都道府県別訪日外客数と訪問率:5月レポート No.84

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ABSTRACT

【ポイント】

・JNTO訪日外客統計によれば、5月の訪日外客総数(推計値)は355万9,900人。前年同月比-3.6%、2カ月連続のマイナス。中国政府の渡航自粛要請による中国人客減少の影響が続いている。

・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、3月は361万9,159人。うち、観光客は322万1,476人で、伸びは同+2.3%と2カ月連続のプラスとなった。

・今月号のトピックスとして7月10日に政府が閣議決定した『令和8年版観光白書』から第Ⅰ部の第3章の内容を取り上げ、その特徴を紹介した。宿泊施設に対するアンケート調査では72.2%が人手不足の状況であるとの結果となった。

・こうした課題解決のために、白書では人材確保、労働環境の改善や労働生産性の向上を進めている宿泊施設の事例が取り上げられている。特徴的なのは、1)生成AIを活用したマーケティング、2)観光需要の繫閑差を活用した観光人材の交流など、新たなビジネスモデルへの取組である。こうした事例が積極的に展開されることでDX投資が推進され、収益および生産性を高められれば、賃金や待遇の一層の改善につながろう。

 

【トピックス1】

・関西5月の輸出額は20カ月連続の増加、伸びは3カ月連続で2桁の伸びを記録。世界的なAI需要の拡大もあり、アジア向けの半導体関連輸出が好調であった。また、輸入額は4カ月連続の増加となった。結果、関西の貿易収支は16カ月連続の黒字。輸出、輸入ともに増加したが、前者の伸びが後者の伸びを上回ったため、黒字幅は前年同月比+92.6%拡大した。

・4月の関空への訪日外客数は80万6,135人であった。前年同月比-15.5%と6カ月連続で減少し、且つ減少幅は2カ月連続で2桁のマイナスとなった。中国人客の渡航自粛の長期化が、外国人入国者数増加の下押し要因となっている。

・日中関係悪化及び中東紛争が関空の訪日外客数に与えている関西エアポートが公表した方面別国際旅客数の別データから確認すると、足下2026年5月の中国方面及び中東方面は前年同月比で2桁のマイナスとなっている。

 

【トピックス2】

・3月の関西2府8県の延べ宿泊者数は11,367.1千人泊。前年同月比-6.3%と6カ月連続の減少となった。

・うち、日本人延べ宿泊者数は6カ月連続で、外国人延べ宿泊者数は9カ月連続でそれぞれ前年を下回っており、宿泊需要は停滞している。

 

【トピックス3】

・2026年1-3月期における関西各府県の訪問率をみると、大阪府33.2%が最も高く、次いで、次いで京都府22.0%、奈良県5.9%等が続く。前年同期の訪問率を比較すると大阪府、京都府がいずれも大幅低下となった。

・2026年1-3月期の関西における訪日外国人消費単価をみると、関西2府4県では前年同期比-4.2%と6四半期ぶりの減少に転じた。費目別にみれば、買物代が同-23.6%大幅減少し、4四半期連続のマイナス。また、飲食費は同-3.1%と3四半期ぶりに、娯楽等サービス費は同-7.4%と5四半期ぶりにそれぞれ減少となった。

・2026年1-3月期の関西における訪日外客消費額は4,658億円。前年同期比-14.8%となり、コロナ禍が正常化した2023年以降、初めてマイナスに転じた。中国人客の訪日旅行自粛の影響が、全国に比べて関西の方に強めに表れたため、関西全体の消費額の伸びは全国のそれを下回った。

 

DETAIL

●6月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数

▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表4)、5月の訪日外客総数(推計値)は355万9,900人であった。前年同月比-3.6%、2カ月連続のマイナス。中国政府の渡航自粛要請による中国人客減少の影響が続いている。また、同月の出国日本人数は112万7,400人。同+4.7%と3カ月連続のプラスとなった。なお、19年同月比では-21.6%と前月の同-37.5%からマイナス幅は縮小したが、回復ペースは緩慢である。

 

 

▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると(図2及び表4)、5月は韓国が95万1,300人(前年同月比+15.2%)と最多で、昨年11月以降、中国の水準を上回っている。次いで台湾が61万6,800人(同+14.6%)、米国が33万3,700人(同+7.0%)、中国が31万3,000人(同-60.4%)、香港が20万7,900人(同+7.7%)と続く。日中関係悪化の影響もあり中国人客は6カ月連続で大幅減少した。なお、中東地域は3万9,000人で同+67.8%、4カ月ぶりの増加となった(前月:同-21.4%)。

 

▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(表5)、3月は361万9,159人となった。前年同月比+3.5%、2カ月連続のプラス(前月:同+6.4%)。うち、観光客は322万1,476人で、伸びは同+2.3%と2カ月連続のプラスとなった(前月:同+8.5%)。また、その他客は29万545人、商用客は10万7,138人であった。伸びをみればその他客は同+21.6%で、2カ月ぶりのプラス。一方、商用客は同-2.0%と、2カ月連続のマイナスとなった。

 

▶7月10日に政府は『令和8年版観光白書』を閣議決定した。今月号のトピックスとして、第Ⅰ部の第3章「『働いてよし』の観光産業の実現に向けて~宿泊業の人材確保と生産性の向上~」の内容を取り上げ、その特徴を紹介する。観光庁が全国の宿泊施設に対して人手不足や収益に関するアンケート調査を実施した結果、全体として72.2%が人手不足の状況にあるとの結果となった。こうした課題解決のために、白書では人材確保、労働環境の改善や労働生産性の向上を進めている宿泊施設の事例が取り上げられている。特徴的なのは、1)生成AIを活用したマーケティング、2)観光需要の繫閑差を活用した観光人材の交流など、新たなビジネスモデルへの取組である(図3)。こうした事例が積極的に展開されることでDX投資が推進され、収益および生産性を高められれば、賃金や待遇の一層の改善につながろうとしている。

 

●5月関西の財貨・サービス貿易の動向

▶関西5月の輸出額は前年同月比+19.3%と20カ月連続の増加、3カ月連続で2桁の伸びを記録した。世界的なAI需要の拡大もあり、アジア向けの半導体関連輸出が好調であった。また、輸入額は同+11.8%と4カ月連続の増加。結果、関西の貿易収支は+3,096億円と16カ月連続の黒字(図4)。輸出、輸入ともに増加したが、前者の伸びが後者の伸びを上回ったため、黒字幅は前年同月比+92.6%拡大した。

 

▶対中国貿易動向をみると(図5)、関西5月の対中国輸出は前年同月比+28.5%と 3 カ月連続で増加した。輸出増に寄与したのは、半導体等電子部品や原料品等であった。また、対中国輸入は同+3.9%と7カ月連続の増加。輸入増に寄与したのは無機化合物や重電機器等であった。

 

▶5 月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は 80 万6,135 人であった(図 6)。前年同月比-15.5%と 6 カ月連続で減少し、且つ2カ月連続で2桁のマイナスとなった(前月:同-17.2%)。中国人客の渡航自粛の長期化が、外国人入国者数増加の下押し要因となっている。日本人出国者数は 21 万4,289 人であった。前年同月比+5.5%と3カ月連続の増加。なお、2019年同月比では-24.4%と依然低迷している。

 

▶日中関係悪化及び中東紛争が関空の訪日外客数に与えている影響を別データから確認しよう。図 7 は関西エアポートが公表した方面別国際旅客数の前年同月比の推移を示したものである。中国方面をみれば、日中関係が悪化した2025年11月に前年同月比+24.3%と前月(同+48.9%)から増加幅が縮小し、12月には同-39.2%と大幅減少に転じた。以降、2桁を超える減少が続いており、足下26年5月は同-59.6%と依然回復の見通しが立っていない状況である。また、その他(北米・欧州・中東)方面をみれば、中東方面は米国とイスラエルによるイラン攻撃の影響もあり、26年3月に同-21.0%と大幅減少し、4月には同-29.8%と減少幅は拡大した。5月には同地域における主要な空港機能が幾分回復したこともあり、同19.9%と減少幅は縮小した。ただし、依然として中東情勢の不確実性は高く、航空便の運休・減便に加え、原油高による航空運賃の上昇などが、先行きの訪日外客需要の下押しリスクとなろう。 *今月号ではレポートの公表日の都合により、5月の「第3次産業活動指数」を取り扱わなかったことにご留意いただきたい。

 

●3月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県

▶観光庁によれば、3月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は11,367.1千人泊(表1)。前年同月比-6.3%と6カ月連続で減少し、減少幅は前月の同-3.9%から拡大した。

 

▶日本人延べ宿泊者数は7,630.3千人泊となった。前年同月比7.1%と6カ月連続で減少した(表1及び図8)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,454.8千人泊と最も多く、次いで、兵庫県1,281.0千人泊、京都府1,243.0千人泊となった。また、三重県826.6千人泊、滋賀県420.5千人泊、和歌山県405.2千人泊、福井県288.8千人泊、鳥取県256.7千人泊、奈良県243.8千人泊、徳島県210.0千人泊であった。関西3月の前年同月比(-7.1%)に対する寄与度をみれば、減少に寄与したのは、大阪府(同-6.7%ポイント)、京都府(同-0.7%ポイント)、兵庫県(同-0.5%ポイント)等の4府県であった。

 

 

▶外国人延べ宿泊者数は3,736.8千人泊であった(表1及び図9)。前年同月比-4.6%と9カ月連続で減少した。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府1,923.0千人泊、京都府1,359.2千人泊と2府への集中が続いている。また、兵庫県206.3千人泊、和歌山県77.0千人泊、奈良県43.0千人泊、三重県39.0千人泊、滋賀県34.0千人泊、徳島県23.8千人泊、鳥取県22.2千人泊、福井県9.5千人泊であった。関西3月の前年同月比(4.6%)への寄与度をみれば、京都府(同-5.3%ポイント)、大阪府(同-1.8%ポイント)、徳島県(同-0.0%ポイント)と奈良県(同-0.0%ポイント)の4府県が外国人延べ宿泊者の減少に寄与した。

 

▶なお、宿泊料金と賃金との交易条件(現金給与総額/宿泊料金:2019年=100)をみれば、2026年5月は76.7となった。前年同月比-1.3%と38カ月連続の悪化だが、賃金上昇が4カ月連続で3%超となったため、悪化幅は-1%台となった(図10)。 図10 宿泊料金と賃金の交易条件 注

 

●2026年1-3月期訪日外国人訪問率と消費単価:関西

▶観光庁によれば、2026年1-3月期における関西2府8県の訪問率をみると(図11)、大阪府33.2%が最も高く、次いで京都府22.0%となっている。また、奈良県5.9%、兵庫県4.1%、和歌山県0.7%、三重県0.6%、滋賀県0.6%、鳥取県0.3%、徳島県0.2%、福井県0.2%と続く。前年同期と比較すると(表2)、大阪府は同-4.5%ポイント、京都府は同-4.7%ポイントといずれも大幅低下となった。また、奈良県同-1.0%ポイント、兵庫県同-0.7%ポイント、滋賀県同-0.0%ポイントとそれぞれマイナス。一方、福井県、鳥取県は同+0.1%ポイントといずれも小幅上昇にとどまった。なお、三重県、和歌山県はそれぞれ横ばいだった。

 

 

▶当該期間の各府県の訪問率に訪日外客数を乗じて推計した関西における訪日外客数をみよう。2026年1-3月期の訪問者数を降順にみれば(表2)、大阪府354万2,606人(前年同期比10.6%)と最も多く、次いで京都府235万2,859人(同16.3%)、奈良県62万9,837人(同-13.5%)、兵庫県43万5,165人(同-13.7%)、和歌山県7万1,283人(同+4.8%)、三重県6万3,943人(同+5.5%)、滋賀県6万3,302人(同+0.7%)、鳥取県3万1,144人(同+35.9%)、徳島県2万4,359人(同+49.6%)、福井県2万2,062人(同+71.5%)と続く。

 

 

▶観光庁によれば、2026年1-3月期の関西における訪日外国人消費単価(旅行者1人1回当たりの旅行消費金額)をみると(表3)、関西2府4県では前年同期比-4.2%と6四半期ぶりに減少した。費目別にみれば、買物代が同-23.6%大幅減少し、4四半期連続のマイナス。また、飲食費は同-3.1%と3四半期ぶりに、娯楽等サービス費は同-7.4%と5四半期ぶりにそれぞれ減少となった。

 

▶観光庁によれば、2026年1-3月期の関西における訪日外客消費額は4,658億円となり(表3)、前年同期比-14.8%となり、コロナ禍が正常化した2023年以降、初めてマイナスに転じた(25年10-12月期:同+18.5%)。一方、同期の全国の消費額*は2兆3,373億円、同+2.5%であった(25年10-12月期:同+10.2%)。なお、2025年における関空の外国人入国者に占める中国人客のシェアをみれば関西は32.1%と、全国の21.3%に比して10.8%ポイント高い。中国人客の訪日旅行自粛の影響が、全国に比べて関西の方に強めに表れたため、関西全体の消費額の伸びは全国のそれを下回った。 *全国の消費額については本レポートNo.82を参照。

 

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