ABSTRACT
【ポイント】
・JNTO訪日外客統計によれば、7月の訪日外客総数(推計値)は344万2,100人。前年同月比+0.1%、小幅ながら4カ月ぶりにプラスに転じた。中国人客の減少が続いているが、夏季休暇の開始もあり、欧米や台湾、韓国などの東アジアが訪日外客全体を押し上げた。
・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、5月は356万256人。うち、観光客は324万5,723人で、伸びは同-3.6%と2カ月連続のマイナスとなった。
・今月号のレポートでは「九州ふっこう応援割」の特徴を取り上げ、紹介した。本事業では、1)1泊の宿泊旅行のみならず、2)交通付宿泊旅行商品(2泊以上)や3)周遊型旅行商品(宿泊地が2県以上)も割引対象となっている。こうした取り組みにより九州域内の広域観光が促進されれば、落ち込んだ観光需要の回復に一定程度寄与する。加えて、当該地域のインフラの復旧状況の周知・確認が重要となろう。
【トピックス1】
・関西7月の輸出額は22カ月連続の増加、5カ月連続で2桁の伸びを記録。また、輸入額は6カ月連続の増加となった。結果、関西の貿易収支は18カ月連続の黒字。輸入額の伸びが輸出額の伸びを上回ったこともあり、黒字幅は前年同月比-8.9%と5カ月ぶりに縮小した。
・7月の関空への訪日外客数は75万4,609人であった。前年同月比-15.6%と8カ月連続で減少し、且つ4カ月連続で2桁のマイナス。関空では全国に比して中国人客のシェアが高いこともあり、中国人客の訪日自粛の影響が強めに出ている。
・7月の第3次産業活動指数は2カ月ぶりのプラス。また、対面型サービス業指数は「運輸業、郵便業」や「生活関連サービス業、娯楽業」が上昇に寄与し、2カ月ぶりにプラスとなった。また、観光関連指数は「宿泊業、飲食サービス業」や「旅客運送業」などが上昇に寄与した影響もあり、2カ月ぶりのプラスとなった。
【トピックス2】
・5月の関西2府8県の延べ宿泊者数は11,420.5千人泊、前年同月比-9.8%と8カ月連続の減少となった。日本人、外国人いずれも宿泊者数は減少が続いており、宿泊需要は停滞している。
・うち、日本人延べ宿泊者数は8カ月連続の減少。また、外国人延べ宿泊者数は11カ月連続で前年を下回った。
【トピックス3】
・2026年4-6月期における関西国内旅行消費額(2府8県ベース)は1兆2,926億円となった。前年同期比-7.0%と10四半期ぶりの減少に転じた。前年に開催された大阪・関西万博の反動減もあり、宿泊旅行消費が消費額全体を押し下げた。
・国内旅行消費額のうち、宿泊旅行消費額は10四半期ぶりの減少となった一方、日帰り旅行消費額は5四半期連続で増加した。なお、日帰り消費額において、奈良県が過去最高値を更新した。
DETAIL
●8 月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数
▶JNTO 訪日外客統計によれば(図 1 及び表 4)、7 月の訪日外客総数(推計値)は 344 万 2,100 人であった。前年同月比+0.1%、小幅ながら 4 カ月ぶりにプラスに転じた。中国人客の減少が続いているが、夏季休暇の開始もあり、欧米や台湾、韓国などの東アジアが訪日外客全体を押し上げた。また、同月の出国日本人数は 119 万 1,300 人、同-1.2%と 5 カ月ぶりのマイナスとなった。なお、2019 年同月比では-28.2%となり、アウトバウンド需要は依然低迷している。
▶訪日外客数のトップ 5 を国・地域別にみると(図 2 及び表 4)、7 月は韓国が 89 万 4,700 人(前年同月比+31.9%)と最多を記録した。次いで台湾が 76 万 3,800 人(同+26.4%)、中国が 42 万 8,200 人(同-56.1%)、米国が 28 万 6,200 人(同+3.3%)、香港が 27 万 2,500 人(同+54.8%)と続く。日中関係悪化の影響が続いており、中国人客は 8 カ月連続で大幅減少した。なお、台湾人客は単月過去最高値を更新した。
▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(表 5)、5 月は 356 万 256 人となった。前年同月比-3.6%、2 カ月連続のマイナス(前月:同-5.5%)。うち、観光客は 324 万 5,723 人で、伸びは同-3.6%と 2 カ月連続のマイナス(前月:同-6.7%)。その他客は 21 万 3,562 人、商用客は 10 万 971 人であった。伸びをみれば、その他客は同+0.7%と、小幅ながら 3 カ月連続のプラス。一方、商用客は同-10.6%と、4 カ月連続のマイナスとなっており、低調な動きとなっている。この一因として中国人客の減少が影響しており、観光目的のみならず商用目的においても悪影響が生じている。
▶7 月 28 日に発生した「令和 8 年熊本地震」の影響は、国内観光需要のみならずインバウンド需要に暗い影を落としている。このため政府は、10 月より観光需要の早期回復を目指し、「九州ふっこう応援割」を九州各県へ展開する予定である。今月号のレポートではその内容を取り上げる。本事業では、宿泊を伴う旅行に対して一定の条件の下、表 1 で示される割引率が適用される予定である。1)1泊の宿泊旅行のみならず、2)交通付宿泊旅行商品(2 泊以上)や 3)周遊型旅行商品(宿泊地が 2 県以上)も対象を広げた点が特徴的である。こうした取り組みにより九州域内の広域観光が促進されれば、落ち込んだ観光需要の回復に一定程度寄与する。加えて、当該地域のインフラの復旧状況の周知・確認が重要となろう。
*なお、観光庁「訪日外国人消費動向調査」の訪問率のデータが 2023 年 9 月から公表が再開された。このため、中断していた訪問率の月次推計についてはデータの蓄積を待って今後再開する予定である。
●7 月関西の財貨・サービス貿易の動向
▶関西 7 月の輸出額は前年同月比+24.6%と 22 カ月連続の増加、5 カ月連続で 2 桁の伸びを記録した。AI 関連需要の爆発的な拡大が続いており、半導体関連輸出が堅調。また、輸入額は同+29.5%と 6 カ月連続の増加。結果、関西の貿易収支は+2,235 億円と 18 カ月連続の黒字。輸入額の伸びが輸出額の伸びを上回ったこともあり、黒字幅は前年同月比-8.9%と 5 カ月ぶりに縮小した(図 3)。
▶対中国貿易動向をみると(図 4)、関西 7 月の対中国輸出は前年同月比+47.8%と 5 カ月連続で増加した。輸出増に寄与したのは、半導体等電子部品や半導体等製造装置等であった。また、対中国輸入は同+20.0%と 9 カ月連続の増加。輸入増に寄与したのは通信機や非鉄金属等。結果、対中国貿易収支は+340 億円と2カ月ぶりの黒字となった。サービス輸出に比して、財の対中国輸出は好調である。
▶7 月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は 75 万 4,609 人であった(図 5)。前年同月比-15.6%と 8 カ月連続で減少し、且つ 4 カ月連続で 2 桁のマイナスとなった(前月:同-21.2%)。全国が小幅プラス(同+0.1%)となったのに対し、関空では中国人客のシェアが高いこともあり、中国人客の訪日自粛の影響が強めに出ている。また、日本人出国者数は 22 万 6,731 人であった。前年同月比-0.1%と小幅ながら 5 カ月ぶりに減少した(前月:同+5.7%)。なお、2019 年同月比では-28.8%となり、アウトバウンド需要は依然低迷している。
▶サービス業の生産活動を示す第 3 次産業活動指数(季節調整済み:2019-20 年平均=100)をみれば(図 6)、7 月は 107.1 で前月比+0.4%と 2 カ月ぶりのプラスとなった(前月:同-0.2%)。経産省は基調判断を「一部に足踏みがみられるものの、持ち直し傾向にある」と前月から据え置いた。また、対面型サービス業指数*は 107.4 で同+0.8%、2 カ月連続のプラス(前月:同+0.1%)。うち、運輸業、郵便業(同+1.8%、2 カ月連続)や生活関連サービス業、娯楽業(同+3.7%、2 カ月ぶり)などが上昇に寄与した。7 月を 4-6 月平均と比較すると、第 3 次産業活動指数は+0.5%、対面型サービス業指数は+0.8%、それぞれ上昇した(4-6 月期:第 3 次産業活動指数:前期比+0.5%、対面型サービス業指数:同-0.3%)。
▶7 月の観光関連指数**(季節調整済み:2019-20 年平均=100)は(図 6)、112.0 と前月比+4.0%上昇、前月の大幅落ち込み(同-5.2%)の反動もあり 2 カ月ぶりのプラスとなった。うち、宿泊業、飲食サービス業(同+3.4%、2 カ月ぶり)や旅客運送業(同+3.3%、3 カ月ぶり)などが上昇に寄与した。7月の観光関連指数は 4-6 月平均比+1.0%上昇した(4-6 月期:前期比-0.9%)。
*対面型サービス業は、「運輸業、郵便業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「学習支援業」及び「医療、福祉」を指す。
**観光関連指数は第 3 次産業活動指数のうち、「旅客運送業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「旅行業」、「映画館」、「劇場・興行団」及び「公園、遊園地・テーマパーク」の各指数の加重平均。
●5 月延べ宿泊者数の動向:関西 2 府 8 県
▶観光庁によれば、5 月の関西 2 府 8 県の延べ宿泊者数(全体)は 11,420.5 千人泊(表 2)。前年同月比-9.8%と 8 カ月連続の減少となった(前月:同-11.8%)。日本人、外国人いずれも宿泊者数は減少が続いており、宿泊需要は停滞している。
▶5 月の日本人延べ宿泊者数は 7,582.1 千人泊となった。前年同月比-6.0%と 8 カ月連続で減少したが、減少幅は前月の同-8.5%から縮小した(表 2 及び図 7)。府県別にみれば、大阪府 2,346.5 千人泊と最も多く、次いで、京都府 1,357.4 千人泊、兵庫県 1,171.4 千人泊となった。また、三重県 758.2 千人泊、滋賀県 438.3 千人泊、和歌山県 400.5 千人泊、福井県 324.4 千人泊、奈良県 301.7 千人泊、鳥取県 265.5 千人泊、徳島県 218.5 千人泊であった。前年同月比(-6.0%)に対する寄与度をみれば、減少に寄与したのは、大阪府(同-6.8%ポイント)、三重県(同-0.6%ポイント)、京都府(同-0.3%ポイント)等の 5 府県であった。
▶5 月の外国人延べ宿泊者数は 3,838.3 千人泊であった(表 2 及び図 8)。前年同月比-16.6%と 11 カ月連続で減少した。府県別にみれば、大阪府 1,930.0 千人泊、京都府 1,501.7 千人泊と 2 府への集中が続いている。また、兵庫県 171.0 千人泊、和歌山県 82.6 千人泊、奈良県 39.1 千人泊、三重県 30.9 千人泊、滋賀県 29.1 千人泊、徳島県 21.6 千人泊、鳥取県 18.7 千人泊、福井県 13.6 千人泊であった。前年同月比(-16.6%)への寄与度をみれば、京都府(同-8.0%ポイント)、大阪府(同-7.5%ポイント)、兵庫県(同-0.6%ポイント)等の 7 府県が外国人延べ宿泊者の減少に寄与した。京都府では 7 カ月連続で、大阪府では 12 カ月連続でそれぞれ減少が続いている。
▶なお、宿泊料金と賃金との交易条件(現金給与総額/宿泊料金:2019 年=100)をみれば、2026 年 7 月は 80.7 となった。前年同月比+2.5%と 2 カ月連続の改善となった。夏のボーナス支給もあり、賃金上昇が 6 カ月連続で 3%超となったことに加え、宿泊料金の伸びが縮小(6 月:同+3.1%→7 月:同+2.0%)したことが影響した(図 9)。
●2026 年 4-6 月期国内旅行消費の動向:関西 2 府 8 県*
▶観光庁によれば、2026 年 4-6 月期関西(2 府 8 県ベース)の国内旅行消費額(速報)は 1 兆 2,926 億円となった(表 3)。前年同期比-7.0%と 10 四半期ぶりの減少に転じた(1-3 月期:同+7.3%)。前年に開催された大阪・関西万博の反動減もあり、宿泊旅行消費が消費額全体を押し下げた。
▶国内旅行消費額のうち、4-6 月期の宿泊旅行消費額は 9,526 億円であった(図 10 及び表 3)。前年同期比-12.4%と 10 四半期ぶりのマイナス(1-3 月期:同+6.1%)。府県別にみれば、大阪府 2,884 億円(同-32.5%)、京都府 1,750 億円(同-1.2%)、三重県 1,349 億円(同-7.6%)、兵庫県 1,264 億円(同-13.3%)、奈良県 625 億円(同+5.8%)、滋賀県 380 億円(同+203.5%)、和歌山県 346 億円(同-57.1%)、徳島県 336 億円(同+352.3%)、鳥取県 326 億円(同+55.4%)、福井県 267 億円(同+146.6%)であった。
▶国内旅行消費額のうち、4-6 月期の日帰り旅行消費額は 3,400 億円であった。前年同期比+12.3%(1-3 月期:同+12.9%)と 5 四半期連続のプラスとなった(図 11 及び表 3)。府県別にみれば、大阪府 1,037 億円(同-28.3%)、京都府 741 億円(同+96.1%)、兵庫県 580 億円(同+38.9%)、三重県 292 億円(同+34.4%)、滋賀県 240 億円(同+129.9%)、奈良県 237 億円(同+113.7%)、福井県 111 億円(同+71.7%)、和歌山県 76 億円(同-69.6%)、徳島県 47 億円(同+113.3%)、鳥取県 39 億円(同+126.4%)であった。なお、奈良県の日帰り消費額は過去最高値を更新した。
*トピックス 3 は四半期ごとの掲載である。