サイドでは2013Q1 の実質 GDP 伸び率を2.97%から3.15%へ、所得サ イドでは1.98%から3.45%へとそれぞれ上 方に修正した(図表1)。   ▶連銀エコノミストの中で、ハト派対タカ派 の意見の相違がかなり表面化している。 ▶タカ派の代表であるプロッサーフィラデル フィア連銀総裁は低金利政策のコストの大 きさを懸念すると同時に、住宅バブルによる 資産減少に対して低金利政策は消費支出を 刺激するよりも民間貯蓄を増やすと警告し る。 ▶一方、ハト派のバーナンキ連銀議長は長期 金利の上昇からキャピタルロスが生じても、 それは連銀のマクロ政策の目標達成にとっ て副次的なものと捉え、あくまで低金利政策 を維持する姿勢を示している。
熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2014年11月7日)<オバマの6 年間を評価する国民投票に終わった中間選挙>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-11-10

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013 年7月12日)<最終需要、所得サイドからみれば、米経済に楽観的になれる!>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-07-16

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2014年5月2日)<2%インフレ目標の達成に固執する連銀、これが経済へのリスクに!>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-05-05

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年5月10日)<非農業雇用者数の変化と失業保険新規申請件数の統計的関係>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-05-13

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済、週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年7月19日)<失業率の6.5%はthresholds(基準値)かtriggers(起点)か?>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-07-22

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年10月18日)<急速に低下する国際社会における米国の政治・経済の信頼性>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-10-21

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2014年11月)<中間選挙の大敗にも懲りないオバマと民主党>

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-12-01

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2013年7月)<議会証言にみるバーナンキ連銀議長の描く出口戦略への シナリオ>

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-07-29

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年8月2日)<統計上の誤差を考えた所得サイドからの景気判断の重要性>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-08-05

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2013年10月)<2013 年7-9月期GDP(速報値)の最終CQM予測 vs. 10月30日のFOMC声明>

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-11-05

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2014年2月)<Yellen連銀議長の議会証言からみる金融政策>

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-03-05

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2014年8月15日)<米景気の現状に非常に悲観的な今週のCQM予測>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-08-18

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年11月15日)<次期連銀議長候補のJannet Yellen は資産バブルを否定するが…>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-11-18

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2014年5月23日)<FOMC(4月29-30日)の議事録にみる連銀の出口戦略への考え方>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-05-26

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年5月24日)<日本の株価急落が何故米国株価に影響を与えなかったのか?>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-05-27

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済、週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年3月15日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-03-15

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年3月22日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-03-22

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2014年3月21日)<ゴールポストを動かし続ける連銀>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-03-24

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2014年12月)<米国の潜在成長率は連銀が考えているよりかなり高い>

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2015-01-05

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2014年3月)<長すぎるゼロ金利政策 >

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-03-31

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

インサイト

APIR Commentary No.36<CQM予測(1月2日)は連銀の迅速な政策金利の引き上げを示唆>

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2015-01-09

PDF_direct

Abstract/Keywords

CQM予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2014年6月6日)<何故支出サイドからの経済成長率は大幅に低下したか?>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-06-09

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2013年5月)<出口戦略の鍵を握る持続的経済成長率と労働市場>

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-06-03

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2014年8月) <賃金-物価スパイラルモデルによる米金融政策の検証>

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-09-01

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2015年1月23日)<2014Q4GDP(速報値)の最終CQM予測>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2015-01-26

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2014年4月18日)<4 月に入り米経済は景気の底から緩やかな回復基調に>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-04-21

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2015年1月)<ハト派に傾く2015年のFOMCメンバー>

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2015-02-02

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2014年4月)<2014Q1 (1-3月期)GDPの最終CQM予測とFOMCミーティング(4/29-30)>

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-04-28

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年6月14日)<6月18-19日のFOMCミーティングで注目すべき2つのポイント>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-06-17

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2015年2月6日)<心配ない支出サイドの実質GDPの大幅な下方修正>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2015-02-09

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次

熊坂 侑三

研究プロジェクト

日米の超短期経済予測とASEAN への適用可能性

[ 2013年度/アジア太平洋経済展望 ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-03-08

Abstract/Keywords

ASEAN

研究成果概要

 本プロジェクトの一部として、ASEAN 諸国の超短期経済モデル(CQM*)構築に必要なハイフリークエンシー(High Frequency)統計と国民所得・生産勘定表(NIPA)のデータインフラの整備を調査しました。*:「Current Quarter Model」 日米のCQM はすでに構築されており、このプロジェクトにおいては毎週、毎月末に日米のCQM 予測が行われ、その結果をもとに日米経済の景気動向に関するCQMレポートがアジア太平洋研究所のホームページに掲載されました。これらの日米のCQM予測に見られるように、CQM 予測は景気の現状を常に数値とトレンドで表すことができ、また景気の転換点を市場のコンセンサスより少なくとも1 ヶ月早く指摘できるなどの特徴があります。これは、政策当局(特に、金融政策者)、エコノミスト、投資家、経営者などの政策決定に価値ある情報となります。特に、経済のグローバル化が急速に進展し、各国の相互依存が高まる中で、ハイフリークエンシー統計を用いた現状の景気判断は欠かせません。それ故、日米経済のCQM をASEAN 経済にまで拡大する日米―ASEAN CQM LINK 構想が生まれました。その第1ステップとして、2012年度においてASEAN の中のマレーシア、フィリピン、タイのそれぞれの経済に対してCQM 構築の可能性を調査しました。(報告書はこちら)第2ステップとして、2013年度においてシンガポール、インドネシア、ベトナムのそれぞれの経済に対してCQM構築の可能性を調査し、その結果をまとめました。詳細はこちら

目的

・超短期経済モデル(CQM)により、毎週日米経済の現状を捉える。 ・ASEAN経済の今後の重要性を考え、日米 + ASEAN-CQM-LINK構築への準備を行う。 ・日米経済に関しては毎週と月末にCQM予測をWeeklyレポートに、月末にはMonthlyレポートを作成して、APIRのwebsiteに掲載。 ・経済政策担当者(特に金融)、経営者、エコノミスト、投資家と彼ら自身のそれぞれの経済政策、経営・投資戦略に使用できる。

内容

・活用できるHFD(High Frequency Data)を使用し、景気の現状・転換点を市場コンセンサスよりも1,2ヶ月早く捉えることが一つの特長。 ・現地調査においては、各国でHFDのavailabilityが非常に異なることから、それらに詳しいマクロエコノミストとの議論を行う。 ・毎週日米経済の現状を捉え、金融政策当局の政策判断もできる。 ・景気の転換点を捉えるのに市場のコンセンサスより、1,2ヶ月は早い。 ・経済政策担当者、経営者、投資家などの政策、投資戦略に役立つ。

期待される成果と社会還元のイメージ

・毎週、日米経済の現状を数値とトレンドで捉え、また景気の転換点を早く捉えられることから、企業、経済団体の経営戦略に役立つ。昨年度のこのProjectの開始時期早々にも、APIRに関して1年先の円安を見越して、1ドル70円台でのドル預金を提唱していた。 ・常に、日米経済の現状を把握できていることは、長期の企業戦略を打ち立てる場合にも重要な情報となる。 ・ASEANのCQM調査は、これらの国々の経済発展の進歩を捉えることができる。 精度の高い、High Frequency Dataが十分にそろっている国の経済発展には希望がもてる(マレーシア、フィリピン)。
熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2013年12月)<Fed’s economists have already painted themselves into a corner>

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-01-06

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2014年7月4日)<新たなバブル経済の誕生?>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-07-07

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2014年7月11日)<名目賃金の上方硬直性に直面しているYellen連銀議長>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-07-14

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2014年7月18日)<あくまで異常な金融緩和策にこだわるYellen連銀議長>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-07-22

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2014年10月10日) <味気なかった労働市場状況指数(LMCI)の発表>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-10-14

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2013年6月)<金融政策と成長戦略に不可欠な潜在成長率の実証分析>

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-07-01

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

研究プロジェクト

日米の超短期経済予測

[ 2014年度/アジア太平洋地域の経済成長と発展形態 ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-04-30

Abstract/Keywords

景気転換点、超短期予測、数値、トレンド

リサーチリーダー

主席研究員 熊坂侑三 ITeconomy CEO  

研究目的

日米の超短期予測の精度をより高め、今四半期・次四半期の経済動向を他のエコノミストができない「数値」と「トレンド」で常に語ることを目的とする。  

研究内容

日米の超短期予測を週次ベースで実施する。超短期予測による簡潔でタイムリーな分析レポートは原則毎週月曜日にHP上で発表される。毎月の最終週には、超短期予測から見た日米経済の月次動向が発表される。経済トピックスを踏まえ四半期経済の月次変化が解説される。H26年度は引き続きASEAN地域での超短期予測の可能性を検討し準備を行う。  

リサーチャー

稲田義久 APIR研究統括  

期待される成果と社会還元のイメージ

超短期予測の特徴は市場の見方よりもいち早く日米経済の景気転換点を把握できることにある。このため、経済政策者、エコノミスト、企業経営者の意思決定に役立つ情報を提供できる。

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2014年10月17日)<株価の大幅な下落が米経済をリセッションに導くか?>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2014-10-20

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年9月20日)<連銀の最終判断はForecast-Dependent ではなく、やはりData-Dependent>

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-09-24

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年2月22日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-02-22

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年2月15日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-02-15

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年3月8日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-03-08

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年2月8日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-02-08

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年2月1日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-02-01

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2013年2月)

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-02

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年1月18日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-01-18

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2013年1月11日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-01-11

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2013年1月)

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2013-01

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年12月21日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-12-21

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年12月14日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-12-14

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年12月7日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-12-07

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2012年12月)

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-12

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年11月23日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-11-23

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年11月16日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-11-16

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年11月9日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-11-09

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

緊急特別寄稿: 米大統領選挙

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-11-05

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年11月2日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-11-02

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2012年11月)

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-11

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年10月12日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-10-12

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年10月5日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-10-05

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2012年10月)

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-10

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年9月21日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-09-21

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年9月13日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-09-13

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年9月7日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-09-07

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2012年9月)

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-09

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年8月24日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-08-24

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年8月17日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-08-17

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年8月10日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-08-10

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年8月3日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-08-03

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2012年8月)

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-08

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年7月20日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-07-20

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年7月13日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-07-13

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年7月6日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-07-06

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2012年7月)

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-07

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年6月22日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-06-22

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年6月15日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-06-15

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年6月8日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-06-08

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2012年6月)

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-06

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年5月25日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-05-25

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年5月18日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-05-18

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年5月11日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-05-11

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年5月4日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-05-04

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2012年5月)

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-05

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年4月20日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-04-20

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年4月12日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-04-12

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(週次)予測(2012年4月6日)

[ Weekly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-04-06

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,週次予測

熊坂 侑三

経済予測

米国経済(月次)予測(2012年4月)

[ Monthly Report(米国) ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-04

PDF_direct

Abstract/Keywords

米国経済,月次予測

熊坂 侑三

研究プロジェクト

日米アセアン経済の超短期経済予測

[ 2012年度/アジア太平洋経済展望 ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-04

Abstract/Keywords

ASEAN、CQM、超短期経済モデル、ハイフリークエンシー、ブリッジ方程式、NIPA

リサーチリーダー 熊坂 侑三 ITeconomy CEO 研究成果概要 日米の超短期経済モデル(CQM*)が日米経済の現状の景気判断に適し、それが政策当局(特に金融政策者)、エコノミスト、投資家、経営者等の政策決定に役立つことから、日米―ASEAN CQM LINKの構想が生まれました。経済のグローバル化が急速に進展している今、ハイフリークエンシー(High Frequency)統計に基づく現状の景気判断が常に数値とトレンドで客観的になされることは地域経済の景気判断・安定化に役立ちます。最初のステップとして、マレーシア、フィリピン、タイにおけるCQM構築の可能性を調べました。これらの国々においてはCQM構築に十分なハイフリークエンシー統計の整備がなされています。CQMに望ましい季節調整統計によるCQMはタイ経済においてのみ可能でありますが、フィリピン、マレーシアに関しては季節調整がなされていないCQMの構築が可能です。*:「Current Quarter Model」 詳細はこちら 研究目的 グローバル経済下、ハイフリークエンシーデーターを活用した超短期経済モデル(CQM)による予測は、現 在の景気動向を常に数値と方向性で捉えることができることから、経済政策当局や企業経営者にとって重要な役割を果たす。ほぼ毎週、日米の景気動向を捉える と同時に、ASEAN諸国の超短期モデル構築にむけた調査を行う。 研究内容 ○日米経済動向について、重要な経済指標の発表による経済動向の変化を毎月3回の超短期レポートで報告 ○詳細な日米経済の動向や連銀等の金融政策のあり方を月次レポートで報告 ○年に2〜3回セミナーを開催 ○ASEAN諸国におけるCQM構築にむけ、タイ、フィリピン、マレーシアに関する調査、CQM構築の具体的構想を作成 メンバー 稲田義久 (甲南大学) <海外協力者(予定)> 国家経済社会開発委員会(タイ)、 国家経済開発庁(フィリピン)、 Bank Negara Malaysia(マレーシア)等 6名程度 期待される研究成果 ・日米経済動向を数値と方向性で捉えることによる景気判断の明確化 ・CQM予測から景気の転換点を市場のコンセンサスよりも約1カ月早く予測 ・企業の投資戦略にも重要な情報を提供 ・日米とASEAN諸国のCQMをリンクして予測することでアジア地域のリセッションの緩和・回避
熊坂 侑三

インサイト

今月のエコノミスト・ビュー(2012年3月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-03-14

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<インフレ目標> 円高の進行が鈍化し、ほぼ止まった模様である。アメリカ経済が回復基調であり、欧州危機も当面は鎮静化しつつあることが主因だろうが、転換の契機の一つに は、日銀による「インフレ目標採用」の報道があったと言えるだろう。アメリカの連邦準備制度がインフレ目標を導入したのを受けて、日本銀行総裁から「日銀 も実質的なインフレ目標(1%)を採用している」という発言がなされたのである。連邦準備は景気回復の中で量的緩和を継続するに当たり、インフレ期待の高 まりを抑えることを意図して、インフレ目標を導入したのだと考えられる。他方、日本銀行の意図は円高阻止だったのではないだろうか。そうだとすれば、一定 の効果があったと言えるのかもしれない。 インフレ目標制度は、金融政策運営の世界標準である。1990年代に入る頃まで、各国の金融政策にとって最大の課題はインフレ鎮静化であった。試行錯誤の 中で、インフレ目標制度が課題解決の枠組みとして評価されるようになった。金融政策のゴールとしてインフレ率の目標水準を明示することは、景気安定化や金 融システム安定化を副次的目標に格下げすることを意味する。困難な決定であるが、当時の状況下で「二兎を追うと一兎も得られない」として、踏み切られたの である。単純化した金融政策目標を、(人気取りに傾きがちな政治の影響を排除すべく)独立性を高めた中央銀行に委託し、一定期間(2〜3年)内に目標水準 のインフレ率を実現させるというのが、当時のインフレ目標制度であった。 その後、世界的にインフレが鎮まり、インフレ目標の採用例も増えて経験が蓄積されると、インフレ目標制度にも様々な変更が加えられるようになった。大きな 流れとして、当初の厳密な枠組みがより緩やかなものへと変えられた。まず、目標を達成すべき期間が曖昧になり、景気循環を通して平均的に実現すれば良いと いう形が現れた。目標の設定方法も、目標範囲設定から目標値の設定に変更された。一見すると厳しくなったように見えるかもしれないが、反対である。範囲を 明示すればその上下限内に収まらないとアウト判定されるが、目標値の場合はピッタリに合わなくても当然なので、アウト判定は曖昧になる。当初は、目標達成 に失敗すると中央銀行のトップを交替させるというペナルティが喧伝されたが、英国などでは中銀総裁が事情を説明する手紙を書くことが繰り返されている。 高インフレと闘うためには、物価安定の追求という側面における金融政策への信認を高める必要があった。しかし、一旦、信認を獲得してしまうと、物価安定以 外の目標への目配りも可能となってきたのである。ノーベル賞を受けたプレスコット教授(ミネソタ大)など新しい古典派が批判した「時間非整合性」問題に近 いが、短期的な自由裁量に基づく政策変更ではなく、政策枠組み(ルール)の変更として実施されつつある。勿論、こうした政策目標間のウェイト変更は微妙な ものであり、信認を喪失する危険性もある。それで、中央銀行は、自らへの信認のインディーターとして、民間主体の中期的なインフレ期待(予想)をモニター している。 日本銀行の「実質的なインフレ目標」に対する評価は、これからの政策行動に応じて定まっていくであろう。以前の日本銀行はインフレ目標に対して拒否反応を 示し、2000年に公表した「「物価の安定」についての考え方」という文書では、具体的な数値の明示を回避した。市場は、その後の政策行動をみて、 「−1〜+1%の範囲であれば、日本銀行は動かない」と考えるようになったという。暗黙の目標が0%であると解されていたことになる。景気と物価の動向が 安定して量的緩和を解除した2006年に、「「物価の安定」についての考え方」は改訂されて、「0〜2%程度のインフレ率」と数値を明示し、「1%」が中 心的な値であることにも言及した。しかし、その後の運営からは「1%」の実現に積極的だという印象は与えられなかった。金融危機後の不況の中、2009年 末に「0%以下のマイナスのインフレ率は許容しない」と言明し、「1%」が中心的な値であることを再度強調した。続いて、今回の表明となったのである。こ れからの政策行動に期待したい。 [地主敏樹 マクロ経済分析プロジェクト委員 神戸大学大学院] 日本 <超短期モデルは1-3月期日本経済をほぼ横ばいとみる> 3月8日発表のGDP2次速報値によれば、10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率-0.7%と1次速報値の同-2.3%から1.6%ポイント上方 修正された。民間企業設備が1次速報値の同+7.9%から+20.7%へと大幅に修正されたことがその主要因である。この結果、2011暦年の成長率は -0.7%(前回:-0.9%)となった。 10-12月期の成長率が上方修正されたものの、足下経済は市場の見方より弱いようである。今週(3月12日)の超短期モデル(支出サイド)は、1-3月 期の実質GDP成長率を、内需は小幅拡大するが、純輸出が同程度縮小するため同-0.1%と予測する。この結果、2011年度の実質GDP成長率は -0.4%となろう。1-3月期の経済がほぼ横ばいであるのに対して、4-6月期の実質GDP成長率は、内需は増加幅が拡大し純輸出の減少幅が縮小するた め、同+4.0%と予測する。2012年前半の超短期予測の見方に対して、マーケットコンセンサス(ESPフォーキャスト3月調査)は1-3月期実質 GDP成長率を同+2.35%、4-6月期同+2.21%とほぼ同程度の景気回復と見ている。 このように超短期予測は1-3月期経済をマーケットコンセンサスより低く見ているがその理由は以下のようである。同期の国内需要を見れば、実質民間最終消 費支出は前期比+0.4%と堅調な伸びとなる。実質民間住宅は同-3.4%と2期連続のマイナス、実質民間企業設備は同+0.9%と小幅増にとどまる。実 質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資本形成は同+5.8%となる。このように、公的需要は拡大するが民間需要が縮小するため、国内需要の実 質GDP成長率(前期比-0.0%)に対する寄与度は+0.2%ポイントと小幅にとどまる。 一方、財貨・サービスの実質輸出は同+0.4%小幅増加し、実質輸入も同+2.2%増加する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は-0.2%ポイントとなり、内需の拡大幅を相殺する。 インフレについては商品価格高騰の影響が浸透し始め、GDPデフレータは、1-3月期に前期比+0.2%、4-6月期に同+0.1%となる。民間最終消費支出デフレータは、1-3月期に同+0.1%、4-6月期に同-0.1%となる。 [稲田義久 APIR研究統括・マクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学] 米国 <支出・所得サイドからのGDP予測の乖離は今後どのように収束していくか?> グラフにみるように、2012年1-3月期実質GDP成長率予測は、支出サイドからは前期比年率-0.22%、所得サイドからは同+2.97%と大きく乖 離している。各四半期において最初の月の実績値が更新された時に、超短期モデル予測ではこのようなことが時々生じる。すなわち、GDPの所得サイドでは堅 調に改善している労働市場を反映し、それが個人所得の増加となり、経済成長率を高くしている。一方、1月の大幅な輸入増、により、その後の輸入も時系列モ デルから高く予想されることから、GDPの支出サイドから予測される実質GDP伸び率が非常に低くなる。しかし、このような大きなGDP予測の乖離も2 月、3月の経済指標の実績値を更新することによって収束していく。おそらく次のようなことによって、その乖離が収束していくであろう。 ・賃金・俸給が改善されていることから、個人消費支出(PCE)が上方に改定されるだろう。 ・過去3ヶ月の財輸入の平均伸び率(前月比)は1.7%と非常に高い。このような高い伸び率が維持される可能性は少ないことから、輸入の伸び率が今後低下するだろう。 ・最近の石油価格の上昇から、輸入価格が上昇し、実質輸入が減少するだろう。 ・製造業が堅調に拡大していることから、製造業の在庫、それにともない卸売業、小売業在庫も増加するであろう。 すなわち、支出サイドからの経済成長率の予測が上方に修正される形で両サイドからの実質GDPの乖離が縮小していくと思われる。輸出入、在庫の2月、3月 の時系列モデル予測にかなりの不確実性があることから、今期(1-3月期)の現状の景気判断にはGDPから在庫、純輸出を除いた最終需要をみるのがよいで あろう。今週の超短期モデルはその実質最終需要の伸び率を同+2.8%と予測している。すなわち、今の景気は2.5%−3.0%の経済成長率と考えられ る。一方、今週のインフレ率予測はほとんど2%にまで上昇している。このように、超短期モデル予測からすれば、多くの連銀エコのミストが今もってQE3を 考えているが、その必要はないと結論できる。 [熊坂有三 ITエコノミー]
熊坂 侑三

インサイト

今月のエコノミスト・ビュー(2012年2月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-02-17

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<「学校年度」を考える−東大秋入学構想を受けて−> 東大が学部の秋入学への全面移行を目指すという構想をまとめた。国際標準となっている秋入学に移行することで、国際化を進めることがねらいだ。海外から優 秀な学生を受け入れたり、逆に海外に送り出したり、また研究などで海外の大学との提携を促進するための有効な手立てとして秋入学は期待されている。 私たちは、桜の季節の4月に学校年度と財政年度が同時にスタートすることをごく当然のこととして過ごしてきた。しかし、そのことは国際的に見るとほとんど 例外と言ってよいのだ。財政年度も図表1に見るように国によって違いがある。4月開始の財政年度をとる主要国は日本のほか、英国がそうであるが、学校年度 は9月始まりだ。そもそも学校年度が4月始まりという国はほとんど無く、国際的には学校年度と財政年度が一致していないのが普通なのである。 学校年度や財政年度も重要な「制度」にほかならないが、「制度」が経済のパ フォーマンスに影響を与えることは経済学的にも疑いの余地はない。例えば、設備投資や人的投資(教育投資など)、技術進歩が中長期的な経済成長の要因であ るが、制度の違いがそれらの収益率に影響を与えるため、制度が経済成長を左右することになるのだ。 人的投資による収益率が学校年度という制度によって大きく影響を受けている例を示そう。図表2は、1950年から2002年の間について、総出生数10 万人当たり何人のプロ野球選手数を輩出したかを生まれ月別に集計したものだ(このデータは、阪神球団の総合トレーニングコーチを務めたこともある中山悌一 氏の手による)。この図からは、4月生まれから生まれ月が遅くなるにつれてプロ野球選手になる確率が一貫して下がっていくことがわかる。4月生まれと3月 生まれとでは倍以上の開きがある。当然、4月生まれと3月生まれに能力の違いがあることなど考えられない。小学校低学年では1年間の体力や理解力の違いが 大きく、4月生まれの方がチャンスを貰いやすく、それが後々まで影響を及ぼすものと考えられる。すなわち、野球選手になるために同じ投資をしても本人の生 まれ月で収益率が変わってくることを意味しているのだ。わが国のプロ野球の場合、選手育成をほぼ全面的に学校や社会人のアマチュア野球に委ねているため に、学校年度の影響をとくに強く受けることになるのだろう。 もちろん、仮に秋学期が学校年度のはじまりであったとしても、学校野球・社会人野球による育成システムがベースにある限り、10月生まれがピークになっ ただけだろう。しかし、ここで読み取りたいことは、制度というものは、われわれが考える以上に、人々の選択とその成果に様々な大きな影響を与えている可能 性があるということなのだ。現在の学校年度が国際化の抑制要因となってきたことを軽視することはできないと思うのだ。東大の秋入学の構想は、大学の国際化 にとどまらず、就職・雇用慣行、学校年度全体など日本の社会制度のあり方にも影響を及ぼす可能性があり、制度改革への問題提起としても大きな意味を持つと いえるだろう。 [高林喜久生 マクロ経済分析プロジェクト主査 関西学院大学] 日本 <日本経済は踊り場を経て緩やかな回復軌道へ> 2月13日発表のGDP1次速報値によれば、10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率-2.3%となった。2期ぶりのマイナス成長となり、市場コン センサス(ESPフォーキャスト2月調査:同-0.4%)を大きく下回った。前年同期比で見ても-1.0%と4期連続のマイナスとなり、マイナス幅は前期 (-0.5%)より幾分拡大している。10-12月期のマイナス成長は、東日本大震災からの回復過程に海外経済減速(特にEUのマイナス成長)とタイ洪水 の影響が重なった結果と考えられる。したがって、マイナス成長は一時的であり今回は踊り場とみてよい。 実際、10-12月期の実質GDPの中身を見ると、実質GDP成長率を最も押し下げたのは純輸出と民間在庫品増減であった。純輸出の寄与度は前期比年率 -2.6%ポイントと2期ぶりのマイナスとなった。一方、国内需要の寄与度は3期連続のプラスとなったが、前2期から大幅に低下し同+0.2%ポイントに とどまった。 最終週(2月6日)における超短期モデル(支出サイド)の予測は同-2.7%と実績とほぼ同じ結果となった。超短期モデルの予測動態を振り返ると、 10-12月期の基礎月次データがまだ発表されない9月初旬の段階では、マーケットコンセンサスと同様+2%台半ばの成長率を予測していた。ところが、 10月のデータが発表され始める11月末には、-2%台の低成長へと予測はシフトした。以降、予測最終週まで-2%台の予測を継続しており、超短期モデル は2ヵ月程度早く正確に予測できた。一方、興味のあるのはマーケットコンセンサスの動向である。実績値が発表される直前には予測値は小幅のマイナスに転じ たものの、それ以前は一貫してプラス成長を予測していたことに注意。 2月14日の(支出サイドモデルによる)超短期予測では、1-3月期の実質GDP成長率は、純輸出は引き続き縮小基調にあるが、内需の増加幅が拡大するた め前期比+0.3%、同年率+1.4%と予測する。この結果、2011年度実質GDP成長率は-0.5%となろう。一方、4-6月期の実質GDP成長率 は、純輸出の減少幅が縮小し内需の拡大ペースが維持されるため、前期比+0.6%、同年率+2.4%と予測する。復興需要も見込まれることから少なくとも 年前半は回復基調を維持しよう。 1-3月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.3%増加する。実質民間住宅は同-4.0%減少するが、実質民間企業設備は 同+0.8%増加する。実質政府最終消費支出は同+0.4%、実質公的固定資本形成は同+11.6%となる。補正予算の効果が実感できる状況である。この ため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+0.3%)に対する寄与度は+0.6%ポイントと前期から拡大する。 一方、財貨・サービスの実質輸出は同+0.4%、実質輸入は同+2.4%増加する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は-0.3%ポイントと前期からマイナス幅が縮小する。 [[稲田義久 APIR研究統括・マクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <雇用増、所得増、個人支出増の好循環の始まり?> 2月4日の失業保険新規申請件数は358,000と大きく低下し、堅調な下降トレンドを形成している。今後の労働市場の改善が期待できる。また、グラフか らわかるように1-3月期の実質GDP成長率を所得サイドから見ると、1月の雇用統計更新の後3%程度にまで上昇している。夏の間、一時停滞した製造業、 非製造業も共にISM指数を見る限り、11月頃より再び上昇し始め、景気が再び回復してきたことを示している。このことは、ダラス連銀、カンザスシティー 連銀などの多くの地域連銀の製造業調査にも同じことが言える。支出サイドから予測した経済成長率が低いのは、11月、12月の輸入が非常に大きく伸び、そ れがARIMA予測に影響し1月-3月の輸入が過大に予測されていることが理由として考えられる。GDP以外の実質アグリゲート指標(総需要、国内需要、 最終需要)で見ると、1-3月期のそれらの実質成長率は2%〜3%へと拡大してきている。今後、雇用の改善、所得増、個人消費支出増という好循環が生ま れ、持続的な経済成長の可能性がでてきた。 しかし、連銀エコノミストの間では今もってハト派が優勢であり、ゼロ金利解除などは考えも及ばない。何しろ、政策金利の上昇を2014年以降と考えている 連銀エコノミストは17人中11人にも上る。今もって、シカゴ連銀のCharles Evans総裁などは更なる数量的緩和QE3を主張している。もちろん、タカ派のダラス連銀のRichard Fisher総裁は今の経済状態をみれば、ゼロ金利を維持する正当性は無いと主張している。同じタカ派のフィラデルフィア連銀のCharles Plosser総裁も今後3年近くも異常な低金利政策を維持すれば、連銀への信頼を失い混乱を招くと言い、いつものように金融政策はカレンダーによって決 まるのではなく、経済状況によって決まるものと主張しつづけている。ゼロ金利政策を長期間続けることにはインフレ期待の上昇ばかりか他のリスクもある。そ れは、革新をもたらすようなハイリスク-ハイリターンの投資がなされなくなる可能性である。これは、長期間低成長を続けると、高成長ができないと人々が思 うようになる"Moral Consequence of Economic Growth"に対して、"Moral Consequence of Monetary Policy"と呼べるのではないだろうか。すなわち、超低金利政策のもとでは、ローリスク-ローリターンの投資が多くなり、長期的な高い経済成長率を達 成することが難しくなる。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のエコノミスト・ビュー(2012年1月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2012-01-16

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<財政再建の議論では、成長を促進するためのエネルギー政策を最優先に> 日本企業が海外競争相手に比して、経営環境で負っている大きなハンディキャップを「六重苦」と表現することが多い。(1)超円高、(2)高い法人税 率、(3)厳しい労働規制、(4)温暖化ガス排出抑制、(5)海外との経済連携の遅れ、(6)電力不足を指す。これらの多くは従来から指摘されているが、 (5)と(6)は東日本大震災以降に新たに加わったものであり、また(1)も新たなハンディに加えてもよい。 今日、社会保障と税の一体改革が大きく議論されているが、財政再建だけの議論が中心で財政再建の中身と成長戦略がリンクしていないようである。特に、財政 再建は成長を促進するものでなくてはならない。全体として歳出削減自体は景気抑制的であるが、そのメニュー次第で成長促進的になり得ることを意識しなけれ ばならない。というのも、日本経済の現況は財政再建の実現するための許容度が大きく低下しているからである。その許容度を引き下げている要因の1つが、 「六重苦」のうちの電力不足であり、これが日本経済の大きな成長制約要因となっている。 東日本大震災以降、日本経済は電力不足に直面してきた。これを回避するために節電に取り組み夏季には前年比で10%近くの電力需要削減を実現した。冬季に も引き続き節電が実施されている。一方、供給側ではこれまで電源構成(発電ベース)の3割近くを占める原子力発電が短期的にはほぼゼロになるという状況下 で火力発電が不足分を代替している。これは、日本経済に追加的な燃料コストが発生し、結果的には海外へ所得移転となる。つまり所得成長がこれまでより低下 し、担税能力が低下し、先行き財政再建をさらに困難にするのである。 具体的に数字で見てみよう。2009年の原子力発電量は279,750百万kWhであるから、これを火力発電で全量代替すれば単純計算で年3.2兆円程度 の追加コストが発生する。平均代替コストはkWh当たり11.5円で計算している(2011年7月29日エネルギー・環境会議想定に基づく)。東日本大震 災以降(2011年4-11月累計)の貿易動向(通関ベース)を前年同期比で見ると、財輸出は1.7兆円減少し、財輸入は5.2兆円増加している。輸出減 には世界経済の低迷が大きく影響している。一方、輸入増のうち、鉱物性燃料輸入増は3.2兆円と輸入増の62%を説明しており、発電燃料代替によるコスト 増の影響が明瞭に見られる。 世界経済の先行きを俯瞰すれば、足下米国経済は堅調であるが持続性に問題がある。EU経済はすでに不況下にあり2012年はマイナス成長が予想されてい る。したがって、日本にとってこの1-2年の輸出市場は成長抑制的である。一方、輸入はエネルギー政策に大きな変化がない限り、やはり成長抑制的である。 純輸出は当面日本経済にとって成長を引き下げる要因であることを強く意識しなければならない。現時点では2014年4月から消費税率8%への増税が政府の 議論では想定されているが、この増税議論にかける以上の労力を成長促進するための財政政策の議論に向けられなければならない。特に、先を見据えたエネル ギー政策が最優先順位である。 以上の議論からはっきりするように、エネルギー政策の中心は(1)省エネルギーの促進(節電のみならず効率的な熱供給が重要)と(2)化石燃料起源のエネ ルギーから再生可能エネルギーへの転換とならざるを得ない。社会保障と税の一体改革による財政再建が実現されるには、経常収支が黒字であることが重要なポ イントとなるが、現状は厳しくその許容度が低下している。社会保障と税の一体改革による財政再建を進めるためには、成長戦略の議論と分離不可能であり、成長を促進するエネルギー政策とセットでなければならない。 日本 <10-12月期日本経済は米国とは対照的に低調なパフォーマンス> 2012年新年を迎えたが、2011年10-12月期日本経済の超短期予測には前月と比較して大きな変化はない。また同期の米国経済の超短期予測(5%程度の高成長)とは対照的である。 現時点では10-12月期GDPを説明する基礎データは公的固定資本形成や政府最終消費支出関連データを除き11月までがすでに発表されている。 1月16日の(支出サイドモデルによる)予測では、10-12月期の実質GDP成長率は、内需は小幅拡大するが、純輸出は大幅縮小するため前期比 -0.5%、同年率-1.9%と予測する。日本経済は7-9月期の高成長(+5.6%)から一時的な踊り場へと局面を移すことになろう。一方、2012年 1-3月期の実質GDP成長率は、純輸出は横ばいに転じ内需の増加幅が拡大するため、前期比+0.6%、同年率+2.4%と予測する。この結果、2011 暦年の実質GDP成長率は-1.0%、2011年度は-0.7%となろう。12月予測と変化はない。 10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.2%へと減速する。実質民間最終消費支出をよく説明する消費総合指数を見れば、 11月は前月比-0.4%と2ヵ月ぶりのマイナスとなった。内訳を見れば、10月の耐久消費財(前月比+5.8%)、サービス支出(同+1.0%)はとも に好調であったが、11月は耐久消費財(同-4.0%)が大幅減少しサービス支出も横ばいとなったからである。この結果、消費総合指数の10-11月期平 均は7-9月期平均比+0.2%と減速したがマイナス成長とはならず意外と貢献している。実質民間住宅は同+2.7%増加するが、実質民間企業設備は同 -1.0%減少する。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資本形成は同+0.7%となる。補正予算の効果がまだまだ実感できない状況であ る。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比-0.5%)に対する寄与度は+0.2%ポイントと小幅にとどまる。 一方、財貨・サービスの実質輸出は同-5.3%減少し、実質輸入は同-1.4%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は-0.7%ポイントと景気を大きく押し下げる。 米国経済の高成長持続可能性には問題があり、EU経済はすでに景気停滞に入っている現状では、日本経済にとって、当面は純輸出の低調が景気抑制要因となる。加えて補正予算の効果が意外と小さいとなれば、先行き日本経済のダウンサイドリスクはますます高まる。現時点では2011年度末にかけて一時的な踊り場と超短期予測は見ているが、ダウンサイドリスクが高まれば、日本経済は2012年前半に停滞局面に入る可能性に留意しておかなければならない。 [[稲田義久 APIR研究統括・マクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <いつまで続けられるかFRBのゼロ金利政策> 1月13日予測では、米国経済(2011年10-12月期)は前週の予測(前期比年率5.1%)からは下方修正されたものの同3.9%(1月13日 予測)と堅調な拡大を続けている。下方修正には11月の貿易統計の影響が反映されている。GDP以外の実質アグリゲート指標をみても、米国経済の強い回復 が見て取れる。しかし、今もってQE3(第3次数量的金融緩和)の可能性を語るエコノミストもいる。FRBの中でさえ更なる金融緩和を支持するエコノミス トもいる。ニューヨーク連銀のWilliam Dudley総裁、ボストン連銀のEric Rosengren総裁、FRBエコノミストのElizabeth Dukuなどのハト派である。例えば、Dudleyは"frustratingly slow"な景気回復、"unacceptably high"失業率と言い、更なるモーゲッジ担保証券の購入を通して、住宅金利の引き下げを唱えている。一方、セントルイス連銀のJames Bullard総裁は景気回復はすでに力強く、これ以上国債を購入することによって長期金利を低下させ経済回復をサポートする必要はないと言う。 5%にも達する経済回復の中で、何故更なる金融緩和策が必要なのであろうか?実際に住宅金利はすでに十分に低いし、これ以上引き下げてもそれによる住宅市 場の刺激には限界がある。むしろ、最近の新規・中古住宅販売件数を見る限り、住宅市場はまだ水準は低いが改善の方向に向かい始めた。金融当局にとって重要 なことは、できるだけ早く異常な低金利政策から正常な金利水準に戻ることである。これを行っていれば、今後欧州債務危機が悪化したとしても即座の対応が可 能になる。 1月24日、25日とFOMCミーティングがある。1月27日には2011年10-12月期のGDPが発表される。このFOMCミーティング時には、 FRBエコノミストも同期の経済成長率が高くなることを認めざるをえないだろう。例えば、4%を超える経済成長率が可能になったにもかかわらず、FRBが 更なる金融緩和策の維持をできるだろうか? ハト派のエコノミストが多いFOMCにおいて、その可能性は高いといえる。しかし、現在のような強い経済拡大 が続く中で、FRBが異常なゼロ金利政策を何処まで続けられるのであろうか?連銀にとって重要なことは、今の力強い景気回復を認めそれが持続するようなコミュニケーションを市場と行うことが重要である。FRBが強引なゼロ金利政策に固執すれば、市場からの信頼を失うことになるだろう。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のエコノミスト・ビュー(2011年12月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2011-12-14

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<インフレの常識はデフレの非常識>> 日本の物価を研究してきた渡辺努東大教授は、現状を「マイルドだが頑固な」デフレーションだと性格付けている。日本の金融危機発生時には、デフ レ・スパイラルの発生が危惧された。第1次石油危機の頃に経験したようなインフレ・スパイラルと逆で、物価低下と賃金低下が相互に助長し合う状況である。 高率のデフレが発生していれば経済には破壊的であっただろうが、日本はデフレ・スパイラルには陥らなかった。財政・金融の緩和策と金融システム安定化策と が下支えしたのであろう。最近、一部量販店では、安い値段を付けている競合店のチラシをもってくると、その値段まで下げるようになっている。そうした行動 が企業間取引にも及んでいるとすれば、各企業は積極的に値下げをしないが、競合企業が下げれば対抗して値下げするという行動をとっていることになるので、 「マイルドだが頑固な」デフレをもたらす要因ではないかとして検討されている。 他方で、内閣府のアンケート調査などによると、デフレがこれだけ続いているにも関わらず、ほとんどの人は+1%前後のインフレを予想している。その一因 として、物価指数の計算において質の変化を考慮していることが、影響しているのではないかと考えられる。販売価格が変化していなくても、性能が改善されて いれば、価格は低下したと計算されるのである。こうした質の調整はパソコンなどで顕著に効いてくる。一般の人はこうした調整を行わないから、インフレ期待 が高めになるのだというのである。金融市場参加者ならこうした調整にも対応できるかもしれない。物価連動債の利回りを見てみると、見事にマイナスのインフ レ率が予想されている。しかし、デフレ下では購入者が極めて限定的なので、市場の期待としては信用できないとも言われている。 このようにデフレ予想が定着しているかどうかの測定は難しいのだが、デフレが日本経済に定着していることを示す現象はいくつも挙げられよう。第1は、原 油価格上昇時の物価指数の動きである。CPIは上昇したが、GDPデフレーターは低下した。確かに、輸入はGDP計算におけるマイナス項目なので、その価 格上昇はデフレーターを低下させることになる。しかし、こんなことが起きているのは日本のみである。原油価格上昇が、国内製品価格に十分に転嫁されていな いし、賃金上昇にも結びついていないのである。企業はデフレに対応している。第2は、CPIとGDPデフレーターの変動性の大小関係である。CPIは固定 バスケットを用い、GDPデフレーターは可変バスケットを用いている。つまり、買い手が価格変化に応じて購入する商品を変更することを、前者は無視し後者 は考慮に入れている。従って、インフレの下では、CPIの方がGDPデフレーターよりも、物価変動率は高くなる。これが世界の常識である。しかし、デフレ の下にある日本では、GDPデフレーターの方がCPIよりも大きく下がる。家計もきちんとデフレに対応しているのである。 スウェーデンの中央銀行であるリクスバンクの副総裁となっているラース・スヴェンソン氏(元プリンストン大学教授)は、「デフレ下の金融政策運営は、イ ンフレ下での金融政策運営と逆様になる」と述べている。インフレの下ではインフレ・ファイターとしての信認を高めることが望ましいが、デフレの下ではその 信認を低下させることが望ましいのである。うまく信認を低下させられれば、円高も収まるかもしれない。デフレ下で採用すべき金融政策手段を決定する時に、 この逆様であることが「知的なチャレンジ」となると、彼は言う。同意する人も多いのではないだろうか。 [地主敏樹 マクロ経済分析プロジェクト委員 神戸大学大学院] 日本 <基準年改定により2011年度成長率は1.0%ポイントを超える下方修正で-0.7%に> 12月9日に発表されたGDP2次速報値によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+5.6%となり、1次速報値からは0.4%ポイントと小幅の下方修正にとどまった。 今回は5年毎の基準年改定(2000年→2005年)が行われ、新たな産業連関表と国勢調査の結果が反映された。グラフは旧系列と新系列による実質GDP 成長率パターンの比較である。基準年改定の結果、2011年の3四半期(1-3月期、4-6月期、7-9月期)が旧系列から下方修正された。特に、1-3 月期は3.9%ポイント(-2.7%→-6.6%)大幅に下方修正された。このことは新系列による2011年の成長率予測は、旧系列による予測より 0.5%ポイントを超える下方修正が行われる可能性を示唆している。 12月12日の(支出サイドモデルによる)予測では、7-9月期GDP2次速報値と一部の11月と多くの10月の データが更新されている。この結果、10-12月期の実質GDP成長率は、内需は小幅拡大するが、純輸出は大幅縮小するため前期比-0.4%、同年率 -1.8%と予測する。日本経済は7-9月期の高成長から一時的な踊り場へと局面を移すことになろう。一方、2012年1-3月期の実質GDP成長率は、 純輸出が小幅ながら引き続き縮小するものの内需が大幅拡大するため、前期比+0.5%、同年率+1.8%と予測する。この結果、2011暦年の実質GDP 成長率は-1.0%、2011年度は-0.7%となろう。前述したように、基準年改定により2011年の3四半期の成長率が下方修正されたため、2011 暦年の成長率予測は先月の予測(-0.2%)より0.8%ポイント、2011年度は先月の予測(+0.5%)から1.2%ポイントそれぞれ下方修正され た。 10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.4%へと減速する。実質民間住宅は同+0.7%増加、実質民間企業設備は同 -2.1%減少する。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資本形成は同+3.3%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比 -0.4%)に対する寄与度は+0.2%ポイントと小幅にとどまる。 一方、財貨・サービスの実質輸出は同-3.1%減少し、実質輸入は同+1.0%増加する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は-0.7%ポイントと景気を大きく押し下げる。 [稲田義久 APIR研究統括・マクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学] 米国 <欧州債務危機の中、景気回復が加速する米経済> グラフに見るように、景気は10月初めから回復をしており、12月9日の超短期予測では10-12月期の実質GDP成長率(前期比年率)は4%を超えるま でになっている。バーナンキFRB議長が10月の始めに、"the economy is close to 'faltering"と言い、異常なゼロ金利を2013年半ばまで維持する金融政策をとっていることは皮肉である。12月13日のFOMCミーティング では政策金利が据え置かれた。連銀エコノミスト達が景気回復の加速化を認めたものの、欧州債務危機を米経済への大きなダウンサイドリスクと捉え、従来の異 常なゼロ金利政策を正当化した。確かに、欧州債務危機は米経済へのダウンサイドリスクには違いないが、FRB自体が過剰に反応しせっかくの金融政策の正常 化への機会を見逃すことはない。今の欧州債務危機は1994年のメキシコ通貨危機、1997年のアジア通貨危機に比べて、その米経済への影響は小さいとい うエコノミストもいる。 米金融政策当局にとって大事なことは、欧州債務危機を非常に長期の問題と捉え、米景気へのダウンサイドリスクを過大に捉えず、現在の拡大している景気回復 の持続性を確保することである。すなわち、欧州経済の再構築が米経済にとって定常化した外的経済環境になるわけである。従って、FRBはいつまでも欧州債 務危機を米経済へのダウンサイドリスクと捉え、異常な低金利政策を正当化し、維持していくことはできない。12月13日のFOMC声明でFRBが欧州債務 危機によるダウンサイドリスクを認めながらも、景気拡大の持続性を維持する政策をとるような上手い市場とのコミュニケーションが期待される。4%の経済成 長が可能な中で、2013年半ばまでのゼロ金利政策は異常である。できるだけ早く、金融政策を正常に戻すことが景気変動に対応できる金融政策の自由度を増 すことであり、景気拡大の持続性に繋がる。 確かに、EU首脳会議が財政規律強化策を打ち出したが、債務危機解決への実効性のある対策とはいえない今の段階で、FRBが大きく金融政策を変更すること には無理があるだろう。にもかかわらず、12月13日のFOMC声明において、何らかの金融政策正常化への変更が期待される。 [ 熊坂有三 ITエコノミー]
熊坂 侑三

インサイト

今月のエコノミスト・ビュー(2011年11月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2011-11-17

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

企業誘致を考える −パナソニック尼崎工場の生産計画撤回を受けて− 先ごろ、パナソニックのプラズマパネル尼崎工場の生産計画の撤回が発表され、多方面で大きな衝撃を持って受け止められた。このパナソニックの決断は、企業誘致について多くのことを考えさせるものであった。 第1に、企業の意思決定は極めて早くてドラスティックであることである。今回の件では、企業にとってはスピードが命であることを改めて思い知らされた。生産計画の中止や工場の処分は大きな損失を伴うが判断を少しでも遅らせればより巨額の損失が予想されたからである。 第2に、プラズマパネルの最新鋭工場である第3工場の生産中止とともに、太陽電池の生産計画の撤回も明らかにされたことに関してである。プラズマパネル については、これほど早い撤退は予想できなかったとはいえ、近い将来、後続選手へのバトンタッチが必要と見られていた。新産業として有望視されていた電池 生産の撤退の方が長期的な影響は深刻といえるかもしれない。製造業拠点としての大阪湾岸も「パネルベイからバッテリーベイへ」と期待されていたのに黄色信 号がともったのだ。 第3に、自治体や地域経済も経済のグローバル化の影響をストレートに受けることをあらためて示したことである。今回のパナソニックの決断の背景には、円 高や中国メーカーとの競争激化によるパネル価格の下落で事業採算が悪化したこと、太陽電池の最大市場である欧州各国が財政危機で補助金による普及策を縮小 したことの影響があった。いまや自治体の財政や地域経済は否応なしに世界経済の動向と直接にリンクしているのだ。 今後、自治体や地域は企業誘致政策とどのように向かい合っていけばよいのだろうか。まず、確認しておきたいことは、雇用や需要を生む企業誘致が有力な地 域活性化策であることに変わりはないことである。しかし、今回の件は、撤退等の場合に備えての自治体側のリスク管理も重要であることを示した。 企業誘致の自治体間競争も限界に来ている。他の自治体も同様の誘致策で対抗し、とくに補助金などのインセンティブ政策では大きな差がつかないからだ。パ ナソニック尼崎工場の誘致においても県・市挙げてのワンストップサービス(窓口の一元化)の実施が決め手になったと思う。自治体に企業誘致に関するアン ケートをとると最大の課題は他の自治体との競争が激しいということが突出している(下図)。 グローバル化の波を特定の自治体・地域で受け止めることには限界がある。企業誘致も今までのように個別自治体ベースではなく、関西広域で対応すべきとい える。関西広域で戦略を練り、個別自治体の利害を調整する。関西全体として国内や海外の他地域と競争する。その方が自治体同士の過当な競争も減るし、リス クにもふところ深く対応できると考えるのだ。 注)関西社会経済研究所が関西2府4県4政令市に対して実施した「企業誘致方針 と具体的な企業誘致関連事業に関するウエブアンケート調査」(2010年5月)に基づき、自治体の「生産拠点及び研究開発拠点の誘致を含む事業(37事 業)」ついて、事業推進に当たっての課題についての回答結果をとりまとめたもの。 出所)2010年版「関西経済白書」p.116 [高林喜久生 マクロ経済分析プロジェクト主査 関西学院大学] 日本 10-12月期日本経済は一時的な踊り場へ 11月14日発表のGDP1次速報値によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+6.0%となった。4期ぶりのプラス成長となり、市場コンセンサス(ESPフォーキャスト11月調査:前期比年率5.82%)とほぼ同じ結果となった。 超短期モデルの(支出サイドモデルと主成分分析モデル)の最終週(11月8日)における平均成長率予測は同+5.9%であり市場コンセンサスとほぼ同じ であった。うち、支出サイドモデル予測は同+6.0%、一方、主成分分析モデル予測は同+5.9%。重視している支出サイドモデルの予測値は実績と同じピ ンポイントの結果となった。 超短期モデルの予測動態を見れば、7-9月期の基礎月次データが発表されない7月初旬の段階では+2%台半ばを予測していたが、7月のデータが更新され る8月の初旬には5%台の高成長を予測した。7-8月のデータが出そろう9月初旬には6%近くの高成長を予測し、以降安定的に高成長を予測した。 7-9月期の実質GDP成長率を最も引き上げたのは純輸出であった。純輸出の寄与度(年率ベース)は+1.7%ポイントと5期ぶりのプラスとなった。一 方、内需の寄与度も+4.2%ポイントと2期連続のプラス。特に、民需である民間最終消費支出、民間住宅、民間企業設備、民間在庫品増減がいずれも成長に 貢献した。 11月15日の(支出サイドモデルによる)予測では、7-9月期GDP1次速報値と一部の10月データが更新されている。10-12月期の実質GDP成 長率は、内需は小幅縮小するが、純輸出は引き続き拡大するため前期比+0.2%、同年率+0.9%と予測する。日本経済は7-9月期の高成長から一時的な 踊り場へと局面を移すことになろう。2012年1-3月期の実質GDP成長率は、純輸出は横ばいとなるが内需が小幅拡大するため、前期比+0.6%、同年 率+2.5%と予測する。この結果、2011暦年の実質GDP成長率は-0.2%と小幅のマイナス成長にとどまろう。また2011年度は+0.5%と予測 する。 10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.2%へと減速する。実質民間住宅は同+2.1%増加、実質民間企業設備は同 -1.3%減少する。実質政府最終消費支出は同+0.6%、実質公的固定資本形成は同+0.6%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期 比+0.2%)に対する寄与度は-0.1%ポイントとマイナスの寄与となる。 一方、財貨・サービスの実質輸出は同+1.7%と減速し、実質輸入は同-0.8%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.4%ポイントと引き続き景気を押し上げる。 以上のように超短期予測は10-12月期を一時的な踊り場局面と見るが、この見方を修正する2つのリスクが考えられる。欧州債務問題と第3次補正の執行の遅れである。 [稲田義久 KISER所長・マクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学] 米国 未だ悲観的なメッセージを送り続けるバーナンキ連銀議長 グラフに見るように、景気は10月はじめから回復をしており、11月11日の超短期予測では今期(10-12月期)の実質GDP伸び率が+3.1%にま で達していることが示されている。その他の実質アグリゲート指標(総需要、国内需要、最終需要)も同じように10月はじめから上昇トレンドにあり、それら の成長率はいずれも2%〜3%の範囲となっている。インフレ、デフレへの懸念は全くなく、ヘッドラインインフレ、コアインフレも1%〜2%の範囲にある。 米国経済は堅調な回復を示している。 しかし、バーナンキFRB議長は未だ悲観的なメッセージを市場・人々に送り、異常なゼロ金利政策の維持、更なる量的金融緩和の正当性を求めようとしてい る。11月10日のテキサス郊外の米軍基地におけるタウンホールミーティングでバーナンキFRB議長は次のように言っている。「FRBは失業率を引き下げ ることに専念する。欧州財政危機がグローバルな経済ショックになる可能性がある」、また「多くの人々が今のリセッションが永久に終わらないと感じているこ とを私は知っている」と。バーナンキFRB議長は今の失業の多くが彼の言うような循環的なものではなく構造的なものであることを認めるべきである。実際に 求人数の水準は今ではリセッション前の水準にまで戻っているが、求人と職を求める人々の間でのミスマッチが非常に多い。 FRB議長に求められているのはマスメディアのような欧州財政危機のグローバル危機への発展予測・懸念ではなく、米国がそれを避けるために何をしている か、また欧州危機の米国経済への影響をどのように最小にすべきかの話である。バーナンキ議長自ら、今のリセッションが永久に続くと言う感覚を示せば、彼は いままで何をしてきたのだろうかと市場・人々は思う。市場がFRBへの信頼性を失うことは間違いない。政策当局者にとって大事なことはリセッションや金融 危機を予測することではなく、それらを避け、経済を望ましい状況にもっていくことである。その為には、正確に経済動向を分析し、できるだけポジティブな メッセージを市場・人々に送ることである。実際、米経済の回復は堅調になっているが、FRBはこれを見逃している。経済政策当局者は"Pessimism Never solves any problem"と言うことを忘れてはならない。 [ 熊坂有三 ITエコノミー]
熊坂 侑三

インサイト

今月のエコノミスト・ビュー(2011年10月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2011-10-18

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

米国やEUの政治的な機能不全(Japanization)や政策失敗リスクの高まりに加え、連日の悪い経済ニュースでマーケットは混乱している。著名な 経済学者や多くのエコノミスト達は世界経済が不況に陥る可能性が急速に高まっており、リーマンショックのような大不況再来となる可能性もあるとコメントし ている。 特に米国とEUの不況入りの確率は高いとみられている。市場の不確実性が急速に高まり、これが金融機関、企業、消費者の態度を用心深くさせているからだ。 ただ景気の落ち込みは深くはないであろう。何故なら在庫が大幅に積み上がり資本設備の過剰感が急速に高まるとい状況ではないからだ。7-9月期については 米国やEU経済はマイナス成長を避けることができよう。今月の米国経済超短期予測が示すように緩やかな回復の可能性が高まっている。にもかかわらず、市場 の不確実性が急速に高まることから(各経済主体の用心深さが高まり)、数ヵ月後には米国、EU経済は不況入りすると予測されている。というのも、米国では 雇用の増加トレンドが大きく減速しており、この結果、消費者心理は過去30年で最も以上の低い水準にまで落ちている。これは民間消費にとっては強力な逆風 である。また足下(9月)のEUの製造業購買担当者景況指数(PMI)は50を割り込んでいる(不況を意味する)。このような経済ニュースは市場の不確実 性を高め、加えて、緊縮財政と欧州債務問題、エネルギー価格の高止まりが、米国とEUの金融機関、企業、家計の行動を押し並べて圧迫するからだ。 このような理由で米国とEU経済の不況入りの見方が高まっている。その確率をイメージ的に示せば、緩やかな景気回復の可能性が50%を下回り、不況入りの 確率が50%を上回っている状況といえよう。また不況入りの確率のうちリーマンショックのような厳しい不況の確率は高くはないものの徐々に高まってきてい るのが特徴といえよう。 一方良いニュースは、日本経済はサプライチェーンの復旧による輸出・生産の回復と今後の補正予算の効果で比較的高い成長が期待され、中国やその他アジア経済では減速するものの引き続き高成長が期待されることである。 世界経済の先行きは今しばらく混乱の時代となろう。今月の米国超短期予測コラムが述べているように、中央銀行は限られた政策手段の中、市場・消費者とのコミュニケーションを上手くすすめ、市場の用心深さを反転させ、景気回復を本格化させることが重要である。 [稲田義久 KISER所長・マクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学] 日本 <足下は急速な景気回復、先行きは厳しさを増す> 10月3日発表の日銀9月短観によると、サプライチェーンの復旧による輸出・生産の回復と地デジ移行前の駆け込み需要により、企業の景況感は前回調 査から大きく改善した。最も注目される業況判断指数(DI)は、大企業製造業で+2となり、前回調査から11ポイント大幅改善した。また大企業非製造業 DIも前回から6ポイント改善し+1となった。一方、中小企業の業況判断DIは、製造業で-11と前回調査から10ポイント、非製造業では-19と前回か ら7ポイントそれぞれ改善した。経済活動水準はほぼ震災前に戻りつつあり、今回の落ち込みは東日本大震災による一時的な落ち込みであることを調査結果は示 唆している。ただ景気の先行きについては、これまでの復興事業は遅れており、超円高の定着、加えてグローバル経済の減速懸念が高まっていることから、企業 は比較的厳しい見方をしている。 超短期予測の足下の見方は9月短観の見方と整合的である。今週の(支出サイドモデルによる)予測では、7-9月期の基礎データのうちほぼ8月までの分が更 新されている。その結果、7-9月期の実質GDP成長率を、内需は引き続き拡大し、純輸出も増加に転じるため前期比+1.4%、同年率+5.9%と予測す る。また10-12月期の実質GDP成長率を、内需は引き続き拡大するが純輸出は縮小するため、前期比+0.6%、同年率+2.5%と予測する。この結 果、2011暦年の実質GDP成長率は-0.4%となろう。ちなみに、市場コンセンサス(ESPフォーキャスト10月調査)は7-9月期同+5.33%、 10-12月期同+2.30%である。 実際、7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.7%と比較的堅調である。実質民間住宅は同+8.2%、実質民間企業設備は 同+1.9%増加する。実質政府最終消費支出は同+0.6%、実質公的固定資本形成は同+3.2%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期 比+1.4%)に対する寄与度は+1.3%ポイントと内需の貢献が大きい。 一方、財貨・サービスの実質輸出は同+5.4%増加し、実質輸入は同+5.9%増加する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度はプラスに転じるものの+0.2%ポイントと小幅にとどまる。 一方、主成分分析モデルによれば、7-9月期の実質GDP成長率を前期比年率+5.8%と支出サイドモデル予測とほぼ同じ結果となっている。ただ 10-12月期については同-0.1%と支出サイドモデルより厳しい予測結果となっている。このよう、支出サイド、主成分分析、両モデルとも、先行きにつ いては景気の減速を予測している。先行きについては、第3次補正予算、超円高、グローバル経済の動向が重要で、予断を許さない状況となっている。 [[稲田義久 KISER所長・マクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <緩慢な景気回復を示し始めた米国経済> グラフに見るように、景気は7月の半ばから8月の半ばまで急減速し、市場もリセッションを懸念しはじめた。今もって、かなりのエコノミストがダブル ディップ・リセッションを懸念している。しかし、超短期モデルでは支出サイドから予測した実質GDP成長率が7月半ばから8月半ばに底を打ち、その後上昇 トレンドを形成している。更に、所得サイドから予測した実質GDP成長率も約1ヵ月遅れで底を打ち、その後同じように上昇トレンドを形成し始めた。これは 超短期モデルによる典型的な景気回復の(予測)パターンである。 10月14日の超短期予測では、支出サイドからの7-9月期実質GDP成長率(前期比年率)が2.2%となったことから、10月27日に発表される同期の 実質GDP成長率(速報値)が2%を超える可能性もでてきた。実質総需要、国内需要、最終需要の予測も9月半ばから上昇トレンドを形成し、景気が底を打ち 回復し始めたことを示している。しかし、今週の超短期予測ではそれらの成長率は1.0%−2.0%の範囲にあり、極めて緩やかな景気回復と言える。すなわ ち、リセッション懸念は薄らぎ、景気はポジティブなモメンタムを示し始めたことを、超短期予測は示唆している。 このように景気が緩やかに回復し始めたものの、消費者心理は非常に弱い。10月14日に発表されたミシガン大学の消費者センチメントの期待指数は過去30 年以上の低い水準にまで落ちている。それゆえ、FRBはこの景気回復のモーメントをうまく捉え、市場と消費者にうまくコミュニケートし彼らの景気回復への 信頼を高めることが必要である。バーナンキFRB議長は10月4日の上下両院の合同経済委員会における「景気見通しと最近の金融政策」の証言において"景 気回復が"close to faltering"とコメントをして、景気回復に非常に悲観的な見方を示した。10月12日に公表されたFOMC議事録をみても、FRBはこれ以上景気 が悪くなった時の対策を議論している。今、FRBにとって大事なことは市場と消費者に景気回復への信頼感を高めるためのコミュニケーションをうまくとるこ とである。例えば、バーナンキ議長はすぐにも"close to faltering"の見方を打ち消し、“緩やかながらも景気は回復し始めた”と訂正することである。すぐに、ハロウィン、サンクスギビング、クリスマス とホリデーシーズンに入るのであるから、FRBはこれまでの景気への悲観的な見方から注意深い楽観的な見方に転じ、市場・消費者とのコミュニケーションを 上手くすすめ、ゆっくりと始まった景気回復を本格化させることである。 [ [熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のエコノミスト・ビュー(2011年9月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2011-09-14

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<米国財政政策が制約される中でQE3への高まる期待> 米国発の経済ニュースが続いている。基本的には失業率が顕著に低下しない状態が続き、財政政策も金融政策も手詰まり感がある中、種々のニュースに市場が一喜一憂して、株価や為替レートが上下に変動しているのである。 国債発行額の上限引き上げの問題が、しばらくは焦点となった。これは何度も実施されてきたルーチンに近い手続きなのだが、共和党が下院多数派を握ってお り、オバマ政権を追い詰めてみせようとしたために大問題となった。「小さな政府」志向が極度に強い茶会グループが無視できない勢力となり、共和党中枢部が 容易に妥協できなかったという事情もあった。オバマ政権は譲歩するしかなく、中期的に財政支出を大幅削減することを約束した。 この騒動から、クリントン政権が第一期の中間選挙に負けた後、ギングリッチの率いた下院共和党と鋭く対立した時期が想起させられた。雇用なき回復が続い ていたし、クリントンは大統領就任直後の諸立法に失敗を重ねていた。ギングリッチは「アメリカとの契約」を提示して、議会主導で政策を推進しようとしたの である。この対立の中、予算が不足し連邦政府の部分閉鎖が実施された。ビザ審査や統計作成などの担当者は出勤を止められた。しかし、共和党の強硬路線はむ しろ国民の批判を招き、クリントンは再選されることとなった。オバマはこの再現を狙っているだろう。 財政政策が制約されたので、金融政策に注目が集まった。昨年秋に始まった量的緩和政策(QE2)が予定通りに終了していたので、その次(QE3)が期待 されたのである。QE2を予告したのと同じ、夏のジャクソンホール会議でのバーナンキFRB議長講演に、注目は集まった。QE3の予告はなかったが、まだ 緩和策はあることを訴え、9月の金融政策決定会合(FOMC)を2日間に延長して、政策を検討すると約束した。金融市場はこれでも好感して反応した。 ただし、ゼロ金利に直面した後の金融政策の有効性については、疑問が投げかけられている。日本では、ゼロ金利継続のコミットメントを行い量的緩和も実施 したが、長期金利は低下し金融システム安定に貢献したものの、マクロ経済への効果は限定的だという見方が大勢なのである。株価を高めて、マクロ経済にもプ ラス効果があったという少数意見もある。 米国のQE2に対しても評価は割れている。ジャクソンホール講演から政策実施までの間、株価は上昇しドルは減価した。顕著な緩和効果であった。しかし、政 策実施後に大した効果はみられていない。ましてや、失業率はほとんど低下しなかった。そこで、FRBはゼロ金利を来年半ばまで継続するというコミットメン トを8月のFOMCで導入することとした。 そして、市場は次(QE3)を求めているのである。オバマも、きつい制約の下だが、雇用対策を打ち出した。財政政策にそれなりの即効性は期待されるが、バ ランスシート調整が続く中では拡張策の継続が必要となるので、赤字問題が再燃する可能性が高い。金融緩和については、昨年のようなデフレ懸念は沈静化して おり、むしろインフレ懸念が高まりつつあるので、QE3導入にはためらいがある。しかし、中期的なインフレ期待が2%近い水準に維持されている間に思い きった緩和策を実施することが、米国経済の停滞からの脱出に有効なのではないだろうか。日本とは異なり人口の伸びもプラスであって、マクロ経済の自然成長 にも期待できるので、量的緩和の有効性も異なるであろう。 [地主敏樹 マクロ経済分析プロジェクト委員 神戸大学大学院] 日本 <7-9月期5%を上回るプラス成長だが、先行き世界経済の減速がリスク要因> 9月9日発表のGDP2次速報値(QE)によれば、4-6月期の実質GDP成長率は前期比-0.5%、同年率-2.1%となり、1次速報値(前期比 -0.3%、同年率-1.3%)から0.8%ポイントの下方修正となった。修正幅は想定の範囲内であり、現時点で先行きの見通しに大きな変化はない。 実質GDP成長率下方修正の主要因は、民間企業設備、民間企業在庫品増減である。民間企業設備は1次速報値の前期比+0.2%から同-0.9%へと下方修 正された。2次速報値推計の基礎データである法人企業統計調査の低調な結果を反映したものである(全産業ベースの企業設備投資は前期比-6.6%と3期連 続のマイナス)。また法人企業統計調査の結果により民間企業在庫品増減も、1次速報値の前期比+0.3%ポイントの寄与度から2次速報値では同+0.1% ポイントに下方修正された。両者で実質GDP成長率の下方修正幅(前期比で-0.2%ポイント)のうち0.3%ポイントを説明している。 今週の予測では、7月の多くの月次データが更新され、また4-6月期GDP2次速報値が追加された。この結果、支出サイドモデルは、7-9月期の実質 GDP成長率を、内需は引き続き拡大し、純輸出も増加に転じるため前期比+1.5%、同年率+6.0%と予測する。一方、10-12月期の実質GDP成長 率を、内需は引き続き拡大するが純輸出は横ばいとなるため、前期比+0.7%、同年率+2.9%と予測する。年後半堅調な回復に転じるが前半のマイナス成 長の結果、2011暦年の実質GDP成長率は-0.3%となろう。ただ先行き世界経済の減速が気になるところである。 7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.7%となる。実質民間住宅は同+7.0%、実質民間企業設備は同+1.6%増加する。 実質政府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同+6.2%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+1.5%)に対する寄 与度は+1.1%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同+5.7%増加し、実質輸入は同+4.8%増加する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.4%ポイントとなる。 主成分分析モデルは、7-9月期の実質GDP成長率を前期比年率+6.4%と予測している。また10-12月期を同-0.4%とみている。この結果、支出 サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、7-9月期が+6.2%、10-12月期が+1.2%となる。図からわかるように両モ デルによる7-9月期の予測は収束しており高い成長率が期待できるが、先行きは減速のリスクが高まっている。 [[稲田義久 KISER所長・マクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <長すぎる低金利政策の末に陥ったFRBの金融政策不足> 9月8日のバーナンキFRB議長のミネアポリスでの講演、同夜のオバマ大統領の雇用創出プログラムにも市場は反応せず、景気回復への悲観的な見方を強めて いる。そのために、FRBは9月20-21日のFOMCミーティングにおいて何らかの景気刺激策を求められている。しかし、長期にわたって異常なゼロ金利 政策を続け、バランスシートを拡大してきたFRBにとって有効な景気回復策はあまりない。 考えられるのは、第一にQE3、第二にオペレーションツイスト、第三に法定準備預金への金利の削減である。しかし、QE2が有効に働いていれば、QE3は 不必要なはずである。オペレーションツイストに関してはすでに、セントルイス連銀のジェームス・バラード総裁がその有効性を否定している。まして、金融政 策で金利スプレッドを操作すれば、通常金利スプレッドを通して送る経済・金融状況の市場へのメッセージを歪めることになる。また0.25%の法定準備預金 への金利を下げたところで、どの程度金融機関が貸し出しを増やし、景気が刺激されるかも不確実である。すなわち、すでに長期金利は十分に低い。フィラデル フィア連銀のチャールズ・プロッサー総裁が「雇用創出にもはや金融政策は多くをできない」と言っているのは正しいだろう。FRBは2009年7-9月期以 降の景気回復の中で、出口戦略を一度もとらずにバランスシートを拡大してきた。その末に陥ったのはFRBの政策不足である。これは、Benjamin M. Friedman教授の“The Moral Consequences of Economic Growth”に例えれば、“The Moral Consequences of Monetary Policy”ともいえる。 9月20-21日のFOMCミーティングで、FRBが単なるアナウンスメント効果のみだけの政策を発表し、それが実体経済を刺激するのに有効的でないことを市場が見抜けば、FRBは金融政策を実行するにあたって最も重要な市場からの信頼性を失うことになる。 今週の超短期予測によれば、7月の輸出が前月比で3.6%と大幅に伸びたことから、需要サイドからの実質GDP成長率予測(2011年7-9月期)は 2.25%にまで大幅に上方修正された。8月の輸出入価格、生産者・消費者物価指数、小売販売を更新すれば、グラフにみる支出・所得サイドからのGDP ギャップが小さくなるだろう。両サイドからの実質GDP成長率が0.7%にまで回復し、少なくとも7−9月期のマイナス成長は避けられるであろう。しか し、超短期予測によれば、その他の実質アグリゲート指標(総需要、国内需要、最終需要)の伸び率は前期比年率0.0%〜1.5%となっており、米経済回復 が脆弱なことは確かである。 [ [熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のエコノミスト・ビュー(2011年8月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2011-08-22

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<国債の格付けを考える> 8月5日、米国格付け会社のスタンダード&プアーズ社(以下S&Pと略す。また本文中で示される格付けは、全てS&Pによる格付けであ る)が、米国債の格付けを最上位の「AAA」から「AA+」に一段階引き下げた。これは史上初のことであり、金融市場は混乱している。米国は世界一の大国 であり、米ドルは世界経済の基軸通貨である。今その米ドルの信認が大きく揺らいでいる。「世界一安全な金融資産」と考えられてきた米国債の格下げが世界経 済に与える影響は小さくない。格付けは信用リスクを示す一指標に過ぎないが、マーケットが判断材料にする以上無視することはできない。 格付けにおいて最も評価を下げているのはギリシャ国債である。2011年に入ってから既に計4度、「BB+」から「CC」にまで、8段階も引き下げられている(以下、格付けはいずれも自国通貨建て長期国債、7月31日現在)。 日本国債の格付けは、現在、最上位から4番目のランクの「AA-」である。かつては日本国債も「AAA」であったが、2001年2月から2002年4月 にかけて3回にわたり格下げされ「AA-」となった。その後、小泉政権の下で行われた財政再建が評価され、2007年4月に「AA」に格上げされたが、今 年2011年1月に再び「AA-」に格下げとなっている。また4月には東日本大震災による財政負担増が懸念され、アウトルックが「安定的」から「ネガティ ブ」に変更された。 国債は無担保であるが、事実上、家計や企業の担税力を担保に発行されている。すなわち国がデフォルトの危機に瀕した場合には、企業に対して増税してファイナンスするという手段がある。このため、国債の格付けは原則として国内事業会社の社債格付けの天井になる。 国内の社債の格付けに目を転じると、大震災の補償が巨額になることを受けて東京電力の格付けが大幅に下げられている。また東電以外の電力会社の格付けも原 発の稼働率低下による業績悪化から低下傾向にある。債券の格付けは国や企業の信用リスクのみを見ており、成長力や社会的評価などは見ない。例えばソフトバ ンクの社債の格付け(BBB-)よりもNTTドコモの社債の格付け(AA)の方がはるかに高い。 さて、日本国債の格付けは、政府債務残高対GDP比率からすると、むしろ高い格付けで踏みとどまっているようにも思える。2011年の日本の同指標は 212.7%にも達し、OECD加盟国中最悪である(数値はOECD Economic Outlook 2011による)。前述のギリシャの同指標は、157.1%と日本よりも低い。これは、日本国債が、潤沢な国内貯蓄によってファイナンスされていることが 大きな安定要因となっているためである。また、消費税率が低く増税の余地がある、と見られているとも考えられる。IMFは日本に対して、財政再建のため消 費税率を15%にまで引き上げることを要請している。 国債が格付けされることは国民経済全体としての担税力の評価に加え、国の財政運営力も格付けされることを意味する。国が財政再建の道筋を明確に示すことが国債格付けの改善にもつながり、国内企業の信用力の天井を高めることになろう。 [高林喜久生 マクロ経済分析プロジェクト主査 関西学院大学] 日本 <7-9月期経済は内需と純輸出が拡大し5%を上回るプラス成長> 8月15日発表のGDP1次速報値によれば、4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率-1.3%となった。3期連続のマイナスであるが、市場コンセンサ ス(ESPフォーキャスト8月調査:前期比年率-2.80%)を上回る結果となった。最終週における超短期モデル(支出サイドモデルと主成分分析モデル) の平均成長率予測は同-2.5%と市場コンセンサスに近かった。うち、支出サイドモデル予測は同-1.0%、一方、主成分分析モデル予測は同-4.0%と なった。われわれが重視している支出サイドモデルの予測値はほぼ実績と同じ結果となった。 グラフ(予測動態)からわかるように、震災の影響が色濃い4月データが更新された6月初旬の超短期予測は、4-6月期の実質GDP成長率を前期比年率 -6%台と予測していた。しかし、5月のデータが更新された6月下旬から7月初旬にかけて、予測は-4%台に上方修正された。以降、超短期予測は明瞭な アップトレンドを示し、6月データが出そろう8月初旬にはマイナス幅は大きく縮小した。四半期ベースでは3期連続のマイナスだが、月次ベースでみれば 3〜4月の大幅な落ち込みは、5月以降に明瞭に持ち直しに転じている。このことから、日本経済は5月に震災の落ち込みから反転したといえよう。 4-6月期のGDP1次速報値を反映した今週の超短期予測(支出サイドモデル)は、7-9月期の実質GDP成長率を、内需は引き続き拡大し、純輸出も増加に転じるため前期比+1.3%、同年率+5.2%と予測する。また10-12月期の実質GDP成長率を、内需の拡大幅は縮小するが純輸出は引き続き拡大するため、前期比+0.5%、同年率+2.1%と予測する。この結果、2011暦年の実質GDP成長率は-0.3%となろう。 7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.1%となる。実質民間住宅は同+0.2%、実質民間企業設備は同+3.7%増加する。 実質政府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同+5.5%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+1.3%)に対する寄 与度は+0.9%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同+6.5%増加し、実質輸入は同+5.6%増加する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.4%ポイントとなる。 このように、日本経済は年後半にかけて内需の拡大、純輸出のプラス反転により、景気回復のモメンタムは非常に強いといえよう。10兆円程度と想定される3次補正予算の今後の効果にも期待が持てる。これに対して、ダウンサイドリスクは、世界経済のスローダウンによる輸出の減速、電力供給制約を回避(原発停止分を火力発電で代替する)するための燃料輸入の追加的増加が懸念される。追加的な燃料輸入は年3兆円を上回ると予測(第88回景気分析と予測を参照)されており、今後、純輸出の減速・反転が要注意である。 [[稲田義久 KISER所長・マクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <米経済のリセッションリスクは政策当局にある> グラフ(米国経済超短期予測の動態)からわかるように、超短期予測は7-9月期における景気のスローダウンを予測し、FRBによる今年前半の景気の一時的 なスローダウンという見方を楽観的とみていた。実際に、8月9日のFOMC声明で今の景気のスローダウンが連銀の当初予想していた経済成長率よりもかなり 低いことを認めた。今度は逆に2013年中頃までのスローな経済動向を予想し、今までの異常な低金利をこの先約2年も継続することをこのFOMC声明で言 及している。経済というのは、常にジグザグに動きながら、一定のトレンドを形成していく。すでに、数回あった出口戦略の機会を見逃してきた上に、今度はこ の先2年間の金融政策の自由度を狭めてしまった。同グラフに見るように、7-9月期の景気は確かにスローダウンしてきたが、7月の中頃から上昇トレンドに 転換している。現時点の実質GDP伸び率は需要・所得両サイドの平均実質GDP成長率伸び率は前期比年率‐1.0%程度であるが、その他の実質アグリゲー ト指標(総需要、国内需要、国内購入者への最終需要)はGDPと同じように、7月半ばから上昇トレンドに転換し、今の時点ではそれらの指標は 1.5%〜3.0%の伸び率になっている(グラフ「実質アグリテート指標の予測動態」参照)。 8月2日の米債務上限引き上げ法案が成立した後、米経済への楽観的な見方が生じるはずであった。しかし、民主・共和党のリーダーシップの欠如から、政治家 はほとんど恒例とも言える債務上限引き上げ法案を来年の選挙目的に利用した。このことから、米国債のデフォルト懸念が声高に強調されるようになり、米経済 があたかもギリシャ経済、イタリア経済と同様と市場は捉えるようになった。今回の債務上限引き上げ法案に対する政治家のリーダーシップの欠如は、今後の財 政政策からの景気刺激策を非常に難しいものとしてしまった。 現状、実質GDPでみた米国の経済成長率は低いが、自律的な回復基調にある。しかし、リセッションへのリスクは財政・金融当局の政策に対する自由度の喪失 である。更に、最近では著名なエコノミストがやたらにダブルディップリセッションを懸念する傾向にある。正直言って、この1,2年の彼らのダブルディップ リセッション懸念は外れているが、彼らの市場に与える心理的な影響は大きい。エコノミストの仕事はリセッションを予測することではなく、リセッションを回 避する方向へ導くことにあるのだが、何故か悲観的なコメントをするエコノミストが多くなった。一つには、リセッション予測が外れても、あまり責められるこ とはないからだろう。 [ [熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のエコノミスト・ビュー(2011年7月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2011-07-13

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

地域のことは地域が責任と権限を持つ「地域主権」を確実なものとするため、国においては地域主権戦略会議が設置(平成21年11月)され、明治以来 の中央集権体質から脱却し、新たな役割分担に向けて、検討が進められてきている。こうした中、関西の自治体が全国に先駆けて立ち上がり、平成22年12月 に府県レベルでは全国初の組織「関西広域連合」が誕生した。関西広域連合は、関西全体の広域行政を担う責任主体を確立し、地域の自己決定、自己責任を貫け る分権型社会を実現することを目指しており、当然、産業振興面においても、新たな広域産業行政の主体となるものである。 関西広域連合では、23年度末に向けて関西産業ビジョンの策定が進められている。これまでの産業施策では、広域施策は経済産業局等が担当し、各自治 体はそれぞれの施策を独自に推進するという形をとってきた。その結果、各自治体の政策はほぼ均質的であり、いわば、金太郎飴のような状況となっている。各 自治体のポテンシャルを最大限生かすという明瞭な政策体系にはなっていないのである。 そのような状況下、今なぜ広域連合を推進しなければならないのか。この背景には、この20年日本の所得(名目GDP、すなわち各産業の付加価値の合 計)が減少してきているという厳然たる事実がある。結論を言えば、日本はこの間付加価値を高めるビジネスモデルの創出に失敗してきたのである。ITグロー バル下の「要素価格均等化」に抗するビジネスモデルの導入とそれを促す政策が着実に実現されてこなかったことが原因といえよう。もう一つの原因として、 マーケットの縮小に対して適切な対応ができていなかったことも挙げられる。以上は日本全体の競争力低下の原因として指摘したが、この問題は関西にもそのま ま当てはまる。 経済活動は自治体の枠を超えて、関西地域、全国、アジア、世界へと広がっている。今後確実に進展する人口の大幅減少や激化する国際的な地域間競争下 において、関西産業の国際競争力を強化していくためには、関西広域連合は構成府県間のみならず、国や他の自治体、産学との協力と創造による “シナジー(相乗)効果”を発揮し、関西が国内外から認知される広域経済圏(メガ・リージョン)を形成していくことが不可欠と考えられる。自治体間でパイ を奪い合うのではなく、地域全体でパイを大きくしてこそ関西発展につながるのである。産学をはじめとした関係機関とも適切な役割分担と密接な連携を行い、 文字通り「オール関西」により、目指す将来像の実現に向けて取り組んでいかなければならない。 なおグローバルな地域間競争下での関西経済発展に向けた政策を論じる際のキーワードは、(1)ブランド化、(2)海外所得の取り込み、(3)人材の 育成・活用、(4)広域連携の推進である。この点については、2011年度版『関西経済白書』第6章において展開している(9月発刊予定)。 注:関西広域連合は、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、徳島県の7府県により構成されるが、「産業振興」事務については、鳥取県を除く6府県が参加する(平成23年7月現在)。 日本 <4-6月期経済はマイナス成長だが4月には底を脱する> 今回(7月18日)の予測では、一部の6月データとほとんどの5月データが更新されている。予測結果は、サプライチェーンの混乱が想定を上回るス ピードで改善していることを示唆している。今月の支出サイドモデルは、4-6月期の実質GDP成長率を、内需はほぼ横ばい、純輸出は大幅に縮小するため前 期比-1.1%、同年率-4.1%と予測する。先月(6月20日)の予測(-7.8%)から3.7%ポイントの上方修正となっている。先月の予測は、4月の実績と5-6月の時系列モデルの予測からなるものであったが、今回の予測は、4-5月の実績と6月の予測から推計されている。したがって、上方修正は5月の実績と予測の差から来ており、足元の回復のスピードは予想を大幅に上回るペースで推移していることがわかる。ま たグラフ(予測動態)からわかるように、ほぼすべての4月のデータが更新された6月の半ばの予測は景気がすでに底を打っていることを示している。すなわ ち、4月に景気は底を脱し上昇のモメンタムがついてきたことを示唆している。今後の注目点は、6月データの回復スピードである。特に、依然成長にマイナス の寄与度となっている純輸出の動向が気になる。21日に発表される6月の貿易統計の結果は要注意である。 先行き7-9月期の実質GDP成長率は、内需は拡大し純輸出のマイナス寄与度幅が縮小するため、前期比+0.5%、同年率+1.8%と予測する。先月の予測から小幅の上方修正にとどまっている。 4-6月期の民間需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比-0.6%となる。実質民間住宅は同-4.1%減少し、実質民間企業設備は同+0.6%増加 する。一方公的需要では、実質政府最終消費支出は同+0.6%、実質公的固定資本形成は同-4.3%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期 比-1.1%)に対する寄与度は+0.1%ポイントとほぼ横ばいである。 財貨・サービスの実質輸出は同-5.6%減少し、実質輸入は同+2.5%増加する。この結果、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は-1.2%ポイントとなる。 主成分分析モデルは、4-6月期の実質GDP成長率を前期比年率-4.4%と予測している。また7-9月期を同+1.4%とみている。この結果、支出サイ ド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、4-6月期が-4.3%、7-9月期が+1.6%となる。 [[稲田義久 KISER所長 マクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <4-6月期の成長率は1.0%〜1.5%〜景気回復のペースは更に弱まっている> 前月のこのコラムで述べたように、支出・所得サイドから予測された実質GDP成長率の乖離は5月の輸出入を更新することで収束し始めた。超短期予測 と大きく異なり、5月の輸出が前月比-0.6%と下落した一方、輸入は同+2.6%と大きく伸びた。その結果、純輸出が大幅に下方修正され、支出(需要) サイドからの4-6月期の実質GDP成長率(前期比年率)は7月12日の予測では前週の2.65%から1.0%にまで大きく下方修正された(グラフ参 照)。一方、所得サイドからの実質GDP伸び率はGDP価格デフレーターが下方に修正されたことから前週の0.99%から1.15%へと上方修正された。 グラフは7月13日(6月の輸出入価格、連邦政府支出)、14日(5月の企業在庫、6月の小売販売、生産者物価指数)、15日(6月の消費者物価指数、鉱 工業生産指数)の日々の超短期予測の結果を示している(超短期予測は通常は週次ベースで予測を行っているが、今回は日次ベースで行った)。このグラフか ら、4-6月期の実質GDP伸び率は1.0%〜1.5%と予測予想できる。この予測値は、市場のコンセンサスより幾分低い。超短期予測からみると、米経済 の回復力は1-3月期よりも4-6月期において、より弱まったといえる。 これに対してバーナンキFRB議長は景気の見方を7月13日の議会証言で次のように述べている。 - 経済は今もってソフトリカバリーを続けている。 - ここ数ヵ月経済はモメンタムを失っている。 - 経済成長に関して注意深くなるのは理解できる。 - 景気回復のペースは7-9月期以降速まるだろう。 - 我々は経済がどこに行こうとしているのか分からない。 FRBとしては、景気回復のペースが4-6月期に入り前期より更に弱くなっているが、かといってバランスシートは拡大しレバレッジ比率がリーマン ショック時のベアースターンズより悪い50を超えていれば、簡単にQE3の導入を明言することもできない。FRBは経済成長率が3%を超えた時に出口戦略 を始め、政策金利をこれまでに0.5%〜1.0%程度上げておけば、今の時点で0.5%の政策金利の引き下げができた。高い失業率に余りにもこだわり、出 口戦略を遅らせてきたことの付けが今に回っている。そのため、経済がどこに行こうとしているか分からないといいながら、7-9月期以降に景気回復のペース が速まるだろうと言わざるをえない。個人消費支出の伸び率(4-6月期)が前期比1.0%程度にまで落ちてきた今、7-9月期になって景気回復のペースが 速まるというのもおかしな話である。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2011年6月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2011-06-24

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

世界経済の見通しについて、足元の景気は一時的な停滞にとどまるという見方が増えつつあるが、先行きについては景気のダウンサイドリスクを強調する傾向 が高まっている。足元の見方の背景には米国と日本経済の下方修正があり、実際、4-6月期の日米の超短期予測はこの見方を支持している。 確かに先行きのダウンサイドリスクは高まりつつあるが、足元の停滞は二番底に陥るのではなく一時的な軟化(ソフトパッチ)にとどまろう。2011年後半 に日本経済は急速に回復するであろうし、米国経済も原油価格の軟化が続くことにより民間消費や設備投資を支え成長は年前半から幾分か加速するものとみてい る。 世界経済が直面するダウンサイドリスクとして、これまで3つの要因に注目してきた。(1)緊縮財政、(2)原油価格の高騰、(3)東日本大震災の影響で ある。世界経済にとって3つの逆風のうち(2)の要因は幾分緩和されてきたし、(3)のうちサプライチェーンの混乱も急速に改善されつつある。いまや主要 なダウンサイドリスクは、緊縮財政、債務問題に対する不確実性の高まりである。逆に、アップサイドリスクとしては、原油価格が低下することから家計のバラ ンスシート制約が緩和し、加えて企業の潤沢なキャシュフローから民間消費ならびに設備投資が堅調に推移することを指摘できる。 当研究所では日本経済の四半期予測を定期的に発表しているが、その際、外生変数として海外経済、特に、米国、EU、中国経済の動向に注目している。簡単に地域の見通しをスケッチしておこう。 米国経済:米国超短期予測が見ているように2011年前半の米国経済の成長率は2%程度の低成長にとどまるものと考 えられるが、景気の二番底(ダブルディップ・リセッション)は避けられよう。原油価格の低下でインフレが落ち着くことにより潜在的な需要(家計消費と企業 設備)が出てこよう。また輸出も期待できる。 EU経済:足元、EU経済にとって最大の試練はギリシャ問題である。短期的にはギリシャへの資金供与は見込まれる (すなわち、デフォルトは回避できる)が、長期的には資金の需給ギャップをどのように埋めるかの道筋は立っていない。金融機関のリスク許容度が低下した場 合は、景気へのダウンサイドリスクは高まる。 中国経済:最近の中国経済は民間企業部門ですでに軟化の兆しが見られる。不動産価格の過熱感は十分とは言えないが収 まりつつあり、5月の貨幣供給の伸びは2008年以来の低い値となった。しかし、同月の消費者物価指数でみたインフレ率は前年比+5.5%を記録し、政府 の目標値を上回っている。このため、すでに高い銀行の支払準備率は今後も引き上げられよう。一方で、工業生産や都市部固定資産投資は堅調である。そのた め、中国経済のハードランディングは避けられようが、年後半の経済は減速基調となろう。 日本経済は、2011年後半に輸出の供給制約が緩みまた復興需要の効果が出てくることにより、急速に加速するとみている。しかし、先行きのダウンサイド リスクが高まりつつあることから、輸出の供給制約が解消できたとしても、順調に輸出が成長のドライバーとなるとは限らないのである。(稲田義久) 日本 <4月データは反転回復を示すが、4-6月期経済は依然マイナス成長> 6月20日の予測では、多くの4月データが更新されている。データの多くは前月比でプラス反転して回復のスピードを速めているが、3月の落ち込みが大きいため水準は1-3月期平均より相当低いことに注意が必要である。 例えば、4月の鉱工業生産指数(確報値)は前月比+1.6%上昇し、前月の大幅落ち込み(同-15.5%)から反転した。しかし、4月の実績は1-3月 期平均よりなお9.0%低い。製造工業生産予測調査によると、5月の製造工業の生産は前月比+8.0%、6月は同+7.7%と引き続き増産が予想されてい るが、仮に実現しても1-3月期の水準を超えるのは7-9月期となろう。また設備投資動向を示す資本財出荷指数は4月に前月比横ばいとなったものの、 1-3月期平均より9.9%低い水準である。 家計消費の代表的な指標である消費総合指数は4月に前月比+2.4%と大幅上昇し、2ヵ月ぶりのプラスとなったが、震災の影響もあり1-3月期平均比 0.7%低い水準に留まっている。また4月の新設住宅着工数は前月比-1.1%と減少し、2ヵ月連続のマイナス。4月は1-3月期平均比-5.2%と減少 しており、足下住宅着工は下落傾向にある。 一方で、復興需要が期待されるところであるが、公共投資関連のデータもさえない。4月の公共工事(建設総合統計ベース)は前年比-9.3%と減少した。 13ヵ月連続のマイナス。季節調整値ベースでも3ヵ月連続のマイナスである。注意すべきは、東日本大震災の影響により宮城県の4月分が取りまとめられてい ないことである。このため政府は前年比を発表していない。4月の前年比はわれわれが仮に計算したもので、厳密には問題がある。建設総合統計における 2010年度の宮城県のウェイトは1.9%であるが、これを考慮しても、復旧・復興はまだまだこれからである。 このように内需の縮小、外需の大幅縮小のため、6月20日の支出サイドモデルは、4-6月期の実質GDP成長率を前期比-2.0%、同年率-7.8%と 大幅なマイナスを予測する。一方、7-9月期の実質GDP成長率を、内需と純輸出が小幅拡大するため、前期比+0.4%、同年率+1.4%と予測する。 4-6月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比-0.5%となる。実質民間住宅は同-5.2%減少し、実質民間企業設備も同-3.2%と 減少する。実質政府最終消費支出は同0.6%増加するが、実質公的固定資本形成は同-4.1%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比 -2.0%)に対する寄与度は-0.7%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同-8.1%減少し、実質輸入は同0.1%増加する。この結果、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は-1.3%ポイントとなる。 今後、5-6月のデータが更新されるにつれて4-6月期の実質GDP成長率は上方修正されマイナス幅が縮小してくるが、依然マイナス成長にとどまろう。 問題は7-9月期以降の回復のスピードが問題である。米国経済の低調、中国経済の減速傾向は、供給能力回復をドライバーとして輸出による急速な回復を期待 する日本経済にとって、ダウンサイドリスクを高めてきているといえよう。 [[稲田義久 KISER所長 マクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <4月の輸出入統計で米景気減速懸念が解消?> グラフ(4-6月期米国経済の超短期予測動態)を見れば、4月半ばまでは1-3月期の景気スローダウンの影響が見られ、その後景気が拡大に転じたものの 労働市場の改善が進まず、5月13日から6月3日の超短期予測は、市場、エコノミスト達が懸念したとおりの景気のスローダウンを示している。しかし、6月 9日に発表された4月の貿易赤字は、輸出が前月比+1.3%増加、輸入が同-0.5%減により、437億ドルへと3月の468億ドルから大きく改善した。 このデータにより米景気のスローダウン懸念が薄れ、エコノミストは4-6月期の経済成長率を上方に修正するようになった。確かに、超短期予測も4月の輸 出入を更新することによって、需要サイドからの同期の実質GDP伸び率を6月3日の前期比年率+0.9%から+3.9%へと大きく上方修正した。しかし、 所得サイドからの実質GDP伸び率の予測は6月3日の+1.0%から+0.4%へと逆に下方に修正されている。すなわち、支出サイドでは4月の大幅な純輸 出の改善が名目・実質GDPの上方修正をもたらしたが、所得サイドからの名目GDPは6月3日と6月10日のあいだではほとんど変化せず、輸入の大幅な減 少からGDPデフレーターが上方に修正され、その結果所得サイドからの実質GDPが下方に修正されたのである。 すなわち、支出サイドだけに注目すれば確かに景気のスローダウン懸念はなくなるものの、所得サイドをみればやはり景気のスローダウン懸念が残る。理論的 には支出サイド、所得サイドからのGDPは一致するわけであるから、今後の超短期予測では次のようなことが生じるだろう。 (1) 5月、6月の輸入が現時点の超短期予測より大きく伸び、支出サイドからのGDPを  下方に修正する。 (2) 6月の雇用がかなり改善し、個人所得が増加し所得サイドからのGDPを上方に修正  する。5月の雇用統計の上方への改定も考えられる。 (3) 5月の鉱工業生産指数、小売販売統計を更新することで法人所得が増加し、その結  果所得サイドからのGDPが上方に修正される。 この2週間の超短期予測からみれば、4-6月期野成長率は支出・所得の両サイドからの実質GDP伸び率の平均値の1.5%−2%程度(前期と同程度)が 妥当であろう。すなわち、ロバート・シラー教授が懸念しているようなダブルディップ・リセッションの可能性は極めて小さいと言える。しかし、単に4月の貿 易赤字の大幅改善により景気回復に楽観的になるのも問題である。景気の現状を正しく把握するには、常に支出・所得の両サイドをみることが重要である。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2011年5月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2011-05-23

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

今月のトピックスでも引き続き東日本大震災の問題を取り扱いたい。 気になるコラムがあった。日経新聞5月9日付の『景気指標』の「復興論議は現地直視から」である。コラムのヘッドラインが示すように、適切な震災に対する 政策は正しい現実認識から始まる。すなわち、「復興計画、復興財源の議論に参加するすべての関係者にはまず被災地を歩いて現実を自分の目で認識することを 勧めたい」としていることである。阪神・淡路大震災と比較して今回の震災は被害が広域に及ぶという点で大きく異なる。また被災県ごとに被害の内容が大きく 異なり、本当に必要な復興計画は地域ごとに多様なものになるのである。関西社会経済研究所ではまずはマクロ的な被害分析から始め、復旧・復興に向けての提 言を取り扱う予定であるが、上記コラムの指摘は我々にとっては喉に刺さるとげのようなものである。 このことは気になっていたがチャンスが巡ってきた。地震発生2ヵ月後の5月12日に関経連『震災復興対策特別委員会』(安藤圭一委員長)の東北ヒアリング 調査に参加させていただいたことである。宮城県を中心に一日で4箇所のヒアリングを行うことができた。強行軍ではあったが成果の多い調査であった。調査先 は、(1)物流、(2)製造業、(3)建設業、(4)政策金融と現状での復旧・復興状況を知る上でバランスのとれたものである。以下ヒアリングの結果を簡 単にコメントする。 【物流】 サプライチェーンの混乱については、自動車と電子機器について影響の大きさを伝える向きが多いが、食料などの流通保管のチェーンも大きな被害を受けてい る。最初の調査先は鴻池運輸仙台食品流通センターである。同センターは本震と4月7日の最大余震で事務所が使用不能となり、現在仮事務所使用中である。倉 庫は建物に大きな被害はなかったものの、中のラック、商品に被害がでている。特に、冷蔵設備の被災は商品に微妙な影響を与える。4月20日から通常業務を 再開したが、震災直後、道路は普通車でも通りにくい状態が10日間くらい続き、また停電が1週間続いたとのことであった。 福島県の相馬、岩手県の三陸沿岸などではまだ配送がストップしている。それ以外は通常通りに回復している。仙台では主要量販店の食品納入センターが多いエ リアが被害を受けた。7割くらい受入れ体制はできたものの、消費の落ち込みもあり、現在荷物量は震災前の4〜5割程度の回復にとどまっている。 【製造業】 第二の訪問先は段ボール製造のレンゴー仙台工場パッケージングディビジョンである。工場は仙台湾沿岸に位置しており地震発生1時間後に津波が襲った。津波 は社屋を抜けてあらゆるものを流したため工場は壊滅的で再開不能の状況にある。近隣には大企業の工場や配送設備が多くありダメージの大きい典型的な被災地 域である。ただ印象的であったのは、リーダーの判断の早さであった。レンゴーの工場移転については社長が従業員の意見も聞いて即断されたようである。内陸 部の工業団地に土地を即座に手当てし、結果的には雇用が現地で確保されることとなった。これは稀有な復興の一例である。 宮城県の復興については、宮城県と沿岸部の基礎自治体とで建築規制などの問題で意見がなかなか一致しないようである。理想と現実のはざまで、企業を現地に 残すことに苦慮している。湾岸地区以外にある8割の企業は年内再建と言っているが、湾岸地区の2割はまだ行方不明者がいて、再建の手前の状況である。 各社の段ボール需要をみると、復興は予想より早いが、マーケットではバラツキがある。宮城県は商業や水産業が多い。商業ではすでに荷動きの動きが見られるが、魚市場の復旧はまだ塩釜のみである。 【建設業】 宮城県の沿岸部の惨状を見て内陸部に移動すると、震災についてはかなり異なる印象を受ける。第三の訪問先は仙台市内の竹中工務店東北支店である。 今回は震災の特徴は地震そのものの被害よりも、津波による広範囲の影響が大きいことである。阪神・淡路大震災以降、地震への備えはしっかりしていたが、津 波に対しては十分でなかったようである。また、当時と異なるところは、景気回復につれ建築資材価格が上げ基調のところに今回の地震が起こっており、深刻な 状況ではないものの資材価格の高騰を懸念しているとのことであった。 復興をどういう方向に持っていくべきかについて意見交換をした。建築制限を6ヵ月としているが、被災市町村には職員も被災し、限られた期間内で復興の明確 な方向付けはなかなか厳しいとの印象を受けた。住居を高台に移せというのは現実性に乏しい、高さ5〜6メートルの防波堤とRC防災拠点を組み合わせるべき との意見も聞かれた。堅牢な建物を免震でつくるということが重要で、1000年に一度のため住居を移すより、避難して被害をミニマム化することが重要との 指摘もなされた。 建設業のサプライチェーンに問題はあるかについて聞いてみた。建設産業は、本来はエリアごとに分散した地場産業的なものだが、エレベーターなどはある部品 がないため復旧できない。エレベーターを設置できないことから、新築のビルにテナントが入れないという影響も表れているとのことであった。 広域連合の促進について質問したが、震災後連携を強める動きは出てきているがまだまだの印象を受けた。ただ観光については、夏祭りで東北はすでに連携はし ている。また復興院のような機能を仙台におくべきではとの質問に対しては、政府には現地でもっと現場を見てほしいとの意見があった。 【政策金融】 最後の訪問先は、日本政策金融公庫仙台支店である。大企業のみならず是非とも中小企業や農林水産業の状況を聞きたかったためである。 東京商工リサーチによれば、石巻、気仙沼の7割の企業が被害を受けており、鳴子、作並、秋保温泉では風評被害が出ており、震災以後予約が全部キャンセルになり先行きに不安を持っている。GWに客足は一時回復したが、その後また減少している。 同公庫によれば、管轄地域企業からの相談の3割が返済の相談、7割が融資の相談である。福島県のみが返済相談と融資相談の割合が半々となっており、同県で は原発の問題があり復旧・復興の遅れが目立つ。ちなみに、震災後の融資申込金額は平時の年間申込金額と同規模になっている。 沿岸部は企業の集積地で、同行の取引先の4割が被災した。経営者の再建への意志は高いものの、生産の大幅縮小を余儀なくされている。この結果いわゆる二重 債務問題が生じている。これに対して、国民生活事業については、ニューローンとリスケジューリングを並行してできるだけ対応しているが、それは今後の見通 しあるものが基本となる。 農林漁業者のマインドが変わって復興への意欲が出てきている。農業はすでに6次産業化の動きがある。企業参入、大規模化、農地が使えるまで植物工場を使う 動きもある。漁業はまだだが、それでも協同化など、かってない動きがある。6次産業化すると、資金管理、マーケティング等の必要が出てくるので、結局、復 興は人の問題(human capital)だということに尽きる。 漁業者の復活と水産加工業等の復活は車の両輪である。協同化して頑張ろうという動きがある。そのために冷蔵庫や作業場の共同化、大企業と中小企業の連携、 スーパーでの地産地消フェアなど、創意工夫がみられる。ただ、株式会社化は漁業権、農地法等で身動きが取れない状況でありブレイクスルーが難しい。株式会 社化より今ある三セク、農業公社を活用すべきとの意見も聞かれた。 以上、今回の宮城県を中心とした被災地調査では、はからずも冒頭紹介したコラムの忠告を確認するものとなった。たしかに、被害状況は多様であり、復興計画も多様でなければならない。重要なのは人の問題(human capital)であるとの印象が強かった。(稲田義久) 日本 <4-6月期には最悪期を脱するがマイナス成長> 19日発表のGDP1次速報値によれば、1-3月期の実質GDP成長率は前期比-0.9%、同年率-3.7%となり、2期連続のマイナスとなった。 実質GDP成長率は市場コンセンサス(ESPフォーキャスト5月調査:前期比年率-1.53%)を下回った。一方、最終週における超短期モデル(支出サイ ド)予測は同-0.1%となった。予測動態をみると、1-2月期の基礎統計(生産、小売、貿易等)は好調であったため、超短期予測は3月の後半(1-2月 期データが利用可能となる)では同5%を超える成長を予測していた。しかし、3月データ(震災の影響が出る)が入手可能となる4月半ば以降、明瞭なダウン トレンドを示し、1-3月期のデータが出尽くす5月には明瞭にマイナスの領域に入った。3月11日の東日本大震災のインパクトがいかに大きかったか容易に 想像がつく。 5月20日の予測では、1-3月期GDP1次速報値と4月の一部のデータが更新された。その結果、支出サイドモデルは、4-6月期の実質GDP成長率を、内需は停滞し純輸出は大幅に縮小するため前期比-0.8%、同年率-3.1%と予測する。また7-9月期の実質GDP成長率を、内需は反転するが純輸出が引き続き縮小するため、前期比+0.1%、同年率+0.6%と予測する。日本経済は4-6月期に最悪期を脱し、7-9月期にプラス反転するであろう。 4-6月期の国内需要を見れば、民間需要では、実質民間最終消費支出は前期比-0.4%となる。実質民間住宅は同-4.7%減少し、実質民間企業設備も同 -1.9%減少する。一方、公的需要では、実質政府最終消費支出は同+0.8%、実質公的固定資本形成は同+5.1%となる。このため、国内需要の実質 GDP成長率(前期比-0.8%)に対する寄与度は0.0%ポイントとなる。 問題は純輸出である。ライフラインや生産ラインの復旧で最悪期を脱するが、依然として供給制約のため、財貨・サービスの実質輸出は同-4.5%減少する。 一方、実質輸入は同+0.4%増加する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は-0.8%ポイントと大きな成長制約となる。 主成分分析モデルは、4-6月期の実質GDP成長率を前期比年率-3.0%と予測している。また7-9月期を同+1.6%とみている。この結果、支出サイ ド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、4-6月期が-3.1%、7-9月期が+1.1%となる。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <二つの懸念〜景気スローダウンとインフレ〜> 2011年1-3月期の実質GDP成長率(前期比年率、速報値)は、超短期モデルの支出サイドからの最終予測値の1.7%とほとんど同じ1.8%となった。 この1.8%の経済成長率に対して、市場は"disappointed(失望的)"、政策当局は"sluggish(のろのろした)"成長率と解釈し、ほとんどの連銀エコノミストは異常な超金融緩和政策の出口戦略を実行することを考えていない。 一方、1-3月期のヘッドラインインフレーション(個人消費支出デフレータ:前期比年率)は3.8%とインフレを懸念すべき上昇率になっている。もちろ ん、連銀はコアインフレ(コアCPI)をまだ2%以下に安定しており、コモディティー価格の高騰などの影響をうけるヘッドラインインフレの上昇は一時的と の見方をする。しかし、生活者にとって重要なのは食料・ガソリンを購入しなければならないヘッドラインインフレーションである。 すなわち、今後の米景気を判断する上で大事なことは、(1)1-3月期における景気のスローダウンが"ソフトパッチ(一時的な景気のスローダウン)"だっ たのか、そして(2)ヘッドラインインフレーションは連銀の言うように一時的なものであり、将来の期待インフレは安定しているかにある。 グラフから米景気のスローダウンは4月半ばに底入れし、その後再び拡大に向かっていることが分かる。5月13日時点における実質GDP成長率は2%にまで 回復している。経済動向を実質総需要、実質国内需要、実質国内最終需要でみても、景気は4月半ばから拡大に転じ、それらの成長率は2.8%〜3.4%にま でなっている。すなわち、1-3月期の景気のスローダウンがソフトパッチであった可能性が高い。一方、超短期予測モデルによるヘッドラインインフレーション(4-6月期)は上昇トレンドにあり、3.8%と予測している。一方、コアインフレも2%に達するとの予測で、連銀のインフレ許容範囲の上限に達している。 最近、ミネアポリス連銀のNarayana Kocherlakota総裁は年末までに50ベーシスポイントの政策金利引き上げの可能性を示唆した。もちろん、今の連銀エコノミストにとっては想定外 の話しである。しかし、超短期予測を見る限り、Kocherlakota総裁の言うことはありえないことではない。ミシガン大学の消費者センチメント調査 に見るように、期待インフレ率は4.5%程度にまで上昇している。更に、出口戦略は政策金利を引き上げるというよりも、そもそも異常な金融政策を正常に戻 すということである。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2011年4月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2011-04-25

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

【被害推計について】 3月11日に東日本を襲った大震災被害の本格的な評価にはまだまだ不確実性が伴う。過去の経験によれば、大きな天災が発生した後、1-2四半期は経済にマ イナスの効果が出てくるが、復興が始まれば成長率は加速し、むしろプラスの効果をもたらす。これが過去の経験が教える平均的なパターンである。しかし、今 回のケースとは過去とは異なる側面が多々ある。マグニチュード9を超える大地震のみならず、大津波が東日本を襲い、その影響で原子力発電所が破損し、大幅 な電力供給不足を引き起こしたことだ。いわば複合的な天災(triple disaster)といえよう。 関西社会経済研究所では、被害推計を含めこれら一連の震災被害のマクロ経済的影響を順次評価していく予定であるが、まず東日本大震災被害の直接被害と間接 被害にわけて一次的な評価を行った。前月のトピックスでは間接的な被害推計の概要を報告したが、その後直接的な被害をも推計した。 改めて推計結果を要約すると以下のようになる。(1)ストック(住宅、社会インフラ、企業設備、自動車・船舶、流通在庫)に対する直接被害額は17.78 兆円となる。また(2)GDPに対する間接被害額は6.02兆円(GDP比1.2%)となる。関西GRPは2,698億円(関西GRPの0.3%)の損失 となる。震災の影響が半年としても日本経済(GDP)に与える影響は、0.6%〜0.8%程度と推計できる。ただし現時点では、原子力発電の被害の収束に 明確な見通しが得られないため、過去の経験が役に立たない。経済の回復パターンは後ずれする可能性が高い。 今後、被害の出方のポイントは、(1)電力供給削減による生産の減少がいつまで続くかである。それと、(2)原子力発電の安全管理の信頼喪失に伴う消費者 センチメントの低下が民間消費を大幅に長期にわたって減少させる可能性である。これは国内に限らない。風評被害ともいえる海外消費者の訪日旅行忌避や日本 製品輸入に対する過剰な反応がいつ終息するかは現時点では見極めづらい。また(3)生産の減少と風評被害は輸出に大きく影響する。 【復旧・復興の考え方は如何にあるべきか】 復興のビジョンについて菅総理は、自らの諮問機関である復興構想会議の五百旗頭議長に対して「元に戻す復旧ではなく、改めて作り出す創造的な復興策」を要求した。 復興に際しての基本理念は、(1)震災以前から人口減と産業の衰退に直面していた東北地方の単なる復旧ではなく新たな再生を目指すべきと思われる。そのた めにも、東北地方の復興ビジョンをまず明確にすべきである。今回の震災が第3次石油危機の性格を持つことから、エネルギー供給の安定化のみならず企業の弾 力的な生産編成を目指すべきであろう。(2)その際、東北地方の再生構想は東北の人びとに委ねるべきであるが、阪神淡路大震災では十分な実現を見なかった 分権型復興モデルを目指すべきである。(3)また分権型・広域型復興を実現するための先行モデルにすべきと思われる。今回の復旧に当たっては関西広域連合 が非常に有効な機能を果たしていることに注目すべきである。(4)そのためにも、関東大震災後に時限で設けられた復興院のようなものが必要であるが、歴史 的にうまく機能しなかった反省から総合行政機関とする必要があり、国のたて割型地域再生を復興に持ち込むことは避けるべきであろう。最後に、復旧・復興に 向けての基本的な考え方として、阪神淡路大震災の復興の過程で実現されなかった教訓を今回は活かされなければならないことを最も強調したい。 日本 <1-3月期の日本経済は震災の影響もあるがプラス成長を維持> 徐々に3月のハードデータ(景気ウォッチャー調査、消費動向調査、貿易統計)が発表されている。今週の予測では、3月の貿易統計が更新された。この結果、 支出サイドモデルは、1-3月期の実質GDP成長率を、内需は停滞し外需が小幅反転拡大にとどまるため前期比+0.3%、同年率+1.4%と予測してい る。前月の予測(+5.1%)から大幅に下方修正されており、このことは、1-2月期の経済が非常に強かったことを意味している。 また4-6月期の実質GDP成長率を、内需及び純輸出がともに縮小するため、前期比-0.5%、同年率-1.9%と予測している。今回はじめてマイナス成長に転じている。 超短期モデルではGDP項目を説明する月次データを時系列モデルで予測している。その予測月次データを四半期変換し、過去のGDP項目との関係を推計した ブリッジ方程式に代入することにより、先行き予測を行っている。時系列モデルの予測パフォーマンスは非常に優れているが、地震のような出来事は予測できな い。そこで3月データについては、消費総合指数と鉱工業生産指数についてのみ、以下のような方法で仮置きした。消費総合指数については、阪神淡路大震災の 起こった1995年1月の下落率を2011年3月の下落率とした。また鉱工業生産指数を電力供給量と就業者数で説明し、電力供給量の弾力性を推計した。こ れを用いて3月の予想電力供給量削減から鉱工業生産指数の下落幅を事前に予測した。 その結果、1-3月期の実質民間最終消費支出は前期比-0.5%となる。実質民間住宅は同+0.1%増加し、実質民間企業設備は同+0.3%増加にとどま る。実質政府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同-2.5%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+0.3%)に対す る寄与度は+0.0%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同+0.7%増加し、実質輸入は同-1.8%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.3%ポイントとなる。 一方、主成分分析モデルは、1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率+3.4%と予測している。また4-6月期を同-2.5%とみている。この結果、支 出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、1-3月期が+2.4%、4-6月期が-2.2%となる。 1-3月期については、マーケットコンセンサスは小幅のマイナス成長(-0.22%:4月ESPフォーキャスト調査)を予測している。しかし超短期モデル は、同期の日本経済を震災の影響もあるが小幅のプラス成長にとどまるとみている。本格的な震災の負の影響は4-6月期に出てくるものと思われる。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <いつまで続く連銀の超緩和金融政策> 4月7日に欧州中央銀行(ECB)は2008年の金融危機以降初めて政策金利を引き上げた。今後インフレが加速する傾向がみられれば、金融を引き締めてい くことを示唆したともいえる。しかし、3月15日のFOMCミーティングの議事録は政策担当者の間において意見の相違があることを示しているが、連銀は依 然としてこれまでの超緩和金融政策を転換する様子を示していない。 ダラス連銀のRichard Fisher総裁は“金融緩和政策をこれ以上長引かせれば、一時的に終わったかもしれないインフレ圧力を増幅するかもしれない”と言っている。リッチモン ド連銀のJeffrey Lacker総裁は“米経済は順調に回復しており、インフレ圧力が高まってきており、年末前に連銀が政策金利を引き上げる可能性もある”と言っている。し かし、Ben Bernanke連銀議長をはじめ多くの連銀エコノミストは“長期の期待インフレは安定しているし、今のコモディティー価格の高騰も安定化に向かうであろ う。それ故、今の(超)金融緩和政策は適切である”と考えている。更に彼らは“今の景気回復は脆弱であり、まだ今の金融政策を方向転換するわけには行かな い”と言う。クリーブランド連銀のSandra Pianalto総裁は4月7日のパリでの講演で、“今の米景気、インフレ状況をみれば、QE2を予定通り完了し、異常に低いフェデラルファンド・レート の目標値を長期間維持することが望ましい”と全く出口戦略などは考えていない。 連銀のハト派エコノミストはいたってインフレに対して楽観的であるが、ミシガン大学の消費者センチメント調査にみるように多くの消費者は物価上昇を日常生活の中で感じている。 グラフから、米景気回復のモメンタムが3月半ばから弱まっていることが分かる。4月28日には1-3月期のGDP1次速報値が発表されるが、同期の経済成 長率を超短期モデルは前期比年率2%〜3%と予測している。これは、1月、2月の悪天候によるソフトパッチ(景気の一次的な低迷)の状況かもしれないが、 連銀ハト派エコノミストにとって、超金融緩和策を継続させる都合のよい理由にはなる。4月末のFOMCミーティングで出口戦略が導入される可能性はまずな いだろう。しかし、連銀は将来のインフレ抑制に対してあまりに遅い行動から、インフレリスクが着実に高まっていることを意識すべきである 。この先、連銀とECBの相違がみられるであろう。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2011年3月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2011-03-18

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

このたびの東北地方太平洋沖地震による被災者の皆様には、心よりお見舞申し上げます。一刻も早い復興と皆様のご健康を心よりお祈り申し上げます。 3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震、津波、原発事故の日本経済に与える影響について本格的に答えるのは時期尚早である。しかし、過去の自然 災害や破壊的な事件(先進国の事例では、1995年の阪神淡路大震災、2001年の米国同時多発テロ、2005年ハリケーンカタリナ等)についての歴史的 知識の蓄積は、今回の大地震の起こりうる影響について示唆を与えてくれる。これらの典型的なパターンとしては、発生後1ないし2四半期に大きな影響が発生 し、しかも被害は被災地域に集中することである。ただ国民経済全体のレベルで見ると、経済成長率への影響は目立つものの通常はそう大きくはない場合が多 い。 しかし、今回、日本経済は短期的にも長期的にも大きなショックを受けることとなった。というのも、地震だけでなく、津波、原発事故も伴っており、影響は複雑であり損失は甚大である。日本経済・関西経済における影響を考える際に、以下のような論点が挙げられる。 (1) インフラ、家屋、工場等の直接的被害 (2) 労働力の喪失、工場等の操業停止、電力供給不足による生産の停滞とその影響の波及、パニック行動(風評被害・不要な買い溜め等)による物流の混乱等の間接的影響 (3) 急激な円高と株安の進行 (4) 関西経済への影響(関西に求められることを短期的・中長期的に考える) (5) 復興時における財政出動の規模と手法 今回は、レポートの第一弾として、(2)と(4)を中心に検討する。今回の地震で、直接的な経済損失が特に見られるのは岩手県、宮城県、福島県、茨城県 の4県である。4県の県内総生産額(名目)は32.3兆円であり、全国の6.2%を占める。下表では東北4県の各産業のシェアと特化係数を示している。特 化係数は、各県の産業シェアを全国の同産業シェアで除して求められ、産業構造の特徴を他地域と比較することができる。特化係数が1を越えていると全国より シェアが高いことになる(表では1.5以上の産業を網掛けしている)。4県とも農林水産業の係数が高く、宮城県を除く3県では食料品製造業の特化係数も高 い。 また下表は、特に被害の大きい市町村(以下では被災地域と呼ぶ)での生産規模を推計した結果である。ここでは、被災地域における従業者数の県全体に対す るシェアを算出し、これに各県各産業の生産額を乗じて、これを被害規模として推計した。被災地域の生産規模は総額8兆9,039億円となる。この金額は、 4県GRPの27.6%、全国GDPの1.7%に相当する規模である。これはすべての産業活動が1年間停止した場合に起こりうる被害規模である。先に見た ように、通常は発生後1ないし2四半期に大きな影響が発生するから、実際、その影響は全国GDPを0.5%〜0.8%程度削減することになろう。 震災の地域間への影響としては、地域間産業連関表による分析が有力である。実 際、地域間産業連関表(2005年ベース)によると、関西・東北間の経済取引額は約1.6〜1.9兆円である(地域間産業連関表での東北は青森、岩手、宮 城、秋田、山形、福島が含まれる。茨城県は関東に含まれる)。関西経済における東北経済のウェイトおよび東北経済における関西経済のウェイトは1〜3%程 度と、依存関係はさほど大きくない。東北における直接的な経済損失が各地域にどのような影響をもたらすか、地域間産業連関表の簡易分析ツールを用いた推計 結果を示す。ここでは簡単のために、茨城県の被害も東北地域に組み入れ、上述した被災地域の生産規模が全て東北地域で失われると考える。具体的には、東北 地域での消費・投資・輸出、および東北以外の地域での消費・投資における東北からの移入分について、それぞれ20%が喪失されると仮定する。なお20% は、東北6県と茨城県の生産額に対する被災地域の生産規模の比率である。 このとき生産額ベースでは全国で11兆7,200億円(全国生産額の1.2%)、関西で5,854億円(関西生産額の0.4%)の損失、付加価値ベースでは全国で6兆0,198億円(GDPの1.2%)、関西で2,698億円(関西GRPの0.3%)の損失となる。 以上われわれは、今回の東北地方太平洋沖地震の経済の与える影響を、インフラなどへの直接の被害を推計するというよりも、生産活動が停滞することからの生ずる滅失所得を2つの方法で推計した。直接の被害推計については不確実性が高く、今後の課題とする。 得られた結論を再掲すると、(1)被災地域の滅失所得の直接推計規模は8.9兆円となる。この金額は、4県GRPの27.6%、全国GDPの1.7%に 相当する規模である。(2)地域間産業連関表を用いた分析では、全国GDPでは6兆円(GDPの1.2%)、関西GRPでは2,698億円(関西GRPの 0.3%)の損失となる。所得が失われる期間が半年としても日本経済(GDP)に与える影響は、0.6%〜0.8%程度と推計できよう。 [稲田義久、入江啓彰] 日本 <1-3月期の日本経済は震災の影響もあるが高成長を維持> 今週の予測では、10-12月期のGDP(2次速報値)とほぼすべての1月のデータが更新されている。日本経済超短期モデルは、1-3月期の実質GDP成 長率を前期比+1.2%、同年率+5.1%と前回に引き続き高い成長率を予測している。また4-6月期については前期比+0.8%、同年率+3.4%と予 測している。 これら予測についての最大のリスクは、3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震の影響である(暫定的な日本経済や関西経済に与える影響試算については、 今月のトピックスを参照)。3月の月次データには影響が出てくるが、本格的な影響は4-6月期に表れる。現時点では4-6月期はプラス成長を予測している が、データが更新されるにつれて、マイナス成長の可能性は高まってくるであろう。 1-3月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.4%と好調である。1月の消費総合指数は前月比+0.6%、10-12月期平均 比+1.2%と大幅に伸びており、この影響を反映している。実質民間住宅は同+0.3%増加し、実質民間企業設備は同+2.9%増加する。実質民間企業在 庫品は1.481兆円と成長を押し上げている。在庫は情報通信機械、輸送機械、一般機械工業で上昇している。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公 的固定資本形成は同-0.2%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+1.2%)に対する寄与度は+1.0%ポイントとなる。 一方、純輸出をみれば、財貨・サービスの実質輸出は同+3.8%増加し、実質輸入も同+3.3%増加する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.2%ポイントとなる。 主成分分析モデルは、1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率+4.5%と予測している。また4-6月期を同+2.9%とみている。この結果、支出サイ ド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、1-3月期が+4.5%、4-6月期が+2.9%と堅調な回復を予測する。 超短期モデルは予測に関して個人的な恣意性を完全に排除している。東北地方太平洋沖地震のような突発的な影響を予測では捉えることはできない。月次データ にその影響が反映されて初めて予測の変化として実現する。ただ、先行指標であるサーベイデータなどにおける変化を用いて家計消費などのへの影響を推計する こともできる。今後は、超短期予測と併用して予測を行いたい。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 グラフにみるように、支出サイドと所得サイドの平均実質GDP伸び率は上昇トレンドを形成しており、米景気が堅調に拡大していることを示している。支出サ イドにおける実質GDPの伸び率が低いのは米景気拡大に伴い輸入が大きく伸びているためである。GDP以外の実質総需要、国内需要、最終需要でみても同じ ような上昇トレンドが形成されており、3月11日時点でこれらのアグリゲート指標からみた1-3月期の経済成長率は3%〜5%と堅調である。 このような景気拡大にもかかわらず、バーナンキ連銀議長は現在の非常に高い失業率からOutput Gap(需給ギャップ)が大きいと考え、これまでの異常なゼロ金利政策、QE2を継続していくように思われる。実際にそのように考えているいわゆる"ハト 派"の連銀エコノミストが多い。原油価格の高騰に対しても、大きな需給ギャップから、バーナンキ連銀議長はインフレ懸念を示していない。しかし、原油価格 による物価上昇はコストプッシュ型のインフレであり、デマンドプル型ではなく、需給ギャップとはあまり関係ない。バーナンキ連銀議長の言うとおり、連銀の 金融政策が原油価格に直接に影響を与えることはできないが、異常な低金利政策、ドル安がコモディティー価格の上昇に一部寄与していることは確かである。消 費者にとって、コストプッシュ型、デマンドプル型のどちらにせよ、インフレはインフレであり、彼らは物価上昇がおこればインフレ期待を生じさせる。このこ とは3月のミシガン大学の消費者センチメント調査で1年後のインフレ期待が2月の3.4%から4.6%へと大きく上昇したことからも理解できる。連銀のす べきことの一つはいかにインフレ期待の上昇を抑制するかである。3月15日のFOMCミーティングにおいて何らかの出口戦略がとられるべきであろう。 確かに、需給ギャップの考え方は受け入れやすい。しかし、需給ギャップを計算するための潜在成長率の求め方がいろいろあることを考えれば、需給ギャップの 考え方が現実的かどうかの問題が残る。連銀が需給ギャップ理論に執着して金融政策を決定していけばインフレ抑制に手遅れになるだろう。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2011年2月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2011-02-21

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

今月の日本経済見通しで述べたように、10-12月期の実質GDP成長率(1次速報値)は前期比年率-1.1%となり、5四半期ぶりにマイナス成長に転 じ、市場の見方を確認する結果となった。すなわち、同期の実績は、日本経済が不況に陥ったのではなく景気対策効果の剥落による一時的な景気の踊り場であっ たことを意味している。というのも実質GDP成長率を最も引き下げたのは民間最終消費支出であり、同-2.9%減少し(7四半期ぶりマイナス)、実質 GDP成長率を-1.7%ポイント引き下げたからである。 しかし、多くにとってサプライズであったのは、実質耐久消費財が同+13.0%と前期(同+58.7%)に続き2桁増を記録したことである。おそらく薄型 テレビの販売増が乗用車の販売減を相殺したようである。一方、民間最終消費支出のうち、実質半耐久消費財、実質非耐久消費財、実質サービス消費はそれぞれ -1.7%、-13.7%、-0.8%減少した。半耐久財は3四半期連続、サービスは4四半期連続で前期から減少しているのに対し、非耐久財は5四半期ぶ りでかつ大幅な減少となっている。家計は非耐久財の消費を削減し、耐久財支出に多くをまわしたと考えられる。 デフレータを見ると、民間最終消費支出デフレータは前期比-0.2%と下落幅は前期(-0.6%)より縮小したが、3期連続のマイナスを記録した。超短期 予測では民間最終消費支出デフレータを主として消費者物価指数で説明しており、10-12月期は前期比+0.4%と予測しており、実績(同-0.2%)と は大きく乖離した。これまで比較的高い説明力があったが今回は過大予測となった。 実際、10-12月期の消費者物価指数は前期比横ばいであったが、民間最終消費デフレータが同マイナスとなった理由として、説明変数である消費者物価指数 は固定基準年ウェイト方式であるのに対して、被説明変数である民間最終消費支出デフレータは連鎖方式による指数であることが影響したものと考えられる。前 期のウェイトが用いられる連鎖方式では、政策効果による耐久消費財のウェイトの高まりと技術進歩のスピードが速い耐久消費財では価格下落が大きく、両者の 影響が今回特に大きく出たと思われる。 実際、民間最終消費支出デフレータのサブカテゴリ−である耐久消費財、半耐久消費財、非耐久消費財、サービスの伸びをみると、それぞれ前期比-6.1%、 -0.3%、+1.4%、+0.1%となっている(図参照)。ちなみに、非耐久財デフレータが上昇しているのはタバコの増税による。消費者物価指数と民間 最終消費支出デフレータの対応するカテゴリーの伸びを比較すると、耐久消費財デフレータの伸び(前期比-6.1%)と当該消費者物価指数の伸びには大きな 乖離が見られる。その他のカテゴリーでは大きな乖離はない。多くにとってサプライズであった実質耐久消費財が前期に続き2桁増となった理由の一部は、連鎖 指数である同デフレータが大幅に下落したことが考えられる。 ただ消費者物価指数は2011年8月に基準年が2005年から2010年に移行する予定である。移行時にウェイトが変更されるが、ウェイトの変更は指数全 体を押し下げる方向にはたらくと見られている。基準年が移行した新指数では民間最終消費支出デフレータと消費者物価指数の乖離は幾分縮小するであろう。 日本 <一時的な踊り場をへて1-3月期日本経済は急回復> 2月14日(月)発表の GDP1次速報値によれば、10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率-1.1%となり、市場の見方をほぼ確認する結果となった。5四半期ぶりにマイ ナス成長に転じたが、2010暦年の実質GDPは前年比+3.9%となり、3年ぶりのプラス成長を記録した。 実質成長率は市場コンセンサス(ESPフォーキャスト2月調査:-2.13%)より幾分低かった。最終週における超短期モデル(支出サイドモデルと主成分 分析モデル)の平均成長率予測は-3.2%であった。支出サイドモデル予測は-2.3%とほぼ市場コンセンサスと同じ、一方、主成分分析モデル予測は -4.2%となった。 ただ季節調整の掛けなおしにより、過去の成長パターンが変化しており、過去3四半期の成長率は0.8%~1.2%ポイント下方修正されている。超短期モデ ル(支出サイドモデル)は、10-12月期の実質GDPを543.2兆円と予測したが、実績は542.2兆円であり1兆円程度下回っている。すなわち、成 長率の実績(-1.1%)は予測(-2.3%)を上回ったが、過去3四半期にわたって下方修正されたため水準の実績は逆に予測を下回ったのである。 足下の月次指標をみれば、10-12月期の実績は、日本経済が不況に陥ったのではなく景気対策効果の剥落による一時的な景気の踊り場であったことを支持している。 10-12月期の実質GDP成長を最も引き下げたのは民間最終消費支出であり、政府支出や純輸出も引き下げた。実質GDP成長率(-1.1%)への寄与度 (年率ベース)を見ると、国内需要は-0.7%ポイントとなり、5四半期ぶりのマイナス寄与となった。一方、純輸出は-0.4%ポイントと2四半期連続の マイナス寄与である。今回のデータは、輸出の減少とエコポイント制度変更前の駆け込み需要の反動の影響が大きく出たことを示している。 実質民間最終消費支出は同-2.9%となり、実質GDP成長率を-1.7%ポイント引き下げた。7四半期ぶりマイナスである。多くにとってサプライズで あったのは、実質耐久消費財が同+13.0%と前期に続き2桁増を記録したことである。このことは相当需要を先食いしたことを意味しており、1-3月期以 降の耐久消費財の反動減が危惧される。多くにとってサプライズであった、実質耐久消費財が前期に続き2桁増となった理由の一部は、同デフレータが大幅に下 落したことが考えられる(これについては今月のトピックス参照のこと)。 今週の支出サイドモデルは、1-3月期の実質GDP成長率を、内需と外需が反転拡大するため前期比年率+5.9%と予測する。また4-6月期の実質GDP 成長率を、内需及び純輸出がともに拡大するため、同+3.8%と予測している。日本経済は一時的な踊り場を経て2011年年前半は比較的高い成長率を実現 できよう。 [稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学] [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 2010年 10-12月期の実質GDP伸び率(前期比年率)が+3.2%となった。これは米国超短期モデルの最終予測の同+3.8%より幾分低い。しかし、大事なこ とはGDPから在庫増を除いた実質最終需要が同+7.1%と大きく伸びたことである。持続的な経済成長を考えるとき、在庫に頼らない最終需要を見ることは 大事なことである。実際に、米国経済が景気回復を示し始めた2009年10-12月期の実質GDP伸び率は5%を超えたにもかかわらず、実質最終需要の伸 び率が2.1%と低かったことから、連銀は経済成長の多くが在庫増によるものと言って、従来のゼロ金利政策を変更しなかった。米経済がリセッションを終了 した以降の2009年7-9月期〜2010年10-12月期の6四半期の実質GDPの平均伸び率は3.0%であり、実質最終需要の平均伸び率は2.1%で ある。この期間の個人消費支出価格デフレータとそのコア価格デフレータのそれぞれの平均伸び率は1.7%、1.1%である。このような状況の中で、連銀は まだ異常なゼロ金利政策を維持し、追加的数量緩和政策(QE2)の継続さえ考えている。 2月3日にバーナンキ連銀議長は全米記者クラブで経済見通しとマクロ経済政策"の講演を行い、次のように述べている。「我々は強い雇用増が持続的になるま で、景気回復が本格的になったとみなすことはできない。」「正常な失業率の水準に戻るまでにはあと数年はかかる。」「今のコモディティー価格の上昇は発展 途上国の需要増によるものである。」すなわち、連銀とは無関係というものである。確かに、石油価格の高騰は連銀とは無関係であるが、コモディティー価格の 上昇が、近い将来に一般物価に影響を与えることは確かである。都合の悪い最終需要が7.1%と伸びたことには触れてはいない。 今週の超短期モデルは、1-3月期の実質GDP成長率(需要サイド、所得サイド平均)を前期比年率+2.4%と予測している。順調な拡大を示している。さ て、連銀は一体いつまで異常なゼロ金利政策、効果のないQE2を継続したいのであろうか?あるいは、失業率が一体何%にまで低下したら、今の金融スタンス を変更するのだろうか?おそらく、バーナンキ連銀議長の望む失業率が達せられる前に、インフレーションの加速化が始まるだろう。彼の頑固さは、連銀が景気 のモメンタムを捉えることができなかったことからきているのかもしれない。彼の失業率低下への執着は異常としか思えない。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2011年1月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2011-01-24

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

先月の本コラム『2011年の関西経済:「アジアの中の関西」を実感する元年』では、アジア経済、特に中国経済の関西経済にとっての重要性を強調した。そ れを裏付けるデータが1月20日に発表された。中国国家統計局によれば、2010年10-12月期の中国の実質GDPは前年同期比+9.8%となり、この 結果、2010暦年の実質成長率は+10.3%となった。3年ぶりの2桁成長であり、固定資産投資(特に公共投資)や輸出が高成長をけん引した。リーマン ショックの後遺症からなかなか抜け出せない日米欧経済とは対照的である。この高成長の結果、中国の名目GDP(39兆7983億元)のドル換算値は日本の それを追い越し世界第2位となるのは確実である。というのも、今月の日本経済超短期予測で示したように、10-12月期の実質成長率(実績は2月14日公 表予定)はマイナス成長が確実だからである。 さて歴史を振り返ると、名目GDPでみて日本経済が旧西ドイツを抜いて世界第2位になったのは1968年であった。その2年後に大阪万博が開催され、さら に4年前の1964年には東京オリンピックが開催された。加えて、1972年に田中首相の『日本列島改造論』を引けがねとして地価が急激に上昇したことも 高度成長期に特徴的な現象であった。状況はよく似ている。2008年には北京でオリンピックが、2010年には上海で万博が開催され、そして名目GDPが 世界2位となる。またこの間、中国では不動産バブル現象も同時におこっている。 中国の成長過程の状況は日本のそれと極めて似ているが、ただ異なるのは成長のスピードが日本の経験に比してはるかに急速であることだ。急速に所得が伸びる ため消費の伸びは追いつかない。貯蓄が増加し、それが投資に回り、成長の好循環を形成する。実際、中国のGDPに占める民間消費のシェアは極めて低い。米 国の7割、日本の5割強に比して3割強にとどまっていることから、今年からスタートする中国政府の第12次5ヵ年計画の最重要点は消費シェアの拡大におか れている。輸出主導から内需主導の持続可能な成長への移行を意図している。これは国内消費が伸び、海外からはマーケットとして重要性がますます高まる。 世界の「工場」(輸出)から今や世界の「市場」(消費)に成長のドライバーは徐々に移行する。中国の1人当たりのGDPは日本の1/10の水準である。所 得水準の拡大は消費市場の高度化を推し進める。消費構造が高度化し、これからは耐久消費財やサービス支出の拡大が期待される。実際、中国の消費者物価指数 のウェイトにおいて、食品のウェイトは非常に高く、サービス支出のウェイトは低いのはこのことを反映している。GDPが世界第2位となった中国経済とどう 付き合うのか。答えの一つは中国の旺盛な消費需要を日本がどのように取り込んでいくかであり、これが日本の新成長戦略の重要なポイントとなる。 日本 <米国とは対照的な10-12月期日本経済の不振は一時的> 予測動態のグラフの比較から明らかなように、10-12月期の米国と日本の成長パフォーマンスは対照的な結果となろう。今週の米国経済超短期予測によれ ば、実質GDP成長率は約4%(前期比年率)の高成長が見込まれている。一方、日本経済超短期予測(支出サイドモデル)は、同期の実質GDP成長率を、内 外需がともに縮小するため前期比-0.9%、同年率-3.4%と見込んでいる。もっとも、1-3月期の実質GDP成長率は、内需及び純輸出が反転拡大する ため、前期比+1.1%、同年率+4.3%と予測している。 10-12月期の日本経済の景気のモメンタム(支出サイド、主成分分析モデル予測値平均)は11月の半ばから減速傾向を示し始めた。実質GDP成長率は 11月の終わりからマイナスの領域に入った。12月には-2%に低下し、10-12月GDPの基礎データの2/3が利用可能な1月半ばにはさらに-3%に まで低下した。これから発表される12月の月次データはせいぜい底打ちを示唆するものが増えると予想されることから、10-12月期のマイナス成長は -3%を超える可能性は低くない。 10-12月期の低迷は、家電エコポイントの縮小やエコカー補助金の終了に伴う家計消費の反動減が主因である。同期の国内需要を見れば、実質民間最終消費 支出は前期比-0.6%のマイナス成長を予測している。実質民間住宅は同+2.3%と好調であるが、実質民間企業設備は同-0.3%と低調である。実質政 府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同-4.8%となる。この結果、国内需要の実質GDP成長率(前期比-0.9%)に対する寄与度は -0.8%ポイントとなろう。純輸出も景気押し下げ要因に転じる。財貨・サービスの実質輸出は同-2.8%、実質輸入は同-3.3%それぞれ減少する。こ のため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は-0.1%ポイントとなる。 主成分分析モデルは、10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率-2.8%と支出サイドとほぼ同じ予測となっている。1-3月期は支出サイドモデルよ りは低いが同+1.7%とみている。この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率は、10-12月期が-3.1%、1-3月期 が+3.0%となる。今後海外経済が順調に回復すれば、10-12月期のマイナス成長は一時的な反動減にとどまり、2011年前半には日本経済は回復軌道 に戻るとみてよい。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 グラフに見るように、超短期予測は景気(実質GDP前期比年率:2010年10-12月期)が11月に入り上向き初め、11月後半には3%を超え景気回復 にモメンタムがついていることを示している。しかも、12月後半においてからは支出・所得両サイドからの平均実質GDP伸び率は5%を超えるようになっ た。しかし、企業の在庫積み増しがここにきて急速にスローダウンしてきたことから、10-12月期の実質GDP成長率は4%程度であろう。連銀は 11月2日、12月14日のFOMCコメントにおいても景気回復のモメンタムを認めようとはしていない、いや気づいていないのかも。やっと、1月7日の上 院の予算委員会の証言においてバーナンキ連銀議長が景気回復の強さを認めるような発言をした。しかし、いつものごとく高い失業率に言及し、失業率を十分に 下げるだけの景気回復ではないと主張し、未だ続けている異常な低金利政策を暗示的に正当化し、その出口政策へのヒントを与えてはいない。彼は失業率が8% 程度にまで下がるにはあと2年はかかると言い、正常な水準に戻るには5年以上かかると言っている。連銀は最大雇用と物価安定の2つの目的を常に課せられて いる。しかし、金融政策一つで2つの目標を同時に達成することは理論的にも不可能であり、課せられた目的のバランスをとりながら金融政策を適宜変更してい くことが重要である。失業率が9%を超えていようが、景気回復にモメンタムがつき、経済成長率が潜在成長率程度になったにもかかわらず、遅行指標の失業率 に執着し、将来のインフレ抑制への対策をないがしろにすれば、米国経済はインフレ加速という将来大きな損失をこうむる。 このことを従来から懸念していたカンザスシティー連銀のトーマス・ホーニング総裁に加え、今ではフィラデルフィア連銀のチャールズ・プロッシー総裁、 リッチモンド連銀のジェフリー・ラッカー総裁もこれまでの金融政策の見直しに言及し始めた。連銀エコノミストたちは一体経済成長率がどのくらいの高さにな り、失業率がどの程度にまで下がれば今の異常な低金利政策を変更し始めるのだろうか?バーナンキ議長をはじめ連銀エコノミストたちは、日本経済の長期停滞 をデフレが原因としてあまりにデフレ恐怖症に陥り、不必要なペシミズムに陥っている。不必要あるいは間違ったペシミズムは根拠なきオプティミズムより悪 い。後者は時間があまりたたずにその間違いが分かるが、前者はその間違いに気づくのに長い時間がかかる。たとえば、潜在成長率を高めに想定し、金融緩和策 をとればインフレの加速化がすぐに始まる。しかし、潜在成長率を実態より低めに捉え、金融引き締めを続ければその間違いは簡単にはみつからない。むしろ、 そのようなペシミズムに基づいた経済・金融政策は悲観的な心理を人々の間に生じさせ、景気回復を遅らすばかりか、その芽を摘み取ってしまう可能性もある。 米国経済が本格的景気回復に戻っている今、連銀は景気回復の良い面を強調し、いまや景気回復の腰を折ることなく正常な金利水準に戻る時期に来たことを市 場に告げるべきである。連銀は失業率に執着し過ぎたことから正常な金利水準に戻るための出口を見失っている。1月25日、26日のFOMCで金融政策の変 更が示唆されなければ、将来のインフレ懸念が市場に生じるだろう。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2010年12月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-12-15

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

関西経済のGDP(域内総生産)の規模はオランダ一国並みのおよそ80兆円、日本の中では約17%経済である。2010年度の関西経済の実質成長率は+2.6%と前年度見込み-1.3%から3年ぶりのプラス成長と予測(最新予測についてはhttp://www.kiser.or.jp/ja/trend/forecast.htmlを 参照のこと)している。関西経済は、全国と同様、政策動向に大きく影響を受けた1年であったといえよう。住宅版エコポイントの効果は来年も期待できるが、 エコカー補助金は9月初旬に終わり、家電エコポイントも徐々に限定的となり2011年3月末には終了する。一方、家計消費を抑制するたばこ税増税が10月 から実施された。 先行きについては、このような政策変更に伴う複数の駆け込み需要とその反動減などで家計消費が乱高下し、景気の基調が読みづらい状況である。足下減速しつ つある海外経済は、2011年央にかけて拡大経路に復する。そのため、関西経済はその恩恵を受け景気後退を回避することができ、二番底には陥らないであろ う。 さて2011年の関西経済を一言でいえば、「アジアの中の関西」を実感する元年となるであろう。中小企業、学生・・・どんな関西人でもアジアを意識せざる をえない年となろう。本コラムで、何度も指摘しているように、IT化によるグローバライゼーションで“要素価格の均等化”が進行しつつある。例えば、簡単 なパンフレットやレストランのメニューを作る町の小さな印刷屋さえ、中国の印刷屋と競争をせざるを得なくなった。日本の印刷屋が中国の印刷屋と同じものを 作る限り、品物の価格は下がり、賃金も下がらざるをえない。これはデフレではなく、グローバライゼーションによるものである。その変化に適応した、ビジネ スモデルの導入とそれを促す経済政策が必要なのである。就活する学生もアジアの学生との競争を意識し、語学の重要性を感じ始めている。 特に関西はアジア向けの輸出の比重が全国の平均よりも抜きん出て高い。しかし、アジア向けの製品は、韓国や中国に競争されやすいものを輸出しており、これ からは、付加価値を強く意識したものを作っていかないと関西経済の未来はない。逆に成長著しいアジアマネーを取りこむことが重要である。関西の成長戦略の 一つとしてツーリズムが有望な候補の一つであることは周知の事柄であり、そのためには関西は魅力的でなくてはならない。 ミクロ的な例で言うと、大阪ではオフィスビルの大量供給が2010年にピークを迎える(図参照)。一方で、リーマンショックと重なったため空室率は大幅に 上昇している。2013年にはさらなる大量供給が控えているが、これを関西活性化につなげるためには、関西を魅せる戦略が決定的に重要となる。来年5月に JR大阪駅に高層のノースゲートビルが完成し、また北ヤードでは先行開発区が2013年春完成を目指して動き出す。この北ヤードの2期開発区域について は、橋下大阪府知事が森を、平松大阪市長はサッカー場を提言されているが、関西最大のターミナルに他地域から、海外ではアジア人がリピーターとしてきてく れるためには何が必要かという視点が決定的に重要と思われる。その意味で、2011年は関西人がアジアを強烈に意識する元年といえるのではないか。 日本 <マイナス成長に突入した10-12月期日本経済> 12月9日発表の7-9月期GDP2次速報値によれば、実質GDP成長率は前期比+1.1%、同年率+4.5%となった。1次速報値の同+3.9%からの 上方修正である。上方修正の主要因は民間企業設備と民間企業在庫品増加である。今回は、通常の1次速報値から2次速報値にかけての修正に加え、包括的な データ改訂が行われた。すなわち、2008年度のデータが確報値から確々報値に、2009年度のデータが速報値から確報値に改訂された。その結果、足下6 四半期が上方修正に、一方、リーマンショック後の2四半期(2008年10-12月期及び2009年1-3月期)が大幅に下方修正された。2008年度と 2009年度の実質GDP成長率は1次速報値の-3.8%と-1.8%から-4.1%と-2.4%にいずれも下方修正された。包括的なデータ改訂からわ かったことは、リーマンショックはいかに日本経済に大きな影響を与えたかである。 さて景気の足下はどうであろうか?今週の予測では、一部の11月のデータとほとんどの10月のデータが、また7-9月期の2次速報値が更新されている。支 出サイドモデルによれば、10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率-1.1%、一方、2011年1-3月期の実質GDP成長率を同+4.0%と予測 している。10-12月期は11月の見通しから下方修正され、成長率はマイナスが避けられないようである。結果、2010年度の成長率は+3.6%となろ う。 10-12月期実質GDP成長率への寄与をみると、内需は成長を引き下げるが外需は小幅成長に寄与する。内需のうち、実質民間最終消費支出は政策の反動減 の影響で前期比-0.2%となる。実質民間住宅は同+2.7%増加するが、民間企業設備は-0.6%減少する。実質政府最終消費支出は同+0.7%増加す るが、実質公的資本形成は同-1.9%減少する。外需を見れば、実質財貨・サービスの輸出は同-4.2%低下し、実質輸入は同-6.6%減少する。いずれ も減少するが純輸出は小幅の成長貢献となる。 主成分分析モデルも、10-12月期の実質GDP成長率は同-3.0%、1-3月期は同+1.2%と予測している。この結果、両モデルの平均成長率予測は10-12月期が同-2.0%、1-3月期が同+2.6%となる。10-12月期の落ち込みは一時的となろう。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 11月後半から12月後半にかけて発表された経済指標から市場は景気回復に対してかなり楽観的になった。しかし、11月の雇用増(純)が市場の予想を大き く下回ったことから、せっかく高まってきた景気回復への楽観的な見方に水をさす形となった。特に、失業率が職を求める人々が増えたにせよ、10月の 9.6%から9.8%へと上昇したのがいけない。連銀は追加的数量緩和政策により積極的になり、バーナンキ連銀議長は米国債買い入れ額が6,000億ドル を超える可能性も示唆している。 連銀が異常な金融緩和を続けるロジックは次の通りである。(1)失望的に低い物価上昇率、デフレ懸念、(2)今の失業増加は構造的なものではなく、循環的 なもの(11月2−3日FOMCの議事録参照)。それゆえ、一層の金融緩和で景気を良くして、連銀に課せられた2つの目標(物価の安定と完全雇用)を達成 しようとするものである。残念ながら、連銀のロジックには(日銀と同じような)誤りがあるように思われる。PCE価格デフレーター、コアPCEデフレー ターでみた現在の物価上昇率は0%〜1.5%と失望的に低い水準ではない。むしろ、IT革新による生産性の向上、サーチコストの劇的な低下、グローバル化 による低価格製品の供給を考慮すれば、当然の低物価上昇率であり、デフレ・インフレ懸念のないパーフェクトな物価状況である。一方、失業の増加には構造的 な面が強い。すなわち、企業は一旦解雇した労働者を景気が回復してきても再び雇用せずに、IT化をすすめることでかなり対処することができるからである。 すなわち、連銀はプラス効果の少なく、将来のマイナス効果の大きい異常な低金利政策を維持している。おそらく、カンザス・シティー連銀のトーマス・ホーニ ング総裁の考え方が正しいと思われる。 グラフに見るように、今期の経済成長率は11月に入りかなり急速に改善をし始め、今では3%〜4%にまで達しており、米経済は堅調な景気回復状況にある。このような状況で異常な低金利政策を続けても、急速に失業率が低下するわけではない。 すなわち、今金融政策のできることは限られている。後は、財政政策などに任せ、今の安定した物価に重点をおいた金融政策を行うことが重要である。短期的に は、富裕層も含めたブッシュ減税政策の延長をできるだけ早く民主党が受け入れることである。長期的には、経済のITによるグローバル化に対処できるイノ ベーションを促進する経済政策が求められる。経済はITにより大きく変わっている。それに対応するスペシフィックなミクロ経済政策が求められているのであ り、異常な低金利政策をいつまでも続けても、将来への悪影響をもたらすだけである。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2010年11月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-11-22

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

今月は補正予算の経済的効果について検討する。ここでいう補正予算とは、9月10日に「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」が閣議決定されたが、 うちステップ1として9月24日に決定された経済危機対応・地域活性化予備費を活用した緊急経済対策、及びステップ2として10月8日に決定された「円 高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」に係る平成22年度補正予算を対象としている。 仕分けの過程で明らかになったように今回の内容は、22年度本予算で削減された内容の復活という印象を払拭できない。しかし、これまで成長を支えてきた輸 出の鈍化等から、先行きの不透明感が高まっている。円高が進行しており、輸出の更なる鈍化や製造業の海外シフトのリスクが高まっており、緊急経済対策の ニーズは高まっている。経済対策の必要性は高く、かつ、速やかな実施が重要といえよう。 問題は実施規模とタイミングである。緊急総合経済対策、ステップ1が9,180億円、ステップ2が5兆901億円で合計6兆82億円である。項目のうち、 内容のわからないその他や金融支援を除いて実施規模を求め、またステップ1が2010年度内に、ステップ2が2011年度にわたって支出されるパターンを 想定すると、2010年度で2兆3,185億円、2011年度で2兆6,679億円となる。これらの補正予算額は、政府最終消費支出、公的固定資本形成、 家計への移転、企業への移転、民間最終消費支出、民間住宅の形態で追加需要となる。 政策効果として、政府は今回の対策により、実質GDPを0.6%押し上げるとしている。われわれは「第85回景気分析と予測」においてこれを検証した (11月25日発表)。7-9月期のGDP1次速報値を更新して、新たに2010-2012年度の日本経済の成長パターンを予測した。この予測値には今回 の補正予算は含まれていない。次に補正予算を反映させたシミュレーションを行い、これと比較したものが補正予算の効果となる。下図が示すように、2010 年度末にかけてステップ1の効果が表れてくるが、効果の発動期間は2期間であるため2010年度平均では0.38%の押し上げ効果にとどまる。一旦、 2011年4-6月期に押し上げ効果は低下するが、これは家電エコポイント制度が3月に終了することから、4-6月期に民間消費の反動減が生じるためであ る。2011年度平均では乗数効果も表れ0.53%の実質GDP押し上げ効果がでてくるが、2012年度には効果が剥落し0.06%と押し上げ効果はほぼ ゼロとなる。 日本 <10-12月期はマイナス成長の可能性が高まるが、一時的な停滞にとどまろう> 11月15日発表のGDP1次速報値によれば、7-9月期の実質GDP成長率はエコカー補助金等の駆け込み需要の影響で前期比+0.9%、同年 率+3.9%となった。4期連続のプラス成長となり、4-6月期の改定成長率同+1.8%から加速した。なお前年同期比では+4.4%と3四半期連続のプ ラスとなった。 7-9月期の実績は、市場コンセンサス(2.31%:11月ESPフォーキャスト調査)を大きく上回ったが、超短期予測の平均値に近い結果となった。超短 期モデルの最終週の予測では、支出サイドモデルが同+2.0%、主成分分析モデルが同+4.4%、両者平均で+3.2%の予測となった。注目すべきは、超 短期予測は7-9月期の最初の月のデータが利用可能となる8月の終わりにはすでに3%台を予測していたことである。 7-9月期の実質GDP成長率(前期比年率ベース)への寄与度を見ると、国内需要は+3.7%ポイントとなり、成長率に4期連続のプラス寄与となった。一 方、純輸出は+0.1%ポイントの寄与にとどまった。純輸出は6期連続で成長率を引き上げたが、その寄与度はほぼゼロとなった。データは、アジア向けの輸 出が減速したことと、1年を上回る補助金政策の終焉による駆け込み需要の影響が大きく出たことを示している。10-12月期には逆に反動減が出るため、マ イナス成長に陥る可能性が高い。 今週の超短期予測では、実績としてごく一部の10月データしか予測に反映されていない。にもかかわらず、10-12月期の実質GDP成長率を、内需は小幅 拡大するが純輸出が縮小するため前期比+0.1%、同年率+0.4%と予測する。一方、1-3月期の実質GDP成長率を、内需は引き続き拡大するが、純輸 出は横ばいとなるため、前期比+0.5%、同年率+2.1%と予測している。 10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.2%となる。現時点では小幅のプラスを予測している。実質民間住宅は同+4.4% 増加し、実質民間企業設備は同+0.6%増加する。実質政府最終消費支出は同+0.6%、実質公的固定資本形成は同-2.5%となる。 財貨・サービスの実質輸出は同-1.8%、実質輸入は同-2.0%それぞれ減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度はマイナスに転じる。 一方、主成分分析モデルは、10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率+0.1%と予測している。また1-3月期を同+1.6%とみている。 この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、10-12月期が+0.2%、1-3月期が+1.9%となる。 10月のデータがほとんど利用可能ではない現時点においてでも、超短期予測は10-12月期の日本経済をゼロ成長と予測しており、悲観的なデータが更新されるにつれてマイナス成長に陥る可能性が高まっているが、一時的な停滞にとどまるとみている。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 7-9月期の実質GDP(速報値)の伸び率(前期比年率)は+2%と超短期予測と同じであった。またコア個人消費支出価格デフレーターでみたインフレ率 も+0.8%と超短期予測とほとんど同じであった。また7-9月期データを更新した、10-12月期の実質GDP成長率については、今週の予測では 同+3.4%と高い成長率を見込んでいる。 しかし、それに基づいての政策となると連銀と超短期モデルの考え方は全く異なる。連銀は彼らの“完全雇用、物価安定の2つの目標”から”2%経済成長、 1%インフレを失望的に低い”と判断し、11月3日のFOMCミーティングにおいて2011年中頃までに6,000億ドルの長期国債を購入することを発表 した。 超短期モデル予測からすれば、1%のインフレ率は理想的である。米経済はデフレ状況でもなく、今のコモディティー価格の上昇、異常なドル安を考えれば、デ フレを懸念する状況ではなくむしろ、将来のインフレを懸念すべきである。2%という経済成長は確かに、雇用を急速に増やす成長率ではない。しかし、異常な 低金利を長期間続け、連銀のバランスシートを異常に膨らませてきた中で、効果の不確実な追加的数量的金融緩和政策を更に導入しなければならないほど低い経 済成長率でもない。連銀がデフレに敏感なのは、日本の1991年の土地バブル崩壊後の失われた20年がデフレによると考えているからである。 確かに、バブル崩壊後にデフレの経済への悪影響はあったであろう。それが、20年も続くわけではない。更に、異常なゼロ金利で日本経済が立ち直らないのは 別の根本的な問題があるからである。すなわち、日本経済の長期停滞は1990年代から急速に進んでいるIT化によるグローバライゼーションに日本の企業が 対応できなくなっているからである。例えば、簡単なパンフレットやレストランのメニューを作る町の小さな印刷屋さえ、中国の印刷屋と競争をせざるを得なく なった。日本の印刷屋が中国の印刷屋と同じものを作る限り、品物の価格は下がり、賃金も下がらざるをえない。これはデフレではなく、グローバライゼーショ ンによる“要素価格の均等化”である。それ故、金融緩和政策を幾ら続けても、日本経済はよくならない。IT化によるグローバライゼーションに適応した、ビ ジネスモデルの導入とそれを促す経済政策が必要なのである。発展途上国からの安いあらゆる品物が先進国に即座に入るようになっている。この事実を見逃し、 いつまでも異常な低金利政策を続ければ、経済に副作用がでてくる。米国はすでに、異常なドル安により輸入業者や消費者の購買力が大きく減少している。金融 政策当局はいち早く“デフレ病”から抜け出すべきである。今の経済回復に対して、金融政策のできることには限りがある。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2010年10月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-10-19

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

日銀は10月5日に開いた政策決定会議で4年ぶりのゼロ金利政策を再開した。日銀自身が「包括的金融政策」としているように、以下の3つの画期的な政策が含まれている。 (1)ゼロ金利政策0−0.1% (2)消費者物価上昇率でみて1%になるまで金融緩和:「時間軸」効果 (3)5兆円規模の資産買取り(国債以外にETF(上場投資信託)REIT(不動産投資信託)を含む) さて、今月の米国経済見通しでは、「今の物価下落には、IT化によるグローバライゼーションの影響が大きい。今は、技術・知識が即座に世界中に伝 播する。そのため、日米が発展途上国と同じものを作っていれば、物価は安くなるのは当然であり、グローバライゼーションの結果要素価格は均等化することか ら日米の賃金も低下せざるをえない。すなわち、日米の消費者は価格低下のベネフィットを受ける一方、企業は新しいビジネスモデルを導入しなければ、賃金の 低下は防げない。」と述べられている。この点は本コラムでもつとに強調してきたことである。 デフレは確かに金融的現象であるが、金融政策ですべてを説明できるわけではない。例えば、1990年代半ば以降の労働生産性、消費者物価指数、賃金の変 化の国際比較をすると、日米欧はともに生産性を伸ばしているが、日本のみが賃金・物価の下方スパイラルに陥っている。これはこれまで日本がとってきた成長 戦略と大いに関係がある。日本は輸出拡大により2002年からの景気回復を実現してきたが、輸出品の多くは発展途上国との競合品であり、これらを伸ばすこ とにより結果的に賃金デフレを加速したのである。日本は要するに付加価値の高い製品をつくり出せていない。例えば、欧州がブランドやデザインを重視し価格 を維持しながら良質の製品を長く売っていくパターンと日本の製品を作り出すパターンを比較すればよく理解できる。 その意味で日銀が消費者物価指上昇率でみて1%以上を実現できるまでゼロ金利政策を持続するという宣言は金融政策の効果を過信しすぎではないだろうか? むしろ日銀がこれまで恐れてきたゼロ金利政策長期維持の弊害を大きくする可能性もある。重要なのは金融政策と財政政策(補正予算)のセットの効果であっ て、日本がどのような成長戦略をとるかが極めて重要であることを理解しなければならない。すなわち高付加価値を生み出す産業を展望することが重要であり、 環境関連産業や観光に注目するのは正解である。(稲田義久) 日本 <7-9月期は2%程度の成長は可能となるが、円高の進行は下振れリスクを高める> 10月18日の超短期予測では、GDP項目を説明する大部分の8月データと一部の9月データが更新されている。その結果、7-9月期の実質GDP成長率 は前期比+0.4%、同年率+1.7%となり、前期(同+1.5%)を上回る成長率予測となっている。また10-12月期は同年率+1.8%と引き続き緩 やかな回復となっている。この結果、2010暦年の実質成長率は3%程度が見込まれている。ちなみに、マーケットコンセンサス(ESPフォーキャスト10 月調査)を見ると、7-9月期は同年率+2.11%と超短期予測と大きな差異はないが、10-12月期は同-0.21%とマイナス成長が予測されており、 現時点でマーケットは日本経済が年度後半には減速すると想定している。 さて7-9月期の成長率(前期比+0.4%)の中身をみると、実質国内需要は+0.6%ポイント、実質純輸出は-0.1%ポイントとなっている。これまで景気回復のエンジンであった純輸出は2009年4-6月期以来6期ぶりのマイナスが予測されている。 7-9月期の国内需要の中身を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.6%の増加が見込まれている。実質民間住宅は同-1.1%、実質民間企業設備 は同-1.6%と投資関係は減少が見込まれている。民間需要は民間最終消費支出を除き低調となっている。民間最終消費支出は政策の前倒し効果の影響で好調 であるが不安材料もある。9月の乗用車新車販売台数(季節調整値:含む軽)は同月初旬にエコカー補助金が予算額を超過したため前月比-29.4%減となっ た。4ヵ月ぶりのマイナスである。これが9月の消費総合指数に反映された場合、7-9月期の民間最終消費支出の予測値が下振れする可能性がある。公的需要 では、実質政府最終消費支出は前期比+0.6%、実質公的固定資本形成は同+0.5%となる。 問題は外需の縮小である。7-9月期の財貨・サービスの実質輸出は前期比+0.2%とほぼゼロ成長を予測しており、実質輸入は同+1.6%と輸出の伸び を上回ろう。8月の鉱工業生産指数が3ヵ月連続で前月比マイナスとなっており、輸出の弱さと整合的である。海外市場、特に、新興市場は伸びの減速が予想さ れており、しばらく純輸出は景気押し上げのエンジンとはなりにくい。 グラフに見るように、日本経済の成長率予測(支出サイドモデル)は一時9月の後半に減速傾向を示したが、10月に入り再び2%台をうかがう傾向となって いる。この程度の成長率が年度後半も持続するかは純輸出の動向に依存する。80円台を突破する可能性のある円高は日本経済の下振れリスクを高めよう。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 バーナンキFRB議長は10月15日のボストン連銀において”低インフレ環境における金融政策と手段”という講演を行った。それによると、2010年6 月のFOMCにおけるFOMCメンバーや地域連銀総裁たちによる長期目標の経済成長率、失業率、インフレ率を基準にして、バーナンキ議長は米国経済の現状 を判断し、”景気回復のペースは連銀が想定している3%程度(前年同期比)より遅く”、”現在のインフレ率1%は連銀の目標値(1.7%〜2.0%)に比 べかなり低い(too low)”とコメントをした。その結果、市場は11月初めのFOMCにおいて、FRBが長期国債の購入という更なる金融緩和を行う と期待し始めた。 グラフに見るように、米国の景気回復は8月になると急速にペースを落とし、ダブルディップリセッション(二番 底)懸念が生じたのも理解できる。しかし、超短期予測では9月の半ば以降景気は徐々に持ち直していることが分かる。おそらく、7-9月期の経済成長率は 2%前後と思われる。これは、対前年同期比でみれば3%程度の成長率となり、FRBの目標値とあまり変わらない。問題は物価への見方である。バーナンキ議 長は現状のインフレ率を1%と見なし、それをFRBの目標値(1.7%〜2.0%)に対して”too low”と表現していることである。日銀と同じよう にFRBも”デフレ恐怖症”に陥っている。日銀が物価上昇率を1%になるまで金融緩和を続けると同じように、連銀も物価上昇率が2%になるまで金融緩和を 続けるように思われる。日米の物価上昇率がそれぞれ1%、2%になれば、政策当局の思うように日米の経済回復がもたらされるであろうか?”需給ギャップ” からのデフレ、金融緩和による需要拡大、デフレの解消、景気拡大というようなシナリオを考えているならば、日本経済はとっくに立ち直っているはずである。 今の物価下落には、IT化によるグローバライゼーションの影響が大きい。今は、技術・知識が即座に世界中に伝播する。そのため、日米が発展途上国と同じ ものを作っていれば、物価は安くなるのは当然であり、グローバライゼーションの結果要素価格は均等化することから日米の賃金も低下せざるをえない。すなわ ち、日米の消費者は価格低下のベネフィットを受ける一方、企業は新しいビジネスモデルを導入しなければ、賃金の低下は防げない。FRBにとっての今一番の 問題は高い失業率であるが、この急速な解決には最低賃金を引き下げることが望ましい。今のデフレ(?)に対して、金融政策ができることは限られている。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2010年9月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-09-13

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

8月にL.R.クライン(ペンシルベニア大学名誉教授)、市村真一(京都大学名誉教授)編集の”Macroeconometric Modeling of Japan”がWorld Scientific(ISSN: 2010-1236)から出版された。本書は戦後の計量モデルによる代表的な日本経済分析の論文を集めたものである。マクロ計量モデル、産業連関モデル、 資金循環モデル、CGEモデル、超短期モデルといった代表的なものが紹介されている。戦後の計量経済学の一分野の成果を評価したものであり、日本の計量モ デルの遺産を後世に伝えたいという編者達の意欲がよく伝わってくる。内容は以下のような構成となっている。すなわち、(1)社会会計とサーベイ分析、 (2)産業連関とCGEモデル、(3)マクロ計量モデルの3部構成からなり、はじめに、市村名誉教授自身の「日本のマクロ計量モデル」の歴史的展望がつい ている。 ●Introduction: A Historic Survey of Macroeconometric Models in Japan (S Ichimura) ●Social Accounting and Survey Analysis: ○Factors for Rapid Growth of the Japanese Economy: A Social Accounting Approach (S Ichimura) ○Social Accounting Analysis of Japan's Lost 90s (H Suk) ○Business Indexes and Survey Data for Forecast (Y Shimanaka & T Shikano) ●Input Output Analyses and CGE Models: ○Factor Proportions and Foreign Trade: The Case of Japan (M Tatemoto & S Ichimura) ○Interregional Interdependence and Regional Economic Growth in Japan (T Akita) ○The Flying-Geese Pattern of East Asian Development: A Computable General Equilibrium Approach (M Ezaki & S Ito) ○A Flow-of-Funds Analysis of Quantitative Monetary Policy (K Tsujimura & M Tsujimura) ●Macroeconometric Models: ○An Econometric Model of Japanese Economic Growth, 1878_1937 (L R Klein) ○An Econometric Model of Japan, 1930_1959 (L R Klein & Y Shinkai) ○Osaka ISER Model (L R Klein et al.) ○The Japan Model for World Project LINK (K Ban) ○The Saito Model of the Japanese Economy (M Saito) ○High Frequency Model vs Consensus Forecast (Y Inada) ○Policy Alternatives for Japan Toward 2020 (S Shishido et al.) KISERでは、森口親司大阪大学名誉教授、伴金美大阪大学教授の貢献もあり、歴史的に戦後の計量経済学への貢献の一翼(研究並び研究の場の提供を通して)を担ってきた。筆者は今後もその役割が引き継がれることを望んでいる。 本書の編者たちは、序文で以下のように述べている。「最近マクロ計量分析の信頼性が官民で低下しているように思われる。この厄介な問題の一部の責任は、 複雑な現実の経済問題に定法(routine method)を適用する場合の、計量経済学者の不注意によるものと思われる。定法ないし確立されたモデルや方法の単純な適用は、現実の注意深い分析やよ りよい分析のための新しいアプローチを発見する努力にとってかわることはできない」と。言いえて妙であり、われわれにとって至言であるといえよう。 なお、本書の日本語版は近々日本経済新聞社から出版される予定である。(稲田義久) 日本 <年後半の日本経済は減速するが、年平均では3%を上回る可能性が高い> 9月10日発表のGDP2次速報値によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.5%となり、1次速報値(同+0.4%)から1.1%ポイ ントの上方修正となった。実質GDP成長率上方修正の主要因は、民間企業設備、民間企業在庫品増加、公的固定資本形成が主因である。民間企業設備は1次速 報値の前期比+0.5%から同+1.5%へと上方修正された。2次速報値推計の基礎データである法人企業統計調査の好調な結果を反映したものである。法人 企業統計調査の結果により、実質民間企業在庫品増加も1次速報値の-0.2%ポイントの寄与度から2次速報値で-0.1%ポイントに上方修正された。公的 需要は、実質政府最終消費支出は同+0.2%から同+0.3%へと、実質公的固定資本形成も同-3.4%から同-2.7%へいずれも上方修正された。 1次速報値は過去に遡って改定された。実質GDP成長率の四半期パターンを比較してみれば、2010年1-3月期は0.6%ポイント(前期比年 率+4.4%→同+5.0%)と4-6月期同様に上方修正された。2009年については、1-3月期(同-16.6%→同-16.4%)と7-9月期(同 -1.0%→同-0.3%)が上方修正されたが、4-6月期(同+10.4%→同+9.7%)と10-12月期(同+4.1%→同+3.4%)は下方修正 された。この結果、半期ベースでみると、2009年7-12月期は前期比年率+3.0%と1次速報値の場合と変化がなかったが、2010年1-6月期は 同+3.7%となり、1次速報値の同+3.3%から加速していることに注意。 7月データがほぼ更新された9月13日の支出サイドモデルは、7-9月期の実質GDP成長率を、内需は拡大するが純輸出が縮小するため前期 比+0.6%、同年率+2.6%と予測する。予測動態のグラフが示すように、トレンドは上向いており今後3%を超える可能性が高い。ちなみに、マーケット コンセンサスは2.1%(ESPフォーキャスト9月調査)である。 7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.2%となる。実質民間住宅は同-2.0%、実質民間企業設備も同-0.1%と減少す る。実質政府最終消費支出は同+0.8%、実質公的固定資本形成は同+4.8%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+0.6%)に対す る寄与度は+0.8%ポイントとなる。財貨・サービスの実質輸出は同+2.4%増加し、実質輸入は同+5.1%増加する。このため、実質純輸出の実質 GDP成長率に対する貢献度は-0.2%ポイントとなる。 ただ10-12月期の実質GDP成長率は、内需は小幅拡大にとどまり純輸出は引き続き縮小するため、前期比+0.2%、同年率+0.8%と予測してい る。景気は政策変更に伴う駆け込み需要の反動減で減速するとみている。ただ2010年平均でみれば前半の好調に支えられ3%を超える成長を確保できそうで ある。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 8月の雇用統計が市場コンセンサスより良かったことから、景気回復に対して悲観的だった市場のセンチメントが楽観的な見方へと大きく変わった。市場のセンチメントが変化する兆候は8月のISM製造業指数が市場コンセンサスをかなり上回ったときからあった。 発表された月次経済統計をあるがままに更新して予測者の恣意的なデータハンドリングをしない”Go by the Numbers”手法による超短期予測では、8月30日と9月3日の予測で大きく変化したわけではない。ただ、7月の建設支出の大幅な低下による住宅投資 の大幅な下方修正が、8月の雇用統計による個人所得の上方修正を上回った。そのため、GDPはじめ、その他のアグリゲート指標が少し下方に修正されてい る。しかし、超短期モデル予測の立場は”景気回復に対する注意深い楽観的見方”に変わりはない。確かに、連銀エコノミストなどが懸念するように景気回復の ペースがスローダウンしてきたことは認めるが、それがダブルディップリセッションになる可能性は少ないとみている。それはグラフに見るように、7-9月期 の実質総需要、国内需要、最終需要2(GDP−在庫−純輸出)は前期比年率2.5%〜3.0%の成長率を示している。4-6月期に実質輸入が30%以上も 伸びた経済が今期にマイナス成長をするようなことはないだろう。今の米国経済では企業の利潤率が良くなり、設備・ソフトウエア投資が実質で10%程度の伸 びを続けている。更に、サービス個人消費支出も2%程度の伸び率を回復してきている。 今、大事なことは政策当局者が景気回復に対して楽観的になり始めた市場のセンチメントを利用し、株価の上昇をも たらすことである。政府はできるだけ早く高所得者を含めたブッシュの減税政策の延長を発表すべきである。この高所得者層には中小企業経営者がかなりいるこ とから、中小企業の雇用増に結びつく。FRBにしても、バーナンキ議長の最近の議会証言やジャクソンホールでのコンファレンスでの講演のようにいつまでも 悲観的でいるべきではない。FOMC議事録の書き振りも、”構築物の投資は依然としてマイナスだが、設備・ソフトウエア投資が堅調に伸びている”というよ うに前と後を逆に書くべきである。設備投資の高い伸び率を指摘しながら、その後で、それは旧設備の更新が多いためなどと否定的に述べるのではなく、設備更 新が先にくることは当然のことであり、FRBは更新設備から投資が堅調に伸びていると書くべきである。景気回復が初期において脆弱なことはいつものことで ある。政策当局は市場とのコミュニケーションも一つの重要な政策手段であることを忘れてはならない。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2010年8月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-08-19

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

ケインズは主著『一般理論』で、個人が貯蓄を増やしてもその人の所得は変化しないが、各個人が同時に貯蓄を増やせば社会全体では所得が減少するケース を、「合成の誤謬」として説明した。これは後にサミュエルソンによって「節約のパラドックス」として彼の大著『経済学』で紹介され有名になったものであ る。このパラドックスとは、皆が貯蓄に励めば結果として貯蓄が減少するということである。何故ならば、消費の減少は乗数効果を通じて所得を減少させ、貯蓄 率が一定ならば総貯蓄は減少することになるのである。この「節約のパラドックス」という議論は単純すぎるということでしばしば批判にさらされるものの、 リーマンショック以降の景気回復の説明には適していると思われる。 今月の米国経済の見通しでも触れられたように、7月30日に2010年4-6月期のGDPの速報値が発表になり、同時に国民所得統計が2007年1-3 月期まで遡及改定された。改定により、1-3月期の実質GDP伸び率は2.7%から3.7%へ1%ポイントも上方に修正されたが、これと同程度に重要な別 の改定も含まれている。 例えば、2009年の個人貯蓄率は5.9%となり前回推計から1.7%ポイント上方修正されたのみならず、2007年の2.1%からも大幅に上昇した。 また家計の貯蓄率のみならず、企業のキャッシュフローの対名目GDP比も10.5%(2010年1-3月期)と歴史的な高水準にあることがわかった。 このように米国の家計は貯蓄をより増やし、企業はより多くのキャッシュを手元に置こうとするのは、米国家計や企業の金融の健全性の観点(長期)からはよい ニュースである。しかし、「節約のパラドックス」が示唆するように、景気回復の観点(短期)からはよくないニュースである。 かつて米国家計は過小貯蓄で問題となったが、今や過剰貯蓄で問題となっている。この間、いったい何が起こったのか?米国家計は1990年代から2000 年代にかけて消費ブームを可能にしたファイナンスの方法が持続可能でないことがわかり、借入金での投機をやめること(deleverage)を迫られてい るのである。家計の金融純資産が減少したことや、景気回復や雇用見通しへの不安も貯蓄率を引き上げている要因である。 家計とは異なり、企業の金融状況はリーマンショック直後からかなり改善している。これまで企業は大胆にコストカットを図り雇用も削減してきたからだ。に もかかわらず、景気回復力の弱さに対する懸念が、設備投資に対して慎重にさせるなど、企業を過度にリスク回避的にしている。 このように、家計も企業もリスク回避的になっている時期に政府は一体何をすべきか?選択肢は限られているものの、大胆な財政金融政策からの出口戦略はこ とに慎重であるべきだ。100年に一度の不況からの回復には時間がかかる。意図的に財政金融政策を緊縮的にしてはならず、慎重な対応が求められるのであ る。FRBが景気回復に対してペシミスティックになるのは十分理解できる。(稲田義久) 日本 <7-9月期の日本経済、上振れる可能性が高い> 8月16日発表のGDP1次速報値によれば、4-6月期の実質GDP成長率は前期比+0.1%、同年率+0.4%となった。3期連続のプラス成長となったものの、2009年10-12月期の前期比年率+4.1%、2010年1-3月期の同+4.4%から大きく減速した。 4-6月期の実質GDP成長率(前期比年率ベース)への寄与度を見ると、国内需要は-0.9%ポイントとなり、成長率に3期ぶりのマイナス寄与となっ た。一方、純輸出は+1.2%ポイントの寄与にとどまった。純輸出は5期連続で成長率を引き上げたが、その寄与度は前期(+2.3%ポイント)から半減し た。外需は引き続き成長率を押し上げたものの、内需は政策効果の一巡やリーマンショック後の在庫積み増しが消滅したため、日本経済は、一次的にも踊り場局 面に差し掛かっていることを想起させる。 4-6月期の実績は市場コンセンサス(8月ESPフォーキャスト:+2.07%)を大幅に下回った。超短期モデルの最終週(8月9日)の予測では、支出 サイドモデルが同-0.3%、主成分分析モデルが同+4.3%、両者平均で+2.0%を予測していた。超短期モデル予測では、支出サイドモデルを重視して いるが、同モデルは(4月と一部の5月データが利用可能な)7月の最初からマイナス成長ないしゼロ成長を予測していたことになる。超短期予測はこれまでの 経験則のとおり、市場コンセンサスより2ヵ月程度早く、正確に予測できたことになる。 8月17日の支出サイドモデル予測は、7-9月期の成長率を、内需は拡大するが純輸出が縮小するため前期比+0.3%、同年率+1.2%と予測する。 10-12月期は、内需は小幅拡大するが純輸出は引き続き縮小するため、前期比-0.0%、同年率-0.1%と予測している。日本経済が一時的な踊り場に 入ることを示唆しているようである。ただ、年度後半の経済の四半期成長パターンは非常に乱高下(bumpy)すると考えている。政策の変更に伴う前倒し需 要が発生すると考えられるからである。エコカー補助金が9月末に終了し、タバコ値上げが10月に予定されているからである。これらの前倒し需要が7-9月 期に発生し、個人消費を押し上げるためである。また10-12月期には反動減が発生するものと考えられる。時系列モデルはこれらのデータのスパイク(急上 昇と急降下)を予測できないから、年度後半の個人消費の予測結果の判断には慎重でなくてはならない。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 7月30日に2010年4-6月期のGDPの速報値が発表になり、実質GDPの伸び率は前期比年率+2.4%となった。今回のGDP発表の前に、 国民所得統計が2007年1-3月期まで遡って改定された。改定によって、1-3月期の実質GDP伸び率は2.7%から3.7%へ1%ポイントも上方に改 定された。しかし、市場は経済成長率が1-3月期の+3.7%から4-6月期には+2.4%へ減速と捉え、その日のダウ平均はわずかに下落した。米景気が 回復し始めた2009年7-9月期から2010年4-6月期における実質GDPの平均伸び率は+3.2%である。これは緩やかな景気回復と言うよりも、堅 調な景気回復である。 市場は遅行指標である労働市場に注目をしていることから、景気回復に常に悲観的にならざるをえない。確かに、失業率は9.5%と依然として高く、非農業 雇用者数も6月、7月にそれぞれ-221,000人、-131,000人と減少した。しかし、これらはセンサス調査の終了による雇用減であり、民間部門の 雇用は今年の1月以降連続7ヵ月連続で増加している。7月のISM製造業・非製造業調査の雇用指数、その他のリッチモンド連銀、カンザスシティー連銀によ る製造業調査の雇用指数も拡大を示すようになっている。失業保険申請件数の減少は、特に4月以降止まり、450,000件の壁を下回る兆候を示していない が、おそらくその壁も今後2ヵ月内に打ち破られると思われる。 国民所得統計の改定で懸念されるのは、実質個人消費支出の下方修正である。2009年7-9月期から2010年4-6月期の実質個人消費支出の平均伸び 率が1.6%とかなり低く改定されたことだ。改定前の超短期予測は実質個人支出の伸び率が2.5%〜3.0%と予想し、景気回復を主導するとみていた。一 方、同期間の個人所得は1,700億ドル程度上方に改定され、今後の個人消費支出を下支えする可能性はある。 8月13日の超短期予測は、7-9月期の実質GDP伸び率を+0.2%と低く予想している。景気の実態を把握するためには、GDPから純輸出と在庫を除 いた実質最終需要の伸び率をみるのがよい。それによると、下のグラフが示すように、今期も3%程度の経済成長率が続く可能性は高い。今回の景気回復は脆弱 なものでなく、堅調である。景気回復にあまりに楽観的になるのも問題はあるが、労働市場の回復に固執し悲観的になりすぎるのは、回復の芽を摘むことにな り、よくない。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2010年7月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-07-14

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

7月2日〜3日、日本経済研究センターで「マクロモデル会議」が開催された(同センターHPを参照)。政策課題が活発に議論されたが、筆者流に解釈すれば、メイン・トピックスは(1)成長戦略と(2)環境政策であった。 (1)に関しては、九州大学篠崎彰彦教授(日本経済研究センター主任研究員)が、ITを通した生産性の引き上げという観点から、2020年までのシミュ レーション期間で、法人税率引き下げとIT投資の加速により、成長率を0.5%ポイント程度加速できるという分析結果を示した。成長戦略の重要なポイント は、IT資本の進化(deepening)である。ところで、篠崎教授の分析はマクロの生産性の分析であったが、産業ごとにIT投資進化の重要性を指摘し たレポートに熊坂有三(経団連プロジェクト:IT革新による日本産業への影響—日本経済の3%成長実現への政策提言—(2008年))がある。このレポー トは、筆者も間接的にかかわってきた日本版上げ潮路線の産業版ともいえよう。 話は変わるが、日本経済の「失われた20年の原因」の1つとして、デフレ犯人説がある。この数年の日本経済を見れば、消費者物価が1%下がれば賃金が 2-3%下がるという状況にあった。逆にいえば、賃金が2-3%上昇すれば、物価が1%上昇する。だから、デフレが問題であると。しかし、中国と同じ製品 を作っていれば日本の賃金が低下する(グローバル化による要素価格の均等化)のは当たり前である。これはデフレとは無関係で、問題は、日本がいかにより良 い(高付加価値の)製品・サービスを作り出せていないかである。日本経済低迷脱出のカギはIT革新、グローバル化への迅速な適応にある。実際、日本企業の IT活用については、経営戦略・成長戦略へのIT使用が特に遅れているといわれている。 (2)のテーマでは、「地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(環境大臣試案)」に盛り込まれたモデル試算が取り扱われた。これまで二酸化炭素削減政 策を実施した場合、負担のみを強調する傾向があったが、ロードマップではそのプラス面(省エネ投資・消費の需要拡大効果)にも着目したのが特徴である。よ りバランスのとれた分析になっている。 これらの分析から、環境部門は将来有望な成長分野であり、この分野への投資は大きな波及効果をもたらすことが示された(藤川清史、下田充:グリーン投資 の経済・雇用効果)。そのためにも、環境投資促進に向けて財政政策のみならず規制緩和政策が重要となる。財政制約の中で公共投資が伸びないなか、民間投資 や省エネ化を誘発するための政策が重要で、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度、排出量取引制度、環境税などの議論が十分されるべきである。 今後の成長戦略を考える場合、「第三の道」のロジックも重要だが、実証に支えられた具体戦略としてIT投資の進化と環境戦略が2本の柱となることは確実だ。(稲田義久) 日本 <4-6月期の日本経済、踊り場の可能性高まる> 7月12日の予測では、6月の一部と5月のほとんどの月次データが更新された。これまでの月次データは、4-6月期の日本経済が一時的な踊り場に入ったことを示唆している。 生産や出荷をみると、5月の鉱工業生産指数は前月比-0.1%と3ヵ月ぶりのマイナス。資本財出荷指数は同-10.2%と大幅低下した。6ヵ月ぶりのマイナス。生産や出荷の拡大スピードは減速している。 労働市場の回復は遅れている。5月の現金給与総額は前年比-0.2%と減少、3ヵ月ぶりのマイナスである。完全失業率は前月比0.1%ポイント上昇し、5.2%となった。3ヵ月連続の悪化である。また雇用者数は2ヵ月連続で前月比マイナスを記録した。 民間需要は停滞気味である。5月の消費総合指数は前月比-0.4%と2ヵ月連続のマイナス。この結果、4-5月平均は1-3月期比横ばいとなった。5月 の小売業販売額は前月比-2.0%で5ヵ月ぶりのマイナス。政府の耐久消費財購入促進プログラムの規模が縮小となったため、反動減が生じている。またこれ まで回復を見せていた住宅市場も低調気味である。5月の新設住宅着工数は前月比-7.0%と2ヵ月連続のマイナスである。 これらの低調なデータを反映した今週の支出サイドモデルは、4-6月期の実質GDP成長率を、純輸出は横ばい内需が縮小するため前期比-0.3%、同年率-1.3%と予測する。先月の予測(+2.5%)から大幅下方修正された。 一方、7-9月期の実質GDP成長率は、内需、純輸出ともに緩やかに拡大するため、前期比+0.2%、同年率+0.8%と予測している。先月の予測(同+3.1%)から大幅下方修正された。 4-6月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比横ばいとなる。実質民間住宅は同-5.8%と減少し、実質民間企業設備は同+0.6%と小幅 のプラスにとどまる。実質政府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同-20.3%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比 -0.3%)に対する寄与度は-0.3%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同+2.9%増加し、実質輸入は同+4.2%増加する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は0.0%ポイントとなる。 7月1日発表の6月短観によると、最も注目される業況判断指数は、大企業製造業で+1となり、前回調査から15ポイント改善した。5期連続の上昇で初め てプラス領域に入った。金融市場の混乱の影響はみられず、ポジティブサプライズであった。企業のセンチメントは大企業製造業を中心に引き続き改善している が、先行きに関しては、中堅企業・中小企業ではいずれも悪化が予想されている。このように企業の景況感は足元着実に回復しているが、設備投資計画は依然慎 重で雇用者数も減少しており、最終需要の回復には少し時間がかかりそうである。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 投資家はこれまでの景気への悲観的な見方が嘘のように、7月5日から始まる週には景気への見方が急に楽観的になった。その週には、株価は4日間連続して 上昇し、ダウ平均株価指数は512ポイント、5.3%も上昇した。前週の6月29日に、6月のコンファレンスボードの消費者コンフィデンスが10ポイント 低下した時、ダウ平均株価指数は268ポイントも低下した。投資家が景気に対して楽観的な時は、“コンフィデンスはコンフィデンス”というのが常である。 一体、何が起こったのであろうか。たしかに、IMFが世界経済の成長率を少し上方に修正したり、欧州の銀行に対するストレステスト(健全性審査)を巡る懸 念が後退するという外的な要素はあった。しかし、これで投資家の景気へのセンチメントが急変したことを説明するのは難しい。 投資家は懸念していた景気の二番底の可能性の低さに気づき、また12日の週から本格的に発表される2010年4-6月期の企業収益に期待をしたためだと 考えられる。超短期予測が示すように、景気の二番底どころか、同期の経済成長率が3%程度になることは十分に可能である。また、国民所得の企業収益と企業 が発表する企業収益は幾分異なるが、2010年1-3月期のGDP統計(確報値)を反映した後の4-6月期GDPの統計上の誤差が大きく下方に修正された ことは、企業収益の上方修正を示唆する。市場にとって良いサプライズの企業収益発表があるかもしれない。 7月9日の超短期予測が示すように、GDP以外のアグリゲート指標で経済をみても4-6月期の経済成長率は3%を超えるとみてよい。今回の景気回復が持 続的な回復になるには、投資家が今の景気回復が堅調なことを認め”Cautious Optimism(注意深い楽観的な見方)”を維持するのがベストで 最もコストのかからない対策である。これまでは、あまりに景気回復に悲観的すぎた。住宅バブルの崩壊から住宅市場が改善するには、いつでもかなりの時間が かかるし、労働生産性の改善が著しいなかで急速な雇用増を求めるには無理がある。そのような中で3%の経済成長率は非常に好ましいと言える。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2010年6月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-06-23

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

6月18日に政府から「新成長戦略」(副題:「元気な日本」復活のシナリオ)が発表された。あわせて戦略実行の工程表も示された。新成長戦略の基本哲学 は、いわゆる「第三の道」による日本経済の建て直しである。すなわち、これまでの公共事業中心の経済政策(第一の道)や、行き過ぎた市場原理に基づき、供 給サイドに偏った生産性重視の経済政策(第二の道)から、経済社会が抱える課題の解決のため、新たな需要や雇用の創出をはかり、それを成長につなげる政策 (第三の道)に転換することを意味している。また新成長戦略は「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」の一体的実現に主眼を置いているのが特徴であ る。 具体的なイメージとしては、新成長戦略で「強い経済」の実現を図り、2020年度までに年平均で、名目3%、実質2%を上回る経済成長を目指している。すなわち、1%程度のインフレ率(GDPデフレータ)を想定していることになる。 同時に民主党から参議院選挙向けのマニフェスト(Manifesto 2010)が発表された。2009年度版と比較すると、以下の3点が新しいところである。まず、(1)歳出面において、短期的な所得補償型政策から中期的 な雇用創出型政策に転換したことである。(2)歳入面では、早期増税の可能性が視野に入ってきたことである。(3)その結果、長期的(10年後)には国と 地方の基礎的財政収支を黒字化するという点が新たに追加された。 (1)に関して言えば、2010年度の予算編成過程では効果的な歳出抑制機能が働かなかったという反省から、需要・雇用創出基準で優先順位をつけること にした。この点から、子ども手当の満額支給断念と一部現物支給の可能性、農家戸別所得補償の縮小、高速道路料金無料化断念等を決定する一方で、大都市イン フラ整備のための投資に注目した。(2)に関しては、法人税減税や消費税増税の必要性に触れているが、具体的にスケジュール化したわけでもなくインパクト に欠ける。第三の道の政策とは、増税(例えば消費税)と特定分野への重点的な資源投入の組み合わせによる雇用創出と考えられるが、この政策効果は早期には 期待できない。 以上から、2010-11年度に限ってみれば、財政状況は景気回復の影響で財政収入が幾分改善し、歳出削減については幾分進行することから、国債新規発 行は当初予算の44兆円以下に収まるとみている。要は、残された3年間で「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」の一体的実現ができるような政策メ カニズムを構築できるかである。(稲田義久) 日本 <4-6月期、成長率は減速するが堅調な伸びが続く> 今週(6月21日)の支出サイドモデルは、4-6月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大するが内需が減速するため前期比+0.6%、同年 率+2.5%と予測する。また7-9月期の実質GDP成長率を、内需・純輸出ともに緩やかに拡大するため、前期比+0.8%、同年率+3.1%と予測して いる。いずれも1-3月期の同年率+5.0%の高成長率からは減速するものの堅調な伸びとなろう。 4-6月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.1%となる。実質民間住宅は同-3.8%減少するが、実質民間企業設備は 同+3.7%増加する。実質政府最終消費支出は同+0.7%増加するが、実質公的固定資本形成は同-19.9%と大幅な減少となる。このため、国内需要の 実質GDP成長率(前期比+0.6%)に対する寄与度は+0.1%ポイントにとどまる。 内需が減速するのは公的需要(公的固定資本形成)の減少が民間需要の伸びをほぼ相殺するためである。月次データをみると、4月の公共工事は前年同月比 -17.4%減少し、17ヵ月ぶりのマイナス。季節調整値ベースでみれば、前月比-15.4%と大幅減少し、3ヵ月連続のマイナスとなった。公共工事の先 行指標である公共工事請負金額も5月に前年同月比-5.9%となった。5ヵ月連続のマイナス。季節調整値は前月比-15.8%減少し、2ヵ月ぶりのマイナ ス。このように、公共工事は明瞭な減少トレンドを示している。 外需をみると、財貨・サービスの実質輸出は前期比+4.9%増加し、実質輸入は同+2.2%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.5%ポイントとなる。景気は依然として外需に支えられている。 1-3月期の実質GDP成長率への寄与度をみれば、実質純輸出は4四半期連続で、実質内需は2四半期連続で成長率を引上げている。今後純輸出に大崩れがなければ、日本経済は堅調な伸びとなろう。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 グラフにみるように、5月の雇用統計を更新した時点で超短期予測(6月4日)は4-6月期実質GDP成長率を4%程度と予測した。その後、地区連銀が発 表した製造業指数の減速と一致するように、超短期予測で示される景気拡大もスローダウンしてきた。しかし、懸念した景気の下降トレンドは形成される様子は なく、6月18日の予測では、同期の経済成長率は悪くとも2.5%を維持するものとみている。このことは、超短期予測は市場ないし連銀が考えているより、 景気の見方が楽観的であることを意味している。 米経済は堅調に回復をしてきている。にもかかわらず、これまでホーニング・カンザスシティー地区連銀総裁を除いて政策金利の引上げを主張する連銀エコノ ミストはいなかった。確かに、ギリシャ債務危機の米経済への影響に不確実性があったことから政策金利引上げに対して慎重になる連銀の態度も理解できる。し かし、6月に入るや、フィッシャー・ダラス地区連銀総裁とロックハート地区連銀総裁がホーニング総裁と同じような見解を示すにいたった。 ホーニング総裁は夏の終わり頃までに政策金利を1%に引上げることを主張している。フィッシャー総裁は米経済は今すぐに利上げを求める状況ではないが、 利上げへの準備の必要性を説いている。そして、米景気の回復が確実なものになるなかで、利上げの時期が近いことを示唆している。ロックハート総裁は経済が 引き続き回復し、金融市場が安定していく中で、今の異常な低金利政策は景気回復の目的としては必要でなくなり、むしろ物価安定維持の目的と一致しなくなる と言う。 このように、これらの3人の総裁は超短期予測が示すような米経済の堅調な回復に気付き始めた。ヨーロッパの債務危機のグローバル経済への懸念が薄らいで くれば、景気の減速も収まるであろう。今後、超短期予測は経済成長が下降トレンドを形成するより、上昇トレンドに戻る可能性が高いと思われる。したがっ て、政策金利引き上げ機会が意外に早く来るかもしれない。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2010年5月).

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-05-24

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

4月頃よりギリシャの債務問題が世界の金融市場に悪影響を及ぼし始め、デフォルト(債務不履行)必至論まで出た。金融市場で影響力のある Mesirow Financial社(シカゴに拠点を持つ金融サービス会社)のエコノミスト達は“前例のないEU/ECB/IMFによる巨額な1,100億ユーロの救済 パッケージもギリシャのデフォルトを避けることはできない”と言う。債務問題がギリシャ一国のデフォルトで済めば全く問題はない。怖いのは、H1N1ウイ ルスの伝染のように、債務危機がギリシャ国境を越えて他国へ“伝染”することである。既に、伝染可能性の高い国として“PIIGS”という言葉もできでい る。すなわち、ポルトガルPortugal(74.9%)、Ireland (61.3%), Italy(114.8%)、 Greece(111.5%), Spain(52.0%)である。括弧内の数字はOECD, 世銀などの資料を参考にした各国の2009年末の公的債務 残高の対GDP比率である。 ギリシャがデフォルトに陥れば“伝染”は確実になるだろう。そこでIMFでシニア・エコノミストをしているギリシャ人の友人に2つの質問をしてみた。最 初の質問はギリシャのデフォルトは本当に起こるのか? 2つ目の質問は、どのようにしてギリシャはこの債務問題を解決するのかである。彼は最初の質問に対 して、“絶対にデフォルトはない。再建プログラムは3年間の融資(1,100億ユーロ)を約束している。何故、デフォルトが考えられる! デフォルトは問 題解決よりももっと多くの問題を引き起こす。例えば、EUや債券所有者との関係、銀行との関係、民間部門のファイナンシングなどにおいてである。デフォル トによって上手く行くものは何もない。ただ、ファイナンシャル・パイレート(強欲な金融市場関係者)たちがギリシャ政府のCDS契約から利益を上げるだけ だろう”と答えた。2番目の質問に対しては“ギリシャがこの問題を解決する方法は一つしかない。合意されたEU/ECB/IMFの再建プログラムをきちん と実行して、市場の信頼を回復することだ”と答えた。 おそらく彼の答えが正しいであろう。フランスとドイツの間の協調には不協和音もあるが、最終的にはギリシャ債務危機の“伝染”は防げるであろう。 懸念されるのは公的債務残高の対GDP比率が200%程度とギリシャの2倍近くもある日本である。ギリシャが国債消化の70%を海外投資家に頼っている のに対して、日本の場合は国債保有の94%が日本人であるという奇妙な安心感がある。これは、海外投資家にとって利回りの低い日本の国債に魅力がないだけ のことである。ギリシャよりも更に悪いかもしれない。日本政府にしても、いつまでも国債の売却を日本人に任せておくわけにはいかない。数年内に債務残高が 現在1,400兆円の個人資産を上回れば、国債を外国人に買ってもらわなければならない。そうなれば、国債金利は跳ね上がり、その日本経済への影響を大き いだろう。菅財務大臣がバンクーバーオリンピックの時期に開かれたG20ミーティングで“債務残高競争ならば日本は確実に金メダル”と冗談(?)を言って いたことには驚いた。債務問題に対する危機意識の完全な欠如である。“5年以内に日本は債務危機に襲われる”というエコノミストもいる。かつては“アジア のアルゼンチン”とも言われ、今度は“アジアのギリシャ”とも言われかねない。日本政府は“債務危機”を真剣に考える必要がある。“危機はある日突然に訪 れる”ことを忘れてはならない。(熊坂有三 ITエコノミー) 日本 <4-6月期、成長率急落の可能性は低い> 5月20日発表のGDP1次速報値によれば、1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+4.9%となり、4四半期連続のプラス。前年同期比で も+4.6%となり、8期(2年)ぶりにプラスに転じた。これにより、日本経済は着実な回復経路を辿っていることが確認できた。この結果、2009年度の 実質成長率は-1.9%と2年連続のマイナス成長(2008年度:-3.7%)となった。ただ2010年度への成長率の下駄は+1.5%となっており、成 長率の上振れが期待できる。 過去の数値をみると、直近の3四半期連続で上方修正された。このため、GDPの水準自体は改訂前の水準をベースにした推計値(前回の10-12月期実績に今回の成長率を乗じた)を上回っていることに注意。すなわち、1-3月期の実勢は数値以上に強いものといえよう。 公表値は市場コンセンサス(ESPフォーキャスト:+4.7%)に近い結果となった。超短期モデルの最終週での予測では、支出サイドモデルが 同+9.8%を予測していていた。今回の超短期予測は、市場コンセンサスや実績から大きく外れる結果となったが、すでに見たように1-3月期の実勢は数値 以上のものであるから、その差は大きくはないと見ている。また3月の中旬にはすでに実績に近い予測を示しており、市場コンセンサスが1%台前半にとどまっ ていたのとは好対照である。 1-3月期のGDP1次速報値を追加した5月24日の支出サイドモデルは、4-6月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大するが内需の伸びが減 速するため前期比+0.8%、同年率+3.3%と予測する。7-9月期の実質GDP成長率を、内需の伸びは拡大するが純輸出の拡大ペースが減速するため、 前期比+0.5%、同年率+2.2%と予測している。 4-6月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.1%へと減速する。実質民間住宅は同-2.9%と減少し、一方、実質民間企業設備は 同+1.8%と増加する。実質政府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同-8.3%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期 比+0.8%)に対する寄与度は+0.2%ポイントとなる。内需の成長率寄与度は前期より低下する。 一方、財貨・サービスの実質輸出は同+3.8%増加し、実質輸入は同-0.2%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.6%ポイントとなる。引き続き成長率に対して高い寄与度をとなる。 ちなみに、マーケットコンセンサス(5月ESPフォーキャスト)は、実質GDP成長率(前期比年率)を4-6月期+1.44%、7-9月期+1.62% とみている。一方、超短期予測は2%以上の比較的堅調な伸びが持続するものとみており、成長率の急落はないものと予測している。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 グラフにみるように、5月21日の超短期予測において支出・所得サイドの平均実質GDP伸び率(前期比年率)は1ヵ月前の2%〜3%の範囲から更に 3%〜4%の範囲へと上方に修正された。通常ならば、これまでの異常な低金利を正常に戻す“出口戦略”を開始すべきである。しかし、そのような意見を述べ るFOMCメンバーはカンザスシティー連銀のトーマス・ホーニング総裁一人である。他の連銀総裁達はシカゴ連銀のチャールズ・エバンス総裁のように“緩や かな米経済成長や比較的安定なインフq2レを背景に、現在連銀が超低金利を維持していることは適切”と考えている。 市場(おそらく連銀も)は超短期モデルが予測しているような3%〜4%の範囲の高い経済成長率を予想していないかも知れないが、少なくとも2%〜3%の 経済成長率を現在予想していると思われる。しかし、株価の動きに見るように、市場は堅調な景気回復を信頼するよりもギリシャの債務問題の欧州諸国への伝染 による再度の金融危機を恐れている。例えば、5月10日にEUは1兆ドル規模の金融支援を発表したが、それも1日株価を上げただけである。スペイン政府、 ポルトガル政府が財政赤字削減に対する緊縮財政措置を発表したが、市場は一時的に好感したものの、市場心理がネガティブな今、両国の緊縮財政措置がEUの 経済成長への足かせになると捉えるようになった。 米国経済が非常に堅調に回復をしているにも関わらず、欧州発の金融危機以外の懸念材料はEU諸国経済の停滞から米国の輸出が落ちることである。更に重要 なのは、株式市場の停滞・下落から消費者センチメントが再び悪化し、せっかくの消費者リードの経済回復が崩れることである。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2010年4月).

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-04

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

2007年9月の本コラムで、中国成長のカギを握る農業についてレポートした。当時としての中国経済に対する判断は、「10%を超える成長のモメンタム を維持しており、この傾向は少なくとも上海万博が開催される2010年まで持続する」というものであった。この間、リーマン・ショックというかつてない世 界的な景気の落ち込みを経験したが、中国経済は足下でみれば当時の診断がさほど外れていないようである。「経済成長の牽引役は工業であり、当面、何らかの 措置を講じなくても高成長を持続しそうな勢いである」と成長の強さを強調する一方で、農業の停滞は全体の成長にとって大きなリスクとなっていることを強調 した。実際、農業生産性の停滞は食料価格の上昇や食料輸入の増加をもたらしていることを指摘した。 中国農業は三農(農村、農業、農民)問題を抱えており、中国農民は貧しく、一向に豊かになれないのである。中国政府は都市住民との所得格差を是正するた め農業税を廃止したが、あまり効果は上がっていないようである。現地の農業問題専門家の指摘によれば、(1)低い社会保障制度、(2)低い農村の教育水 準、(3)貧弱な農村技術指導が大きな問題である。 これまで筆者が参画する東アジアの発展と環境に関する調査プロジェクトは、農家向けの戸別メタン発酵装置(有機性廃棄物からメタンを発酵させ高率よくメ タンガス等のバイオガスを回収)導入による農村地域の貧困及び環境改善の可能性を調査してきた。この政策は、(1)貧困地域には経済・環境改善の効果があ るが、都市周辺地域ではほとんど効果がなく、(2)立地条件が重要な要素である。これが、複数の調査結果から得た結論であった。 そこで、都市周辺の農村地域の発展モデルの1つとして、6次産業化(1次産業、2次産業、3次産業を同時に実現するという意味で)を実現し、国家モデル となっている留民営村(北京市郊外第6環状線の外の大興区長子営)を3月初旬に調査した。同村は人口860人、戸数260戸、面積2,212ムー (148ha)の規模である。農地面積は1,800ムーで小麦、トウモロコシ、野菜が中心である。特に、北京市内向けに低農薬・無農薬の緑色食品を販売し ている。安全で高品質な農産物を供給する「生態農業」としてつとに有名なのである。同村には、小規模な工業団地があり工業生産もある。また「グリーンツー リズム」も内包しており、農業を中心に多様な付加価値を生み出す農村となっている。 留民営村が成功・機能している要因としては、(1)北京市、天津市の近郊という立地特性を生かした緑色製品の生産販売(農商連携)、(2)輸出用農産物 も生産(立地の優位性)、(3)農産物の加工販売(農工連携)、(4)生態農業による家畜糞尿等の循環利用(畜産連携)、(5)主流の農家個別ではなく、 村単位として発展に取り組んだこと、(6)キーマン(村長)のリーダーシップを挙げることができる。日本でも鳩山政権の政策の一つとして農業の高付加価値 化が謳われているが、留民営村は非常に参考になるモデルである。 最後に、このモデルの課題を指摘しておこう。一見素晴らしいモデルを留民営村は確立してきたのであるが、後継者問題が最大の課題となっている。若年労働 者が北京市や天津市などの高所得を生み出す地域に流出する傾向を反転することはできない。現地の農業労働者の高齢化が進んでいるのである。(稲田義久) 日本 <成長率の加速を予測:1-3月期の日本経済。しかし、大幅な需給ギャップが足枷> 4月19日の予測では、1-3月期のGDPを説明する一部の3月のデータ(金融物価関連)と2月のほとんどの月次指標が更新された。 超短期予測(支出サイドモデル)は、1-3月期の実質GDP成長率を、内需が大幅拡大し純輸出も引き続き拡大するため前期比+1.9%、同年 率+7.8%と予測する。先月の予測(+5.0%)から大幅上方修正されている。この強気な見方は、マーケットコンセンサス(+2.42%:4月ESP フォーキャスト)とは対照的である。 超短期予測が強気である理由は、内需が前期比大幅拡大するという見方が、コンセンサス予測とは異なる点であると思われる。 1-3月期の国内需要をみると、実質民間最終消費支出は前期比+0.9%と堅調な伸びを予測している。実質民間住宅は同-1.0%減少するが、実質民間 企業設備は同+5.9%大幅増加するとみている。実質民間企業在庫品も4,450億円増加する。実質政府最終消費支出は同+0.8%、実質公的固定資本形 成は同-4.6%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+1.9%)に対する寄与度は+1.6%ポイントとなる。 内需のうち、民間最終消費支出と民間企業設備の強めの予測が特徴的である。1-2月期の平均消費総合指数は10-12月期比+0.9%上昇した。1-2 月の小売業販売額の好調も1-3月期の民間消費が堅調であることを示唆している。政策効果の表れといえよう。一方、民間企業設備についてみると、2月の資 本財出荷指数(確報値)は前月比+7.2%増加し、3ヵ月連続のプラス。同指数の1-2月平均は10-12月期比+15.4%と大幅な上昇となった。この ため、1-3月期の実質民間企業設備の予測値は大幅に上方修正されている。その他のGDP項目では、実質民間企業在庫品増加の予測値が上方修正されてい る。 1-3月期の財貨・サービスの実質輸出は前期比+4.9%増加し、実質輸入は同+3.7%増加する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.3%ポイントとなる。 このように、1-3月期経済は、政策要因と海外市場の回復に支えられ非常に高い成長を実現しそうであるが、問題は持続性である。高い成長にもかかわら ず、GDPデフレータは、1-3月期に前期比-0.8%、4-6月期に同-0.5%となる。民間最終消費支出デフレータも、1-3月期に同-0.2%、 4-6月期に同-0.4%と予測しており、大幅な需給ギャップの存在が持続的成長の足枷となっている。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 グラフにみるように、4月16日の超短期予測では、支出・所得サイドの平均実質GDP成長率(前期比年率)が3%となった。それまでの緩やかな上昇トレ ンドが急な上向きに変わった。1-3月期の支出サイドの成長要因は個人消費支出で、おそらく3.5%程度の伸び率となり成長率には2.5%ポイント程度の 寄与となろう。在庫は前期ほどではないが1%ポイント程度成長に寄与するだろう。純輸出は輸出入共に大きく伸びるため、成長にはそれほど大きく寄与しない だろう。しかし、輸出入の大きな伸び率は米国の貿易相手国、米国自体の景気回復を意味している。構築物投資、住宅投資の低迷は、成長にとって大きなマイナ ス要因となる。 今回最も予測が難しく不確実性が残るのが、景気刺激策・金融危機対策を含む政府支出である。3月の政府支出は大きく減少しているため、成長へのマイナス要因となることも考えられる。一方、所得サイドでの成長要因は個人所得と法人所得の増加である。 成長率が3%(前期比年率)程度になる一方で、インフレ率(前期比年率)は0.5%〜1.5%と落ち着いている。このことから、景気の本格的回復(例え ば、雇用増)を確認するまでFRBは出口戦略を急ぐ必要はないとの見方もあるが、4月30日発表の2010年1-3月期実質GDPの成長率が3%を超えれ ば、やはりFRBは政策金利引き上げに動きたくなるだろう。異常な低金利の期間が長すぎることは誰もが認めており、その潜在的な弊害が大きいことも知って いる。今の米国の景気回復をみると、製造業が本格的に回復しており、25ベーシスポイント(0.25%)程度の政策金利引き上げで景気の腰が折れるような ことはない。 このように考えると、1-3月期の実質GDP成長率が3%を超えた時点で、FRBは政策金利を徐々に引き上げる態勢に入るだろう。これは、市場コンセン サスとは異なる見方だが、6月22日、23日のFOMCにおける25ベーシスポイントの政策金利引き上げのシナリオを描いてもよいだろう。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2010年3月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-03-18

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

関西経済にとって益々アジア経済、特に中国経済の重要性が高まりつつある。リーマンショック以降、2四半期連続の2桁マイナス成長の後、日本経済は外需 (海外市場)の回復に支えられて緩やかな回復局面にある。輸出市場として、新興国市場、特に中国を中心とするアジア経済の役割は非常に大きい。当研究所が 四半期ごとに発表する「関西エコノミックインサイト」において、関西予測モデルに基づいて関西地域の総生産(GRP)やその構成項目の短期予測を公表して いる。同時期に公表される日本経済の予測と比較して、民間企業設備や輸出が全国に比して強く出るというのが最近の特徴であった。今月のトピックスでは、関 西予測モデルの輸出関数に注目して、関西の輸出構造の特徴を見てみよう。 まず地域別の輸出のシェアを全国と関西とで比較しよう。2008年度の通関輸出をみると、全国ベースで、アジア、中国、米国、その他地域のシェアは、そ れぞれ50.0%、16.5%、17.0%、33.0%となっている。関西ベースでは、それぞれ60.6%、20.5%、12.6%、26.8%となって いる。関西では輸出市場としてアジアのウェイトが全国に比して10%ポイント程度大きいのである。2009年度ではさらに拡大していることが予想される。 また中国市場のウェイトは全国に比して4%ポイント大きくなっている。 関西予測モデルの輸出関数(GRPベース)では、所得変数としては中国、米国、EUの実質GDPの加重値を採用してきたが、輸出関数は地域別に分割して いなかった。今回、アジア、中国の重要性を考慮して、輸出関数を地域別に推計した。推計期間は1980-2006年度である。輸出関数は、通常、所得弾性 値と価格弾性値によって特徴づけられる。所得変数は輸出相手国の実質GDP、価格変数は世界輸出価格と日本の輸出価格の相対比である。なお、対アジア輸出 関数(中国以外)の所得変数として米国の実質GDPを採用しているのは、アジアで部品を組み立て、最終財を米国に輸出するという経路を考慮しているためで ある。また、その他地域では、所得変数として米国とEUの実質GDP加重値を採用している。 下表が推計結果の要約である。これまで使用してきた関西の輸出関数(対世界)では、所得弾力性が1.196、価格弾力性が-0.298となっている。輸 出関数を中国、中国以外のアジア、その他地域(アジア以外)に分割すると、所得弾性値は、1.964、1.101、0.380とそれぞれの国や地域の成長 率の高さに対応した値となっている。また、価格弾性値も中国(-0.783)と中国以外のアジア(-0.869)ではよく似た値をとるが、その他地域では 低い弾性値(-0.190)となる。このように、輸出関数を関西にとって重要な地域に分割することにより、中国財政政策の関西経済に与える影響といった、 より現実に即したシミュレーションが可能となる。(稲田義久) 日本 <1-3月期の予測は対照的:超短期vs.コンセンサス予測> 3月15日の予測では、3月の第2週までの月次データと2009年10-12月期GDP統計(2次速報値)を更新している。この結果、2010年1-3 月期の実質GDP成長率を支出サイドモデルは前期比+1.2%、同年率+5.0%と予測している。内需と純輸出がともに拡大するバランスのとれた成長と なっている。また4-6月期を同年率+2.9%と見ている。 3月11日に発表されたGDP2次速報値によれば、10-12月期の実質GDP成長率は同年率+3.8%となり、1次速報値の+4.6%から0.8%ポ イント下方修正された。下方修正の主要因は民間在庫品増加の下方修正である。1次速報値では民間在庫品増加の実質GDP成長率に対する寄与度(年率) は+0.3%ポイントであったが、2次速報値では-0.6%ポイントへと下方に修正された。すなわち、民間在庫品増加の変化(-0.9%ポイント)が実質 GDP成長率の下方修正を説明していることになる。たしかに成長率は下方修正されたものの、一段と在庫調整が進んだという意味では、先行き見通しにとって は明るい材料である。 さて、問題の先行きの見通しである。2次速報値発表前の3月9日に発表されたマーケットコンセンサス(3月ESPフォーキャスト調査)によれば、1-3 月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.17%となっており、超短期予測に比べ非常に悲観的な見方となっている。グラフからわかるように3月8日以降、 超短期予測は+2%から+4%〜+5%にシフトしてきている。 上方シフトの主要因は、実質民間最終消費支出の予測が上方修正されたことによる。実質民間最終消費支出をよく説明する消費総合指数は、1月に前月比 1.0%増加している。一方、消費総合指数よりカバレッジの狭い全世帯実質消費支出は同-1.3%減少している。反対の結果となっている。マーケットコン センサスは全世帯実質消費支出の結果に影響されているようである。カバレッジの広いデータでみる限り、依然として実質民間消費は政策効果に支えられて堅調 なようである。2-3月の動向次第であるが、現時点では、日本経済に対して悲 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 3月12日の予測では、3月の第2週に発表された2月の小売業、1月の貿易収支、企業在庫などを更新している。超短期予測モデルは2010年1-3月期の米国実質GDP成長率を前期比年率+1.7%、4-6月期を同+1.6%と予測している。 米景気は緩やかに回復しているが、その成長率はせいぜい2%程度である。1-3月期の景気回復をもたらす主な要素は個人消費支出である。賃金・俸給が伸 び始めたものの2%程度(同)であり、一方、実質個人消費支出の伸び率は3%程度(同)が予想されている。このように、給与の伸びを上回って、個人消費支 出が伸びる背景には家計の純資産の回復がある。 家計の純資産は今回のリセッション前のピークには65.9兆ドルにまで拡大したが、2009年1-3月期には株価・住宅価格の下落から48.5兆ドルに まで減少した。しかし、昨年の3月以来の株式市場が上げ相場(bull market)に転じることにより、純資産は2009年4-6月期、7-9月期、10-12月期とそれぞれ前期比4.5%、5.5%、1.3%増加し、 10-12月期末には54.2兆ドルにまで回復した。ピーク時の純資産の水準に戻るまでまだ21%上昇しなければならないが、このような純資産の回復が個 人消費支出の3%程度の伸び率に寄与しているといえよう。 個人消費支出が今後も堅調に伸びるかの一つの鍵は、株式市場の上げ相場がどのくらい長く続くかである。上げ相場の始まった2009年3月9日より1年間 で、ナスダック、SP500、ダウの株価指標はそれぞれ85%、69%、61%上昇した。過去15回の上げ相場の平均継続年数は約4年と長く、2年以下で 終わった時は3回しかない。幸いにも、株価の上昇にとって最もネックとなる”インフレの加速化”、”金利の上昇”は当分みられそうもない。このことから、 上げ相場の継続には幾分楽観的になれる。しかし、なんといっても、景気回復が本格的な軌道に乗るためには、”雇用増−所得増”の好循環が始まることであ る。すなわち、米国経済は未だ自律的な景気回復には至っていない。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2010年2月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-02-18

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

当研究所では、先行き2年程度の経済予測を四半期ごとに発表しているが、同時に、このホームページで、毎月足元を含め2四半期先の予測(超短期モデルに よる月次予測)を発表している。四半期ごとの予測では超短期予測の情報を加味して、特に足元の予測精度の向上も図っている。各四半期の予測時点において は、足元に限られてはいるものの月次情報があり、それを有効に予測に利用しようというのが、超短期予測の発想である。 超短期予測のメリットの一例を示そう。2月15日に10-12月期のGDP1次速報値が発表された。同期の実質GDP成長率は前期比+1.1%、同年 率+4.6%となり、3四半期連続のプラスとなった。1次速報値発表前の超短期予測(支出サイドモデル)は+4.8%と実績値にほぼ等しくなっている。ち なみに直前のコンセンサス予測(ESPフォーキャスト調査、2月9日発表)は+3.46%となっている。超短期予測は週次ベースでコンセンサス予測は月次 ベースで景気見通し(実質GDP成長率)を発表しているため、四半期毎ではなく、より頻繁に景気を見直すことができるといメリットがある。また超短期予測 は予測の精度が高く、速報値が発表される2-3ヵ月前でも十分精度の高い予測が提供できるという特徴がある。 図は超短期モデルの予測の動態を示しており、予測パフォーマンスをコンセンサス予測と比較している。10-12月期の実質GDPの予測は速報値が発表さ れる6ヵ月前からスタートする。10-12月期の最初の月次データが予測に利用可能となる11月初旬に超短期モデル予測は3%台半ば(支出サイド、主成分 分析モデル平均)となり、12月には6-7%台まで上昇した。1月には予測は5%台半ばで推移し、最終週での支出サイドモデル予測は4.8%とほぼ公表値 に近い値となった。 一方、コンセンサス予測は速報値発表直前において急速に実績値に収束するが、それまではほとんど変化しない。2009年4−6月期GDP速報値発表後の 8月から1月までの予測の幅は1.3%から1.8%の0.5%ポイントである。過去の予測データを比較しても同じ傾向が見られる。このことは、コンセンサ ス予測では、当該期のGDP推計の基礎データが揃う速報値発表直前とそれ以前とでは予測の手法が異なるということ示唆するものである。 また興味深いのは、コンセンサス予測がマーケットのムードに左右され易いことだ。例えば、ドバイショック後の12月では、コンセンサス予測はマーケット の悲観的なムードに影響を受け下方修正(1.5%→1.3%)されたが、1月は株価が持ち直し円高が修正されるのを受けて上方修正(1.3%→1.8%) された。 このように超短期予測もコンセンサス予測も1次速報値発表前には精度の高い予測を提供できることが分かったが、超短期予測は1次速報値発表の2-3ヵ月前でも十分精度の高い予測を提供できることが確認された。(稲田義久) 日本 <1-3月期はコンセンサスとは異なり高めの成長率を予測> 2月15日に2009年10-12月期のGDP統計1次速報値が発表された。同期の実質GDP成長率は前期比+1.1%、同年率+4.6%となり、3四 半期連続のプラスとなった。前回1月の超短期モデルの予測値+4.6%であり実績値にピンポイントであった。また9日発表のESPフォーキャスト調査によ れば、同期の成長率コンセンサスは+3.46%であった(超短期予測とコンセンサス予測のパフォーマンスについては、今月のトピックスを参照)。 10-12月期の実質GDP成長率(前期比年率)への寄与度を見ると、国内需要は+2.4%ポイントと7四半期ぶりに成長率を引き上げた。また純輸出 は+2.2%ポイントと3四半期連続のプラス寄与となった。内需が回復し始めたものの、依然として外需と政策に支えられた回復であり、景気回復の持続性に は不確実性が伴う。 2月16日の予測では、10-12月期のGDP統計に加え、1月の国内企業物価指数、輸出入物価指数、投入産出物価指数、12月の鉱工業生産指数(確報値)、民間機械受注、情報サービス業売上高までが更新されている。 超短期モデルは1-3月期の実質GDP成長率を前期比+0.7%、同年率+2.6%と予測している。また4-6月期の成長率を前期比+0.6%、同年率+2.5%とみている。この結果、2009年度の実質GDP成長率は-2.1%となろう。 1-3月期の実質成長率(前期比年率)への寄与度をみれば、実質国内需要は+1.2%ポイント、実質純輸出は+1.4%ポイントと比較的バランスのとれた回復となっている。 国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.3%、実質民間住宅は同+0.9%とプラス成長となるが、実質民間企業設備は同-0.7%と小幅の マイナスを予測している。実質政府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同+0.6%となっている。一方、純輸出では、財貨・サービスの実 質輸出は同+3.8%、同実質輸入は同+1.2%と引き続き輸出の伸びが輸入を上回っている。 一方、コンセンサス予測(ESPフォーキャスト調査)によれば、実質GDP成長率は1-3月期+0.80%、4-6月期+0.75%と低めの予測となっ ている。超短期予測が2%半ばと比較的高めの成長を予測しているのに比して、コンセンサスはゼロ成長に近く景気は踊り場局面に入るとみているようである。 超短期予測は、内需がマイナスに落ち込むことなく、また外需が引き続き拡大するとみている。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 1月29日に発表された2009年10-12月期の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率+5.7%と最終の超短期予測の同+5%、市場のコンセンサ スの同+4.5%を上回った。しかし、持続的な景気回復となると、在庫増が成長率に+3.6%ポイントも寄与していることから慎重にならざるを得ない。1 月27日の連邦公開市場委員会(FOMCミーティング)においても、FRBは在庫による10-12月期の高い経済成長率を予想しており、政策金利は据え置 かれた。このFOMCミーティング後のステートメントでFRBは“economic activity has continued to strengthen… inflation is likely to be subdued for some time”との景気判断を行っている。 図に示すとおり、確かに景気(実質経済成長率)は1%程度から2%程度にまで徐々に上向くと思われる。FRBは、景気は引き続き強くなっていると言う が、おそらくこの程度のことであろう。インフレに関して、超短期モデルはGDP価格デフレーター、個人消費支出(PCE)価格デフレーター、コアPCE価 格デフレーターのすべてが1-3月期、4-6月期において同+1.5%程度の伸び率を予測しており、FRBの言うようにしばらくの間インフレは抑制されて いるだろう。 10-12月期のGDP統計と1月の雇用統計、12月の建設支出を更新した2月5日の超短期予測でのサプライズは2つある。良いニュースは製造業の賃 金・俸給の伸び率が2010年1-3月期に2007年10-12月期以来始めて前期比プラスになる可能性がでてきたことだ。サービス業の賃金・俸給も 同+5%程度とかなり高い伸び率が予測されている。このように、賃金・俸給が増加してくれば、今後の個人消費支出の増加にも期待が持てる。一方、悪い ニュースもある。それは2009年7-9月期、10-12月期とせっかくプラスの伸び率となった実質住宅投資が、2010年1-3月期に再びマイナス成長 になる可能性がでてきた。しかし、住宅投資のダブルディップを十分に補うほどに、米国の情報処理投資が堅調に伸び始めていることから、今の景気回復の腰が 折れるようなことはないだろう。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2010年1月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-01-21

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

民主党政権が誕生して4ヵ月が経過した。この間、政権支持率は低下しているが、今後の政策、特に経済対策について依然として国民の期待は高い。今月のト ピックスでは、民主党政権の政策(マニフェスト)効果について、マクロ計量モデルを用いたシミュレーションの結果を紹介しよう。 新政権誕生後の経済政策上の重要事項は、(1)2009年度1次補正予算の事業見直し、(2)同2次補正予算および(3)2010年度予算案や税制改正 大綱の公表である。2010年度予算では、個々の政策の規模について、当初のマニフェストベースよりも実現可能性の高い金額が明らかになってきた。現時点 の最新情報と7-9月期GDP2次速報値を織り込み、民主党政権の政策効果を2009-2011年度にわたってシミュレーションした。 考慮した民主党政策(マニフェスト)のメニューは、(1)子ども手当・出産支援、(2)高校無償化、(3)暫定税率の廃止、(4)高速道路無料化、 (5)農業の戸別所得補償、(6)雇用対策、である。2010年度については予算案、11年度はマニフェストに記載されている金額を想定している。このほ か(7)家電エコポイント、(8)エコカー減税、(9)生活の安心確保、(10)地方支援といった2009年度2次補正予算において予算が割り当てられた 政策も考慮されている。次に、財源捻出のための政策としては、(11)公共投資・人件費等の削減及び家計に関する事業見直しなどの歳出削減であり、 (12)たばこ増税、(13)扶養控除の廃止といった税制改正による家計に対する負担増である。以上の想定に基づき、鳩山内閣の政策効果を推計した。 シミュレーション結果によれば、その政策は、2010年度に実質GDPを0.09%、2011年度に0.12%、それぞれ引き上げることになる。このよ うに、政策の成長貢献の程度は大きくないことがわかる。しかし、成長の中身をみると、民間消費は拡大するが、公共投資や政府の人件費(政府最終消費)が削 減されて、結果として経済を拡大させる純効果は非常に小さくなっているのである。たしかに、「コンクリートから人」という意味での政策効果は出ていると言 えるが、重要な問題は、民主党がどのような成長戦略を国民に示すかである。このままでは、結局、日本経済の行く末は輸出の動向によって決まるパターンに なっているのである。筆者は、日本の成長戦略の柱として環境部門を中心に国内外を問わず全面的に展開していくこと以外にないのではないかと考えている。 (稲田義久) 注:本シミュレーションの詳細は、http://www.kiser.or.jp/ja/index.htmlの「第81回景気分析と予測」に掲載。 日本 <10-12月期は持続性に欠けるが、引き続き高めの成長率を予測> 1月18日の予測では、12月の国内企業物価指数、輸出入物価指数、11月の民間機械受注、情報サービス業売上高、国際収支統計が更新されている。支出 サイドモデルは、10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率+4.6%と12月の見通しより下方修正されたものの、依然として高めの成長を予測してい る。超短期予測はGDP統計の推計基礎となる月次統計の変化を忠実に反映する、”Go by the Numbers”ともいえるテクニカルな予測手法である。 一方、マーケットコンセンサスは、超短期予測に比べ低めの成長予測となっており、対照的である。1月14日に発表されたESPフォーキャスト1月調査で は、10-12月期の実質GDP成長率予測は同+1.82%と前月調査の+1.27%から上方修正されている。過去の経験からみて成長率予測のマーケット コンセンサスは金融市場の動向に比較的大きな影響を受ける。前回の12月調査ではドバイショックによる株価の下落や円高を反映して低めの予測となったが、 1月調査では株価の回復、円高の修正等の好条件により上方修正となったと考えられる。 超短期予測によると、10-12月期の国内需要について、実質民間最終消費支出は景気対策の影響により前期比+0.6%と引き続き堅調な伸びとなる。実 質民間住宅は同+5.2%と4期ぶりのプラスなるが、実質民間企業設備は同-0.8%と低調である。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資 本形成は同+2.4%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+1.1%)に対する寄与度は+0.5%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同+4.3%増加し、実質輸入は同-0.8%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.6% ポイントとなる。このように、内需が前期から反転拡大し、純輸出も引き続き拡大するため、4%程度の高い成長を予測している。一方、主成分分析モデルも、 10-12月期の成長率を前期比年率+7.1%と予測している。 1-3月期は、純輸出は引き続き拡大するが、内需、純輸出とも拡大のペースが減速するため、前期比+0.1%、同年率+0.3%と予測している。この結果、2009暦年及び年度の実質GDP成長率はそれぞれ-5.1%と-2.3%となろう。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 1月15日の超短期予測は12月の鉱工業生産指数、小売販売額、消費者物価指数、輸出入物価指数、11月の企業在庫、貿易収支までを更新している。グラ フに見るように、10月の経済指標を更新し始めるや景気はスローダウンを始め11月25日の超短期予測は0%の経済成長率を示し、ダブルディップリセッ ションの可能性を一時的に示した。しかし、12月4日以降になり、11月の経済統計を更新し始めるとそれまでの実質GDPの下降トレンドは上昇トレンドに 転換し、1月15日の超短期予測では、2009年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.6%(支出サイドと所得サイドの平均)を示してい る。コア個人消費支出(PCE)価格デフレーター、GDP価格デフレーターでみた同期のインフレ率は約1.5%と落ち着いており、FRBのインフレ許容範 囲内(1%〜2%)にある。しかし、PCE価格デフレーターはエネルギー価格の高騰により3.5%にまで上昇している。 10-12月期の支出サイドの実質GDP成長率は4%を超える可能性が出てきた。これは在庫が少しずつ増え始めたことによる。在庫の成長率寄与度が3 %〜4%になると予想されるのは、7-3月期の在庫調整が-1,410億ドルと大きいからである。しかし、景気回復が持続的に堅調とは言い難い。在庫を除 いた経済成長率を見れば、マイナス成長も考えられる。すなわち、実質最終需要の伸び率は下降トレンドを示しており、超短期予測は-1.0%の伸びとなって いる。2010年1-3月期も1%以下である。10-12月期の実質GDPの高い伸びにもかかわらず、米国経済の回復は緩やかであり、いまもって脆弱と見 るのがよいであろう。 1月13日に発表されたFRBのベージュブックでは、12のうち10の地域連銀は景気の改善を報告している。輸出の伸び率の改善からもわかるように、多 くの地域で製造業が改善している。労働市場はいまもってほとんどの地域で悪いが、ニューヨーク連銀とセントルイス連銀は改善の様子を報告している。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2009年12月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-12

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<GDP統計にもっと資金と人材を投入すべし> 12月9日発表の日本のGDP2次速報値によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.3%となり、1次速報値(同+4.8%)から3.5%ポイントの大幅下方修正となった。 実質GDP成長率下方修正の主な要因は、実質民間企業設備が1次速報値の同+6.6%から同-10.6%に大幅下方修正されたことにある。これは、民間 企業設備の2次速報値推計の基礎データである法人企業統計調査(需要統計)の低調な結果を反映したものである。一方、1次速報値推計の基礎データ(供給統 計)である資本財出荷指数が7-9月期に前期比+8.1%と7四半期ぶりのプラスとなったことからすれば、企業設備投資の大幅下方修正はネガティブサプラ イズであった。 2次速報値は、供給統計と需要統計の加重平均で決まる。異なる変化の方向を示すデータを平均したため、大幅な下方修正となったといえよう。7-9月期の 民間企業設備の供給側の動きが需要側に反映されなかったため、これが10-12月期の需要データに後ずれして現れる可能性が高い。いずれにせよ、これを契 機にGDP統計の信頼性をめぐる議論が再び高まっている。 GDP統計の信頼性をめぐる議論を高めたもう一つのポイントは、速報値が過去にさかのぼって大幅に改定されたことである。実質GDP成長率の四半期パ ターンを過去に遡及し比較してみれば、2008年4-6月期は-5.2%ポイント(前期比年率-2.9%→同-8.1%)の下方修正となった。一方、 2008年1-3月期は1.6%ポイント(同+4.0%→同+5.6%)、7-9月期は2.5%ポイント(同-6.5%→同-4.0%)、10-12月期 は1.3%ポイント(同-11.5%→同-10.2%)、2009年1-3月期は0.3%ポイント(同-12.2%→同-11.9%)と、いずれも1次速 報値から上方修正された。2008年1-3月期が上方修正されたことから、2008年度から2009年度にかけての成長率のゲタは1次速報値の-4.2% から-3.8%に引き上げられた。 ちなみに、12月2日に公表された2008年度国民経済計算確報値では同年度の実質GDPが速報値の-3.2%から-3.5%に改定されて、戦後最大の 落ち込みとなったことが判明した。悪いことには、12月7日に内閣府は確報値に間違いがあることを報告し、さらに-3.7%へと下方修正した。 このように推計ミスやこれまでにない速報値の大幅下方修正が目立っており、GDP統計に対する信頼が今回大きく揺らいでしまった。根本的な原因ははっき りしている。GDP統計推計のために資源があまり投入されていないからである。適切な経済政策のためには正確な景気診断が必要条件である。このために政府 はもっと資金と人材を投入すべきであろう。GDP統計に対する不信感は、投資家の”Japan Passing”を加速するであろう。(稲田義久) 日本 <10-12月期は高めの成長を予測、悲観的な見方のマーケットコンセンサスとは対照的> 12月14日の予測では、10月の大部分の月次統計と7-9月期のGDP2次速報値が更新された(GDPの改定については今月のトピックスを参照)。支 出サイドモデルは、10-12月期の実質GDP成長率を、内需が反転拡大し純輸出も引き続き拡大するため、前期比+1.6%、同年率+6.6%とマーケッ トコンセンサスとは異なり高く予測する。ちなみに、マーケットコンセンサスは、ドバイショックによる株価の下落や円高を反映して、年率+1.27%と前月 の+1.50%から下方修正されている(12月ESPフォーキャスト調査)。 1-3月期は、純輸出は引き続き拡大するが、内需、純輸出とも拡大のペースが減速するため、前期比+0.4%、同年率+1.7%と予測している。この結 果、2009暦年及び年度の実質GDP成長率はそれぞれ-5.0%と-2.0%となろう。GDPデータの大幅改定により、2008年度から2009年度に かけての成長率のゲタは1次速報値の-4.2%から-3.8%に引き上げられたものの、2009年7-9月期が3.5%ポイント引き下げられた。データ改 定を反映した超短期予測は2009年度の成長率については前回より0.1%ポイント下方修正している(-1.9%→-2.0%)。 10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.7%となる。実質民間住宅は同+5.7%となるが、実質民間企業設備は同 -0.4%減少する。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資本形成は同+2.6%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期 比+1.6%)に対する寄与度は+0.6%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同+6.1%増加し、実質輸入は同-2.2%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+1.0%ポイントとなる。 主成分分析モデルも、10-12月期の成長率を前期比年率+8.0%と予測している。また1-3月期を同+3.7%とみている。この結果、支出サイド・ 主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、10-12月期が+7.3%、1-3月期が+2.8%となる。 マーケットでは日本経済に対する悲観的な見方が強まっている。しかし、超短期予測は、これとは異なり、日本経済は年度末にかけては減速するものの、世界 経済回復の影響を受け、純輸出に牽引されて比較的堅調な成長パスを辿るものと予測している。ただ、政策効果が剥落する2010年度前半の経済政策が極めて 重要となるという点ではマーケットと同じである。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 12月11日の超短期予測では10月の貿易収支、11月の小売販売、輸出入物価指数までを更新している。その結果、実質GDP成長率は需要サイドでは純 輸出の改善、個人消費支出の上方修正から、所得サイドでは企業収益の上方修正から、それぞれ前期比年率+3.1%、同+0.9%へと大幅に上方修正され た。しかし、超短期モデルによる2009年の実質最終需要の伸び率は+0.5%程度と予測されている。更に、懸念されるのは実質国内需要、実質最終需要 (GDP−在庫)が過去4週間の超短期予測では下降トレンドを形成していることである。 バーナンキFRB議長が12月7日、ワシントンD.C.において”Frequently Asked Questions”という講演を行い、そのうちの一つのトピックスが”今後の米経済の行方”であった。彼の講演要旨は次のようなものであった。 ・これまでの在庫調整によって生産が拡大する様子が見えてきたが、持続的な景気回復には最終需要の復活が不可避である。 ・企業の新しい設備・ソフトウエアへの支出が一時的にも安定してきた。 ・ 住宅市場、個人消費支出、設備投資、グローバル経済において改善傾向が見られる。 ・しかし、米経済は今もって低調な労働市場、慎重な消費支出、厳しい資金市場など“手に負えない逆風”をうけて  いる。 ・インフレに関してはかなりの需給ギャップから賃金・物価トレンドの上昇が抑えられており、長期のインフレ期待  は安定している。 超短期予測はバーナンキFRB議長の景気の見方とほぼ一致する。超短期予測は現在の実質GDP成長率(需要サイドと所得サイドの平均)を+2.0%、イ ンフレ率を2%〜3%とみている。実際に今の景気回復が持続的であると宣言するには早すぎるし、インフレに楽観的すぎるのも良くない。バーナンキFRB議 長の言うように、最終需要の復活が景気回復の鍵をにぎっていることは確かである。 [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2009年11月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-11-10

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

11月12日発表のESPフォーキャスト調査(7-9月期実質GDP1次速報値は反映されていない)によれば、今後の四半期成長パターンとして、 10-12月期前期比年率+1.5%から2010年1-3月期同+0.89%、4-6月期同+0.71%へと緩やかに減速するというのがマーケットではコ ンセンサスとなっている。 また、マーケットの一部では、日本経済は2010年前半にマイナス成長に陥り、08年10-12月期と09年1-3月期の2期連続の二桁マイナス成長と併せて考えれば、W字型、ダブルディップ型不況に陥る可能性が高いとみている。 一方、11月17日の超短期予測(支出サイドモデル)は、10-12月期の実質GDP成長率を、内需と純輸出は引き続き拡大するため、前期比年 率+4.2%と予測する。また1-3月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大するが内需が息切れするため、同+0.3%と予測している。 超短期予測もマーケットコンセンサスも、景気のパターンとしては2010年前半にかけて経済は減速するという点では一致している。その理由は、内需が再び縮小する可能性が高いとみているためである。特に、民間最終消費支出と公的需要の動向がポイントとなる。 民間最終消費支出の先行きついては、所得環境が悪化しており、加えて財政政策の効果が年度越しには剥落するため、追加的な政策なしには減速ないしはマイナス成長が避けられない。 7-9月期の雇用者報酬は前期比年率-0.7%と6期連続のマイナスとなり、前年同期比では-3.7%と5期連続のマイナスを記録した。加えて冬のボー ナスもマイナスが必至で、先行き所得環境は厳しい状況が続こう。2期連続の二桁のマイナス成長により急拡大した需給ギャップはなかなか縮小せずデフレ圧力 が強まっている。デフレスパイラルに陥るリスク確率も上昇してきており、民間消費の先行きは明るくない。 もう一つのポイントは公的需要である。人口高齢化に伴う政府最終消費支出の増加トレンドは避けられないが、「コンクリート」から「人」へという現政権の 政策スタンスで、公共投資の削減は必至である。現状では先行き公的需要の経済成長への貢献は期待できないということになる。 とすれば、ダブルディップ不況を避けるためには、さらに外需依存を強めるか新たな内需の創出が必要となる。外需の今後の動向については、海外欧米市場の 回復に大きな期待は持てない。活発なアジア市場はこれまで景気回復の一翼を担ってきたが、欧米市場の回復なくして外需の持続可能性に問題がある。とすれ ば、新たな内需創出がカギとなる。民主党政権は、「コンクリート」から「人」へというスローガンで公共投資を削減するが、その努力を環境投資拡大促進に向 けるべきであろう。実際その方向に進んでいるが、それを加速させる必要がある。日本経済がダブルリセッションに陥らないためにもタイミングの良い政策発動 が重要である。(稲田義久) 日本 <政策効果大きく7-9月期は高成長となったが、年度末にかけては減速か?> 11月16日(月)発表のGDP1次速報値によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比+1.2%、同年率+4.8%となり、2四半期連続のプラス となった。景気対策効果と輸出の増加がその背景にある。7-9月期の実績は4-6月期の同+2.7%を上回り、2007年1-3月期(同+5.7%)以来 の高い成長率となった。 実績は超短期予測の平均値(+3.9%)や市場コンセンサス(ESPフォーキャスト:+2.5%)を上回った。超短期予測最終週での予測では、支出サイ ドモデルが同+2.9%、主成分分析モデルが同+5.0%を予測していていた。主成分分析モデルの予測は実績により近いものとなった。超短期モデルの予測 動態からわかるように、7-9月期の月次データが利用可能となる8月後半から2%台後半、9月に入り3%台後半の成長率を予測していた。 7-9月期の実質GDP成長率(前期比年率)への寄与度を見ると、内需は3.4%ポイント成長率を引き上げた。内需が成長率引き上げに貢献したのは1年半ぶりである。また純輸出も成長率を+1.5%ポイント引き上げたことがわかる。 実質民間最終消費支出は同+2.8%と2期連続のプラスとなり、実質GDP成長率を1.7%ポイント引き上げた。所得環境が悪い中、民間最終消費支出が 伸びたのは、政策効果(エコポイント制度、自動車取得促進税制、補助金)による影響が大きい。実際、耐久消費財は同+31.4%と大幅に伸びた。 実質民間企業設備は同+6.6%と6四半期ぶりのプラスとなり、実質GDP成長率を0.9%ポイント引き上げた。実質民間企業在庫品増加は実質GDP成長率に+1.6%ポイント貢献した。3期ぶりのプラス貢献で在庫調整に一段落がついたと思われる。 アジアからの輸出需要の高まりで、財貨・サービスの実質輸出は同+28.0%増加し、2期連続のプラス(寄与度+3.5%ポイント)となった。一方、同実質輸入は同+14.1%(寄与度+3.3%)増加した。3期ぶりのプラス成長である。 実質民間住宅は同-27.5%と3期連続のマイナスである。マンションを中心に大幅なストック調整が起きている。民間住宅は実質GDP成長率を0.9%ポイント引き下げた。 公的需要は同+0.3%の増加にとどまり、実質GDP成長率にはほとんど貢献しなかった。うち、実質公的固定資本形成は同-4.9%減少し、実質GDP成 長率を0.1%ポイント引き下げた。一方、実質政府最終消費支出は同+1.5%増加し、寄与度は+0.1%ポイントとなった。 所得環境は悪化しており、雇用者報酬は同-0.7%と6期連続のマイナスとなった。前年同期比では-3.7%と、5期連続のマイナスを記録した。冬のボーナスもマイナスとなり、先行き厳しい状況が続こう。 デフレータを見ると、GDPデフレータは前期比-1.2%と2期連続の下落となった。急激に拡大した需給ギャップはなかなか縮小せずデフレ圧力が強い。 前年同期比では+0.2%と4期連続のプラスとなったがプラス幅は縮小している。一方で、国内需要デフレータは同-2.6%と3期連続のマイナスで下落幅 が拡大している。日本経済はしばらくデフレから抜け出せないようである。 11月17日の支出サイドモデル予測は、10-12月期の実質GDP成長率を、内需と純輸出は引き続き拡大するため、前期比+1.0%、同年 率+4.2%と予測する。1-3月期は、純輸出は引き続き拡大するが内需が息切れするため、前期比+0.1%、同年率+0.3%と予測している。この結 果、2009暦年及び年度の実質GDP成長率はそれぞれ-5.0%と-2.2%となろう。 超短期予測は2009年度末にかけて景気減速を示唆しており、マーケットの一部ではダブルディップ不況を懸念している。持続的な成長に向けて新政権の政策舵取りに注目が集まっている。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 11月13日の超短期予測は10月の雇用統計や9月の貿易統計までを更新した予測である。グラフ1に見るように今期(2009年10-12月期)の実質 GDP伸び率を支出・所得サイドからそれぞれ-0.4%、+1.5%と予測している。これはウォールストリート紙による48人のエコノミストへの10月調 査の平均値(2.5%)よりかなり低い。超短期予測は米経済が7-9月期の+3.5%(前期比年率)成長の後、1%程度の成長率にまでスローダウンしてい るとみている。主な理由は景気刺激策による自動車購入等が終わり、企業も簡単に生産増加、在庫積み増しをしないと考えられるためである。 しかし、市場には前期の実質GDP成長率が市場の予想(3.2%)を上回ったことから景気への楽観的な見方が広がっている。最も良い例は10月の雇用統計 に対する株価の反応である。10月の失業率は1983年6月以来26年振りに始めて10%を超えた。また、非農業雇用者数も9月の219,000人減から 190,000人減へと改善したものの、市場の予想(175,000人減)をかなり下回った。しかし、ダウ株価はその日も上昇し、結局その週のダウは3% 上昇し1万ドル台を確保した。 通常ならば、市場の予想通りに改善していない労働市場に対して投資家はネガティブに反応するが、経済回復に楽観的になりつつある投資家は10月の雇用統計 が好ましくなかったことから、連邦準備理事会(FRB)がこれまでの低金利政策をかなりの間維持せざるをえないと考えるようになった。実際、11月3日 ‐4日に行われたFOMCミーティングのステートメントの中で、FRBは政策金利を0%〜0.25%の間に据え置く期間を延長、また、量的金融緩和策も継 続するとしている。 今週の超短期予測は10-12月期のインフレ率を1.5%程度と予測している。FRBの金融緩和政策の継続に疑問はないが、はたしてそれにより投資家が予 想しているような経済成長率が達成されるかは疑問であり、超短期予測は今のところ、投資家の景気への楽観的な見方がいずれは下方修正されるとみている。 [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2009年10月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-10-20

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

鳩山新政権は、世界に向けて2020年までに二酸化炭素(CO2)排出量を1990年比25%削減することを宣言した。もちろん、日本単独の努力ではな く、世界が協調・努力してとの条件付きであるが。この宣言のインパクトは大きく、特に大きな影響を受けることが予想される産業界からは大きな反対が表明さ れている。今月のトピックスでは、この宣言の実現可能性を議論するのではなく、議論に向けての新たな見方を提供したい。 前政権のこの問題をめぐる議論のスタンスは、CO2削減率に応じて、そのコストを明示するというものであった。ところが今回は、まず25%削減という目標を設定し、それを実現するためにあらゆる政策を総動員し、日本を環境立国へ導くというスタンスに変わったのである。 さて2007年度のCO2排出量は12億1,270万トンであり、1990年度=100とすると115.5となり、基準年から15%も高い水準である。 図1は日本のCO2排出量の部門別シェアの推移をみたものである。直近の2007年度では、最大の排出部門は産業部門であり、排出量全体の40.3%を占 める。次に、運輸部門(20.6%)、家計部門(15.6%)、業務部門(13.6%)、発電部門(10.0%)の順になる。 図1から、産業部門のシェアはこの間20%ポイント程度低下しているが、依然としてCO2排出の最大のセクターとなっていることがわかる。一方、運輸、 家計、業務部門はそのシェアを拡大させているが、産業部門には及ばないことがわかる。当然この図からすれば、産業部門には最大の削減努力が求められる。た だし、図1は発電部門で発生するCO2を電力の使用量で各部門に按分したものであって、電力部門は登場しないことに注意が必要である。 図2は、エネルギー供給部門と最終消費部門に分けてCO2排出量のシェアを見たものである。この図ではCO2排出の最大の貢献者は発電部門であることが わかる。1990-2007年度のCO2の年平均伸び率は0.9%である。発電部門の伸び率は2.2%であり、全体の伸びへの寄与度は0.8%ポイントと なっている。すなわち、CO2排出の最大の寄与は発電部門ということになる。実は図2による説明がグローバルスタンダードであり、図1による説明は日本独 自のものである。図1による説明では、発電部門の寄与(責任といってもよい)を見えにくくしているといえる。 今後、CO2排出量25%削減を国民的課題として議論する場合は、まず発電部門の役割に十分な注意が向けられなければならない。例えば、再生可能エネル ギーやLNG火力発電のシェアを高める一方で、石炭火力のシェアを低下させることは重要な課題となる。当然、原子力発電のシェアも問題となろう。図2は、 エネルギー供給部門と同時に最終消費部門の役割の議論することの重要性を意味している。すなわち、25%削減の国民的課題はあらゆる政策の動員で解決され ねばならない。 (稲田義久) 日本 <7-9月期は2%台のプラス成長だが、持続性には公的需要の動向が鍵> 10月19日の予測では、7-9月期経済を説明する月次データの約2/3、すなわち、8月のデータがほぼ更新された。支出サイドモデルは、7-9月期の 実質GDP成長率は、純輸出が引き続き拡大し、内需も小幅拡大するため、前期比+0.6%、同年率+2.5%と予測する。10-12月期の実質GDP成長 率は、純輸出が引き続き拡大するが、内需が横ばいとなるため、前期比+0.3%、同年率+1.1%と予測している。この結果、2009暦年の実質GDP成 長率は-5.7%となろう。新政権移行後の日本経済の先行きについて注目が集まっているところであるが、超短期予測は経済成長率は年内緩やかに減速すると みている。ちなみに、実質GDP成長率の市場コンセンサス(ESPフォーキャスト10月調査)は、7-9月期は前期比年率+2.3%、10-12月期は 同+1.3%となっている。超短期予測の見方とほぼ一致している。 7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.5%となる。実質民間住宅は同-2.2%、実質民間企業設備も同-2.8%と、民間 投資関連指標はいずれもマイナスながら減少幅は縮小してきている。実質政府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同-2.1%となる。この ため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+0.6%)に対する寄与度は+0.2%ポイントとなる。久方ぶりに内需が景気を引き上げる。 気になるのは、これまで景気を下支えしていた公共投資の勢いに陰りが見られることである。建設総合統計によれば、8月の公共工事は前年同月比4.1%増 加し9ヵ月連続のプラスとなったが、伸び率は3ヵ月連続で縮小した。先行指標である公共工事請負金額も7-9月期に前年同期比+11.2%となったが、伸 び率は前期(同+13.0%)からペースが落ちている。新政権での公共工事の縮小は必至であるから、2010年初にかけて景気の二番底の可能性は否定でき ない。 財貨・サービスの実質輸出は同+4.8%増加するが、実質輸入は同+2.1%にとどまる。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.4%ポイントとなる。 主成分分析モデルは、7-9月期の実質GDP成長率を前期比年率+4.5%と支出サイドモデルより高めに予測している。また10-12月期を同+3.7%とみている。 この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、7-9月期が+3.5%、10-12月期が+2.4%となり、減速傾向に変化はない。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 米国の景気回復に対してかなり楽観的な見方をするエコノミストがでてきた。例えば、エンジェル元FRB理事は2009年7-9月期の実質GDP成長率が 前期比年率4%を超える可能性も示唆している。一方、超短期モデルはグラフに見るように支出・所得両サイドから2%程度の成長率を予想している。 両者の見方の差異は在庫にある。在庫調整が同年4-6月期で完了し、7-9月期の在庫増は実質GDP成長率を1%以上押し上げていると市場は予想してい るようである。一方、超短期予測は、8月までの製造業、卸売業、自動車の在庫統計を更新したが、大幅な在庫調整が7-9月期も行われたと予測している。 7-9月期(4-6月期)の製造業、卸売業、小売業の実質在庫を、それぞれ、-270億ドル(-400億ドル)、-890億ドル(-730億ドル)、 -810億ドル(-510億ドル)と予測している。ただし、超短期モデルは7-9月期の名目財輸入の伸び率を40%超と予測している。しかしこれは、石油 の在庫増にもかかわらず卸売業の在庫減をかなり大きく予想しているというリスクもある。一方、Cash-for-Clunkersプログラムによる自動車 在庫の減少を考えると、小売業における大幅な在庫調整(7-9月期)の可能性は十分にある。 7-9月期の予測を強気にする2つの要因は、実質個人消費支出が前期比年率4%程度伸び、実質住宅投資が同10%程度伸びたことである。一方、4-6月 期においてそれぞれ下落した実質輸出、輸入も7-9月期にはそれぞれ同20%程度の大幅な伸び率となったと思われる。このように、在庫、輸出入の予測に関 して大きな不確実性が残るとき、景気判断にはその他の集計指標を同時にみるのがよい。 10月9日の超短期モデルによる7-9月期の(10-12月期)の経済成長率は以下の通りである。実質GDP:前期比年率+2.0%(同+1.7%)、 実質総需要:同+4.3%(同+1.3%)、実質国内需要:同+2.9%(同+1.6%)、最終需要タイプ1(=GDP-在庫):同+2.5% (同+2.1%)、最終需要タイプ2(GDP-在庫-純輸出):同+3.4%(同+1.9%)。このように、複数の集計指標から景気を判断すれば、 2009年7-9月期、10-12月期の実質GDP成長率をそれぞれ3%、2%程度と想定するのが適切と思われる。 [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2009年9月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-09-30

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

8月30日に行われた衆議院総選挙で、民主党を中心とする野党勢力が議席の3分の2を確保した。この結果、今後の経済に対する政策アプローチが大きく変 わることになる。今後の民主党の政策運営については、同党のマニフェストを除いて具体的な金額などを盛り込んだ形での発表はまだ行われていない。ここで は、民主党マニフェストの「工程表」から政策運営が経済にもたらす影響を推計しよう。 表1は、民主党のマニュフェストの工程表をベースに、景気対策支出額を見たものである。マニフェストでは2009年度に対して最終(2013)年度にな るほど支出金額は明確になるが、それ以外の年では一部支出金額の支出状況は不明確である。そのため、2010年度から12年度の金額については、工程表を ベースに実現可能性を考慮して推計した。 主な項目は、①子ども手当・出産支援 (同1.3(2013年度時点の所要額5.5兆円)、②暫定税率の廃止(同2.5兆円)、③医療・介護の再生(同1.6兆円)、④高速道路の無料化兆 円)、⑤農業の戸別所得補償(同1.0兆円)などである。要するに家計に対する所得補償型政策が中心となっていることがわかる。 一方、これらの財政支出の財源は、①予算の組み替えによる無駄な歳出の削減(2013年度時点で9.1兆円)、②「埋蔵金」や資産の活用(同5.0兆 円)、③税制見直し(同2.7兆円)によってファイナンスされることになっている(表2参照)。しかし、2010年度からの早急な実施が困難なものもあ る。特に、公共事業のスリム化や税制改革などである。支出財源が確保できない場合は国債発行によって賄われることになる。 以上のような支出と財源の見通しから財政バランスの見通しをまとめると、2010年度、2011年度は支出が拡大する一方で、財源の手当てが間に合わないため、財政赤字が拡大することになる(表3上段)。 GDPに与える影響では、純支出額に着目する必要がある。純支出額の計算には、支出である「埋蔵金」や資産の活用はコストがかからないから考慮しない。 したがって、純支出額は支出措置額から歳出削減額(予算の効率化)・増税額(税制改革)を減じた額となる(表3中段)。またGDP成長率には、この純支出 額の年度間増減幅が影響する(表3下段)。この増減幅が拡大する2010年度、2011年度にはGDP成長率が押し上げられることになる。2012年度、 2013年度には、増税や歳出削減が進み、増減幅が縮小するため、GDP成長率を押し下げることになる。 最後に、この純支出増減幅を基に、関西経済に対する影響を試算しよう(表4)。試算では、GRP成長率に直接寄与する政策として、子ども手当・医療介護 の再生・農業の戸別所得補償・暫定税率の廃止の4つの政策を取り上げて計算した。また工程表の支出額は日本全国を対象とした額であるため、これに関西の世 帯数割合17.1%を乗じて、関西への影響額としている。さらに、関西経済予測モデルの消費関数の長期消費性向0.464を乗じて追加的消費支出金額を計 算している。これを関西のGRP(89.4兆円、2010年度の予測値)と比較する。この結果、2010年度には0.4%程度、2011年度には0.3% 程度のGRP押し上げ効果となる。しかし、2012年度、2013年度には-0.3%、-0.5%とGRPにマイナス効果をもたらすことになる。 以上、経済効果を示した。より詳細な分析のためには、家計調査報告に基づいた所得階層別の分析が必要となろう。民主党政権が考える内需、特に、家計消費 の刺激を起点とする経済成長シナリオにより、どのような成長パスが実現されるのか、今後の政策運営動向に注視しなければならない。  (稲田義久・入江啓彰) 日本 <7-9月期、内需は久方ぶりにプラス成長に転じるも、持続性に疑問> 9月11日発表のGDP2次速報値によれば、4-6月期の実質GDP成長率は前期年率+2.3%となり、1次速報値(同+3.7%)から下方修正となった。 実質GDP成長率下方修正の主要因は、民間企業在庫品増加である。実質民間企業在庫品増加は1次速報値の前期比-2.0%ポイント(寄与度年率ベース) から同-3.1%ポイントへと下方修正された。在庫調整が想像以上に進展していることを確認した。今後は在庫投資の積み上げが期待され、先行きにとっては 悪くない結果である。 9月14日の予測では、8月の一部のデータと7月のデータがほぼ更新され、また4-6月期のGDP統計2次速報値が追加されている。支出サイドモデル は、7-9月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大し、内需も小幅拡大するため、前期比+0.9%、同年率+3.6%と予測する。 10-12月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大するが、内需が横ばいとなるため、前期比+0.5%、同年率+1.9%と予測している。この結果、2009暦年の実質GDP成長率は-5.5%となろう。 7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.5%となる。実質民間住宅は同-0.8%、実質民間企業設備も同-2.1%といずれも マイナスながら小幅の減少にとどまる。7月の工事費予定額(居住用)と資本財出荷指数は前月比ともにプラスになっており、7-9月期の民間住宅や企業設備 が前期比で安定化する可能性が出てきた。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資本形成は同-1.0%となる。このため、国内需要の実質 GDP成長率(前期比+0.9%)に対する寄与度は+0.3%ポイントとなり、久方ぶりに内需が景気を引き上げる。 財貨・サービスの実質輸出は同+5.7%と増加するが、実質輸入は同+1.9%にとどまる。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.5%ポイントとなる。 一方、主成分分析モデルは、7-9月期の実質GDP成長率を前期比年率+3.6%と予測しており、支出サイドからの予測と一致している。また10-12月期を同+3.4%とみている。 この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、7-9月期が+3.6%、10-12月期が+2.6%となる。 日本経済は4-6月期以降、内需が小幅ながら緩やかなプラス成長に転じている。しかし、今後は、民主党による補正予算の見直しも含め補正予算の政策効果 が剥落してくるため、経済のプラス成長の持続性には疑問が出ている。2010年度の民主党の消費拡大効果が出る前に一時的にマイナス成長に陥る可能性があ ることを指摘しておく。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 グラフに見るように、8月の雇用統計を更新した時点で超短期モデルは2009年7-9月期の実質GDP成長率を+1.3%と予測している。これは2008年4-6月期以来1年振りのプラス成長である。 支出サイドから実質GDP成長率が急速に上昇した主な理由の一つには”Cash-For-Clunkers Program” (エコカー購入促進システム)により、自動車購入が増え実質個人消費支出が増えたことが上げられる。超短期モデルは実質耐久財の個人消費支出が2009年 7-9月期に11.9%(前期比年率)伸びると予測し、個人消費支出全体の伸び率を同+2.0%と予測している。エコカー購入促進システムによる購入が自 動車の在庫減になればその分GDP成長率の増加は相殺されるが、新車の生産につながればGDP成長率は高まる。支出サイドからの経済成長率上昇のもう一つ の大きな理由は実質住宅投資が7-9月期に同9.1%伸びると予想されていることによる。これは7月の民間住宅建設支出が2.3%(前月比)と大幅に上昇 したことによる。実質住宅投資の伸び率がプラスに転じるのは2005年10-12月期以来14四半期振りのことである。 一方、所得サイドからの実質GDP成長率プラス転換の主な理由は2009年4-6月期の統計上の誤差が2,250億ドルと大きくなり、その結果7-9月 期の統計上の誤差も2,280億ドルになると超短期モデルが予測していることである。この統計上の誤差はGDP比率でみると1.6%に相当する。もう一つ の理由は、1-3月期、4-6月期とそれぞれ前期比-14%、同-5%と大きく落ち込んだ賃金・俸給が7-9月期には0%にまで持ち直すと予想されている ことが挙げられる。 しかし、7-9月期経済のプラス成長の持続性には問題が残る。エコカー購入促進システムが8月24日で終了し、今後の個人消費支出の落ち込みが予想され る。また、住宅市場に回復の兆しが見えたものの今度は商業用不動産市場が悪化していることがある。所得サイドにおいても失業率が8月には9.7%と 1983年以来の高い水準になり、遅行指数とはいいながら労働市場の回復にはまだかなりの時間がかかるとみられ、個人消費支出の鍵をにぎる賃金・俸給の堅 調な伸びが今もって期待できない。このように、米国経済は7-9月期に一旦プラス成長に戻るものの、その持続性には多くの懸念が残る。 [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2009年8月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-08-19

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

関西社会経済研究所は7月30日、岩田一政氏(内閣府経済社会総合研究所所長)と櫨浩一氏(ニッセイ基礎研究所経済調査部部長)をパネリストとして招 き、「世界同時不況からの回復−夜明けは見えたか?」というテーマで景気討論会を行った。政権交代の可能性が高まる中、短期的には政策や景気の見通しにつ いて不確実性が高まるという状況での討論会であった。 各パネリストの議論は、それぞれが得意とする中期、短期、超短期をカバーした非常に内容の充実したものとなった。以下、景気討論会での重要と思われる議 論を紹介する。8月30日には総選挙結果の如何を問わず、今後の景気見通しや経済運営の議論にとって重要と考えられるからである。 内閣府の中期経済見通し 岩田氏は、内閣府試算の最新の中期経済の見通しから3つのシナリオを提示された。3つのシナリオとは、2011年度から毎年消費税率を1%ポイント、累 計で3%、5%、7%の引上げを行った場合の、それぞれの経済成長率と財政の基礎収支(プライマリーバランス)のパスを示したものである。プライマリーバ ランスは、成長戦略と景気回復で2007年度に-1%台まで改善したが、2008年度の大不況と大規模な財政出動で大幅に悪化し、2009年度には -8.1%まで低下すると見込まれるため、2011年度黒字化の目標はすでに放棄された。 今後この3つのシナリオが実現された場合、プライマリーバランスが黒字化する時期は、消費税率引き上げが7%ポイントのケースは2018年度、5%ポイ ント引き上げのケースは2021年度となる。それ以外のケース(3%ないしはゼロ%)では2023年度までに黒字は実現できないようである。図からわかる ように、今回の大不況は、日本のプライマリーバランスの改善を10年程度先送りにしたことになる。 内閣府の試算では、日本経済の成長率のパスは2008-09年度に2年連続の-3%台のマイナス成長の後、2010年度は+0.6%となり、2012年度までは大幅な需給ギャップを埋めるため3%程度の比較的高い成長を経たのち、以降潜在成長率に戻るというものである。 最終目的としての政府債務/名目GDP比が2010年代半ばに安定化し、2020年代に低下するためにも、長期実質金利が低位安定的でなければならな い。岩田氏の指摘によれば、長期金利は生産年齢人口の変化と関係しており、日米とも生産年齢人口がピークアウトする時期にバブルが発生したことから、今後 の日本の生産年齢人口比率が低下することは長期金利安定化の一助となるが、逆に、中国は生産年齢人口が上昇することから、今後バブル発生の可能性は高くな るという。これは、重要なポイントと考えられる。 中国は米国市場に替わる役割を完全に担うことはできない 短期的な視点に戻せば、2009年4-6月期の日本経済の実質成長率は純輸出のリバウンドで前期比プラス成長に転じ、景気の底打ちは確認できそうだが、 年後半は加速ではなく緩やかな回復にとどまる可能性が高い。米国の超短期予測が示すように、マーケットが期待するような回復には所得サイドから疑問が投げ かけられている。日本経済にとって重要な貿易パートナーである米国経済の急回復が期待できないとすれば、年後半の日本経済の回復は緩やかなものにとどまろ う。一方、新興諸国の代表である中国は、足下政策効果があらわれ経済成長率を加速させており、日本の中国向け輸出も前期比で増加している。しかし、公共投 資を中心とする財政政策では民間消費をけん引役とする内需拡大型成長は実現できない。結局、輸出の回復が戻らなければ、中国の高成長は持続可能でないであ ろう。その意味で、日本にとって、中国は米国市場に替わる役割を完全に担うことはできない。 日本経済が、内閣府試算が示す3つのシナリオないしはそれ以外のシナリオをとろうとも、中期成長パスの初期条件として、2010年度の経済パフォーマン スないし景気回復の中身は今後にとって非常に重要な鍵となろう。その意味で、2010年度に効果が剥落する政策の存否については、その効果についての十分 な精査が必要である。(稲田義久) 日本 <4-6月期は5期ぶりのプラス成長に転じるも、年後半は勢いに欠ける> 4-6月期の実質GDP成長率(1次速報値)は前期比年率+3.7%となり、5期ぶりのプラスに転じた。成長率への寄与度(年率)を見ると、国内需要は-2.8%ポイントと成長率を引き下げ、純輸出は+6.5%ポイント引き上げた。 今回の回復の特徴は、景気対策効果と純輸出の大きな寄与である。実質民間最終消費支出は前期比年率+3.1%と3期ぶりのプラスとなり、実質GDP成長 率を1.9%ポイント引き上げた。もっとも所得環境は悪く、実質雇用者報酬は同-6.7%と2期連続のマイナス。にもかかわらず民間最終消費支出が伸びた のは、政策効果(エコポイント制度、自動車取得促進税制や補助金)による消費性向の一時的な高まりが影響している。 一方、投資は住宅、企業設備ともに不調である。実質民間住宅は同-33.0%と2期連続のマイナスである。実質民間企業設備も同-16.1%と5期連続 で減少した。この結果、民間住宅と民間企業設備で実質GDP成長率を3.7%ポイント引き下げたことになる。また、実質民間在庫品増加は-2.1%ポイン ト成長率を押し下げた。大幅に在庫調整が進んだといえよう。 公的需要は同4.7%増加し、実質GDP成長率を1.1%ポイント引き上げた。うち、実質公的固定資本形成は同36.3%増加し、寄与度は+1.4%ポイントである。 外需をみると、実質純輸出は大きく経済成長率に貢献した。財貨・サービスの実質輸出は同+27.9%増加する(寄与度+3.2%ポイント)一方で、同実質輸入は同-18.9%(寄与度+3.3%)減少したためである。 デフレータをみると、GDPデフレータは前期比-1.1%と3期ぶりの下落となった。需給ギャップの急激な拡大を背景にデフレ圧力が強まっている。 今週の支出サイドモデル予測は、7-9月期の実質GDP成長率を、純輸出は拡大するが、民需(特に、民間住宅、民間企業設備)が不調となるため、前期比 年率+1.6%と予測している。10-12月期の実質GDP成長率も、純輸出は引き続き拡大するが、内需が引き続き悪化するため、同+0.6%と予測して いる。このように2009年後半の経済は、4-6月期のプラス転換にもかかわらず、勢いに欠ける。この結果、2009暦年の実質GDP成長率は-5.4% となろう。 7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.3%となる。実質民間住宅は同-3.7%と3期連続のマイナスとなる。実質民間企業 設備も同-5.3%と6期連続のマイナスとなる。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資本形成は同+0.2%となる。このため、国内需要の 実質GDP成長率(前期比+0.4%)に対する寄与度は-0.3%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同5.4%増加するが、実質輸入は同横ばいとなる。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.7%ポイントとなる。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <所得サイドから懸念される米国経済への楽観的見方 > 6月の始め頃から米国景気の減速が緩やかになってきたことがわかってきた。このため、超短期予測は、6月から7月の始めにかけて米国景気に対して楽観的 な見方をするようになった。しかし、その後、超短期予測の改善は進まず、支出・所得サイドから4-6月期の実質GDP経済成長率を最終的には前期比年率 -1.1%と予測した。7月31日に発表された4-6月期の実質GDP速報値によれば、成長率は同-1.0%となった。実績は、超短期予測に近かったもの の、市場コンセンサスの同-1.5%よりマイナス幅が小さかった。このため、市場・エコノミスト達の間ではリセッションが2009年1-3月期に底を打 ち、これから景気が回復に向かうであろうという楽観的な見方が広まった。実際、多くのエコノミスト達は2009年7-9月期の経済成長率を+2%近くに上 方修正をしている。 発表された経済統計が良くなくとも、それが市場のコンセンサスより良かった場合、市場・エコノミストにある種の楽観的な見方が生まれることがある。今 回、このことが雇用統計においても生じた。市場は7月の失業率が前月より0.1%ポイント上昇し9.6%になると予想していたが、結果は前月より0.1% ポイント低い9.4%となった。7月の雇用減も市場のコンセンサスをかなり下回る数字となった。このため、株価の高騰にみるように、市場、エコノミストの 間に景気回復に対する楽観的な見方が急速に広まってきた。更に、消費者が政府の補助を得てエネルギー効率のよい自動車に買い換え る”Cash−for−Clunkers Program(エコカー購入促進システム)" が予想以上に好調なこともエコノミスト達の楽観論を支えることになっている。 8月10日の超短期予測では7月の自動車の小売販売統計が更新されていない。すなわち、”Cash−for−Clunkers Program"の経済への影響を考慮できていないことから、7-9月期の成長率予測は過小推計の可能性があるが、問題はグラフに見るように、所得サイド からのGDP予測が下降トレンドを示していることにある。所得サイドから景気回復がみられなければ、持続的・堅調な米景気の回復・拡大は難しい。その結 果、今の景気回復への楽観的な見方は期待はずれに終わることになるであろう。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2009年7月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-07-16

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<続:本当に1-3月期が景気の底か?> 【センチメントは回復したが・・・】 7月1日発表の日銀6月短観によると、最も注目される業況判断指数(DI)は、大企業製造業で-48となり、前回調査から10ポイント改善した。前期比 での改善は2006年12月調査以来2年半ぶりである。6月短観の業況判断DIは景気の底打ちを示唆するものであるが、その水準が極めて低く、大幅な需給 ギャップが存在しており、自律的な回復に疑問を抱かせる結果といえよう。 6月調査の年度計画を見ると、2009年度の売上高計画は全規模・全産業ベースで前年比-9.5%と3月調査(-5.7%)から下方修正された。一方、2009年度経常利益計画は前年比-16.4%の減益が見込まれており、前回調査(-9%)から大幅下方修正された。 生産設備の過剰感の拡大と企業業績の悪化で、設備投資計画は大きく下方修正された。2009年度の投資計画(全規模・全産業、ソフトウェアを除き土地投 資額を含む)では、前年比-17.1%と3月調査から4.2%ポイント下方修正された。2009年度前期は前年比-15.7%、後期は同-18.4%と後 半に減少幅の改善は見られない。 また、6月の景気ウォッチャー調査によると、街角の景況感を示す現状判断DIは42.2となり、前月より5.5ポイント上昇した。6ヵ月連続の改善。前年比では12.7ポイント上昇し、2ヵ月連続の改善となった。 景気ウォッチャー調査では、景気は、「良くなっている」から「悪くなっている」の5段階で評価される。また判断DIは5つの評価点と評価区分のウェイトの加重平均で計算される。 6月は、「やや良くなっている(15.5%)」と「変わらない(49.4%)」と答えた割合は、前月からそれぞれ3.3%ポイント、7.9%ポイント上 昇しており、一方、「やや悪くなっている(20.9%)」と「悪くなっている(13.5%)」と答えた割合は、それぞれ3.6%ポイント、7.7%ポイン ト低下している。「やや悪くなっている」と「悪くなっている」の合計が前月から11.3%ポイント低下しており、その大部分は「変わらない」に流れてお り、景気ウォッチャー達は景気が最悪期を脱したが大きく改善したわけではないとみている。 【4-6月期成長率予測、支出サイドモデルと生産サイドモデルのギャップは鉱工業生産の好調が原因】 今月の日本経済見通しで述べているように、支出サイドモデルによれば、4-6月期の実質GDP成長率は、純輸出は拡大するが、民需(特に、民間住宅、民 間企業設備)が不調となるため、前期比年率-4.2%と予測される。一方、主成分分析(生産サイド)モデルは、4-6月期の実質GDP成長率を 同+2.0%と予測している。なぜ両モデルの予測が乖離するのであろうか。 支出サイドモデルでは、GDP支出各項目を予測し、それを積み上げて成長率を予測する。そこで、4-6月期のGDP項目の予測を詳細に見てみよう。 まず民間需要。実質民間最終消費支出は前期比+0.9%と、1-3月期の-1.1%から大きく回復する。5月の消費総合指数は、前月比0.6%上昇し 3ヵ月連続のプラス。補正予算による民間消費の底上げ効果が徐々に出てきているようである。家計調査報告によれば、勤労者世帯のうち定額給付金を受け取っ た割合は、4-5月累計で32.5%となっており、実収入を一時的に押し上げていることがわかる。もっとも、先行きについては家計の所得制約が強まるた め、民間消費の持続的拡大は期待できないであろう。実質民間住宅は同-8.7%と2期連続のマイナスとなる。実質民間企業設備も同-8.5%と5期連続の マイナスとなる。このように、民需では民間家計消費支出は好調であるが、民間投資が極めて弱いため、実質GDP成長率(前期比-1.1%)に対する寄与度 は-1.4%ポイントとなる。 一方、公的需要は成長に貢献している。実質政府最終消費支出は同+0.4%、実質公的固定資本形成は同+5.3%となるため、成長率への寄与度は+0.3%となる。 純輸出は景気回復に貢献している。財貨・サービスの実質輸出は同1.3%減少するが、実質輸入も同2.1%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.1%ポイントとなる。 生産サイドモデルでは、15の変数からなる主成分を用いて実質GDP成長率を予測する。すなわち、鉱工業生産指数、家計消費支出、小売業売上高、工事費 予定額(居住専用)、民間機械受注、公共工事請負金額、給与総額、交易条件、イールドカーブ、国内企業物価指数、消費者物価指数等である。このうち、5月 の鉱工業生産指数(前月比+5.9%)は3ヵ月連続のプラスと好調で、これが大きく成長率予測を引き上げている。支出サイドモデルで使用される資本財出荷 指数は5月に前月比7.5%下落し、8ヵ月連続のマイナスとなったのとは好対照である。 以上が、両モデルの予測値が乖離する主たる理由である。今後支出サイドモデルがプラス成長に転じるきっかけは、6月の貿易統計と公共投資の結果となろう。(稲田義久) 日本 <回復力が弱い日本経済:鉱工業生産は3ヵ月連続プラスだが、見方は依然慎重> 7月13日の予測では6月の一部と、5月のほぼすべてのデータが更新された。4-6月期のGDPを説明する3分の2の月次指標が出揃ったことになる。 支出サイドモデルは、4-6月期の実質GDP成長率を、純輸出は拡大するが、民需(特に、民間住宅、民間企業設備)が不調となるため、前期比 -1.1%、同年率-4.2%と予測している。7-9月期の実質GDP成長率は、内需の減少幅が縮小するが、純輸出が悪化するため、前期比-1.6%、同 年率-6.1%と予測している。 一方、主成分分析(生産サイド)モデルは、4-6月期の実質GDP成長率を前期比年率+2.0%、7-9月期を同-2.6%と予測している。 この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP成長率(前期比年率)の平均は、4-6月期が-1.1%、7-9月期が-4.3%となる。1-3月 期の-14.2%の大幅マイナスから、4-6月期はマイナス幅が大きく縮小するが、7-9月期に再び拡大するというパターンである。この2四半期いずれも 回復力が弱いのが我々の予測の特徴である。 前月の予測と異なる点は、支出サイド、生産サイドいずれも実質GDP成長率が上方に修正されたことである。特に、生産サイドからの成長率予測 は+2.0%と前月からプラスに転じた。主成分分析モデルでは15の変数が使用されているが、うち鉱工業生産指数の好調がその要因となっている。実際、5 月の鉱工業生産指数は前月比5.9%上昇し、3ヵ月連続のプラスとなった。輸送機械工業、電子部品・デバイス工業等が上昇し、経済対策の効果が表れてきた ようである。たしかに経済は大幅なマイナス成長からのリバウンドで最悪期を脱したといえよう。しかし、問題は回復の持続力である。 7月9日に発表されたESPフォーキャスト調査によると、4-6月期のコンセンサス予測は前期比年率+1.98%となっている。これは主成分分析モデル と同じ予測結果である。いずれも、好調な鉱工業生産指数の影響を受けているようである。しかし、経済全体で見た場合、景気回復にはまだまだ時間がかかり、 その判断には慎重にならざるを得ない。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 7月3日の超短期予測は、6月の雇用統計までを更新した結果、グラフに見るように6月に入り緩やかではあるが上昇トレンドを形成し始めた実質GDP経済 成長率を僅かに下方に修正した。成長率だけでなく、実質総需要、実質国内需要、実質最終需要のようなアグリゲート指標においても同じようにわずかながら下 方修正となった。しかし、グラフに見るように4-6月期の経済成長率は2008年10-12月期、2009年1-3月期の前期比年率-5%を下回る大きな マイナス成長から同-1%程度にまで回復していることが分かる。アグリゲート指標で2009年4-6月期の経済成長率をみても-2%〜0%となっており、 前2四半期のような大きな落ち込みにはなっていない。 成長率はいまだマイナスであるが、改善の様子は、製造業により明確に現れている。フィラデルフィア、リッチモンド、カンザス・シティー、ダラス、シカゴ の各連銀はそれぞれの地域の製造業のデフュージョンインデックスを毎月発表するが、それらの全てが2008年末までに底をうち、その後改善の傾向を示して いる。6月の時点で製造業の活動が拡大を示しているのはリッチモンド、カンザス・シティーの両連銀地域だけであるが、他の連銀地域では製造業活動のこれま での大きな縮小が急速に小さくなっている。シカゴ連銀の全米活動指数、ISM製造業指数をみても、2009年に入り製造業活動の縮小が急速に改善している ことがわかる。このように、米国経済においては製造業が最悪期から改善し始めた状況にあるといえる。 しかし、6月の雇用統計で懸念されるのは景気先行指標としての平均週労働時間が0.3%減少したことである。この指数は3月に-0.6%と大きく下落し た後、4月、5月は横ばいとなったが、その後の景気回復により上昇することが予想されていた。7月3日の超短期予測では7-9月期のアグリゲート指標を含 む成長率を-2%〜0%と4-6月期と同じ範囲に予想しており、米景気の回復(プラス成長)にはまだまだ時間がかかると思われる。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2009年6月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-06-15

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<本当に1-3月期が景気の底か?> 【景気は1-3月期に底打ち?】 この数週間、日本経済は1-3月期に底打ちしたのではないかという意見が民間エコノミストの間で主流となりつつある。政府や日銀からもそのようなコメン トがなされ、株価も1万円台をつけ先行きの明るさを示唆しているかのようである。今月の日本経済の見通しで示したように、現時点でわれわれの超短期予測は この見方に対して慎重になっている。以下、その理由を示そう。 【月次データの結果はミックス】 最近の経済指標を一瞥すれば、”景気底打ち”との見方を支持できそうである。鉱工業生産指数は3月、4月と2ヵ月月連続して前月比プラスを記録した。ま た好調な生産、出荷の影響で、4月の一致指数(CI)は前月比1.0ポイント上昇し、11ヵ月ぶりの改善となった。単月では判断しがたいが、これらは景気 の底打ちを示唆するデータといえよう。4月の輸出数量指数は前月比+10.3%と2ヵ月連続で上昇した。輸出は3月、4月に底打ちしたようである。 またセンチメントが大きく改善している。5月の消費者態度指数は、5ヵ月連続で前月比プラスとなり、前年比でも30ヵ月ぶりの改善となった。5月の景気ウォッチャー調査でも、現状判断DIは5ヵ月連続の前月比改善となり、前年比でも2ヵ月連続のプラスとなった。 このように、全体的にみると生産や出荷指数は2ヵ月連続で改善している。しかし、財別に見ると違う姿がうかがわれる。4月の資本財出荷指数は前月比 -10.1%低下し、7ヵ月連続のマイナスとなった。民間企業設備の基調は非常に弱い。また4月のコア機械受注は前月比-5.4%と減少し、2ヵ月連続の マイナスとなった。民間企業設備の先行きも明るくない。 たしかに、消費者センチメントの悪化は止まり改善の方向に進んでいるが、最終需要の勢いは極めて弱い。またデフレ圧力の高まりで、今後1年の物価につい て、横ばいないし下落と見る消費者の割合は、初めて50%を超えた。景気ウォッチャーの見方でも、景気を「やや悪くなっている」と「悪くなっている」と評 価する割合は全体の5割弱もあることに注意しなければならない。これらはいずれも民間消費を押し上げるにはインパクトに欠ける。 月次データの結果には良いものと悪いものとが入り交ざっており、同じデータでも両面が垣間見られる。景気回復期のデータの特徴といえよう。たしかに、この時期、景気診断は非常に難しいが、具体的でなければならない。 【超短期予測の見方】 われわれの超短期モデル予測の特徴を一言でいえば、”Go by the Numbers”である。予測において、月次データと四半期GDPを統計的にリンクしているのである。したがって、毎週、具体的に数字で示すことができ る。現時点では、4月の実績と5月、6月の月次データの予測値からGDPを予測している。今月の日本経済の見通しで示したように、4-6月期予測の特徴 は、純輸出の前期からの減少幅が縮小傾向にあるが、民間需要、特に、民間住宅と民間企業設備が弱い点である。今後2ヵ月で、公的需要と純輸出の回復が、ど こまで民間需要の弱さを相殺できるかが、実質GDP成長がプラスに転換できるかのポイントになる。たしかに、景気は改善の方向にあるが、経済がプラス成長 に転換しているかの判断は難しい。現時点での民間エコノミストの見方は、好調な鉱工業生産統計の影響を大きく受けていると思われる。鉱工業生産の経済全体 に占めるシェアは高々20%であることに注意しなければならない。〔稲田義久] 日本 <マーケットは1-3月期が景気の底、超短期予測は慎重> 6月11日発表のGDP2次速報値によれば、1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率-14.2%となり、1次速報値(同-15.2%)から1%ポイ ントの上方修正となった。この結果、2008年度の実質GDP成長率は1次速報値の-3.5%から-3.3%へと上方修正された。 実質GDP成長率上方修正の主要因は、民間企業設備及び民間在庫品増加である。実質民間企業設備は1次速報値の前期比-10.4%から同-8.9%へと 上方修正され、実質GDP成長率に対する寄与度は、-1.6%ポイントから-1.3%ポイントへと0.3%ポイント上昇した。また民間在庫品増加も1次速 報値の-0.3%ポイント(寄与度ベース)から-0.2%ポイントへ上方修正された。 6月15日の予測では、1-3月期GDP2次速報値と12日までの月次データが更新された。支出サイドモデル予測によれば、4-6月期の実質GDP成長 率は、純輸出の減少幅は縮小するが、民需(特に、民間住宅、民間企業設備)が不調となるため、前期比-1.4%、同年率-5.5%となる。 7-9月期の実質GDP成長率は、前期比-2.5%、同年率-9.7%と予測している。実質GDP成長率のマイナス幅が7-9月期に拡大するのは、内需 の減少幅は縮小するが、実質輸入の大幅増加により純輸出が再び悪化するためである。足下の輸入物価の大幅下落の影響を受け、7-9月期の輸入物価予測値が 大幅下落するため、実質輸入の予測値が上振れする。 主成分分析モデルは、4-6月期の実質GDP成長率を前期比年率-2.6%と予測している。また7-9月期を同-6.2%とみている。 支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、4-6月期が-4.1%、7-9月期が-7.8%となる。図から明らかなように、この4週間、4-6月期の予測は上昇トレンドにあるが、依然としてマイナス成長にとどまっている。 一方、別のアグリゲート指標である実質総需要(国内需要+輸出)の動きをみれば、4-6月期は前期比年率-4.5%、7-9月期同-3.8%と減少幅は緩やかに縮小している。このように成長率のマイナス幅は縮小の傾向にあるが、依然としてマイナス領域にある。 マーケットでは、1-3月期が景気の底(したがって、4-6月期がプラス成長)という見方が広まっているが、超短期予測はそれほど楽観的ではない。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 6月5日の超短期予測では、同日に発表された5月の雇用統計までを更新している。グラフからわかるように、4月22日以来の実質GDP成長率の下降トレ ンドが止まり、上昇トレンドへの反転の可能性を示した。これはGDPのみならず、総需要、国内需要、最終需要などの他のアグリゲート指標についても同様に 見られた。6月5日の超短期予測の1回だけの予測結果によって景気の転換点を判断するには無理があるが、これまでの深刻な景気後退が緩やかになってきたこ とは認めてよいだろう。マーケットでは、5月の雇用減がコンセンサスの525,000人よりかなり低い345,000人となったことから、リセッションが 終結に向かいつつあるとの楽観的な見方がでてきた。 しかし、景気先行指標としての平均週労働時間は、4月の33.2時間から5月には33.1時間へと減少した。もちろん、景気の遅行指標としての失業率は 今もって上昇を続けており5月には9.4%にまでなった。これは1983年8月以来の高さである。さらに、雇用減少は18ヵ月連続して続いている。これは 1981-82年のリセッション時と同じ記録である。 このように労働市場の停滞を反映して、超短期モデルによる賃金・俸給の予測は、今期・来期とそれぞれマイナスの伸びを予想しており、個人消費支出の増加 に期待がもてない。しかし、6月5日の超短期予測では、4月の所得サイドの統計を更新することによって、政府から個人への移転所得の急増、個人の税支払い の減少が予測され、個人所得が今期、来期にそれぞれ1.9%、1.7%伸びると予測している。すなわち、景気刺激策の個人所得への効果がでてくる。一方、 最近の消費者センチメント・コンフィデンスの急速な高まりを考えると、個人所得の増加が個人消費の増加に結びつく可能性も高い。そうなれば、今回の超短期 予測で示された景気の転換点がより現実的となるだろう。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2009年5月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-05-22

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<2009年度補正予算のマクロ経済への効果とその含意: アンケート調査に基づく検討> 【はじめに】 関西社会経済研究所(KISER)では、麻生内閣による経済危機対策についてアンケート調査(ウェブベース)を行い、5月13日に速報結果を報告した。一 方、5月20日発表された1-3月期の実質GDP(1次速報値)は前期比年率-15.2%と戦後最大の落ち込みとなった。これをうけて、KISERは26 日に日本経済の四半期見通しを発表する。これまで財政・金融政策の効果をマクロモデルのシミュレーションを通じて分析してきたが、より正確を期すために、 昨年以来、マクロ・ミクロの両アプローチから検討している。今回のアンケート結果のミクロ情報がマクロモデル分析に援用される。本コラムでは、先般発表し たアンケート調査結果を精査し再検討した結果から、その政策効果や含意に焦点を当ててみよう。 【アンケート結果の精査と政策効果の推計】 アンケート調査では、経済危機対策(補正予算)のうち、低炭素革命関連、(1)エコカー購入への補助、(2)グリーン家電普及促進、(3)太陽光発電システム購入への補助、(4)住宅などの購入にかかわる贈与税の減免などを取り扱った。 補正予算(財政政策)の効果により発生する需要の推計は、基本的にはアンケートによる回答率に母集団である世帯数(エコカーは保有台数)を乗じて計算し ている。1,000というサンプルから出来るだけ正確に母集団の行動を推計するため、速報発表後に回答率の精査を行うとともに母集団の選択にも注意を払っ た。さらに、政策に関係なく購入する予定者の割合から潜在的な需要を割り出し、それが業界の最近の販売量と大きく相違しないかチェックも行っている。 1.エコカー 今回の精査では、車を持っている人のうち(車歴13年以上90、13年未満631)、今後1年以内の車の購入予定がないと答え、さらに、新車購入の予定 はなかったがこの政策により新車を購入すると答えた人(車歴13年以上3、13年未満16)のみをカウントした。この比率を車歴13年以上、13年未満の それぞれの台数に乗じる。ちなみに、2008年3月末の乗用車登録台数は4,147万台(車歴13年以上817万台13年未満3,330万台)である。 スクラップ促進策とエコカー減税による追加的な需要創出効果は、合計、111.7万台となる。これに1台あたり200万円(インサイト、プリウスの最も安いランクの価格を参考とする)をかけると、約2兆2,334億円が政策効果となる。 2.グリーン家電 現在グリーン家電(テレビ、冷蔵庫、エアコン)のいずれも購入予定はないが、制度が実施されるならエコ家電を購入したいと答えた人の中で、それぞれのエ コ家電を購入すると答えた人のみが今回の政策による追加的購入の該当者とみなしている。全サンプルに対する割合は、テレビは8.5%、エアコンは 6.6%、冷蔵庫は7.0%である。この割合を2009年3月時点の世帯数(労働力調査)に乗じて追加需要を、さらに当該エコ家電の平均単価を乗じて金額 を推計している。エコ家電のうち、テレビとエアコンについては全世帯数を母集団としているが、冷蔵庫については2人以上の一般世帯を母集団としている。 グリーン家電普及促進策による追加的な需要創出効果は、合計、1,010.4万台となり、約1兆480億円が政策効果となる。 3.住宅用太陽光発電システム 2005年国勢調査によると、全世帯4,906万世帯のうち、持家一戸建の世帯は2,539万世帯である。全世帯数は、直近2009年3月時点には、 5,059万世帯になっている。全世帯数の伸び率から、直近の持家一戸建数は2,618万戸と推計できる(2,539×5,059/4906)。この世帯 数が補助金対象になる。補助金対象者のうち、アンケートで太陽光発電システムをぜひ設置したいと答えた人の割合(24/494=4.9%)をかけると、 128.3万戸となる。 これに実現可能性バイアスを考慮する。一戸建住宅を所有していると答えた人と太陽光発電システム補助金制度を利用したことがある、と答えた人の比率は 5.5%(=25/458)である。これに直近の持家一戸建推計数2,618万戸をかけると、142.9万戸となる。しかし実際には、1997-2005 年度の累積設置戸数は25.3万戸程度で利用実績は小さい(財団法人新エネルギー財団のデータ調べ)。すなわち、17.7%(=25.3/142.9)し か実際には設置されていないことになる。 これを修正係数とすると、アンケートベースの128.3万戸に17.7%をかけた22.7万戸が新しく太陽光発電設備を設置する戸数になる。結局、250万円/戸×22.7万戸=5,675億円が追加的な需要効果と推計できる。 最後に、贈与税制度の拡充による住宅投資創出効果をアンケートから推計しようとしたが、質問が正確に理解されていない可能性があり、今回は推計しなかっ た。グリーン家電や乗用車のような耐久消費財については、経済条件が多少変化しても購入意思が実現される可能性は高いが、住宅のような高額な買い物につい ては別物であると判断した。この政策の効果の推計には不確実性が付きまとうためである。 【アンケート結果の経済政策への含意】 以上の推計結果は、速報の段階よりはスケールダウンされたが、われわれは経験上確度の高い結果であると考えている。低炭素革命関連の補正予算により、民 間最終消費支出に3兆8,489億円の追加需要が2009年度に発生すると考えられる。2008年度の民間最終消費支出は290.6兆円であるから、民間 最終消費支出を1.3%引き上げることになる。経済全体では0.7%程度の引き上げとなろう。 もっともこのアンケートは4月時点での経済情勢にもとづく消費者の追加需要を推計していることに注意しなければならない。最近発表されている夏のボーナ スの予測を見れば、前年比20%程度の減少を避けられないようである。大型の耐久消費財(big ticket items)の購入にはボーナスが決定的に重要である。これからは所得制約が強まることがはっきりしているから、ここで示した推計には上方バイアスがか かっている可能性があることを指摘しておこう。 最後に、低炭素革命関連の補正予算の効果で2009年度に発生する追加需要は2010年度には消滅することを忘れてはいけない。ちょうど消費税引き上げ の駆け込み需要と同じである。その結果、2009年度には民間最終消費支出は成長促進要因となるが、2010年度には0.7%程度の抑制要因に転じるので ある。仮にその部分を世界経済の回復による外需が相殺してくれれば、日本経済は大不況からうまく脱出できることになる。結局、外需頼みの回復といえよう。 景気回復はダブルディップ型になる可能性が高いことを指摘しておこう。 (稲田義久・入江啓彰) 日本 <4-6月期日本経済、楽観は禁物> 5月20日に発表された1-3月期GDP1次速報値によれば、同期の実質GDPは前期比-4.0%、同年率-15.2%と前期(-14.4%)を上回る 大幅なマイナスとなった。下落率は戦後最悪となり、昨年4-6月期以来4四半期連続のマイナス成長を記録した。この結果、2008年度の成長率は -3.5%となった。実績は直近の超短期モデル予測(支出サイドモデル、主成分分析モデルの平均値:-17.4%)やマーケットコンセンサス予測(ESP フォーキャスト:-15.9%)を小幅下回る結果となった。超短期モデル予測の動態を見れば、2月の月次データが利用可能となった2月末の予測において は、すでに-14%程度の大幅な成長率予測へ下方シフトが起こっている。超短期予測は2ヵ月程度早く大幅落ち込みを予測できたことになる。 1-3月期の成長率が戦後最大の落ち込み幅となった主要因は、輸出の急激な落ち込みと低調な民間需要(民間最終消費支出と民間企業設備)である。日本の 景気の落ち込み幅は、他の先進国、米国(年率-6.1%)やEU(約年率-10%)のそれを大きく上回っている。これは、輸出に大きく依存した日本経済成 長モデルの脆弱性を引き続き示したことになる。 ただ、3月には生産や輸出が前月比でプラスに転じたことにより、マーッケトでは4-6月期は前期比でプラス成長になる可能性がささやかれている。 1-3月期のGDPを更新した今週の支出サイドモデル予測によれば、4-6月期の実質GDP成長率は、内需と純輸出が引き続き縮小するため、前期比-1.9%、同年率-7.5%と予測される。前期よりマイナス幅は縮小するものの依然としてマイナス成長が続くとみている。 4月の多くのデータが利用可能ではなく、予測モデルでは時系列モデルによる予測値を用いているため、今回のようにほとんどデータが急激な下方トレンドを 示している状況では転換点の予測は後ずれする。4月のデータが利用可能となれば、実質GDP成長率のマイナス幅が縮小することは予想できるが、プラスに転 じるかについては次回の予測を待ってみたい。プラス要因として補正予算の効果が期待できるが、新型インフルエンザ等マイナスの要因もあるからである。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 米景気に対して注意深いながらも楽観的な見方が広まってきた。最も良い例は5月5日のバーナンキFRB議長の議会両院経済委員会での証言である。彼は  ”昨年秋以降の急激な景気悪化のペースがかなり緩やかになってきた”とコメントをし、景気が2009年4-6月期において安定化することを示唆した。確 かに、最近の新規失業保険申請件数の増加はピークを打ち、雇用減少の緩和、製造業の平均週労働時間の上昇、NAHB(全米住宅建設業者協会)住宅市場指数 の1月以降の反転している。景気後退の象徴となっていた労働市場・住宅市場のこれ以上の悪化が止まる兆候をみて、マーケットは彼の証言を受け入れている。 市場エコノミストの4-6月期経済成長率の予測は-0.5%から-1.5%の範囲にある。これは今週の超短期モデルの予測値と近い(前期比年率-1.1%)。 景気判断するのにトレンドが重要である。ミシガン大学の消費者コンフィデンス指数、特に将来指数は2月の50.5から急速に上昇し始め、6月には 69.0にまでなっている。グラフが示すように、超短期モデル予測も3月6日の予測から4月24日の予測まで、4-6月期実質GDP伸び率の予測値が緩や かな上昇トレンドを示し、米景気の安定化を示していた。しかし、5月1日以降になるとこれまでの緩やかな上昇トレンドが急速に下降トレンドに転換し始め た。超短期モデルの予測が景気の転換点を示すのに少なくとも市場より1ヵ月早いことが理解できる。今後の超短期予測にもよるが、おそらく1ヵ月後には、" 第2四半期における景気安定化”という注意深い楽観的な見方が幾分悲観的な見方に変わる可能性が高い。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2009年4月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-04-20

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<中国の財政刺激策は関西経済にとって救世主となるか?> 関西経済予測のアウトライン:2009-2010年度 関西社会経済研究所(KISER)は2月22日、10-12月期GDP1次速報値を織り込んだ第77回景気予測を発表した(HP参照)。今回われわれは、日本経済予測と整合的な形で、関西経済についても予測を行った。ベースラインを要約すれば、以下の様である。 関西の実質GRP成長率は2009年度▲3.2%、2010年度+0.7%と予測する。第77回景気予測では、日本経済の実質GDP成長率について 2009年度▲3.7%、2010年度+1.5%と予測されていることから、関西経済は、日本経済と比較して落ち込み幅は緩やかに留まるが、回復局面では スピード感に欠く、といった予測のストーリーである。 需要項目の中で、特徴的な予測結果となっているのは企業設備投資である。2009年度▲13.6%、2010年度▲0.8%と予測している。ただし、大阪湾ベイエリア地域での環境関連投資が進めば、上ぶれする可能性があることに注意しておこう。 関西経済にとっての中国の役割 また、輸移出については、2009年度▲2.6%、2010年度+1.6%と予測している。関西の輸出においては、アジア、特に中国が大きな役割を担っ ている。ここで、関西における輸出構造を中国を中心に確認しておこう。下図は2008年における関西の輸出相手地域のシェアを示したものである。関西の輸 出16.5兆円のうち、アジアは約10兆円で6割を占めており、特に中国はその3分の1(3.3兆円)を占めている。中国に対する輸出を品目別にみると、 電気機器や原料別製品といった品目の割合が高い(それぞれ32.1%、19.4%)。一方、輸送用機器はあまり輸出されておらず、ウェイトが低い (1.0%)。 中国の財政刺激策の大きさ 最近、中国の財政刺激策にスポットライトが当っている。ただし、財政規模4兆元が一人歩きをしている感がある。この規模の財政刺激策が実現した場合、ど の程度の経済拡張効果があるか見てみよう。2008年の名目GDPが30.067兆元であるから、4兆元は13.3%に相当する規模である。仮に乗数(国 民所得の拡大額÷有効需要の増加額)を1.5とした場合、6兆元の追加的な需要となり、名目GDPを約20%引き上げるという計算になる。 ここで注意が必要である。意外と看過されているのは、この財政支出期間が2年を目処にしており、一部は昨年末から前倒しされていることである。なかには 単年度で4兆元が支出されてその効果を計算していると読める分析もある。それにしても、4兆元が仮にすべて真水として支出された場合、1年間で名目GDP を最大約10%押し上げる効果をもつと考えてよい。 中国の財政刺激策は関西経済にとって救世主となるか われわれは関西経済の予測とともに、中国経済の実質成長率がベースラインから加速した場合、関西経済に与える効果(中国経済高成長ケース:シミュレー ション1)を計算している。ベースラインでは中国の実質GDP成長率を2009年+6.2%、2010年+8.3%と想定しているが、これが両年にわたっ て8.5%にシフトアップするケースをシミュレーションしている。 シミュレーション結果によれば、中国経済が政府の目標に近い成長率(ここでは8.5%)を実現できた場合、関西経済の輸出を2009年度0.3%、 2010年度0.42%拡大するにとどまる。金額(2000年実質価格ベース)にして、それぞれ、336億円、479億円である。実質GRPは、2009 年度0.03%、2010年度0.05%の増加にとどまる。金額にしてそれぞれ283億円、411億円である。意外と効果は小さいのである。 KISERの関西経済モデルでは実質輸出関数が推計されている。所得弾力性は0.864、価格弾力性は-0.651となっている。所得変数としては、中 国、米国、EUの実質GDPを2005年の3ヵ国の輸出シェアで加重平均したものを用いている。中国経済の成長率2.3%ポイントの上昇(6.2%から 8.5%へ)は、関西の実質輸出を0.3%押し上げることになる。 中国経済に加えて、米国とEUの成長率がベースラインより2%ポイント上昇した場合、関西の実質輸出はベースラインから1.8%拡大することになる(シ ミュレーション2)。これらのシミュレーションが示唆するものは、関西経済にとって確かに中国経済の回復はそれなりの効果を持つが、決して大きくない。大 事なのは世界経済が一致して拡張的な財政・金融政策をとらない限り、大不況から脱出できないのである。16日に中国の1-3月期経済成長率が発表された が、前年同期比+6.1%に減速した。4半期ベースでは統計がさかのぼれる1992年以来の低い伸びにとどまった。この現実からも、中国経済の財政刺激策 の効果に過度の期待をかけないほうが無難である。(稲田義久・入江啓彰) 日本 <先行指標に一部明るさがみられるが1-3月期は前期を上回る2桁のマイナス> 4月20日の予測では、3月の一部と2月のほぼすべての月次データが更新された。3月のデータで特徴的なのは、一部の先行指標に改善が見られたことであ る。3月の消費者態度指数は3ヵ月連続の前月比プラスを記録し、同月の景気ウォッチャー調査の現状判断DIも3ヵ月連続で改善した。このように企業や消費 者の心理は2008年12月に底を打ち改善傾向を示しているが、水準は昨年秋口の値に等しく依然として低い。すなわち、前年同月では引き続き低下している が、悪化幅が縮小し始めたのであり、秋口以降の急速な落ち込みが減速しているのである。このように先行きに明るさが見られるものの、現状は非常に厳しいと いえる。 支出サイドモデル予測によれば、1-3月期の実質GDP成長率は、内需が大幅縮小し純輸出も引き続き縮小するため、前期比-4.7%、同年率 -17.5%と予測される。10-12月期を上回るマイナス成長が予想され、この結果、2008年度の実質GDP成長率は-3.2%となろう。ちなみに4 月14日に発表された4月のESPフォーキャスト調査によれば、1-3月期実質GDP成長率予測のコンセンサスは前期比年率-12.76%となっている。 われわれの超短期予測はコンセンサスから5%ポイント程度低いといえよう。 1-3月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比-0.8%となり、2期連続のマイナス。実質民間住宅は同-8.6%と3期ぶりのマイナス となる。実質民間企業設備は同-12.2%と5期連続のマイナスとなる。実質民間企業在庫品増加は2兆8,400億円となる。実質政府最終消費支出は同 0.4%増加し、実質公的固定資本形成は同0.6%増加する。国内需要の実質GDP成長率(前期比-4.7%)に対する寄与度は-2.8%ポイントとな る。 財貨・サービスの実質輸出は同22.1%減少し、実質輸入は同11.4%減少にとどまる。このため、純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は-1.9%ポイントとなる。 4-6月期の実質GDP成長率については、内需は停滞し、純輸出も引き続き縮小するため、前期比-1.5%、同年率-5.7%と予測している。 一方、主成分分析モデルは、1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率-16.0%と予測している。また4-6月期を同-9.5%とみている。 この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、1-3月期が-16.7%、4-6月期が-7.6%となる。両モデルの平均で見れば、2009年後半は引き続きマイナス成長となり、当面景気回復の糸口が見つからないようである。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 4月29日に2009年1-3月期のGDP速報値が発表される。その2週間前における同期の実質GDP伸び率(前期比年率)に対する市場のコンセンサス は-4%〜-5%である。一方、超短期モデルは実質GDP伸び率を、支出サイドから-0.2%、所得サイドから-1.7%、そしてその平均値(最もありえ る値として)を-0.9%と予測している。 この超短期予測が正しいとすれば、2008年10-12月期(実質GDP成長率:-6.3%)を米国経済の景気の底と見ることができる。実際に、バーナ ンキFRB議長のように、景気をそのようにみるエコノミストもいる。しかし、世界的なリセッションによる大幅な輸出入の減少が2009年1-3月期の数字 上の景気判断を難しくしている。 名目輸出入に関しては2009年の1月、2月の実績値が既に発表されている。従って、この2ヵ月の平均値を10-12月期の月平均値と比べることができ る。名目財輸出、同サービス輸出、同財輸入、同サービス輸入の減少率は、前期比年率でそれぞれ-45%、-16%、-57%、-17%となる。超短期予測 は時系列モデル(ARIMA)で3月以降を予測している。財とサービスを合わせた名目輸出、同輸入の下落率はそれぞれ-37%、-51%となる。すなわ ち、輸出入が共に3月に減少すると予測している。一方、輸出入価格は季節調整前だが、3月までの実績値がそろっており、前期比年率でそれぞれ-9%、 -24%である。 その結果、超短期予測は1-3月期の実質輸出、同輸入の下落率を前期比年率でそれぞれ-32%、-51%と予測している。すなわち、世界的なリセッショ ンの結果このような実質輸出入の大幅な減少が生じており、米国では更に実質輸入の落ち込みが実質輸出の落ち込みを大きく超えることから、数値上実質GDP の伸び率が高くなる。実質輸出入がこのようにそれぞれ大幅に減少するとき、純輸出の予測には多くの不確実性が伴う。 そのため、正しい景気判断をするにはGDPから純輸出を除いた実質国内需要で景気を判断するのが良い。超短期予測は1-3月期の実質国内需要の伸び率を -5.7%と予測しており、これは2008年10-12月期-5.9%とほとんど変化はない。すなわち、1-3月期の実質GDPの伸び率が市場のコンセン サスよりも高くなっても、同期の経済状況は前期と同じように悪かったと判断すべきであり、米国経済の底は2008年10-12月期から更に深くなっている と見るべきである。超短期予測が1-3月期の実質GDPが市場のコンセンサスに近くなるのは、季節調整後の輸入価格と3月の輸入を超短期予測が共に過小評 価している場合である。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2009年3月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-03-23

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<大不況脱出にはGDP比2%の財政規模で大丈夫か?> 予測のアウトライン 関西社会経済研究所(KISER)は2月22日、10-12月期GDP1次速報値を織り込んだ第77回景気予測を発表した(HP参照)。予測結果(ベー スライン)を要約すれば、2009-10年度の実質GDP成長率を-3.7%、+1.5%と見込んでいる。ここでいうベースラインは、予測期間において景 気対策が含まれないケースである。 ベースラインでは、日本経済は2008年4-6月期から2009年4-6月期まで5期連続のマイナス成長を経験して、7-9月期に小幅のプラス成長に転 じるものと予測している。この間、景気(実質GDP)のピークから底までの落ち込み幅は約8%である。ピークから約8%の需給ギャップが発生するとみてよ い。 麻生内閣の経済対策の内容 景気対策については不確実性が高いが、現時点での情報で麻生内閣の3次にわたる景気対策(いわゆる3段ロケット)の効果を推計してみよう。金額でみる と、(1)第1次補正予算は11.5兆円程度、(2)第2次補正予算案は27兆円程度、(3)12月19日閣議決定の「生活防衛のための緊急対策」は財政 上の対応10兆円程度と金融面の対応33兆円程度の計37兆円程度(「生活対策」のための財政措置6兆円除く)の規模である。総額75兆円(財政措置12 兆円程度、金融措置63兆円程度)が景気対策にあてられる。真水である財政措置は対GDP比では2%程度である。(下図参照。総理官邸HPより) 景気対策の効果を推計するために、KISERモデルでは二次補正、21年度予算のうち事業規模のはっきりする4つの経済政策の効果を検討した。具体的に は、(1)定額給付金(2兆円)、(2)住宅ローン減税(3,400億円)、(3)法人企業税制(4,300億円)、(4)その他財政支出(2.54兆 円)である。 いずれも住宅ローン減税を除き、2009年4-6月期から実施されるものとする。住宅ローン減税は1-3月期から遡及して実行されると想定している。モデ ルにおける操作は以下のようである。 政策変数の設定:景気対策シミュレーション  規模  時期 ①定額給付金  民間最終消費支出関数の定数項修正  3,200億円  2009年2Q ②住宅ローン減税  民間住宅投資関数における金利の引下げ  0.14%ポイント  2009年1Q以降 ③法人税減税  法人税率の引下げ  0.7262%ポイント  2009年2Q以降 ④その他の財政支出  政府最終消費と公的資本形成を増加  2.54兆円  2009年2Q、3Q ⑤景気対策  政策①から④の同時実施 景気対策の効果:2009年度への影響 現時点で想定される景気対策を反映したシミュレーションによると、2009-10年度の実質GDP成長率はそれぞれ-2.9%、+0.6%となる。すな わち景気対策(シミュレーション−ベースライン)は2009年度の成長率を0.8%ポイント引き上げる効果を持つことになる。2009年度経済に与える個 別対策の効果を見ると、(1)定額給付金は、実質GDPを6,450億円、0.12%押し上げる。 (2)住宅ローン減税は、実質GDPを2,120億円、0.04%引き上げる。(3) 法人税減税により、実質GDPを2,570億円、0.05%上昇させる。(4)その他財政支出(2.54兆円)は、実質GDPを4.191兆円、 0.80%の引き上げることになる。合計で実質GDPを4.7兆円、0.9%引き上げることになる。 財政措置GDP比2%の合理的根拠 現在までに想定できる麻生内閣の景気対策は、真水規模5.31兆円で2009年度の実質GDPを0.9%押し上げることになるが、問題は個別の政策効果 である 。われわれのシミュレーションから得られる含意は、政策をより効果的にするには、定額給付金のようなメニューではなく、より直接的な財政支出が必要である ことを示唆している。KISERの調査によれば、2兆円の定額給付金は3,200億円の追加的消費しか生み出さず、実質GDPを0.12%引き上げにとど まる。一方、2.54兆円がより直接的な支出に向かうと実質GDPを0.8%引き上げる。両者の政策効果の差は明瞭である。すなわち、高い乗数効果が期待 でき、中期的にも生産力効果を持つ環境インフラ、エネルギー関連に、より直接的な財政支出が振り向けられるべきということである。 最後に、簡単な試算を示そう。第1の試算は2009年度にマイナス成長から脱却するためにはどの程度の財政規模が必要か。もし財政がより直接的な支出に 振り向けられたならば、約11.7兆円[直接的な財政支出の規模(2.54兆円)×マイナス成長脱却に必要な成長率(3.7%)/景気対策による実質 GDP成長率上昇(0.8%)=必要な財政支出規模(11.7兆円)]の規模が必要となる。 第2の試算は2008年1-3月期のピークから2009年4-6月期の底まで8.0%の需給ギャップの解消には、同様に25.4兆円[2.54兆円×(8.0%/0.8%)]が必要となる。 日本経団連は25兆円の財政出動を提唱しているが、それなりの根拠があるといえよう。またG20では米国は各国にGDP比2%の財政支出を要請したとされているが最低限の線として十分な根拠を持つといえよう。 日本 <1-3月期実質GDP成長率は前期を上回る2桁のマイナス> 3月16日の超短期予測では、2月の物価関連の一部のデータと1月のほとんどの月次データが更新された。また10-12月期のGDP2次速報値が追加さ れた。2次速報値では、実質GDPの伸び率は、1次速報値の-12.7%(前期比年率)から-12.1%(同)へと小幅の上方修正にとどまった。成長率の 上方修正の主因は実質民間在庫品増加が上方修正されたことによる。決して明るいニュースではない。 データを更新した結果、支出サイドモデルは1-3月期の実質GDP成長率を前期比-4.1%、同年率換算-15.5%と予測している。この結果、2008年度成長率を-3.1%となろう。また4-6月期の成長率を前期比-1.3%、同年率-5.3%と見込んでいる。 実質成長率(前期比-4.1%)への寄与度は、内需は-2.0%ポイント、純輸出は-2.1%ポイントである。民間需要では、実質民間最終消費支出は前 期比-0.4%、実質民間住宅は同-6.8%、実質民間企業設備は同-10.1%と、いずれもマイナスの伸びを予測している。公的需要では、実質政府最終 消費支出は同+0.1%、実質公的固定資本形成も同+0.1%と小幅のプラスを見込んでいる。外需では、実質輸出は同-19.2%、実質輸入は同 -6.2%といずれも低調である。 一方、主成分分析モデルは、1-3月期の実質GDP成長率を同年率-13.2%と予測している。 4-6月期については同-7.4%と予測している。 この結果、支出サイド、主成分分析モデルの平均でみると、実質GDP成長率(前期比年率)は1-3月期-14.3%、4-6月期は-6.9%といずれも マイナス成長が予測されている。現時点では、1-3月期の経済は10-12月期を上回る2桁のマイナス成長になろう。4-6月期はマイナス幅が縮小する が、依然として厳しい状況にある。ただ1-3月期に大規模な在庫調整が進展すれば、年後半にはマイナス成長から脱却できる可能性がある。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 今の景気を判断するのに実質GDPのみに頼ると、現実の景気の深刻さをも見間違える。グラフに見るように、2009年1-3月期の実質GDP伸び率は2月 2日まで急速に悪化し、その後2月20日まで回復傾向にあった。しかし、2月20日以降、再び景気は下降し始めたものの、3月13日の超短期予測では実質 GDP伸び率を支出サイド、所得サイドからそれぞれ+0.1%、-1.8%と予測し、その平均値は-0.9%となっている。 確かに、1−3月期もマイナス成長を予測しているが、約-1%の落ち込みではそれほど深刻な経済状況とはいえないであろう。しかし、これは米国、そして 海外諸国の深刻なリセッションから米国の実質輸出が前期比年率で40%、実質輸入が50%と大幅に下落すると予想されているためである。景気を実質総需要 (=GDP+輸入)からみると、超短期モデルはその伸び率を-10%と予測している。また、実質国内需要(=GDP-純輸出)と国内購買者への実質最終需 要(GDP-在庫増-純輸出)の伸び率はそれぞれ-5.5%と予測されている。このように、経済をGDPとその他のアグリゲート指標で見ることによって、 今の景気状況は-1.0%から-10.0%と非常に幅広いものになることを理解しておくことが重要である。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2009年2月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-02-17

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<日本経済は底割れするのか?-中国・米国のデータからは外需回復の兆しも‐> リーマン・ショック以降、鉱工業生産指数の落ち込みは未曾有のものである。2008年10-12月期の同指数の落ち込みは前期比-11.9%と戦後最悪を 記録した。図からわかるように、落ち込み幅は第1次石油危機の時期を大きく上回っている。かつてないスピードと下落幅である。まるで金融指標の変化(株価 のフリーフォール)を見ているようである。生産市場の急激な変化は労働市場に負荷を与え始めてきている。まずは非正規労働者の解雇から始まり、大幅な生産 調整が続けば、次に正規労働者の調整につながることは容易に想像できる。このような急激で大幅な落ち込みは何を意味しているのであろうか。 まず(1)今回の生産の落ち込みが、世界同時不況と関連していることである。次に(2)企業の売上減少に対する対応が過去に比べてすばやくなったことである。 内閣府によれば、最近の景気の山は2007年10月である。景気後退後1年も経て急激に落ち込むというのは世界経済の同時不況が大きく影響している。それ は輸出市場の大幅落ち込みを意味するから、成長を輸出に大きく依存している国にとってはその影響は大きい。韓国やシンガポールでは10-12月期の生産が 2桁の落ち込みを経験していることからもよくわかる。 企業の需要の変化に対する対応が早くなってきた点を見ていこう。出荷と生産のずれは在庫となって表れるが、その対応の変化の時系列、すなわち在庫循環図 (在庫指数と出荷指数の相関図)を見れば一目瞭然である。以下に、鉱工業、電子部品・デバイス工業、輸送機械工業(除く船舶・鉄道)の在庫循環図(四半期 ベース)を示してある。鉱工業全体で見れば2008年10-12月期は第4象限に、すなわち意図せざる在庫の積みあがり局面にあることがわかる。しかし業 種別に在庫調整を見ると、異なる局面が表れてくる。例えば、電子部品・デバイス工業は全体と同じ局面にあり、足元の需要(出荷)減が急激であり在庫が大幅 に積みあがっていることがわかる。一方、輸送機械工業では、足元は第3象限にあり出荷の大幅減に在庫調整が進んでいる局面にある。 急激な鉱工業生産の落ち込みを反映して、10-12月期の経済成長率は2桁のマイナスになった。このためマーケットは悲観的なムード一色である。近視眼的 な見方をすれば、日本経済は底割れするのではないかと。しかし、上で見たようにすべての業種で意図せざる在庫が積み上がっているわけではない。日本のリー ディング産業の中には、在庫調整がかなり進捗している業種もある。問題は全体としていつ在庫調整が進むかである。答は外需(海外市場)の回復の時期次第と いうことになるが、中国では4-6月期に在庫調整が終わるとも予測されているし、米国のISM新規受注も回復の兆しを見せている。これらはよいニュースで ある。自動車のような産業では、海外の需要が持ち直せば国内生産はすぐに回復することを示唆している。急激な経済の落ち込みは、急激な回復の可能性がある のである。16日に発表された10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率-12.7%と悲惨な結果になったが、それは過去の経済パフォーマンスである から、悲観色をいっそう強める必要はない。 日本 <1-3月期実質GDP成長率は2期連続で2桁のマイナス?> 米国と中国の10-12月期実質GDP成長率の発表(1月)についで、2月13日にEU(27ヶ国)、16日に日本の実績が発表された。10-12月期の EUの実質GDP成長率は前期比-1.5%、日本のそれは同-3.3%と大幅なマイナス成長となった。日本の実質成長率は年率換算で-12.7%となり、 3四半期連続のマイナス成長。また減少率は第1次石油危機時の1974年1-3月期の年率-13.1%につぐ35年ぶりの大きさとなった。この結果、 2008暦年の実質成長率は-0.7%と9年ぶりのマイナス成長となった。 10-12月期の実質成長率(前期比-3.3%)への寄与度を見ると、内需が-0.3%ポイント、純輸出が-3.0%ポイントとなっている。世界同時不況 の影響で輸出が過去最大の落ち込みとなったことが影響している。たしかに第1次石油危機時には今回を上回るマイナス成長を記録したが、74年4-6月期に はプラス成長に戻っている。今回の問題は先行き回復の兆しが見えないことである 10-12月期GDP統計を更新した超短期(支出サイド)モデルによれば、2009年1-3月期の実質GDP成長率を前期比-2.4%、同年率換算 -9.4%と予測している。2期連続で2桁のマイナス成長となる可能性が高い。この結果、2008年度の成長率は-2.8%となろう。 1-3月期の実質成長率(-2.4%)のうち、内需が-0.5%ポイント、純輸出が-1.9%ポイントと輸出減が内需減につながる悪循環となっている。内 需のうち、実質民間最終消費支出は前期比+0.3%増加し、実質民間住宅は同5.3%減少する。実質民間企業設備も同3.0%減少する。実質政府最終消費 支出は同横ばい、実質公的固定資本形成は同1.3%減少する。財貨・サービスの純輸出は引き続き縮小する。実質輸出は同10.6%減少し、実質輸入は同 2.9%増加するためである。 4-6月期の実質GDP成長率についても、内需拡と純輸出は引き続き縮小するため、前期比-1.3%、同年率-5.1%と予測している。 内需のうち、実質民間最終消費支出は前期比+0.2%増加し、実質民間住宅は同2.2%減少する。実質民間企業設備は同1.0%減少する。実質政府最終消 費支出は同0.6%増加し、実質公的固定資本形成は同1.4%減少する。純輸出のうち、実質輸出は同4.9%減少し、実質輸入は同3.4%増加すると予測 している。 日本政府は先進国で一番早く不況から脱出すると宣言したが、逆に一番遅くなる可能性が高まっている。政治的混乱でタイムリーな財政政策は期待薄であり、結 局、海外市場の回復に依存せざるをえないからである。今こそ政治休戦をしてでも、成長戦略を意識した経済政策が望まれる。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <最悪期を過ぎた米国経済?> 2008年10-12月期実質GDP成長率(速報値)は前期比年率-3.8%となり、マイナス幅は市場コンセンサス予測(-5.4%)や超短期モデル(支 出サイドモデル)の予測(-4.9%)より小幅となった。超短期モデル予測のマイナス成長が政府公表値より大きかった理由は、輸入を過大に予測したことに ある。実際、商務省経済分析局(BEA)は12月の名目輸入を前月比で5.4%減少すると仮定した一方、超短期モデルはARIMA(時系列モデル)から 6.9%の増加になると予想した。そのため、超短期モデルは実質輸入(NIPA(国民所得生産計算)ベース)を1,110億ドルも過大に推定した。 今回の超短期モデル予測ではBEAの仮定した12月の名目財輸出入を実績値として用いている。また、連邦政府の雇用者所得以外の消費支出を推定するのに、 超短期モデルでは、連邦政府支出をブリッジ方程式の説明変数として使用している。ところで、TARP(Troubled Asset Relief Program: 不良債権救済プログラム)からの2,430億ドルの資産購入(2008年10-12月期)は、GDP推計には計上されないことから、その分を10-12月 期の連邦政府支出から差し引いて、連邦政府の雇用者所得以外の消費支出を推定している。 その結果、今週の超短期予測では2009年1-3月期の実質GDP成長率(年率換算)を支出サイドから-1.0%、所得サイドから+0.4%と予測してお り、少なくとも現時点では米国経済の最悪期は過ぎたものと考えられる。しかし、今期の経済成長率も2008年7-9月期、10-12月期と同じようにマイ ナスになる可能性は十分に考えられる。オバマの景気刺激策が緊急に実施されることが望まれるが、減税政策が少なく景気刺激パッケージ(Stimulus Package)というよりも民主党議員に都合のよい支出パッケージ(Spending Package)の色合いが濃くなっている。そうなると、景気刺激策が十分でないにもかかわらず、政府の累積債務が膨張するだけとなる。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2009年1月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-01-20

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<2009年度の日本経済・関西経済> 年末年始にかけて、関西社会経済研究所では、リーマン・ショック以降の急激に変化する足下の状況を織り込み、昨年11月に発表した予測を改定するとともに、新たに関西経済の予測を行った。(予測改定の詳細は研究所HPに掲載) 2009年度の日本経済 今回の景気回復(2002年2月-07年10月)のメイン・エンジンは純輸出であり、かつ戦後の日本経済の景気回復局面でも最も寄与度が高い項目であっ た。今や成長のメイン・エンジンが逆回転し始めている。これを印象付ける象徴的なイベントは、2008年11月の貿易統計と鉱工業生産指数の落ち込みで あった。10-12月期の実質GDP成長率は2桁に届くほどのマイナスが予測されており、かつてない景気後退となりそうである。 7-9月期GDP2次速報値を織り込み予測を改訂し、実質GDP成長率を2008年度-1.3%、2009年度-1.4%とした。前回(11月)予測から 2008年度は1.1%ポイントの、2009年度は1.5%ポイントの大幅な下方修正である。前回予測では捉えきれなかった、リーマン・ショック以降の急 速な経済の悪化が反映されている。 2008年度の実質GDP成長率は前年の+1.9%から-1.3%へと7年ぶりのマイナス成長に転じる。民間需要の寄与度は-0.7%ポイントと、前年度 の+0.5%ポイントから大きく低下する。公的需要は-0.2%ポイントの寄与となり、純輸出の寄与度は前年の+1.2%ポイントから-0.4%ポイント へと大幅低下する。 日本の主要貿易相手国のうち米国とEU経済の成長率は2009年にはマイナス成長となり、新興諸国の成長率も減速する。このため2009年度には純輸出の寄与度のマイナス幅は拡大する。 2009年度の実質GDP成長率は-1.4%と2年連続のマイナス成長となる。民間需要の回復は期待できず、純輸出の寄与はさらに低下する。内外需の寄与 度を見ると、民間需要は前年の-0.7%ポイントから-0.8%ポイントと小幅悪化、公的需要は+0.1%ポイントとなる。純輸出の寄与度は前年の -0.4%ポイントから-0.7%ポイントへと更に低下する。 幸いなことに原油価格や商品価格が大幅に下落しており、これが徐々に最終財価格に波及するであろう。このため、2008年度のコア消費者物価指数前年 比+1.3%となるが、2009年度は-0.4%とデフレに転じる。国内企業物価指数は同+3.6%、同-3.7%、GDPデフレータは同-0.7%、 同+0.9%と予測している。物価上昇率がプラスに転じるのは2010年度に入ってからである。 景気回復は2010年度と見込んでいるが、景気回復が感じ取れるのは2010年後半からと予測している。2009年度の成長率の四半期パターンは一様な落 ち込みの後の回復の様相を呈さず、2008年末から2009年初にかけて経済は大がかりな生産調整が起こり、2009年央に一旦落ち着くものの、2009 年後半から2010年初にかけて再び落ち込むという、いわばダブルディップ型のリセッションを予測している。2009年度は非常にBumpy(荒っぽい) な経済となろう。 2009年度の関西経済 関西経済は、全国と比較して設備投資が相対的に底堅いことや、アジア向け輸出が緩やかな減速にとどまることから、昨年後半時点では、2009年度は緩やか な調整にとどまるとみていた。しかし、足下この想定には疑問符がつき始めた。2009年度の関西経済は前年度の-0.7%に続き、-0.8%と2年連続の マイナス成長となると見込まれる。 雇用・所得環境の悪化、金融危機の深刻化を背景とした株安などから、個人消費および住宅投資のマインドは低調に推移するとみられる。企業の収益環境が厳し さを増すなか、投資意欲の低下に伴い、鈍化傾向であるものの、既に確定している大型投資が下支えとなると考えられる。近畿地区の企業短期経済観測調査をみ ても関西の投資計画は全国と比べ底堅さを維持している。ただし、パナソニックの薄型テレビ用パネル投資の約1,300億円の削減(2009年1月9日発 表)にも見られるように、今後下振れする可能性もある。 これまで米国、EUの景気減速により、関西以外の地域では純輸出が減少し始めていたが、関西はアジア向けの割合が高く比較的持ちこたえていた。2009年 に入り、新興諸国および国内他地域の景気減速が顕著となり、タイムラグを持って関西に影響が出てきた。関西の地域別輸出動向をみると、2008年11月に は北米・EU向けよりもアジア向けの減少幅が大きい結果となっている。このような状況から、今後関西の輸出も減速していくとみられ、他地域よりも急激に悪 化するリスクがある。 日本 <10%近い下落が予想される10-12月期実質GDP成長率> 今回の日本経済超短期モデル予測では、一部の12月データと多くの11月データが更新されている。最新の(支出サイドモデル)予測によれば、10-12月 期の実質GDP成長率は、前期比-2.4%、同年率-9.3%と見込まれる。前月の予測(-4.3%)から大幅の下方修正となった。 今回の大幅下方修正を象徴的に示唆するデータは、2008年末に発表された11月の鉱工業生産と貿易収支である。11月の鉱工業生産指数は前月比8.1% 低下し、2ヵ月連続のマイナスとなった。下落幅は、政府が比較可能なデータを公表して(1953年2月)以来、最大となった。業種別に見ると、輸送機械工 業、一般機械工業、電子部品・デバイス工業等の輸出関連産業で落ち込みが大きかった。製造工業生産予測調査によると、12月の生産は前月比-8.0%、1 月は同-2.1%と予想されている。10-12月期の鉱工業生産指数は4期連続のマイナスになるのは確実で、かつてない景気後退になりそうである。 11月の貿易収支は2ヵ月連続の赤字を記録した。輸出額は2ヵ月連続で前年の水準を下回り、下げ幅は月次統計が比較可能な1980年以来の最大(前年同月 比-26.5%)となった。輸入額も前年比14ヵ月ぶりのマイナス(同-13.7%)となった。輸出入の大幅減少は内外の市場が急速に収縮していることを 意味する。 これらのデータを反映した12月末の超短期予測によれば、実質GDP成長率予測はそれまでの前期比年率-3%〜-4%程度から、一気に同-9%程度に低下 した(図参照)。5%ポイントという大幅な予測の修正は、1993年から開始した週次ベースの超短期予測で初めての経験である。かつてないスピードで景気 の減速が起こっているのである。 10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比-0.3%となる。実質民間住宅も同-5.5%と、ともに2期ぶりのマイナス。実質民間 企業設備も同-1.6%となる。一方、実質政府最終消費支出は同+0.6%、実質公的固定資本形成は同+0.5%、それぞれ増加する。このため、国内需要 の実質GDP成長率(前期比-2.4%)に対する寄与度は-0.4%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同6.1%減少し、実質輸入は同8.9%増加する。名目ベースの輸出入がそれぞれ同-15.1%、-12.1%と同程度の減少 にとどまっているが、円高の影響を受け輸出デフレータが同-9.6%と下落する以上に、輸入デフレータが円高に加え国際商品市況の急下落により同 -19.3%と輸出デフレータの下落幅を大きく上回るためである(交易条件の改善)。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は-2.0% ポイントとなる。 2009年1-3月期の実質GDP成長率については、内需拡大は小幅にとどまり、純輸出は引き続き縮小するため、前期比-1.6%、同年率-6.1%と予測している。この結果、2008年暦年の実質GDP成長率は-0.3%、2008年度は-2.0%となろう。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <両刃の剣: 景気刺激策と財政赤字> 1月9日の超短期モデル予測は、2008年10-12月期の米国の実質GDP成長率を-5%〜-6%と予測している。これは市場のコンセンサスより約1% 低い。また2009年1-3月期もマイナス成長が見込まれている。このようななか、1月20日にワシントンに入る次期大統領のオバマは1月8日、できるだ け速やかに景気刺激対策を議会で通過させるために、“米経済の回復と再投資計画”を発表した。景気刺激策の主な内容は次の通りである; ・ 3年間に代替エネルギーの生産を2倍にする。 ・ 連邦政府の建物の75%を近代化する。 ・ 200万戸に対してエネルギーの効率化を促進する。 ・ 5年以内にすべての医療記録をコンピューター化する。 ・ 学校に新しいコンピューターと技術を供給する。 ・ 代替エネルギー供給のためのスマートグリッドの導入。 ・ 全米におけるブロードバンドの拡張。 オバマは更に労働者家計の95%に対して1,000ドルの減税を考えている。オバマはスピーチの中で景気刺激策の規模について明言はしていないが、約8,000億ドルと推定されている。 一方、連邦議会予算局(CBO)は1月7日、“2009、2010財政年度の予算と経済見通し”を発表した。CBOは現在決まっている政策にのっとって予 算・経済予測をすることから、オバマの景気刺激策によるコストは考慮されていない。にもかかわらず、その内容は以下のように市場にとってショッキングな内 容であった。 ・ 財政赤字は2009年度には1.2兆ドルにまで拡大する。GDP比率でみれば8.3%になる。 ・ 実質GDP成長率は2009年に2.2%の下落となる。 ・ 失業率は2009年、2010年度にはそれぞれ8.3%、9.0%にまで上昇する。 ・ 2008年Q3−2010年Q2の期間において住宅価格は更に14%低下するだろう。 オバマは景気刺激策による財政赤字拡大というジレンマを熟知しているため、景気刺激策を長期の経済成長の基盤に向けている。しかし、金融危機回避のために は、まだ住宅ローン貸し手のバランスシートの改善、住宅の抵当化の低減など課題が残っており、新大統領の船出は経済問題だけでも困難を極めている。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2008年12月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2008-12-15

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<不況の深化とセンチメントの悪化> 9月のリーマンブラザースの破綻を契機とする世界金融危機の深化は、世界の実物経済に大きな影響をもたらしている。また、その影響が及ぶスピードはかつて ないほど急速である。日本経済にとって、主要な輸出市場である米国やEUの経済がマイナス成長に陥り、もう一つの柱である新興市場諸国の経済成長率も減速 傾向が目立ってきている。 今月の日本経済の見通しで述べているように、最近の経済動向を要約すれば、生産の大幅減少、純輸出の収縮と特徴付けられる。今回の不況は海外発の要因が大 きく影響している。世界経済はこの間急速に悪化し、同時不況となっている。これに抗するために、主要諸国は先進国も新興国も金融緩和と財政拡大にむけて協 調しているが、これが明確な効果を生み出し、世界経済が底打ち反転することが、日本経済の回復に決定的に重要である。 このような性格を持つ今回の不況に対して、政府の打つ経済政策はおのずと限定されてこよう。重要なのは景気の底割れを防ぐことであり、生産の大幅削減や雇 用の調整が家計の本格的な消費削減につながらないような工夫が必要となる。そこで最近の消費者や景気ウォッチャーたちのセンチメントの動向を見てみよう。 11月の消費動向調査によれば、一般世帯の消費者態度指数は28.4となり、2ヵ月連続で過去最低を更新した。前年同月比では11.4ポイント下落して 24ヵ月連続の悪化を記録した。11月は世界経済の急激な落ち込みと輸出の収縮を背景に、国内の雇用の先行きや所得減への懸念が強く表れた結果となった。 指数を構成する4項目の意識指標はすべて前年から悪化したが、インフレ期待の低下から暮らし向きや耐久消費財の買い時判断に関する意識指標では底打ちや改 善の傾向が見られた。しかし、雇用環境に関する意識指標は21.1(前年同月比-22.0ポイント)で、悪化幅の拡大が目立った。 また同月の景気ウォッチャー調査によれば、現状判断DIも過去最低を更新した。前年比では17.8ポイント低下し25ヵ月連続の悪化となった。指数構成指 標の1つである雇用関連DIは同26.2ポイント低下し、27ヵ月連続で悪化している。2001年10月の悪化幅40.7ポイントまで至っていないが、今 後急速な悪化幅の拡大が予想される。 このように消費者や景気ウォッチャーたちの雇用のセンチメントは夏以降急速に悪化している。年度末にかけては生産の大幅削減の確率が非常に高くなってい る。実際、15日に発表された日銀12月短観では大企業の業況判断DIは前回調査から21ポイント悪化した。これは1974年9月調査以来の悪化幅 (-26ポイント)となっている。これから生産削減、雇用削減は避けられないであろうが、この動きが消費減退に繋がる負の連鎖を断ち切らねばならない。す なわち、消費者のセンチメントの大幅悪化を防ぐ工夫が必要である。消費者には、今回は前回のように本格的なリストラにはならないという安心感を与えるよう な政策を準備し、また、生活の安心を取り戻すため一定の生活防衛のためのセーフティーネットを充実しなければならない。11月の「今月のトッピクス」で追 加経済対策(10月30日決定)の効果をあまり評価しなかったが、今回新たに出てきた政府の経済対策のうちで、職を失った人に対する住宅支援などは評価で きる。要は消費者のセンチメントの悪化を防ぎ、生産・雇用の削減から消費の本格的削減という負の連鎖を断ち切ることがもっとも重要で、世界景気が底打ちす るまでの政策課題となる。 日本 <不況感が強まる10-12月期経済> 今回の予測では一部の11月データと10月のほぼすべてのデータが更新されている。これらの動向を要約すれば、生産の大幅減産、純輸出の収縮と特徴付けられる。 今週の超短期モデル(支出サイド)は、10-12月期の実質GDP成長率を、内需は小幅拡大にとどまり純輸出が大幅に縮小するため、前期比-1.1%、同 年率-4.3%と予測している。予測は6週連続で下方修正が続いている。この結果、2008年暦年の成長率は+0.1%にとどまろう。 10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.1%となる。実質民間住宅は同-4.4%と2期ぶりのマイナス、実質民間企業設備 は同+1.2%となる。実質政府最終消費支出は同+0.4%、実質公的固定資本形成は同2.0%減少する。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比 -1.3%)に対する寄与度は+0.2%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は前期比2.3%増加し、実質輸入は同15.3%増加する。不況下の経済で実質輸入が大幅増加するのは不思議な気がするが、理由 は以下のとおりである。まず名目ベースの輸出入は輸出が同-6.2%、輸入が-5.7%と同程度の減少にとどまっている。一方、デフレータは急激な円高と 国際商品市況の大幅下落により異なった動きを見せている。輸出デフレータが同-8.3%下落するが、輸入デフレータは円高に加え国際商品市況の急下落によ り同-18.2%と輸出デフレータの下落幅を大きく上回っている。このため、実質純輸出は前期から大幅に縮小し、実質GDP成長率に対する寄与度は -1.3%ポイントと大きなマイナスの貢献となる。 2009年1-3月期の実質GDP成長率については、内需拡大は小幅にとどまり、純輸出は引き続き縮小するため、前期比-0.7%、同年率-2.9%と予測している。この結果、2008年度の実質GDP成長率は-1.1%となろう。 このように、2008年度の経済成長率は4-6月期の前期比年率-3.7%、7-9月期同-1.8%に続き、年度後半もマイナス成長が持続し、当面は回復の展望が描けない厳しい状況となっている。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <NBERの苦しいリセッション宣言‐significant な落込みが a few months 続くこと‐> 12月1日に全米経済研究所(NBER)の景気基準日付け決定委員会は2001年3月から始まった今回の景気拡大が2007年12月に終わり、リセッショ ンに入ったことを宣言した。通常のリセッションの定義は2四半期連続しての実質GDPのマイナス成長であるが、NBERはリセッションを「経済全体におけ る景気活動のsignificant(?) な落ち込みが、a few months (2,3ヵ月?)以上続くこと」と定義し、それらは生産、雇用、実質所得、その他の経済指標に表れると付け加えている。リセッションを定義するときは、 significantなどと言う恣意的な言葉は使わないほうがいい。超短期モデル予測は2007年12月から2008年4月まで景気がスローダウンして きたことは認めるが、景気は2008年4月-6月に急速に拡大していたことを示している。実際に2008年4-6月期の経済成長率は超短期モデル予測とほ とんど同じ+2.8%と高いものであった。 また超短期モデルは2008年6月以降再び景気がスローダウンしていることをはっきりと認めている。特に2008年10-12月期において、9月12日以 降、支出サイドからの実質GDP成長率は-5%を下回っている。まさに、現在は大不況(グレート・リセッション)とも呼べる状況である。 NBERがリセッションの公式宣言を行った日に株価のダウ平均が700ドル近く下落したように、NBERの決定は市場に大きな影響を与える。もしも、リ セッションをNBERの定義に従うならば、米経済は2007年12月-2008年4月、2008年6月-現在 とダブル・ディップ・リセッションにあることをNBERは認めることである。むしろ、従来のリセッションの定義に矛盾することなく、リセッション入りを宣 言するならば2008年6月をリセッションの開始年月とすべきである。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2008年11月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2008-11-18

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<追加経済対策の評価> 日本経済にとって、今回の不況は国内発より海外発の要因が大きく影響していることに注意が必要である。すなわち、第一に原油価格の高騰、第二に世界的な信 用収縮が時差を伴いながら複合的に影響している。世界経済はこの2ヵ月急速に悪化し、同時不況の様相を呈している。これに抗するために、主要諸国は先進国 も新興国も金融緩和と財政拡大にむけて協調体制に入っている。 日本政府は10月30日に追加経済対策を決定した。8月末に決定した総合経済対策の事業規模を大幅に上回り、また1998年に小渕政権が取りまとめた緊急経済対策に並ぶ26.9兆円の事業規模となった。ただし、真水と呼ばれる実際の財政支出規模は5兆円程度である。 「生活対策」と名づけられた追加経済対策は3つの柱からなる。(1)総額2兆円の定額給付金を中心とする「生活者の暮らしの安心」対策(国費2.8兆円、 事業規模3兆円)、(2)中小企業向け保証・貸付枠の拡大や投資促進策といった企業支援と金融市場の安定化を目指す「金融・経済の安定化」対策(国費 0.6兆円)、(3)住宅ローン減税や高速道路料金引き下げによる「地方の底力の発揮」対策(国費1.6兆円、事業規模26.9兆円)である。 追加経済対策のマクロ及びミクロベースの効果分析は別の機会に譲るが、2点に絞って整理しておこう。第一に、定額給付金については効果と費用の関係が問題 になろう。KISERのインターネット調査によれば、限界消費性向は0.2を上回らないようである。この結果は、地域振興券の場合と矛盾しないし、米国の 場合も0.2程度とされていることから、あまり効果がなさそうである。加えて実施方法にコストがかさむ場合、その意義は大きく薄れるであろう。第二に、今 回の高速道路料金引き下げはガソリン価格が最高値をつけた7月時点の生活支援といった性格が強く、価格下落が著しい現時点では大いに意義が薄れる。料金引 き下げはむしろ交通渋滞を引き起こし低炭素社会実現の目的からも乖離する。中長期的にこの目的を実現するプロジェクトに使用されるべきである。 今後、年度末にかけてマイナスないしはゼロ成長が続くと予測される。ただ景気は急激に悪化していくというより、停滞色の濃い期間がしばらく続くと見てよ い。景気にとって唯一の明るい材料は、ガソリン価格が下落し始めていることである。ガソリン価格の下落は消費者心理の急激な悪化を反転させるであろう。加 えて、景気の悪化を防ぐためにも年度末にインパクトのある景気対策が実施されることが重要である。今回の不況は海外発の要因によって引き起こされたため、 小手先の政策より海外発の要因(原油価格、輸出)に影響されにくい経済構造実現に向けての政策が重要となる。例えば、新エネルギーの利用・促進(太陽電 池、電気自動車、風力発電等)という中期的な政策課題に財政資金が集中的に投じられることが、むしろ国民社会に安心と夢を与え理解される経済対策となろ う。 日本 <停滞色の濃い期間が続く—重要性を増す景気対策> 11月17日発表のGDP1次速報値によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比-0.1%、同年率-0.4%となった。2001年7-9月期以来の 2期連続のマイナスとなり、日本経済はリセッションにあることを確認した。前年比でも、-0.1%となり2007年4-6月期以来のマイナスとなった。超 短期予測は9月まで1%台半ばの成長率を予測し続けたが、8月のデータが更新された10月以降予測はゼロ成長にシフトした。最終週の予測値は前期比 -0.1%(同年率-0.2%)とほぼ実績どおりになった。 7-9月期の実質GDP成長率(前期比-0.1%)への寄与度を見れば、国内需要は+0.1%ポイント、純輸出は-0.2%ポイントと、外的ショック型の リセッションが進行している。今回の特徴は、欧米経済の不況の深刻化により実質純輸出が2期連続でマイナス寄与となったことであり、名目ベースでも純輸出 は昨年10-12月期以来4期連続でマイナスの寄与となっている。交易条件の悪化による企業収益の大幅な悪化がこの背景にあり、結果として民間企業設備の 減少が鮮明となってきた。企業部門の低調に比して、民間部門が意外と堅調であったのがもう一つの特徴である。 今週の支出サイドモデル予測によれば、10-12月期の実質GDP成長率は、内需は拡大するが純輸出が大幅に縮小するため、前期比-0.2%、同年率-1.0%と予測される。この結果、2008年暦年の成長率は+0.4%となろう。 海外経済の不況の深刻化とともに外需は収縮し、小幅な内需の拡大では相殺しきれない。9-10月に入って景気指標は急速に悪化している。今後、設備投資関 連指標が落ち込む中で、民間最終消費支出の動きが重要なポイントとなろう。景気ウォッチャー調査や消費動向調査の結果が示すように消費者心理が急速に落ち 込んでいる。今後の民間消費がマイナスになる可能性が高まってきているのは要注意である。ただ唯一の明るい材料は、原油価格が年末50ドル(1バレル)に 向けて下落を示すなか、ガソリン価格が下落し始めていることである。ガソリン価格の下落は消費者心理の悪化を反転させるであろう。 景気は停滞色の濃い期間がしばらく続くと見てよい。景気を悪化させないためにも年度末にインパクトのある追加の景気対策が実施されることが重要である。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <オバマの勝利と金融危機への取組み> 政権にある党が選挙に勝つためには経済繁栄と平和を社会にもたらしていることが不可欠である。2006年の中間選挙ではイラク戦争の混乱、ハリケーンカト リナへの対応の失敗から共和党は議会選挙で大敗を帰した。今回の選挙では金融危機によって共和党はホワイトハウスのみならず議会においても敗北を帰した。 金融危機が選挙の50日前に表面化したことはマケイン大統領候補にとって不運であった。さらに、彼はブッシュ大統領の不人気の下で戦わなければならなかっ た。雄弁なオバマ大統領候補は6億4,000万ドルもの資金を集め、初の黒人大統領の誕生という歴史的な快挙を成し遂げた。 しかし、金融危機の終わりが見えない今の状況において、オバマは来年1月20日の就任式前にも以下の3つのことを直ちに行わなければならない。 できるだけ早く財務大臣とそのチームの指名 就任後に実施する第2の景気刺激策の発表 7,000億ドルの金融危機救済プログラムへの参加 オバマは"変革”をスローガンに次期政権への移行チームを形成したが、それはクリントン政権の旧友の集まりのようであり、全く”変革”とは異なるものに見える。 オバマ候補の勝利は米国政治にとって転換点になりうる。それはあたかも1980年に共和党のロナルド・レーガンがカーター大統領を打ち破り、その後25年 間の保守的な方向に国民を導いたように。しかし、オバマ新大統領と民主党がキャンペーン中に公約した、経済の立て直し、米軍のイラクからの撤退、健康保険 の加入者の拡大などを実現しなければ、2008年の選挙結果は民主党にとっての長期政権への出発となるのではなく、単に金融危機から米国民が不人気な現共 和党大統領を嫌って一時的に民主党に動いたにすぎないことになる。 今週の超短期予測からは、今後の経済に対しては悲観的なシグナルが出ている。10-12月期は前期比年率-4.0%とマイナス幅が前期(同-0.3%)から拡大している。このため、2008年の米国の経済成長率は前年の+2.0%から1.3%に減速するであろう。 [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2008年10月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2008-10-15

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<金融危機は世界恐慌につながるか?> 今月の米国経済や日本経済の見通しが示すように、世界経済は米国発の金融危機により同時不況局面に突入したかのようである。2008年初に 14,691.41円からスタートした日経平均株価は9月25日にはまだ12,000円台を維持していたが、10月1日以降、8営業日連続で下落し10日 には8,276.43円まで急落した。震源地の米国では、10月の第2週だけでダウ平均株価は1,874ポイント下げ、18%の下落と1週間での下落率は 過去最悪となった。まさに金融市場はパニックである。 しかし、われわれは、世界経済が長期の同時恐慌に突入するとは考えていない。世界経済は、太平洋をまたいで不均衡となっている貯蓄投資構造のリバランス過 程にあり、この調整過程はしばしば荒いものとなろうが、決して底割れすることはないと見ている。すなわち、中国やインド経済は減速が予想されているものの 世界経済のアンカーとなり、不況の深化を緩和させてくれると見ているからである。 バブル崩壊後の日本経済の例が示すように、確かに米国経済の低迷がしばらく続くのは不可避である。住宅価格が更に下落し、ストック調整が進み、民間貯蓄率が上昇する形で、新たな均衡経路に向けての調整が進むであろう。 米国発の金融危機がグローバルになり世界経済にとって深刻になった今、日本を除く世界の主要な中央銀行は10月8日にそれぞれ政策金利を50ベーシスポイ ント(0.5%)引き下げ、金融危機への協調姿勢を示した。これには市場は冷たい反応を浴びせたが、10日、11日にワシントンで開かれたG7ミーティン グにおいて、各国蔵相・中央銀行総裁は、グローバルな経済成長を維持するために、信用の流れを回復し、金融市場を安定させるために協調政策をとることに同 意、5項目からなる行動計画を発表した。市場がどの程度これを評価し、またどの程度金融危機の解決に役立つかは不透明であるが、株価のfree fall(暴落)は一旦下げ止まるであろう。 このように世界各国が危機にすばやく対応し、また世界経済の懐が大きくなっている点は、過去の大恐慌時と決定的に異なる。BRIC’sを中心に発展途上国 の内需を中心とした発展が世界経済を支えるであろう。今月の中国経済見通しで述べられているように、中国政府は、他国経済が減速するなか中国経済が安定を 維持することが決定的に重要であることを十分理解している。中国は必要であるなら経済活動を刺激する財政金融政策を実施するであろう。実際、十分な外貨準 備の蓄積を国際的な金融危機に対して柔軟に利用できるであろう。 もう1つのプラス材料は原油価格の下落である。2007年に2倍となり2008年前半には高止まりしていた原油価格は、景気減速とファンドの手仕舞いにより現在70-80ドルで推移している。今後も下落基調で推移すれば、企業や消費者のマインドが回復してくるであろう。 日本 <7-9月期経済、2期連続のマイナス成長の可能性高まる。戦略的な景気刺激策が必要> 今回の超短期予測では、8月のデータと9月の一部のデータが更新された。比較的好調であった7月に比して、8月は前月から大幅に悪化した。特に、生産が大 幅に低下し、雇用や民間消費にも悪影響が出てきたといえよう。8月の鉱工業生産指数は前月比3.5%低下し、下落幅は2001年1月以来の大きさとなっ た。輸送機械等の輸出関連業種の減産が影響しているようである。完全失業率は4.2%となり、前月から0.2%ポイント悪化。消費総合指数は前月比 0.2%低下し、2ヵ月ぶりのマイナスである。この結果、7-9月期日本経済は横ばいないしマイナス成長になる可能性が高まってきた。加えて、米国発の金 融危機は株価の暴落、円の対ドルレートの急騰により、年度後半も低成長を余儀なくされそうである。 日銀9月短観によると、大企業製造業の業況判断DIが2003年6月調査以来のマイナスとなった。原材料価格の高止まり、内外需の減速、加えて金融市場の 混乱の影響で業況判断は大きく悪化している。今回調査は、株価暴落や円レート急騰の影響を反映しておらず、先行き企業のセンチメントはさらに悪化しそうで ある。 今週の超短期(支出サイド)モデル予測によれば、7-9月期の実質GDP成長率は、純輸出の小幅拡大が内需の小幅縮小で相殺されるため、前期比+0.0%、同年率+0.1%と予測される。 7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.3%となる。一方、実質民間住宅は同-3.5%と2期連続のマイナス、実質民間企業設 備は同-1.1%と3期連続のマイナスとなる。実質政府最終消費支出は同横ばい、実質公的固定資本形成は同-1.3%と減少する。このため、国内需要の実 質GDP成長率(前期比+0.0%)に対する寄与度は-0.1%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同0.5%増加し、実質輸入は同-0.4%と減少するため、純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.1%ポイントにとどまる。 10-12月期の実質GDP成長率については、内需は小幅増加、純輸出は停滞するため、前期比+0.4%、同年率+1.5%と予測している。この結果、2008暦年の実質GDP成長率は+0.7%となろう。 主成分分析モデルは、7-9月期の実質GDP成長率を前期比年率-0.3%と予測している。また10-12月期を同+2.4%とみている。われわれは、こ の2週間、成長率予測をゼロないしマイナスと大幅に下方修正している。両モデル平均で見ると、7-9月期の実質GDP成長率は4-6月期の-3.0%に続 いてマイナス成長になる可能性が高くなってきた。すなわち、日本経済はリセッションに突入する可能性が高くなってきたといえよう。ただ、唯一のプラス材料 は原油価格の下落であり、これは企業収益の減少を下支えしよう。一方、実質所得の増加が期待されないなか、民間最終消費支出を落ち込ませないためにも、個 人所得減税はそれなりの意味を持つであろう。減税が実施される年度末には原油価格の下落から消費者のセンチメントが底打ちしている可能性が高いからであ る。減税以外では、予算制約のもと、バラマキではなく将来を展望した戦略的な支出が必要とされよう。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <グローバル金融危機にG7は対処できるか> 米国の金融危機が実体経済にも影響を及ぼしてきた。グラフに見るように、10月10日の超短期モデルは7-9月期の米国経済成長率を前期比年率-1%程度 と予測している。しかも、インフレ率はGDP価格デフレーター、個人消費価格デフレーターでみると同+4%〜+6%になるだろう。米国経済は7月半ば以 来、明瞭な下方トレンドを示している。 米国発の金融危機が世界経済にとって深刻になった今、世界の主要な中央銀行は10月8日にそれぞれ政策金利を50ベーシスポイント(0.5%)引き下げ、 金融危機への協調姿勢を示した。しかし、株式市場はこの協調政策に“ノー”をつきつけた。8日、9日とダウ平均株価は前日比それぞれ189ポイント、 679ポイント下げた。結局その週だけでダウ平均株価は1,874ポイント下げ、1週間での下落率は18%の下落と過去最悪になった。これに対して、その 2日後の10日、11日に開かれたG7ミーティングでは、各国蔵相・中央銀行総裁は、グローバルな成長を維持するために、信用の流れを回復し、金融市場を 安定させるために協調政策をとることに合意、5項目からなる行動計画を発表した。しかし、市場がこれをどの程度評価し、またどの程度金融危機の解決に役立 つかは不透明である。特に、EU諸国の協調行動が実際に行われるかについて疑問がもたれている。過去の例を見れば分かるように、統合に合意するのに30年 かかったように、EU諸国は簡単なことさえ合意するにも時間がかかるからである。 週明けの13日午前中の米株式市場を見る限り、市場は少なくともG7の行動計画にはポジティブに反応しているように思われる。しかし、この行動計画には具 体的な対策が含まれていないことから全く安心はできない。10月14日(現地時間)には、ブッシュ大統領が発表した金融機関への資本注入を柱とする金融安 定化策を発表したが、投資家の”Greedy(貪欲)"によるバブル化による資産価格の上値と、バブル崩壊後の彼らの”Fear(恐怖)”による資産価格 の底値を予測することは不可能である。 [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2008年9月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2008-09-15

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<米国住宅価格はどこまで下落するか> 米国の今月の見通しでも指摘しているように、当局が採るべき政策は、第一に、住宅ローン市場における人々の不安を解消すること。第二に、追加の景気刺激 策の導入である。9月7日にポールソン財務長官が連邦住宅抵当公庫と連邦住宅貸付抵当公社の2社を政府の管理下におくと発表し、第一の政策は実施された。 この結果、週明けの8日の米国株式市場は大幅高になった。しかし、それは1日しか続かなかった。 米国政府が住宅公社救済に踏み切っても金融市場の動揺が収まらないのは、サブプライムローン問題の解決にまだしばらく時間がかかるとマーケットが見ている からだ。その主因は、住宅価格の下げ基調が止まらないことにある。図は米国住宅価格の代表的な指標であるS&Pケース・シラー指数(全国ベース) を見たものである。2006年4-6月期をピーク(100)として08年4-6月期は81.8となり、約20%下落したことになる。今後、住宅価格はどこ まで下落するのであろうか。 去る9月8日に国際金融問題の専門家であるカリフォルニア大学のバリー・アイケングリーン教授の講演会(主催:関西社会経済研究所・関西経済連合会)が大 阪で開催された機会に、同教授と議論し、今後、住宅価格がどの程度下落するかの質問を行った。慎重ながら、彼は、過去の住宅購入価格と賃貸料の関係からす れば、現在の住宅価格は依然として14%高いという。すなわち、彼によれば、住宅市場が底入れするには、ピークから35%程度下落する必要があるという。 7月時点で住宅在庫が月間販売数の11ヵ月分を上回って積みあがっている。90年代平均はせいぜい5ヵ月程度であるから、住宅市場の底入れはさらに1年は かかりそうである。したがって、住宅価格がさらに14%下落するという予測は十分実現する可能性が高い。 資金循環表によれば、2008年1-3月期末の家計の保有する住宅資産は20兆ドル程度ある。今後、家計の資産が2.8兆ドル減少することを示唆してお り、逆資産効果が民間消費を悪化させることになる。これは民間消費が今後2年で1,000億ドル程度(約1%)押し下げられることを意味する。逆資産効果 は、ホーム・イクイティー・ローンを中心とした消費者ローンが縮小することにより民間消費が直接削減される経路と、消費者が住宅価格下落によりネガティ ブ・イクイティーに陥ることにより消費マインドが悪化して消費性向が低下する経路を通じて、民間消費に影響を及ぼす。その意味で、第二に必要な政策として 追加の景気刺激策が重要となろう。 日本 <2008年後半は前期比年率+0.5%に減速、年度末減税は一定の効果> 9月12日に発表された4-6月期GDP2次速報値によれば、同期の実質GDPの成長率は前期比年率-3.0%と1次速報値の同-2.4%から下方修正 された。4 半期ぶりのマイナス成長となり、また2001年7-9月期(同-4.5%)以来の大幅な下落となった。また1-3月期の成長率も同+3.2%から 同+2.8%へと下方修正された。図が示すように、前年比で見ればこの1年の成長減速は明瞭である。2007年1-3月期の前年同期比+3.2%をピーク として、4-6月期の同+1.8%、7-9月期の同+1.7%、10-12月期の同+1.6%、さらに2008年1-3月期同+1.2%から4-6月期は 同+0.7%へと5期連続して減速しており、ダウントレンドが明瞭である。 今後の日本経済はどうような成長パターンを示すのであろうか。現在、マーケットには悲観的なムードが漂っている。その背景には、世界経済、特に米国・EU の成長減速があり、また新興諸国も明瞭ではないが成長減速の兆しが見られるからである。しかし、一方で原油価格の下落という明るい兆しがある。 7月の月 次データを反映した最新の超短期モデル予測によれば、7-9月期の実質GDP成長率を前期比+0.5%、同年率+1.9%と見込んでいる。 10-12月期は前期比+0.4%、同年率+1.4%と予測している。この結果、2008暦年の経済成長率は+1.0%となろう。前回(+1.2%)より 下方修正されたが、これは2008年前半のGDPデータが下方修正されたためである。 7-9月期の実質GDP成長率(前期比+0.5%)への寄与度を見れば、国内需要と純輸出がそれぞれ+0.2%ポイント程度、小幅の貢献となっている。国 内需要では、実質民間最終消費支出は前期比+0.3%と小幅ながら増加する。一方、実質民間住宅は同-4.2%と減少し、実質民間企業設備は同横ばいとな る。公的需要では、実質政府最終消費が同+0.2%、実質公的固定資本形成が同-0.6%となる。外需では、実質輸出は同0.5%増加するが、実質輸入は 同1.3%減少しよう。 半期ベースで見れば、2008年後半は前期比年率+0.5%と前半の同+1.2%から減速が避けられない。原油価格の下落が浸透 し、企業収益が回復するのは2009年後半と予想される。その間、民間最終消費支出が底割れしないように、年度末までに定額の所得税減税を実施することは それなりの効果を持つであろう。 [稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学] 米国 <失業増によるリセッションに直面、インフレ率も上昇> 8月の非農業部門の雇用者数は前月比8万4千人減少し8ヵ月連続のマイナスとなった。この結果、今年に入ってからのネットの雇用減は60万6千人となった。失業率も7月の5.7%から6.1%へと0.4%ポイントも上昇した。 9月5日の超短期予測は支出・所得の両サイドからの平均実質GDP成長率を7-9月期、10-12月期においてそれぞれ前期比年率-0.2%、同 -0.5%と2四半期連続のマイナス成長を予測している。新規失業保険申請件数もリセッションの入り口といわれる40万人を7月の半ばから超えている。一 方、GDP価格デフレーターや総合・コア個人消費支出価格デフレーターでみたインフレ率は前期比+4〜+6%となっており、米国がスタグフレーションに直 面し ていることは間違いない。 このような経済環境において当局が採るべき政策は、第一に、Fannie Mae(連邦住宅抵当公庫)とFreddie Mac(連邦住宅貸付抵当公社)の救済計画をできるだけ速やかに公表し、住宅ローン市場における人々の不安を解消することである。実際、9月7日にポール ソン財務長官は2公社を政府の管理下におくと発表し、第一の政策は実施された。その次に、政策担当者は追加の景気刺激策を導入すべきである。 残念なことに、共和党のマケイン大統領候補のチーフ経済アドバイザーのダグラス・ホルツ・イーキンは、「米国経済は修復すべきファンダメンタルズの問題 を抱えており、追加的景気刺激策が無駄になる可能性がある」と追加の景気刺激策には悲観的である。一方、バラクオバマは雇用減少を重く見て、1150億ド ルの追加刺激策を考えている。中身は650億ドルを中間層への還付税とし、500億ドルをインフラ投資と州・地方政府への支出としている。マケイン・ペイ リンの共和党ペアもすぐにでも追加の景気刺激策を打ち出すことが選挙に勝つためには不可欠である。選挙が最終的には“It’s the economy, Stupid (結局、肝心なのは経済)”になることは間違いない。 注)本レポート執筆は先週時点のものであり、リーマンブラザーズ経営破綻については触れていない。 [熊坂有三 ITエコノミー]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2008年8月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2008-08-20

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<中期的な原油価格の目安> 原油価格(ここでは油種WTI)の値動きは非常に荒く(volatile)、予測しづらい。この1年の値動きを振り返ってみよう。米国でサブプライム ローン問題が注目された2007年7月には、1バーレル70ドルをつけ、9月半ばに80ドルを突破、10月後半には90ドルを抜け、2008年2月半ばに はついに100ドルという記録的な水準に達する。KISERの前回の四半期景気予測時点(5月20日)では120ドル半ばであった。原油価格はさらに加速 を続け、7月3日に145.28ドルのピークをつける。以降マーケットは弱気に転じ、直近の8月15日では113.77ドルとピークから30ドル以上も下 落している。このように非常に荒い値動きを示してきたが、7月で見るとこの1年で2倍になったという事実の持つ意義は大きい。 われわれの景気予測では原油価格(モデルではWTI、ドバイ、ブレントの平均)は外生変数であるが、この1年間のトレンドを持った荒い値動きから、その 想定は常に上方修正となった。中期的な原油の均衡価格についてはほぼ推測がつくが、短期的にはそれから乖離する部分の予測が非常に難しい。 短期の原油価格については、基本的にはタイトな需給バランスと地政学的な問題により高値は避けられないが、需給条件から決まる部分以外の投機を含むプレ ミアム部分が相当あると考えられている。最近の経済産業省の分析(通商白書2008年第1章)では、2008年4月の原油価格(125.5ドル)のうち、 在庫の変化で説明できる部分が74.7ドルで、プレミアムが50.8ドルと推計されている。 中期的な均衡価格の目安として参考になるのが、代替エネルギーのコストであり、現在では70ドル程度と考えられている。もう1つの参考価格が、原油生産 者がその実質価値を維持した場合の価格である。1980年以降、世界の消費者物価指数は2.5倍になっているから、当時の原油価格40ドルを考慮すると、 現在原油価格が100ドル程度と見込まれるのである。このことから、直近の原油価格はピークから30ドル程度下落しているが、さらに100ドルを目指して 値を下げる可能性がある。ただ、基本的には需給条件がタイトなことから、一方的な下落は想定しづらく、やがて底打ちして高値の水準がしばらく続くと思われ る。 今回の四半期予測(8月20日発表)では、最近の価格動向を反映させて2008年7-9月期を前回予測の想定より11ドル程度上方修正した(106.6 ドル→117.8ドル)。需要期の2008年末には120ドル前半間まで上昇し、2009年は120ドル程度の高値圏で推移するが、年末には110ドル台 に緩やかに低下すると想定する。 日本 <年後半の経済、不況に陥らないためのポイントは「民間最終消費」と「輸出」> 4-6月期の日本経済は4四半期ぶりのマイナス成長となった。8月13日に発表されたGDP1次速報値によれば、同期の実質GDPは前期比-0.6%、 同年率換算-2.4%のマイナス成長となり、1-3月期の同年率換算+3.2%から大幅な低下であった。図からわかるように、実績はほぼ市場コンセンサス 予測(-2.0%)と同じであった。超短期予測は、支出サイドモデル予測が前期比-0.9%、主成分分析モデル予測が同-1.6%といずれも若干過大推計 となった。今回の予測動態を振り返れば、6月初旬以来、超短期モデル、市場コンセンサスともにマイナス成長を予測しており、早くから低調な経済が一致した 見方となっていた。 4-6月期の実質GDP成長率への寄与度を見れば、国内需要は経済成長率を0.6%ポイント引き下げ、また純輸出の寄与はゼロとなった。 今回の特徴は、民間需要、公的需要、輸出のすべての需要項目で減少したことである。民間需要では、実質民間最終消費支出、実質民間住宅の低迷が実質 GDP成長率を0.3%ポイント、0.1%ポイントそれぞれ引き下げた。公的需要も経済全体の成長率を0.2%ポイント引き下げた。 加えて、4四半期ぶりのマイナス成長には、米国経済低迷による輸出の減少が影響している。これまで経済成長を牽引してきた実質輸出は同2.3%低下し、 経済成長率を0.4%ポイント引き下げた。実質輸入は同2.8%大幅下落し、3期ぶりのマイナスとなった。輸入の減少は経済全体の成長率を0.5%ポイン ト引き上げたが、輸出がほぼ同程度減少したので、実質純輸出の実質GDP成長率への貢献はゼロとなった。 4-6月期のGDPを反映した最新の超短期モデル予測によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比+0.5%、同年率換算+2.2%と高めの見通しと なっている。2期連続のマイナス成長は今のところ避けられそうである。また10-12月期は前期比+0.4%、同年率換算+1.8%の予測となっている。 この結果、現時点では2008暦年の経済成長率は1.2%と見込んでいる。 マーケットの見方からすれば、若干強気の予測となっているようである。たしかに年末にかけての景気減速は否めないが、不況に陥らないためのポイントは民間最終消費支出と輸出の動向にあるといえよう。その意味で、7月の通関統計が最初の重要なデータとなろう。 [稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学] 米国 <7月半ばから景気は下降状態にある〜メンタルリセッションからリセッションへ?> 2008年4-6月期の経済成長率が1.9%(速報値)と発表され、多くのエコノミストが懸念していたリセッション懸念とは程遠いものとなった。この速 報値が発表される直前の市場のコンセンサスは2.2%であり、超短期予測も2.8%を支出サイドから予測していた。速報値が市場のコンセンサスや超短期予 測よりもかなり低い経済成長率となったのは、製造業の実質在庫増が-324億ドルと大幅なマイナスになったことにある。センサス局の毎月の製造業在庫統計 からこのような大幅な在庫減は想定されないことから、この大幅減は在庫評価調整によるものである。ちなみに、在庫をGDPから除いた実質最終需要の 4-6月期の伸び率は+3.9%と非常に高い。 このように最終需要の伸びが高い成長率は今後の経済成長に希望をもたらすものであるが、超短期予測では、グラフにみるように8月15日の予測で7-9月 期の支出・所得サイドからの平均実質GDP伸び率を-0.5%と予測している。さらに悪いことは、7月半ばから景気が下降状態にあることである。原油価格 の下落傾向、株式市場の持ち直し傾向など明るい材料があるものの、次のような懸念材料がある。 * 個人消費のうち、サービス支出がスローダウンしており、耐久財支出がマイナス成長を続けている。 * 還付税の経済への影響が10-12月期にはかなり小さくなるだろう。 * 設備・ソフトウエア投資の回復が遅い。 * 住宅市場の停滞が続く。 * 在庫調整も長引くと思われる。 * ドル高から純輸出の改善がみられなくなる。 * 賃金・俸給の伸び率が前期比年率3%−4%と非常に小さい。 * インフレ率(3%−5%)がFRBの許容範囲を大きく超えることから、景気のスローダウンに対して政策金利引き下げが難しくなる。 [熊坂有三 ITエコノミー]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2008年7月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2008-07-16

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<予測の精度または誤差とその特徴:コンセンサス予測vs.超短期モデル予測> はじめに 今月の米国超短期予測でも述べられているように、景気判断で大事なことは、ニュースに惑わされずに、常に客観的に経済統計を扱い”Go by the Numbers”で判断することである。今月のトッピクスでは、”Go by the Numbers”の代表である超短期モデル予測とコンセンサス予測の精度と特徴を考える。 コンセンサス予測 四半期GDP予測の歴史は比較的浅いが、そのなかで、経済企画協会は2004年4月から民間エコノミストのマクロ予測(「ESPフォーキャスト調査」 (以下、ESPFと呼ぶ) )を毎月調査・公表している。ESPFでは調査項目の予測値の平均値、いわゆるコンセンサス予測を発表している。主要な調査項目には、実質GDP成長率 (前期比年率換算)、消費者物価指数上昇率及び失業率が含まれる(いずれも四半期ベース)。 ここでは四半期実質GDP成長率に的を絞り、コンセンサス予測と超短期予測の精度を比較しよう。比較期間は2004年4-6月期から2008年1-3月期まで16四半期である。 まずコンセンサス予測の予測誤差の動態が図表1に示されている。民間エコノミスト(予測者)がある時点で行ったある四半期の実質GDP成長率(前期比年 率換算)の予測値と実現値(公表値)の乖離を予測誤差とする。コンセンサス予測は、各エコノミストの予測値の平均を取ったものであり、コンセンサス予測の 誤差は、「公表値−予測値平均」で定義されている。河越(2007)によれば、四半期実質GDP成長率のコンセンサス予測をESPF参加エコノミストの 各々の予測値と比較してみると、予測精度のランキングは比較的高いことがわかっている。 図表1の縦軸にはコンセンサス予測誤差が、横軸には予測時点すなわち公表値(一次速報値)発表の何ヵ月前かが示されている。すなわち、コンセンサス予測 の予測時点と予測誤差の関係を見たものである。一般的には、コンセンサス予測の予測誤差はGDP速報値の公表時期が近づくほど小さくなる傾向が見受けられ るが、非常に安定的で緩やかであることがわかる。 コンセンサス予測のパフォーマンスは比較的良好である。16四半期の試合(公表値と公表値発表直前の両予測の誤差を比較)で、コンセンサス予測対超短期モデル予測の勝負は7勝、7敗、2引き分けのイーブンである。 超短期予測vs.コンセンサス予測 本フォーラムの月次見通しは超短期モデル予測に基づいている。超短期モデル予測は、月次データと四半期GDP項目との間の統計的関係を確定して、時系列 モデルを用いて機動性の高い予測を意図するものである。純粋に計量経済学的手法のもとに確立されており、データに関して如何なる個人的な調整も入り込まな い。月次データを逐次取り込み、1週間ベースで予測が行われ、今四半期ないし次四半期予測を修正していくものである。 図表2は超短期モデル予測の予測誤差の推移を見たものである。超短期モデル予測は実績値公表の3ヵ月前から予測誤差が急速に縮小することが見て取れる。 超短期予測は非常にダイナミックである。これは超短期予測の手法的特徴からきており、月次データの実績値が入手可能になるにつれて予測精度が一段と高くな るからだ。 含意:両予測の使い方 詳しい両予測の精度の研究は後に譲るが、ここで両予測の特徴を整理しておこう。図表3からわかるように、公表値が発表される6ヵ月から4ヵ月前までの平 均予測誤差はコンセンサス予測の方が小さいことがわかる。しかし、3ヵ月前になるとパフォーマンスは逆転し、圧倒的に超短期予測の方がよくなる。実績発表 の2-3ヵ月前に予測誤差が急激に小さくなることは、超短期予測はマーケットを2-3ヵ月リードすると見てよい。ここに、常に客観的に経済統計を扱い ”Go by the Numbers”で景気を判断することの特徴がよくあらわれている。 参考文献 河越正明(2007)、『コンセンサス予測は単なる平均的な予測か?』、ESRI Discussion Paper Series No.180 日本 <4-6月期はほぼゼロ成長、今後の民間消費の動向がポイント> 今回の予測では、5月の月次データと一部の6月の指標が更新された。4-6月期経済の特徴は、インフレ期待が高まってきており、雇用条件も悪化している ことだ。このため消費者のセンチメントは急速に悪化しており、民間最終消費関連指標は弱い。輸出物価は前年比でマイナスが続いている一方、輸入物価は大幅 な上昇が続いている。このため交易条件は著しく悪化している。金額ベースでの純輸出は縮小傾向を示しているのに対して、実質の純輸出は拡大しており経済成 長率を下支えしている。内需の落ち込みを純輸出が補っている。 今週の支出サイドモデル予測によれば、4-6月期の実質GDP成長率は、内需が小幅縮小するが純輸出が拡大するため、前期比0.0%、同年率0.2%と 予測される。ほぼゼロ成長ないしは小幅のマイナス成長とみてよい。市場コンセンサス予測(7月ESPフォーキャスト)も小幅のマイナス(同年率 -0.74%)を見込んでいる。 4-6月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比-0.3%となる。実質民間住宅は同+3.1%と2期連続で増加するが、実質民間企業設備は 同+0.2%と小幅増加にとどまる。実質政府最終消費支出は同0.5%増加、実質公的固定資本形成は同-1.9%と減少する。このため、国内需要の実質 GDP成長率(前期比0.0%)に対する寄与度は-0.3%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同-1.7%と減少し、実質輸入は同-5.2%と減少する。純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.3%ポイントとなる。交易条件の悪化が影響している。 7-9月期の実質GDP成長率については、内需と純輸出がともに拡大するため、前期比+1.0%、同年率+4.0%と高めの成長を予測している。 上述のとおり、日本経済は4-6月期にゼロ成長ないしはマイナス成長に陥る可能性が高い。問題はこれが一時的な停滞にとどまり、7-9月期以降回復に向か うかどうかの判断であるが、超短期予測としては6月のデータを待ちたい。ポイントは民間消費支出の今後の動向であり、7-9月期以降にむけて回復の兆しを 見せるかどうかが重要である。 GDPデフレータは4-6月期に前期比-0.3%、7-9月期に同-0.6%となる。マイナス幅の拡大には、交易条件の悪化が大きく影響している。国内需 要関連デフレータでは、民間最終消費支出は4-6月期に同+0.1%、7-9月期に同+0.1%となる。緩やかなインフレが見込まれている。 [稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学] 米国 <景気判断にはGo by the Numbers −指標は4-6月期の景気底入れを示唆−> 下落を続ける住宅価格、底の見えない住宅市場。上昇し続けるガソリン価格、天井の見えない原油市場。そのため、ほとんどのエコノミスト、消費者は景気の 先行きに悲観的である。6月のミシガン大学の消費者センチメントは過去28年において最低となっている。しかし、深刻なリセッション懸念があった 2008年1-3月期の実質GDP成長率(前期比年率)の確定値は1.0%と、リセッションとは程遠い伸び率となった。もちろん、景気のスローダウンは生 じている。貿易収支統計が4月分までしか発表されず、輸入価格が4月、5月に前月比でそれぞれ2.4%、2.3%と非常に大きく伸びたことから、超短期予 測は4-6月期の実質輸入を過小評価している可能性がある。そのため、グラフではGDP以外の統合指標を示してある。このグラフで最初に気づくことは、景 気が5月の半ばに底を打って回復に向かっていることである。さらに、直接の輸入の影響を除いた統合指標の実質国内需要、実質総需要、実質最終需要 (GDP−在庫増−純輸出)のそれぞれの伸び率は同2.5%程度になっている。 このように、4-6月期の米国経済は市場のリセッション懸念とは大きくかけ離れた成長率となることが考えられる。5月の個人所得・個人消費支出の統計を 更新した結果、超短期予測は4-6月期の実質個人消費支出をそれ前回の1.3%から2.1%へと上方修正し、また個人所得の伸び率を同3.6%から 7.1%へと上方修正した。明らかに還付税が経済に影響を与え始めたことを示している。さらに、住宅建設支出の統計が過去にさかのぼって大きく改定された ことから、実質住宅投資の伸び率は同-25%から-9%へと大きく上方修正された。 このように、景気への悲観的な見方が継続している中で、客観的に経済統計を扱う超短期予測はグラフにみるように景気の底入れを示している。実際、人々が 懸念しているほど経済が悪ければ、失業率の急速な上昇がみられるはずである。景気判断において大事なことは、様々な情報に惑わされずに、常に客観的に経済 統計を扱い"Go by the Numbers"で景気を判断することである。今月末に発表される4-6月期の経済成長率も市場のコンセンサスよりかなり高くなると思われる。 [熊坂有三 ITエコノミー]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2008年6月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2008-06-11

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

四川大地震の経済的含意 【甚大な被害】 今月の中国経済の見通しでは、四川大地震(2008年5月12日)の経済的影響について詳しい説明がされている。最新の推計によれば、地震の直接 被害額は5,000億元(約7兆5,000億円)を上回ると見込まれており、年初の雪害の被害額1,517億元を大きく超える。影響は甘粛省・陝西省・四 川省の重慶市など19都市・県に及んだ。公式の死亡者数は6万9,127人(6月5日現在)となっている。 四川省 32年ぶりの大地震(1976年唐山大地震以来)は中国の穀倉である四川省の 農業生産に甚大な被害をもたらした。四川省は、中国最大の養豚地域 (全国合計の10%)であり、菜種や米の生産(穀類の生産量の全国シェア6%)でも有数の地域である。地震は50万ムー(畝)(約3万3,000ヘクター ル)の作物に被害をもたらした。また、地震で死んだ豚は約80万頭に上るようである。 四川省の工業部門の損失も甚大である。四川省の工業企業の経済的直接損失は5月19日の時点で670億元(約1兆円)に達したようである。実際の損失は これよりはるかに大きくなる。注目すべきことは、非鉄金属生産の被害が大きいことである。業界の推計によれば、中国の亜鉛の生産能力の11%が被害を受け たようである。また当局は安全上の理由で四川省での石炭生産を停止している。この結果、工業・情報化省によれば、鉱工業企業の損失は2,047億元(約3 兆700億円)>に膨らんだ(6月5日発表)。 地震により地方政府は省都・成都と重慶市での建設工事の停止を命令したため、不動産業に与える影響も大きい。多くの不動産会社がまだ工事中で耐震基準を 満たしていないビルを再設計することが必要になり、今後、追加的なコストが発生する可能性が高い。高層建築に厳しい基準が適用されるにつれ、昨年、記録的 な高価格で土地を手に入れた開発業者の資金繰りはさらに悪化すると考えられる。また、西部地域の都市開発に関してリスクの認識が変わり、これが地価下落の 引き金となると思われる。実際、1月以降、成都の住宅市場は下降局面に入っており、1-3月期の取引は前年同期比23%減少している。不動産価格の低迷が 長期的なリスクとして成都と重慶市の不動産市場に影を落としている。 【経済的含意】 以上、農業、工業、不動産業に絞って地震の影響を見たが、現在のところ、中国経済に与える影響の正確な把握には困難が伴う。年初の雪害の影響を受 けた地域は中国のGDPのおよそ14.3%を占めるが、四川省のGDPは全国比4%程度で、これから判断する限りでは、経済への震災の影響は限定的とみら れている。 ただ復興は困難を極め、同地域の生産停滞は長引くであろう。いくつかの経路を通じて地震のマイナスの影響が中国経済に発生してくる。重要な経路としては、(1)食糧需給、(2)労働供給、(3)大手不動産会社のバランスシートである。 農業と養豚の全国に占める四川省の寄与の大きさを考えると、その甚大な損害は、中国の食糧面の制約をさらに強め、10年来のインフレを加速させる可能性 がある。4月の消費者物価(総合)指数は前年同月比+8.5%で3月の同+8.3%から加速している。中央銀行の金融引き締め政策にもかかわらず、この 10年間で最も高いインフレ率となっている。消費者物価指数の構成品目全体の約1/3のウエイトを占める食料価格は同22.1%上昇している。1月以降、 穀類の価格上昇圧力が高まり、4月は同+7.4%と3月から加速している。また食肉価格の上昇率は同+47.9%ときわめて高い。特に、豚肉は同 68.3%と上昇している。今後数ヵ月、インフレの加速が懸念されよう。中国のインフレ加速が世界の商品価格インフレ期待を高めるリスクには十分注意が必 要である。 短期的には、労働市場への影響が懸念材料である。四川省は中国の出稼ぎ労働者の最大の供給源の1つであるが、復興支援のために多くの出稼ぎ労働者が四川 省に急いで戻ることが予想されるため、中国の労働供給に重要な影響を与えそうである。ただ、長期的には震災の復興が進むにつれて、この問題の影響は薄れる であろう。 問題は、四川省と重慶市の不動産市場のハードランディングシナリオが現実のものになった場合、地価下落のリスクは中国の他の地域に伝播し、投資家や不動 産開発業者のバランスシートの悪化をもたらすであろう。中国金融当局は直接の金利を引上げではなく預金準備率の引上げによって金融引き締めを図っている が、不動産バブル崩壊が全国的に拡がった場合、インフレ抑制と経済復興の両極面で厳しい金融政策が要求されることになろう。ハードランディングシナリオも 低くない確率で想定しておく必要がある。 日本 今週の予測では、4月の多くのデータが更新された。支出サイドモデル予測によれば、4-6月期の実質GDP成長率は、内需と純輸出がともに横ばい となるため、前期比-0.2%、同年率-0.9%と予測される。4-6月期の経済はここにきてマイナスの領域に入ってきたといえよう。 4-6月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比-0.1%と前期(同+0.8%)の反動でマイナス成長となる。1-3月期の民間消費は閏 年効果でかさ上げされていたようである。実質民間住宅は同+4.7%と2期連続のプラスとなるが、実質民間企業設備は同1.5%減少する。民間最終消費支 出と民間企業設備が減少し、民間需要は縮小しよう。一方、公的需要は、実質政府最終消費支出、実質公的固定資本形成ともに同+0.4%と増加する。このた め、国内需要の実質GDP成長率(前期比-0.2%)に対する寄与度は-0.2%ポイントとなる。 一方、財貨・サービスの実質純輸出の成長率に対する貢献度は0.0%ポイントとなる。実質輸出が同-1.8%、実質輸入が同-2.8%減少するためである。 このように、4-6月期はマイナス成長になるが、7-9月期の実質GDP成長率は、内需・純輸出ともに拡大するため、前期比+0.7%、同年率+2.7%と予測している。 GDPデフレータは、4-6月期に前期比-0.3%、7-9月期に同-0.2%となる。民間最終消費支出デフレータは、4-6月期に同-0.2%、 7-9月期に同0.0%となる。4月に暫定的にガソリン価格が低下したことが影響している。雇用者所得は4-6月期に同-0.2%、7-9月期は 同+0.3%となる。 主成分分析モデルは、4-6月期の実質GDP成長率を前期比年率-1.3%と予測している。また7-9月期を同+0.5%とみている。GDPデフレータは4-6月期に前期比0.0%、7-9月期に同+0.4%とみている。 この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP成長率(前期比年率)の平均は、4-6月期が-1.1%、7-9月期が+1.6%となる。GDPデ フレータは4-6月期が前期比-0.2%、7-9月期が同+0.1%である。両モデルの平均で見れば、4-6月期のマイナス成長がはっきりしてきたが、一 時的なものと予測している。 [稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学] 米国 6月5日、ウォルマートやコストコなどのチェーンストアーの5月の販売高が前年同月比+3%となったことが発表され、還付税が個人消費支出にまわ る期待からダウ株価はその日に214ポイント上昇し、景気回復のきっかけになるかとも思われた。しかし、翌6日の5月の雇用統計の発表により前日の米景気 に対する期待は崩れた。雇用は5ヵ月連続で減少し、失業率は前月の5.0%から5.5%へと大幅に上昇した。これは2004年10月以来の高さである。ま た、同日に原油価格が139ドル/バレルの高値を更新したことから、ダウ株価は395ポイントも下落し、再びリセッションへの懸念が広まった。 6月6日の超短期予測では、4-6月期の実質個人消費の伸び率を前期比年率+0.7%、実質民間資本形成の伸び率を同+1.7%、実質在庫を同207億 ドルの減少と予測しており、急速な景気回復を期待することはできない。しかし、グラフにみるように、景気は5月の始めに底を打ち非常に緩慢ながらも回復に 向かっていると思われる。失業率が景気に対する遅行指数であり、5月の失業率上昇の主な理由が若者のサマージョブへの応募による求職者の増加であることを 考えれば、5月の雇用統計から米景気に対して過剰に悲観的になることはないだろう。 6月24日、25日に連邦準備理事会(FRB)のFOMCミーティングが開かれるが、FRBは金利を据え置くだろう。その理由としては、すでに十分な金利 引下げをしてきたこと、インフレを懸念せざるをえなくなったこと、そして還付税を中心とする1,680億ドルの家計、企業を通した景気刺激策が今年後半に は景気に好影響を与えてくると考えているからである。 [熊坂有三 ITエコノミー]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2008年5月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2008-05-14

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

気になる米国経済回復パターン 日銀の展望レポートでの海外経済の見通し 日銀が4月に発表した「展望レポート」で示した記述のうち、注目されるのはスタグフレーションのリスクに言及した箇所である。上振れ・下振れ要因 の第2のポイントとして、エネルギー・原材料価格の動向について、「・・・国際商品市況が想定以上に上昇した場合には、各国でインフレ圧力の高まりにつな がるリスクがあり、その後の景気下振れ要因となるおそれもある。また、日本にとっては、海外への所得流出が増加することにもなり、企業や家計の支出活動に マイナスの影響を及ぼす可能性がある。」と、明確にスタグフレーションのリスクを指摘した。 また金融政策のあり方については、金融政策運営のバイアスを中立に戻した。スタグフレーションのリスクのもとでは、金融政策をはっきりと緩和方向に変化 させることは非常に難しくなるからである。このような政策環境の変化を日銀は不確実性の高い状況と修飾することで前回の「展望レポート」から海外経済の見 通しを事実上下方修正した。 “景気回復のアルファベットスープ”はどのパターンか—もっとも蓋然性が高いのはW字型回復 日銀は上振れ・下振れ要因の第1のポイントとして、海外経済や国際金融資本市場の動向を議論している。すなわち、米国経済の動向とサブプライム住宅ローン問題に端を発する金融混乱の帰趨である。 1-3月期の米国経済はかろうじてプラス成長(前期比年率+0.6%)を維持した。これまで、経済が不況に陥った際、不況からの四半期回復パターンについ て活発に議論されてきた。どの景気サイクルも同じではなく、それぞれの成長パターンには特色がある。2001年の不況の際には、トリプルV字型と特徴付け られた。米国では景気回復のパターンを特徴付けることを、ちょうどスープにアルファベットの形をしたパスタを入れることになぞらえて、"景気回復のアル ファベットスープ"という。今回は景気回復パターンの候補としては、V、U、W、L字型があげられている。 V字型回復については、最も可能性が低い。実際、すでに2四半期低成長が続いており、今四半期はマイナス成長が予想されるからである。U字型回復は蓋然性 の高いパターンである。直近のように原油価格(WTI)が120ドル/バレルを超えガソリン価格がさらに高騰すれば、所得税還付による減税効果が予想以上 に相殺され、民間消費が低迷し、年後半の成長回復が期待できない場合である。W字型回復は、現在一番蓋然性が高いとされている。2008年第2四半期に政 策減税が実施されるため、これが一時的に景気を押し上げるが、次四半期には政策効果が消滅するためである。L字型、これはU字型回復の極端なケースで景気 回復が非常に弱い場合である。 不況からの回復がどのようなパターンをとろうとも、2009年の経済成長は潜在成長のトレンドを下回る蓋然性は非常に高いと思われる。これはバブル崩壊後の日本経済の経験が教えている。 日本 1-3月期のGDP1次速報値は5月16日に発表される。同期の実質GDP成長率(前期比年率)の直近の市場コンセンサスは2.5%-3.0%程度であ り、今回は超短期予測と市場コンセンサスには大きな乖離はない。すなわち、5月12日の支出サイドモデル予測では、1-3月期の実質GDP成長率は、内需 と純輸出がバランスよく拡大するため、前期比+0.6%、同年率+2.6%である。 1-3月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.5%となる。実質民間住宅は同+14.6%と5期ぶりのプラスとなるが、実質民間企業 設備は同-1.6%となる。実質政府最終消費支出は同-0.2%減少、実質公的固定資本形成は同+0.4%となる。このため国内需要の実質GDP成長率 (前期比+0.6%)に対する寄与度は+0.3%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同+1.8%、実質輸入が同-0.2%となる。純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.3%ポイントとなる。この結果、2007年度の実質GDP成長率は+1.8%と予測する。 1-3月期の成長率予測(前期比年率)を時系列的に遡ると、市場コンセンサス(ESPフォーキャスト調査)では、3-4月に、円高・株安の影響を受け成長 率予測が+1%以下へと下方修正されたが、超短期予測は+3%程度の比較的高い成長率を予測し続けてきた。その理由は、純輸出が前期に引き続き成長率を引 き上げ、民間最終消費支出が堅調で民間住宅が前期比プラスに転じる予測したためである。金融経済が急速に変化しても、実物経済のジャンプスタートはあり得 ないのである。金融経済の変化の影響はラグを持って実物経済に影響してくるのである。 すなわち、金融経済変調の影響は年後半に出てくるとみている。比較的好調な1-3月期経済も中身を見れば、慎重にならざるを得ない。特に、民間最終消費 支出はGDP統計では季節調整において閏年効果が反映されないためにかさ上げされている可能性が高く、実態はあまり強くないことだ。また民間住宅もこれま で縮小傾向にあった前年比マイナス幅が3月は再び拡大しており、要注意である。 主成分分析モデルでは、1-3月期成長率は前期比年率+3.1%、4-6月期を同-0.3%と予測している。ちなみに、支出サイドモデルによる4-6月 期の成長率は+1.6%である。この結果、両モデルによる1-3月期の平均成長率予測は同+2.9%、4-6月期は同+0.6%と予測している。日本経済 は 2008年央にかけ成長減速が明瞭となってきた。 [稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学] 米国 4月30日に2008年1-3月期の経済成長率(前期比年率:速報値)が+0.6%と発表された。ラリー・サマーズ、マーティン・フェルドスタイ ン、アラン・グリ−ンスパンやウォーレン・バフェットなど著名なエコノミスト、投資家が米経済は"ただいまリセッション中"と述べていたが、バーナンキ FRB(連邦準備理事会)議長も、これまでのアグレッシブな金融緩和策をみれば、彼らの仲間に入るだろう。グラフで見るように、景気は2月半ばから急速に 悪化し始めたことは事実であるが、支出・所得両サイドからの平均実質GDPの伸び率がゼロ%以下にならなかったことから、超短期予測は景気のスローダウン を認めるものの、彼らのようなマイナス成長を示唆する悲観的な景気判断はしなかった。このような急速な景気のスローダウンを、予測モデルを使わず直感に頼 るならば、深刻なリセッションを予測するのも無理はないかもしれない。しかし、彼らの金融市場、とりわけ株式市場へ与えた影響は大きかった。やはり足元の 景気判断には著名人の予測(ご託宣)よりも超短期モデル予測のような"Go by the Numbers"(数値的手法に基づく判断)が役立つと思われる。 FRBは同日のFOMCミーティングでFF(フェデラルファンド)の目標レートを2.25%から2.0%へ、公定歩合を2.5%から2.25%へ とそれぞれ25ベーシスポイント(0.25%)引下げた。公定歩合の引下げには10人のFOMCメンバー全員が賛成したが、FFレートの目標値の削減には 2人のメンバーが反対をした。今回の政策金利の引下げで、市場はこれまでの金融引下げ政策に一応終止符を打ったと考えている。4月30日の超短期モデル予 測では、4-6月期の成長率は0.5%、コアPCE(食料品とエネルギーを除く個人消費支出)価格上昇率は+2.4%と急速な景気回復は望めない一方、イ ンフレが幾分FRBの許容範囲(1%−2%)を超えると見込んでいる。まだ、サブプライム問題からの金融危機が完全に終息したわけでないことを考慮に入 れ、そしてこれから始まる所得税還付による景気刺激策の効果が未知数であるときに、無理に今回FFレートまで引下げ、金融緩和に終止符を打ったというイ メージを市場に与えなくてもよかったのかもしれない。もっとも、公定歩合の引下げだけで、市場が納得したかは別の話になるが。 [熊坂有三 ITエコノミー]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2008年4月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2008-04-08

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<2008-2009年の太平洋地域経済成長見通し〜PEO/SOTR会議から〜> 去る3月18-19日、日経平均が12,000円を一時的に下回り、為替レートが100円を割り込む厳しい状況の下で、PECCの PEO/SOTR(太平洋経済展望(PEO)短期予測部門国際専門家会合)大阪会合が開かれた。今月のトピックスでは、同会合で議論された太平洋地域経済 の見通し(暦年ベース)を日米中心に紹介しよう。 前提条件:標準的な想定として、米国サブプライムローン問題に端を発する世界の金融混乱が2008年央にかけて安定化し日銀も年内は政策金利を引き上げ ないとしている。今後も米国の大胆な金利引下げがしばらく続き、米国や日本が金利引き上げに向かうのは、世界経済が安定から回復に向かう2009年に入っ てからと見込んでいる。この世界経済の前提については、大きな議論となったが、ベースラインとして合意の得られたものである。 米国経済:(S.ハイマンズ・ミシガン大学教授の予測)2008年前半のゼロないしマイナス成長は年後半には2.5%成長に加速するが、年平均では1.0%の低成長となり、2007年の2.2%から半減する。一方、2009年は2.5%と回復感を強くする。 最近の月次データから、米国経済が少なくとも軽微なリセッションに入ったという印象を強くする。住宅市場が引き続き縮小し、雇用市場の収縮が明確になる 中、1-3月期のマイナス成長は避けられない。1-3月期は前期比年率-1.5%、4-6月期同0.0%と予測している。減税の効果は5-6月に出始め、 年後半には本格的に効き出す。2009年1-3月期には減税効果がなくなり経済は一時的に減速するが、金融政策の効果が徐々に出始め景気を支える。 2009年後半には自動車販売が回復する。雇用の回復については、2008年はゼロであるが、2009年は50万人程度の緩やかな雇用増が見込まれてい る。 インフレについては、コア消費者物価上昇率(食料とエネルギー除く)は2008年、2009年ともに2.5%以下にコントロールできよう。他方、(総 合)消費者物価指数は2008年に急上昇し3.9%の上昇を予測。2009年には、原油価格が8-10%程度下落するため、インフレ率は2.6%に低下す るであろう。 (注: 上記PEO予測では、米国経済が1-3月期に、軽微なリセッションに入ったとするが、後述の超短期予測では、 所得サイドから見て1-3月期にリセッションは底を打ったとみており、米国経済に対する2人の予測専門家の見方はやや異なっている。) 日本経済:(稲田義久・甲南大学教授の予測)われわれの予測で最も重要なポイントは、日本経済にとってこれまで景気回復のギア(輸出)が2008年 には逆回転することである。このため、2008年の日本経済の成長率(実質GDP) は前年の+2.1%から+1.6%へと減速し、2009年は+1.7%と小幅な回復にとどまると予測している。2008年の民間部門の寄与度は2007年 とほぼ同じと見ているが、純輸出の寄与度が2008年で+0.7%ポイント、2009年は+0.4%ポイントといずれも2007年の+1.1%ポイントか ら大きく低下する。米国経済の急減速やEU経済の停滞の影響は極めて大きいのである。 四半期パターンを見れば、2008年の最初の2四半期に減速するが、テクニカル・リセッション(2四半期連続のマイナス成長)は避けられるであろう。これ は、米国経済のマイルドリセッションによる輸出停滞等の不確実性の高まりから企業設備投資が減速局面に入るからである。ただ、2008年後半以降は住宅投 資や建設投資のマイナスの影響が剥落するため民間需要は全体として落ち込むことはない。日本経済は2008年後半以降1-2%で安定すると見ている。もっ とも、内外需バランスの取れた回復は2009年後半となろう。 エネルギーと食料価格の引き上げで、2008年前半には物価押し上げ圧力が強まる。ただ、最終需要が弱いためインフレは高進しない。このため、消費者物価指数は2008年に0.9%の上昇となるが、2009年は0.2%に落ち着くと見ている。 中国経済:( ・中国国家発展改革委員会投資研究所ディレクターの予測)は輸出が減速するため2008年の成長率は前年の11.4%から9.6%と2ポイント程度低下する。2009年は小幅回復して10.0%と予測している。 PECC経済:以上の3ヵ国に加え、その他PECC参加各国・地域予測専門家の成長率予測を貿易シェアで加重したPECC全体の経済成長率は、2007年 の4.9%から2008年は3.7%に減速するが、2009年は4.7%に回復すると見ている。インフレ(消費者物価上昇率)については、2008年には 前年の2.6%から3.2%に加速するが、2009年は2.8%に減速する。このように、2008年の太平洋地域経済はミニ・スタグフレーションの様相を 示すことになると見ている。 リスク:これらベースラインに対して、3つのリスクが想定できる。第一は、安定化を想定している金融混乱が世界的な信用収縮に悪化する場合である。第二 は、100ドルを突破した原油価格の超高値が持続する場合である。第三は、米国経済が、当初予測していた軽微なリセッションではなく深刻化する場合であ る。 日本 今回の予測では、若干の3月データと2月の多くのデータが更新された。支出サイドモデル予測によれば、1-3月期の実質GDP成長率は、内需と純輸出が小 幅ながらバランスよく拡大するため、前期比+0.5%、同年率+2.0%となり、前回予測(同年率+1.8%)から上方修正である。 1-3月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.6%となる。2月の消費総合指数は、閏年効果の影響で前月比+1.1%と大幅に上昇 し、2ヵ月連続のプラス。この結果、1-2月の消費総合指数(平均値)は10-12月期平均を0.8%上回った。GDP速報値では、閏年調整を行っていな いため、1-3月期の民間最終消費支出は当初の予想に比して上振れする可能性が高い。実質民間住宅は前期比+14.8%と5期ぶりのプラスとなるが、実質 民間企業設備は同-1.7%と減少する。実質政府最終消費支出と実質公的固定資本形成は同横ばいとなる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期 比+0.5%)に対する寄与度は+0.3%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同+1.0%と増加し、実質輸入が同-0.5%と減少する。このため、純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.2%ポイントとなる。 このように、内外需の伸びは小幅であるが、バランスの取れた回復となろう。この結果、2007年度の実質GDP成長率は+1.7%と予測する。 4-6月期の実質GDP成長率については、内需は引き続き拡大するが純輸出が横ばいとなるため、前期比+0.5%、同年率+1.9%と予測 。前回より小幅の上方修正である。 物価について見れば、GDPデフレータは、1-3月期に前期比-0.4%、4-6月期に同0.0%と予測している。民間最終消費支出デフレータは、 1-3月期に同0.0%、4-6月期は同-0.1%と見込んでいる。このように、現在のところインフレの高進は見られないが、4月に入り、暫定税率廃止に よりガソリン価格が下落する一方で食料価格の一連の引き上げが行われ、プラス・マイナス両要因がある。このため、今後のインフレ動向については不確実な要 素が多く、目が離せない。 支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、1-3月期が+3.1%、4-6月期が+1.1%となる。両モデルの平均で見れば、日本経済は年央に向けて減速するもののリセッションには陥らないであろう。 [稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学] 米国 3月の非農業雇用者数は市場コンセンサス(前月比5万人減)を大きく上回る同8万人の減少となった。さらに2月の雇用減が6.3万人から7.6万 人へ、1月の雇用減が2.2万人から7.6人へと、それぞれ下方に修正された。また失業率も2月の4.8%から3月には5.1%へと上昇し、2005年9 月以来の高さとなった。3月の雇用統計の発表によって、ほとんどのエコノミスト・投資家達は、米国経済がリセッションに陥っていると確信するようになっ た。実際、今回の超短期予測も所得サイドからの成長率(2008年1-3月期)をマイナスと予測している。しかし、グラフに示すように、市場予測とは異な り、所得サイドからの実質GDP成長率(前期比年率)予測を前週の-0.8%から-0.4%へと上方修正した。 この予測結果は奇異に思えるかもしれないが、それは次のような理由によるものである。すなわち、雇用者所得の変化は労働時間、雇用数、一人当たりの雇用 所得の変化で説明されるが、実際、1-3月期は、労働時間増と一人当たりの所得増が雇用の大幅減を上回ったため、所得サイドの賃金・俸給が前週の超短期予 測よりも増加したのである。 多くのエコノミスト、投資家たちは深刻なリセッション懸念を示しているが、超短期予測のグラフは、1-3月期の所得サイドからみた景気後退が-1.0% で底を打った様子を示している。一方、支出サイドから見た実質GDPの伸び率は今もって低下傾向にあるが、1-3月期の経済成長率(前期比年率)は1%の 前半でリセッションとはみていない。この結果、両モデルの平均成長率は+0.5%程度となっている。 インフレに関しては、GDPデフレータ、一般・コア消費者支出価格デフレータの伸び率を前期比年率+2.5%〜+3.5%と予測している。まさに、 1-3月期はミニ・スタグフレーションの様相を示している。しかし、4-6月期の経済成長率(支出・所得両サイドからの平均)は同+1.2%、インフレ率 は同+1.5%程度と予測しており、大幅なマイナス成長や、2期連続のマイナス成長になるような深刻なリセッションの状況は予想していない。 今後、第2の“ベアー・スターンズ”が出ない限り、これまでの政策金利引下げの効果が出始め、ドル安による純輸出の改善と5月からの税還付による個人消費支出の刺激により米国経済は徐々に安定に向かうと思われる。 [熊坂有三 ITエコノミー]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2008年3月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2008-03-07

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<10-12月期の日本経済成長率:なぜマーケットは予測を間違ったか?> 2月14日発表の10-12月期GDP1次速報値によれば、同期の実質GDP成長率は前期比+0.9%、同年率+3.7%となった。好調な新興市場 への輸出増加と民間企業設備の伸びに支えられた結果である。7-9月期の同年率+1.3%を上回る2四半期連続のプラス成長となり、マーケットにとっては ポジティブ・サプライズとなった。この結果、2007暦年の実質成長率は+2.1%となり、2年連続して2%を上回った。 10-12月期の実績は発表直前の市場コンセンサス(ESPフォーキャスト調 査:+1.36%)を大きく上回ったが、超短期予測(+4.1%)にほぼ近い結果となった。超短期モデルの予測動態を振り返ると、8月から11月にかけ て、超短期予測は市場コンセンサス予測とほぼ同じ+2%程度で推移した。両者の予測が乖離し始めたのは12月初旬である。超短期予測は+3%台にシフト アップするが、市場コンセンサス予測は1%で低迷する。市場コンセンサス予測が+1%にとどまった背景としては、サブプライムローン問題による株価の大幅 下落の影響を挙げることが出来る。日経平均株価(225種)は、2007年 11月1日の16,870.40の高水準から年末には15,307.78となり、2008年1月22日には12,573.05に暴落する。市場のパニック 心理が予測にも影響したものと思われる。超短期予測は人的判断が一切入らないテクニカルな予測であるから、ほぼ正確に予測できたのは当然の結果といえよ う。また2ヵ月程度早く成長率を予測できるのが超短期予測の優れた特徴である。 超短期予測の10-12月期の成長率は前期(同+1.3%)から加速したが、半期ベースで見ると1-6月期の同+2.6%から7-12月期は同+1.2%へと減速しており、これまで指摘してきたように、10-12月期の高成長は景気減速前の最後の輝きと見てよい。 一般物価の総合指標であるGDPデフレータは、10-12月期に前期比-0.6%となり、7-9月期の同-0.2%より下落幅が拡大し、4期連続のマイ ナスとなった。前年同期比では39・四半期連続のマイナス(-1.3%)を記録した。輸出入デフレータの変動がGDPデフレータ大幅下落の要因である。原 油高の影響で輸入デフレータは前期比+3.0%上昇したが、輸出デフレータは円高の影響で同-1.1%下落したためである。他方、民間最終消費支出デフ レータはガソリン価格や食料品価格の高騰で同+0.2%上昇した。超短期予測は、デフレータもGDP経済成長率とともにほぼ正確に予測した。 下表は、最終週の超短期モデルの10-12月期実質GDP項目の予測パフォーマンスをみたものである。今回の超短期予測は公的固定資本形成を除き、その 他のGDP項目をほぼ正確に予測した。特に、GDPの最大構成項目である民間最終消費支出を正確に予測したといえよう。 日本 今回の予測では、GDPを説明する1月の主要な月次データが更新された。支出サイドモデルは、純輸出と内需が小幅拡大するため、1-3月期の実質GDP 成長率を、前期比+0.5%、同年率+1.8%と予測している。この結果、2007年度の実質経済成長率は+1.8%となろう。 1-3月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.2%増、実質民間住宅は同+13.9%と大幅増加し、1年ぶりのプラス成長となる。 一方、実質民間企業設備は同-0.7%と3期ぶりのマイナスになる。実質政府最終消費支出は同+0.3%、実質公的固定資本形成は同+0.3% となる。このため、実質GDP成長率(前期比+0.5%)に対する国内需要の寄与度は+0.2%ポイントとなる。財貨・サービスの実質輸出は 同+2.4%、実質輸入は同+1.2%となる。純輸出の寄与度は+0.3%ポイントとなる。 4-6月期の実質GDP成長率については、内需が小幅の拡大を維持するが純輸出は横ばいとなるため、前期比+0.4%、同年率+1.6%と予測している。 GDPデフレータは1-3月期に前期比-0.5%、4-6月期も同0.0%となる。輸入デフレータが引き続き上昇し(GDPデフレータの引き下げ要因)、輸出デフレータが円高の影響で下落するためである。 主成分分析モデルは、1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率+3.1%と予測している。また4-6月期を同+0.9%とみている。GDPデフレータは1-3月期に前期比-0.2%、4-6月期に同+0.1%とみている。 この結果、支出サイドと主成分分析モデルの実質GDP成長率(前期比年率)の平均は、1-3月期が+2.5%、4-6月期が+1.2%となる。 GDPデフレータは1-3月期が前期比-0.4%、4-6月期は同0.0%である。両モデルの平均で見れば、日本経済は2008年央にかけて減速するパ ターンを示しているが、現時点では、多くのマーケットエコノミストが予測するようなリセッションに落ち込む事態は避けられそうである。引き続き注意深く データの動向を見守っていかなければならない。 [稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学] 米国 ラリー・サマーズやウォーレン・バフェットなど著名なエコノミストや投資家が「米国経済はただいまリセッション中」と述べている。バーナンキ連邦 準備理事会(FRB)議長も、議会証言では「米経済はリセッションにはなっていないが、リセッションの一歩手前」と発言している。しかし、同議長はインフ レよりも景気を重視して、これまで大幅な政策金利引下げを行っていることから、米国経済がすでにリセッションに入っていると想定していると考えても間違い はない。もちろん、FRB議長の立場では「ただいまリセッション中」などとは言えないのである。 グラフは実質総需要、実質国内需要、実質最終需要の超短期予測を示している。1月の在庫、貿易収支がまだ発表されていないことから、実質GDPよ りこれら需要の指標を見るほうが景気判断にはよいだろう。確かに、2月に入り1月の経済指標が更新され始めたことによって景気は急速に減速してきた。今の ところ、1-3月期の成長率は0%〜+1%(前期比年率)と理解するのがよいだろう。これがマイナス成長になるか、プラス成長を維持するかは、今後の個人 消費支出がどこまで減速するか、そしてドル安による純輸出の改善がどの程度かにかかっている。 今回の超短期予測では、1-3月期の実質個人消費の伸び率が+1%程度(前期比年率) にまで低下してきたと予想している。一方、実質純輸出は前期から約300億ドル改善すると見ている。景気が減速しているとはいうものの、1月の統計でも個 人所得の伸び率がそれほど悪くないことから、個人消費支出が直ちに大きく崩れることはないだろう。 バーナンキ議長は議会証言で「スタグフレーションになるとは思わない」とも述べている。超短期予測では1-3月期の総合・コアの個人消費支出価格デフ レータの伸び率(前期比年率)が2月にはいり急速に上昇し始め、現在+3%〜+5%の範囲にある。確かに、1970年代のようなスタグフレーションの状況 にはならないと思われるが、今の米経済はまさに「ミニスタグフレーション」の状況にある。一旦このような状況になると、正常化するにはかなりの時間がかか る。 [熊坂有三 ITエコノミー]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2008年2月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2008-02-14

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<景気回復のギア(輸出)の逆回転を懸念—今こそ必要な内需拡大のプログラム> 1月31日に開かれた関西社会経済研究所(KISER)主催の景気討論会「世界経済の変調と日本経済の行方」(※)は盛況で示唆に富む議論が展開 された。討論者である白川浩道氏(クレディスイス証券)の明瞭な米国経済の見通し、久貝卓氏(近畿経済産業局長)の日本経済成長戦略をめぐる議論や近畿経 済の見通しは実にinformativeであった。討論会での議論は、2008年度日本経済の見通しついて、重要な視点を与えてくれる。 図は戦後の平均実質GDP成長率とGDP項目の成長寄与率を時代区分別に見たものである。最も印象的なのは、今回の景気回復局面(2002年2月以降) において純輸出が果たした役割である。2002-06年の実質GDP平均成長率は+1.7%と、『失われた10年』(1992-2001年)の平均成長 率+0.9%から緩やかに回復したものの、国民にとっては実感を伴わない回復となっている。実際、景気回復の中身を見ると、成長率の37.9%が純輸出に よる貢献である。すなわち、景気回復を実感したのは、家計ではなく輸出企業なのである。戦後日本経済の成長過程で、純輸出が経済成長に最も貢献した時期 は、1960年代の高度成長期や石油危機からの回復期ではなく、今回の回復期である。今、輸出市場としての米国やemerging marketの役割を見逃すことは出来ない。 白川氏の推計によれば、今回の米国住宅バブルの崩壊による景気押し下げ効果はGDP比3%程度という。この効果が2年で現われるとして、年1.5%程度 米国景気を押し下げることになる。一方、ブッシュ大統領の提案する景気対策が成長率を1%程度引き上げるとすると、2008年の米国経済の当初の成長見通 し(1%台の後半)は差し引き0.5%ポイント程度下方修正されることになる。すなわち、1%台前半の低成長となり、厳しいリセッションに陥ることはない が、年前半には景気下押し圧力が働き、一時的にマイナス成長を経験するかもしれない。2008年度の日本経済は、米国経済の低迷により、景気回復のギア (輸出)が逆回転する可能性が高まろう。これが景気討論会から得られた第1の含意である。 図からわかるように、石油危機からプラザ合意にかけての期間(1974-85年)では、純輸出の経済成長に対する寄与率は19.0%と今回の回復局面に つぐ高さである。石油危機による低迷から対米輸出の急拡大で景気回復の活路を見出したのがこの時代である。しかしこの景気回復は日米貿易摩擦を引き起こ し、日本経済は構造改革を余儀なくされる。この難局を克服するために内需拡大路線が議論され、「前川レポート」が作成されたのである。最近、第2の「前川 レポート」作成が議論されているが、これは正しい方向である。 規制緩和を推し進め、内需拡大のフロンティアを拡大する構造改革がもっと議論されるべきである。これには、サービス産業の生産性の上昇が決定的に重要とな ろう。これが討論会で得られた第2の含意である。 (※)景気討論会の要旨は(財)関西社会経済研究所ホームページで2月中旬に公開予定。 日本 <10-12月期は高成長を予測するが、内需拡大の動向が予測上のリスク> 2月14日に10-12月期の実質GDP成長率が発表される。最近の民間エコノミストの成長率コンセンサスは年率で1%台のようである。一方、2 月1日までの月次情報を更新した超短期予測は、10-12月期は純輸出が引き続き拡大し、内需が反転拡大するため、前期比+1.1%、同年率+4.6%と 見込んでいる。われわれの予測と市場コンセンサスは好対照であるが、見方の違いは内需拡大の程度にある。特に、民間最終消費支出と民間住宅の予測が鍵とな ろう。 10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.4%増加する。家計調査報告によれば、同期の実質家計消費は同+0.8%と堅調 である。ただ、今回の予測には反映されていないが、その後に発表された消費総合指数は同横ばいとなっており、民間最終消費支出は予測より低めに出る可能性 がある。仮にその要因を考慮しても、経済成長率は3%台とやはり高めに出ると見ている。 実質民間住宅は同-7.9%と前期並みの減少を予測している。一方、実質民間企業設備は同+1.4%と2期連続のプラスとなる。実質政府最終消費支出は 同+0.4%、実質公的固定資本形成は同+2.4%、それぞれ増加する。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+1.1%)に対する寄与度 は+0.6%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同2.7%増加し、実質輸入は同1.0%減少する。純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.5%ポイントとなる。 1-3月期の実質GDP成長率については、純輸出は拡大し内需は小幅増にとどまるため、前期比+0.5%、同年率+2.1%と予測している。この結果、2007暦年・年度の経済成長率はそれぞれ+2.2%、+1.9%となろう。 1-3月期の実質民間最終消費支出は前期比0.3%増加し、実質民間住宅は同10.1%増加する。実質民間企業設備は同0.5%減少する。実質政府最終消費支出は同0.6%増加し、実質公的固定資本形成は同横ばいとなる。 財貨・サービスの純輸出は引き続き拡大する。実質輸出は同1.3%増加するが、実質輸入は同2.2%減少するためである。 GDPデフレータは10-12月期に前期比-0.4%、1-3月期も同-0.8%となる。輸入デフレータが引き続き上昇し(GDPデフレータにとって は、引き下げ要因)、輸出デフレータに円高の影響(10-12月期は前期比5円程度円高)が大きく出始めており、これが全体の物価水準を押し下げているよ うである。ただ、民間最終消費支出デフレータは、エネルギー価格高騰の影響により、10-12月期に同+0.2%、1-3月期に同-0.1%となる。 [稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学] 米国 <景気は急速に減速するがリセッションの兆候なし。FRBは株式市場に対する金融緩和策のアナウンスメント効果の演出に失敗> バーナンキ連邦準備理事会(FRB)議長が異常とも思えるほど懸念した通り、経済統計は景気のスローダウンを示し始めた。2007年10-12月 期の実質GDP成長率(年率換算)は7-9月期の+4.9%から+0.6%へ低下し、1月の雇用統計は2003 年8月以来の減少(-1万7,000人)となった。1月の失業率は前月の5.0%より0.1%減少し4.9%になったものの、1月26日の新規失業保険申 請件数は前週の30万6,000件から37万5,000件へと大幅に増加した。また1月の自動車販売は15.2百万台と2005年以来の最低水準を記録。 住宅は今もって底が見えず、12月の新規住宅販売は前期比で‐4.7%の減少。これらを受け、市場・エコノミストの間にも急速にリセッション懸念が広まっ ている。米経済はすでにリセッションに突入したとの見方もある。FRBは1月21日の緊急ミーティングで75ベーシスポイント(0.75%)の政策金利の 引下げを行い、1月29/30日のFOMCにおいて更に追加的な50ベーシスポント(0.5%)の政策金利引下げを行った。また、政府は1,500億ドル の緊急財政刺激政策の導入を検討している。 しかし、今週の超短期予測は平均実質GDP成長率を1-3月期+1.4%(支出・所得サイドの平均。グラフ参照)、4-6月期+1.0%と予測してい る。景気は急速にスローダウンしているものの、今すぐにも2四半期続いてマイナス成長となるようなリセッションの兆候を示してはいない。 インフレ率に関しては、今週の超短期予測は前期比+1.5%〜+2.0%内と予測している。これは、FRBの許容範囲ぎりぎりのところである。景気のス ローダウンはあるものの、大幅な金融緩和によって今後インフレ圧力が増すことは確かであろう。FRBがインフレ加速懸念よりもリセッション懸念に重点を置 き、積極的に金融を緩和するのは理解できる。しかし、今回の大幅な政策金利の引下げによっても、株式市場がポジティブに反応しなかったことはFRBの失敗 である。10日間で合わせて125ベーシスポイント(12.5%)の政策金利の引下げを実施するのなら、株式市場にもっと好影響を与えるような方法があっ たと思われる。バーナンキ議長は政策金利引下げを行う時のアナウンスメント効果をうまく使うべきであった。逆に、彼はあちこちでリセッション懸念を吹聴 し、市場をリセッション懸念で洗脳してしまった。 [熊坂有三 ITエコノミー]
熊坂 侑三

インサイト

今月のトピックス(2008年1月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2008-01-10

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<何故日本株は売られるのか?—成長戦略を示せない政治状況が課題> 今月の日本経済見通しで示したように、超短期モデルは10-12月期の日本経済について4%を超える高い成長率を予測している。一方、マーケット の見方は、例えば、1月10日に発表されたESPフォーキャスト1月調査では10-12月期の実質成長率を前期比年率+1.01%と見ている。8月〜10 月までは+2%程度の予測が11月には+1.7%となり、12月〜1月は更に+1%まで低下してきたのである。 多くの11月のデータが発表されており、10-12月期のデータの2/3が発表されている現状で詳細に月次データを検証すれば、過去の15年を超える超 短期予測の経験からは、+1%というような数字は出てこない。確かに、2008年1-3月期はゼロ成長となり、景気減速を十分示唆していると思われるが、 リセッション(米国の定義では2四半期連続でマイナス成長)に陥るとは考えていない。今日のように、サービス産業のウェイトが高くなっている経済では、成 長率はマイナスになりにくい。実際、超短期予測は第3次産業活動指数を10-12月期、1-3月期とも連続で堅調なプラス成長を予測している。 筆者の見方では、マーケットの予測は下方にオーバーシュートしていると思われる。おそらく、サブプライムローン問題に起因する日本株の低迷に大きく影響 されているといえよう。2007年1月4日に17,353.67で始まった日経平均(225)は、7月9日に一旦18,261.98まで買われたが、年末 は15,307.78で終了し、結局、年初比12.8%も下落した。先進国で株価が値下がりしたのは日本だけである。日本株は2008年に入っても 15,000を割り込み低迷を続けている。 何故日本株は売られるのであろうか(Japan passing)。日本の金融市場が魅力に欠けるといった制度的な問題やemerging marketの成長率が非常に高いといった要因もある。しかし、基本的には日本経済の成長戦略が見えてこない点がきわめて重要と考える。日本の株価市場へ の投資主体の60%を超える外国人投資家にとって、人口減少下で成長戦略を示すことのできない日本経済などにはまったく興味がないといえよう。重要なの は、生産性の向上を最優先課題とする成長戦略である。安倍政権の発足時に喧伝されたあの新成長戦略(いわゆる、上げ潮路線)は一体どうなったのであろう か。混迷する政治が、内向きで成長戦略に背を向けるような状況をつくり出しているとするならば、由々しき事である。 日本 <10-12月期は高成長を予測、マーケットは悲観的過ぎる> 今回の超短期モデル予測(支出サイド)では、ほぼ11月の月次データを更新している。10-12月期の経済を説明するデータの2/3が出揃ったこ とになる。同期の実質GDP成長率は、内需が拡大に転じ純輸出も大幅に伸びるため、前期比+1.1%、同年率+4.6%と予測される。先月(+4.0%) から小幅の上方修正である。マーケットコンセンサスの同年率1.01%(ESPフォーキャスト1月調査)に比べ非常に高い予測である。以下、超短期モデル 予測の特徴を説明しよう。 10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.4%となる。実質民間住宅は同-9.8%となり、実質民間企業設備は 同+1.4%となる。実質政府最終消費支出は同+0.3%となり、実質公的固定資本形成も同+0.9%となる。この結果、国内需要の実質GDP成長率(前 期比+1.1%)に対する寄与度は+0.6%ポイントとなる。 民間住宅は大幅な落ち込みを予測しているが、民間最終消費支出は意外と高い伸びとなっている。10-11月の消費総合指数は7-9月期平均より0.2% 高く、民間消費の堅調な伸びを予測しているのである。民間企業設備、公的固定資本形成もプラスの伸びを示しており、民間住宅は確かに大幅なマイナスとなろ うが、経済に占めるウェイトは10%以下で大きくないから、国内需要の伸びは意外と高いと見込んでいる。 加えて、外需が貢献しそうである。財貨・サービスの実質輸出は同3.2%増加し、実質輸入が同0.6%減少する。このため、純輸出の実質GDP成長率に 対する貢献度は+0.6%ポイントとなる。注意すべきは、通関ベース貿易収支(季節調整値)の10-11月平均は7-9月期平均を2.5%下回っている が、輸入価格が大幅に上昇し、輸出価格は低下していることから、実質の純輸出は相当経済成長率を引き上げているのである。この結果、2007暦年の実質 GDP成長率は+2.2%と予測する。 1-3月期の実質GDP成長率については、純輸出が小幅拡大するが内需の縮小が相殺するため、前期比-0.0%、同年率-0.0%と予測している。先月の予測(0.0%)と横ばいである。2007年度の実質GDP成長率は+1.8%と予測する。 物価トレンドを見れば、GDPデフレータは、10-12月期に前期比-0.2%、1-3月期も同-0.3%と引続きデフレを予測している。民間最終消費支出デフレータは、10-12月期に同+0.1%、1-3月期に同-0.2%となる。 主成分分析モデルは、10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率+2.8%と予測している。また1-3月期を同+1.6%とみている。GDPデフレータは10-12月期に前期比-0.1%、1-3月期に同-0.2%とみている。 この結果、支出サイドと主成分分析モデルの実質GDP成長率(前期比年率)の平均は、10-12月期が+3.7%、1-3月期が+0.8%となる。 GDPデフレータは10-12月期が前期比-0.2%、1-3月期も同-0.3%である。両モデルの平均で見れば、日本経済は10-12月期に比較的高成 長を示すものの、1-3月期は停滞局面に入ると予測している。10-12月期の高成長は景気減速前の最後の輝きかもしれない。 米国 2008年の初仕事日(1月2日)にダウ平均株価は1.67%と大幅に下落した。これは過去における新年の初仕事日のダウ下落において史上7番目 の落ち込み幅であり、1983年1月3日に1.9%下落して以来の大幅な下げとなった。この理由は市場にリセッション懸念が急速に広がったことである。同 日に発表された12月のISM(全米供給管理協会)の製造業指数が50を大きく下回る47.7となり、製造業リセッションを示唆し、また石油価格は取引中 に心理的な天井である100ドルを一度超えた。さらに、市場のリセッション懸念に追い討ちをかけたのが12月の雇用統計の結果である。雇用増が 18,000人と市場予想の70,000人を大幅に下回り、失業率も11月の4.7%から5.0%へと大きく上昇した。 1月4日の超短期モデル(需要サイド)は、2007年10-12月期の実質GDPの伸び率を前期比年率+5.3%と非常に高く予想している。これは10 月、11月と輸入価格がそれぞれ前月比で+1.4%、+2.7%と大きく伸びたことにより、NIPA(米国国民所得統計)の実質輸入が20%も低下すると 予測されていることによる。もっとも、11月の貿易収支と12月の輸出入価格の更新によって支出サイドからの実質GDP予測は大きく修正されると思われ る。このように輸出入部門の予測に大きな不確実性が残るとき、景気判断には実質総需要、実質国内需要、実質最終需要(GDP−在庫−純輸出)をみるのが良 い(グラフ参照)。 このグラフが示すように、実質総需要、実質国内需要や実質最終需要の伸びで見た景気は9月後半から減速してきており、12月14日の予測では経済 成長率はゼロとなり超短期予測はこの時点でリセッション懸念のシグナルを出している。しかし、その後景気はリバウンドし、最近では1.5% - 2.0%の経済成長率(2007年10-12月期)を示している。また、2008年1-3月期においても2%程度の経済成長率を予測している。超短期予測 からすれば、リセッション懸懸念のピークは12月半ばであり、すでに通りすぎたといえる。 (注:毎月の超短期予測は、通常、実質GDPの成長率予測の動態から景気を診断している。ただ実質GDPの構成項目である実質純輸出の予測には困難 が伴う場合が多い。名目純輸出の予測は大きく変動することはないが、原油価格の高騰などで輸入デフレータが毎月大きく変動する結果、実質純輸出の予測も大 きな変動をこうむる。このような困難を避けるために、GDPから純輸出を除いた総需要やさらに在庫品増加を除いた最終需要の伸びで経済の実力を測ることが ある。) [熊坂有三 ITエコノミー]