ABSTRACT
【ポイント】
・JNTO訪日外客統計によれば、8月の訪日外客総数(推計値)は309万8,900人。前年同月比-9.6%、2カ月ぶりのマイナス。中国人客の大幅減少が続いていることに加え、8月は自然災害の影響で航空便が欠航した影響もあり訪日外客全体が押し下げられた。
・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、6月は314万8,754人。うち、観光客は289万8,017人で、伸びは同-6.8%と3カ月連続のマイナスとなった。
・今月号のレポートでは「令和8年熊本地震」からの復旧・復興が進みつつある、九州観光の状況を「デジタル観光統計オープンデータ」を用いて概観した。
【トピックス1】
・関西8月の輸出額は23カ月連続の増加、6カ月連続で2桁の伸びを記録。また、輸入額は7カ月連続の増加となった。結果、関西の貿易収支は19カ月連続の黒字。輸入額の伸びが輸出額の伸びを上回ったこともあり、黒字幅は前年同月比-14.7%と2カ月連続で縮小した。
・8月の関空への訪日外客数は69万5,338人であった。前年同月比-24.2%と9カ月連続で減少し、且つ5カ月連続で2桁のマイナス。中国人客の訪日自粛の影響が続いており、外国人入国者数は低迷している。
・8月の第3次産業活動指数は2カ月ぶりのマイナス。一方、対面型サービス業指数は「運輸業、郵便業」や「医療、福祉」が上昇に寄与し、3カ月連続のプラスとなった。また、観光関連指数は「旅客運送業」や「園、遊園地・テーマパーク」などが上昇に寄与した影響もあり、2カ月連続のプラスとなった。
【トピックス2】
・6月の関西2府8県の延べ宿泊者数は9,274.0千人泊、前年同月比-15.3%と9カ月連続の減少となった。日本人、外国人いずれも宿泊者数は減少が続いており、宿泊需要は低迷している。
・うち、日本人延べ宿泊者数は8カ月連続の減少。また、外国人延べ宿泊者数は12カ月連続で前年を下回った。
【トピックス3】
・2026年4-6月期における関西各府県の訪問率をみると、大阪府39.1%が最も高く、次いで、次いで京都府29.5%、奈良県8.5%等が続く。前年同期と比較すると大阪府、京都府がいずれも大幅低下となった。
・2026年4-6月期の関西2府4県における訪日外国人消費単価をみると、前年同期比+2.4%と2四半期ぶりの増加に転じた。費目別にみれば、買物代が5四半期ぶりに、飲食費は同+4.2%、娯楽等サービス費は同+5.9%と2四半期ぶりに、交通費は同+24.3%と2四半期連続でそれぞれ増加した。一方、宿泊費は同-4.9%とコロナ禍が正常化した2023年以降初めて減少に転じた。
・2026年4-6月期の関西における訪日外客消費額は6,364億円、前年同期比-12.2%と、2四半期連続で減少した。中国人客の訪日旅行自粛の影響が、全国に比べて関西の方に強めに表れており、関西のインバウンド消費は弱含んでいる。
DETAIL
ポイント
9月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数
JNTO 訪日外客統計によれば(図1及び表4)、8月の訪日外客総数(推計値)は309万8,900人であった。前年同月比-9.6%、2カ月ぶりのマイナス。中国人客の大幅減少が続いていることに加え、8月は自然災害の影響で航空便が欠航した影響もあり訪日外客全体が押し下げられた。また、同月の出国日本人数は158万8,600人、同-3.6%と2カ月連続のマイナスとなった。なお、2019年同月比では-24.7%となり、アウトバウンド需要は依然低迷している。

注:2025年まで確定値、26年6月までは暫定値。2026年7-8月は推計値
出所:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」より筆者作成
訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると(図2及び表4)、8月は韓国が85万500人(前年同月比+28.7%)と最多を記録した。次いで台湾が66万6,000人(同+7.3%)、中国が41万8,000人(同-59.0%)、香港が24万7,300人(同+9.4%)、米国が19万7,400人(同+1.5%)、と続く。日中関係悪化の影響が続いており、中国人客は9カ月連続で大幅減少した。なお、イタリア及びスペインが過去最高値を更新した。

注:なお、TOP5の国・地域は値を表示している
出所:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」より筆者作成
目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(表5)、6月は314万8,754人となった。前年同月比-6.8%、3カ月連続のマイナス(前月:同-3.6%)。うち、観光客は289万8,017人で、伸びは同-6.8%と3カ月連続のマイナス(前月:同-3.6%)。その他客は15万4,315人、商用客は9万6,422人であった。伸びをみれば、その他客は同-3.1%と4カ月ぶりのマイナス。また、商用客は同-10.8%と5カ月連続のマイナスとなった。
7月28日に発生した「令和8年熊本地震」からの復旧・復興が進み、観光客が戻りつつある。今月のレポートでは公益社団法人日本観光振興協会の「デジタル観光統計オープンデータ」を用いて、九州における足下の観光状況を概観する。図3は2026年1月から9月までの観光来訪者数の前年同月比の推移を示したものである。地震発生後の8月には長崎県(同-8.5%)、熊本県(同-7.6%)はそれぞれマイナス。また地震の影響で九州新幹線が一部不通となっていた影響もあり、鹿児島県(同-3.6%)も減少となっている。なお、宮崎県(同+10.1%)、大分県(同+9.8%)、福岡県(同+3.0%)と佐賀県(同+1.4%)はプラス。9月には各県ともに前年同月から増加しており、地震の影響が和らぎつつある。また前月レポートで指摘したように、10月以降、「九州ふっこう応援割」が開始されていることもあり、観光客の一層の回復が期待される。

注:ここでの観光来訪者とは、日本国内に居住する者で日常生活圏以外の観光地点を訪れた者。なお、1人の観光来訪者が一日のうちに当該都道府県あるいは市町村内の複数の観光地点を訪れたとしても、1人とカウントしている。
出所:公益社団法人日本観光振興協会「デジタル観光統計オープンデータ」より筆者作成
※なお、観光庁「訪日外国人消費動向調査」の訪問率のデータが2023年9月から公表が再開された。このため、中断していた訪問率の月次推計についてはデータの蓄積を待って今後再開する予定である。
トピックス1
8月関西の財貨・サービス貿易の動向
関西8月の輸出額は前年同月比+26.6%と23カ月連続の増加、6カ月連続で2桁の伸びを記録した。AI関連需要の爆発的な拡大が続いており、アジア向けを中心に半導体関連輸出が堅調。また、輸入額は同+35.2%と7カ月連続の増加となった。結果、関西の貿易収支は+2,610億円と19カ月連続の黒字。しかし、輸入額の伸びが輸出額の伸びを上回ったこともあり、黒字幅は前年同月比-14.7%と2カ月連続で縮小した(図4)。

対中国貿易動向をみると(図5)、関西8月の対中国輸出は前年同月比+42.3%と6カ月連続で増加した。輸出増に寄与したのは、半導体等電子部品や原料品等であった。また、対中国輸入は同+25.6%と10カ月連続の増加となった。輸入増に寄与したのは、通信機や有機化合物等。結果、対中国貿易収支は+586億円と2カ月連続の黒字。AI関連需要の拡大を受け、対中国貿易は好調が続いている。

出所:『大阪税関貿易速報資料:近畿圏』より筆者作成(図4~5)
8月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は69万5,338人であった(図6)。前年同月比-24.2%と9カ月連続で減少し、且つ5カ月連続で2桁のマイナスとなった(前月:同-15.6%)。中国人客の訪日自粛の影響が続いており、外国人入国者数は低迷している。また、日本人出国者数は31万1,108人であった。前年同月比-4.4%と2カ月連続で減少した(前月:同-0.1%)。なお、2019年同月比では-25.1%となり、アウトバウンド需要は依然低迷。

出所:出入国管理統計より筆者作成。2026年8月値は速報値
サービス業の生産活動を示す第3次産業活動指数(季節調整済み:2019-20年平均=100)をみれば(図7)、8月は106.8で前月比-0.1%と2カ月ぶりのマイナスとなった(前月:同+0.2%)。経産省は基調判断を「一部に足踏みがみられるものの、持ち直し傾向にある」と前月から据え置いた。また、対面型サービス業指数※は107.8で同+1.1%、3カ月連続のプラス(前月:同+0.0%)。うち、運輸業、郵便業(同+4.3%、2カ月ぶり)や医療、福祉(同+0.1%、5カ月連続)などが上昇に寄与した。7-8月平均を4-6月平均と比較すると、第3次産業活動指数は+0.3%、対面型サービス業指数は+0.6%、それぞれ上昇した(4-6月期:第3次産業活動指数:前期比+0.5%、対面型サービス業指数:同-0.3%)。
8月の観光関連指数※※(季節調整済み:2019-20年平均=100)は(図7)、111.6と前月比+0.6%と2カ月連続のプラスとなった(前月:同+3.1%)。うち、旅客運送業(同+1.2%、2カ月連続)や公園、遊園地・テーマパーク(同+5.6%、3カ月ぶり)などが上昇に寄与した。7-8月平均の観光関連指数は4-6月平均比+0.3%上昇した(4-6月期:前期比-0.9%)。

出所:経済産業省「第3次産業活動指数」より筆者作成
※対面型サービス業は、「運輸業、郵便業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「学習支援業」及び「医療、福祉」を指す。
※※観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、「旅客運送業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「旅行業」、「映画館」、「劇場・興行団」及び「公園、遊園地・テーマパーク」の各指数の加重平均。
トピックス2
6月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県
観光庁によれば、6月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は9,274.0千人泊(表1)。前年同月比-15.3%と8カ月連続で減少し、減少幅は前月(同-10.2%)から拡大した。日本人、外国人延べ宿泊者いずれも減少が続いており、宿泊需要は低迷している。

注:表中の赤枠は寄与度が高いTOP3を示している。
出所:観光庁「宿泊旅行統計調査」より筆者作成(図8~9及び表1)
6月の日本人延べ宿泊者数は6,020.7千人泊となった。前年同月比-14.3%と8カ月連続で減少し、減少幅は前月の同-7.1%から拡大した(表1及び図8)。府県別にみれば、大阪府1,953.5千人泊と最も多く、次いで、京都府1,086.4千人泊、兵庫県1,013.0千人泊となった。また、三重県505.0千人泊、滋賀県350.0千人泊、福井県275.6千人泊、和歌山県262.2千人泊、奈良県211.2千人泊、鳥取県206.8千人泊、徳島県156.8千人泊であった。前年同月比(-14.3%)に対する寄与度をみれば、減少に寄与したのは、大阪府(同-10.9%ポイント)、三重県(同-1.7%ポイント)、京都府(同-1.7%ポイント)等の6府県であった。

6月の外国人延べ宿泊者数は3,253.3千人泊であった(表1及び図9)。前年同月比-17.2%と12カ月連続で減少した。府県別にみれば、大阪府1,682.5千人泊、京都府1,230.1千人泊と2府への集中が続いている。また、兵庫県159.9千人泊、和歌山県58.0千人泊、奈良県30.7千人泊、三重県24.5千人泊、滋賀県22.4千人泊、鳥取県20.9千人泊、徳島県14.9千人泊、福井県9.4千人泊であった。前年同月比(-17.2%)への寄与度をみれば、大阪府(同-9.4%ポイント)、京都府(同-7.4%ポイント)、奈良県(同-0.4%ポイント)等の6府県が外国人延べ宿泊者の減少に寄与した。京都府では8カ月連続で、大阪府では2026年2月を除けば25年6月以降、それぞれ減少が続いている。

なお、宿泊料金と賃金との交易条件(現金給与総額/宿泊料金:2019年=100)をみれば、2026年8月は73.6となった。前年同月比+4.0%と3カ月連続で改善した。賃金上昇率が3%超となっていることに加え、宿泊料金の伸びが同-0.2%と2023年3月(同-0.6%)以来のマイナスに転じたことが影響した(図10)。

注:交易条件は賃金(現金給与総額)を宿泊料金(消費者物価)で除した指数。2019年平均を100
出所:総務省統計局『消費者物価指数』及び厚生労働省『毎月勤労統計調査』より筆者作成
トピックス3
2026年4-6月期訪日外国人訪問率と消費単価:関西
観光庁によれば、2026年4-6月期における関西2府8県の訪問率をみると(図11)、大阪府39.1%が最も高く、次いで京都府29.5%となっている。また、奈良県8.5%、兵庫県5.2%、和歌山県1.2%、三重県0.7%、滋賀県0.6%、鳥取県0.4%、徳島県0.3%、福井県0.3%と続く。前年同期と比較すると(表2)、大阪府は同-5.6%ポイント、京都府は同-3.3%ポイントといずれも大幅低下となった。また、奈良県同-2.2%ポイント、兵庫県同-0.4%ポイント、和歌山県同-0.1%ポイント、三重県同-0.1%ポイントとそれぞれマイナス。一方、福井県、滋賀県、鳥取県と徳島県は同+0.1%ポイントといずれも小幅上昇にとどまった。

出所:観光庁『インバウンド消費動向調査』より筆者作成
当該期間の各府県の訪問率に訪日外客数を乗じて推計した関西における訪日外客数をみよう。2026年4-6月期の訪問者数を降順にみれば(表2)、大阪府406万3,243人(前年同期比-17.1%)と最も多く、次いで京都府306万5,715人(同-14.7%)、奈良県88万743人(同-24.9%)、兵庫県53万6,546人(同-11.4%)、和歌山県12万9,724人(同-13.1%)、三重県7万2,195人(同-15.7%)、滋賀県6万150人(同+20.2%)、鳥取県4万2,614人(同+45.9%)、徳島県3万3,710人(同+45.5%)、福井県2万9,279人(同+18.2%)と続く。

出所:JNTO『訪日外客統計』及び観光庁『インバウンド消費動向調査』より筆者推計
観光庁によれば、2026年4-6月期の関西における訪日外国人消費単価(旅行者1人1回当たりの旅行消費金額)をみると(表3)、関西2府4県では前年同期比+2.4%と2四半期ぶりの増加に転じた。費目別にみれば、買物代が同+4.2%増加し、5四半期ぶりの増加となった。また、飲食費は同+4.2%、娯楽等サービス費は同+5.9%と2四半期ぶりに、交通費は同+24.3%と2四半期連続でそれぞれ増加した。一方、宿泊費は同-4.9%とコロナ禍が正常化した2023年以降初めて減少に転じた。
観光庁によれば、2026年4-6月期の関西における訪日外客消費額は6,364億円となり(表3)、前年同期比-12.2%となり、2四半期連続で減少した(26年1-3月期:同-14.8%)。一方、同期の全国の消費額は2兆5,125億円、同+0.3%であった(26年1-3月期:同+2.5%)。中国人客の訪日旅行自粛の影響が、全国に比べて関西の方に強めに表れており、関西のインバウンド消費は弱含んでいる。

注:全目的ベース。2025年は確報(上図も同様)。消費単価にはパッケージ参加費が含まれる。
出所:観光庁『インバウンド消費動向調査 参考表都道府県別集計』より筆者作成
付表


注:目的別訪日外客数の定義については、レポートNo.79 図3の注を参照。表中の赤枠は過去最高を更新した国及び地域
出所:日本政府観光局(JNTO)、2026年9月16日付より筆者作成(表4~5)