研究者紹介
下田 充2019年4月現在
本研究者は以前に在籍されていた、または研究活動に関わっていた方です。
日本アプライドリサーチ研究所 主任研究員
論文一覧
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決定版:2023年阪神・オリックス優勝の地域別経済効果 -リーグ優勝、ポストシーズン、優勝関連セール及び優勝パレードの総合分析-
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ABSTRACT
2023年のプロ野球は、セントラル・リーグが阪神タイガース、パシフィック・リーグがオリックス・バファローズ、ともに関西に本拠地を置く球団が優勝した。またクライマックスシリーズはセ・パ両リーグともリーグ優勝チームが勝ち上がり、59年ぶりに関西勢同士の対決、いわゆる「関西ダービー」が実現した。結果、日本シリーズは阪神が38年ぶり2回目の日本一に輝いた。
本稿は、高林ほか(2023)、APIR関西地域間産業連関表プロジェクトチーム(2023)での阪神タイガースおよびオリックス・バファローズの優勝の分析に加え、クライマックスシリーズ、日本シリーズ、その後の優勝関連セール及び優勝パレードによる経済波及効果も含めた「決定版」となるレポートである。分析結果の概要は以下の通りである。1. 全国で発生する経済波及効果総計は1,607億3,300万円、うち直接効果は719億9,900万円、間接効果は887億3,300万円となった。
2. 関西2府8県では経済波及効果は935億5,700万円であるが、関西を除くその他地域では671億7,600万円。うち、関西が58.2%、その他地域が41.8%を占めており、その他地域では大部分が間接効果となっている。これは、関西での需要を満たすため、関西以外の他府県で一定の需要が発生していることを意味している。
3. 関西各府県での効果をみると、うち大阪府は427億2,200万円(26.6%)、兵庫県は250億8,700万円(15.6%)となっており、2府県で42.2%と関西地域(58.2%)の大部分を占める。
4. 優勝関連セールについては、経済波及効果は大阪府(62.8%)が圧倒的な割合を、優勝パレードについては大阪府(42.1%)、兵庫県(35.4%)と2府県で効果の77.5%を占めている。
5. 今回のリーグ優勝、ポストシーズン及び優勝パレードの2府4県の経済波及効果は関西の名目GRPを0.05%程度押し上げる。全国ベースでは名目GDPを0.01%程度押し上げる。 -
145回景気分析と予測:詳細版<インフレの高止まりと民間需要の低迷 - 実質GDP成長率予測:23年度+1.5%、24年度+1.2%、25年度+1.0% ->
経済予測
経済予測 » Quarterly Report(日本)
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ABSTRACT
1. 15日発表のGDP1次速報によれば、7-9月期の実質GDP(555.1兆円)は、前期比年率-2.1%減少し、3四半期ぶりのマイナス成長。4-6月期はコロナ禍前ピーク(2019年7-9月期:557.4兆円)を15四半期ぶりに上回ったものの、7-9月期はマイナス成長のため再びピークを0.4%下回った。ただし、物価上昇の影響もあり同期の名目GDP(588.5兆円)は四半期連続でコロナ前禍のピーク(561.6兆円)を上回った。
2. 7‐9月期の実績は、市場コンセンサス最終予測(前期比年率-0.42%)を大幅に下回るマイナス成長となった。一方、CQM最終予測の支出サイドは同-1.8%と実績にほぼピンポイントとなった。
3. 7-9月期の実質GDP成長率(前期比-0.5%)への寄与度を見ると、国内需要は同-0.4%ポイントと2四半期連続のマイナス寄与となった。うち、民間需要は同-0.4%ポイントと2四半期連続のマイナス寄与。民間最終消費支出(同-0.0%)、民間住宅(同-0.1%)、民間企業設備(同-0.6%)及び民間在庫変動(同-0.3%ポイント)といずれも減少した。公的需要は同+0.0%ポイントと4四半期連続の小幅のプラス寄与。一方、純輸出は同-0.1%ポイントと2四半期ぶりのマイナス寄与となった。
4. 7-9月期GDP1次速報と新たな外生変数の想定を織り込み、2023-24年度日本経済の見通しを改定し、新たに25年度の予測を追加した。今回、実質GDP成長率を、23年度+1.5%、24年度+1.2%、25年度を+1.0%と予測。前回(第144回予測)から、23年度は-0.5%ポイント引き下げ、24年度は+0.1%ポイント上方修正した。23年度の修正については純輸出の寄与度引き上げを相殺する民間需要の大幅下方修正の影響が大きい。24年度は純輸出が前回から上方修正されたためである。
5. 23年度前半の内需は2四半期連続でマイナス寄与となった。実質賃金がプラス反転しないため、後半は民間消費の回復が緩やかで23年度の民間需要寄与は小幅のマイナスとなる。一方、交易条件の改善もあり貿易赤字が縮小し、また引き続き好調なインバウンド需要によりサービス輸出が増加し、23年度の純輸出の寄与は前年から大きくプラス反転する。インフレ高止まりの影響もあり、実質賃金のプラス反転は遅れ、24年後半となろう。このため24‐25年度の民間需要の寄与は小幅にとどまり、また純輸出の寄与も前年から低下する。
6. 23年度前半に3%台で高止まりした消費者物価インフレ率は徐々に減速する。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、23年度+2.8%、24年度+1.9%、25年度を+1.4%と予測する。23年度+0.1%ポイント、24年度を+0.4%ポイント、足下の円安を反映して前回予測からそれぞれ上方修正した。GDPデフレータは23年度に交易条件が前年から大幅改善するため+3.1%上昇する。このため、同年の名目GDPは+4.7%の高成長となる。24‐25年度については、交易条件改善の裏が出るため、GDPデフレータは24年度+0.5%、25年度+1.2%となる。※説明動画は下記の通り5つのパートに分かれています。
①00’00”~02’20”: Executive summary
②02’20”~28’33”: 第144回「景気分析と予測」
<インフレの高止まりと民間需要の低迷>
③28’33”~42’06: Kansai Economic Insight Quarterly No.65
<穏やかな回復続くも局面変化の気配~浮揚力に欠き、もはや「コロナ後」ではない~>
④42’06”~43’29”: トピックス<関西2府4県GRPの早期推計>
⑤43’29”~46’19”: トピックス<インバウンド戦略と中国人客の回復>
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145回景気分析と予測:速報版<インフレの高止まりと民間需要の低迷- 実質GDP成長率予測:23年度+1.5%、24年度+1.2%、25年度+1.0% ->
経済予測
経済予測 » Quarterly Report(日本)
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ABSTRACT
1. 15日発表のGDP1次速報によれば、7-9月期の実質GDP(555.1兆円)は、前期比年率-2.1%減少し、3四半期ぶりのマイナス成長。4-6月期はコロナ禍前ピーク(2019年7-9月期:557.4兆円)を15四半期ぶりに上回ったものの、7-9月期はマイナス成長のため再びピークを0.4%下回った。ただし、物価上昇の影響もあり同期の名目GDP(588.5兆円)は四半期連続でコロナ前禍のピーク(561.6兆円)を上回った。
2. 7‐9月期の実績は、市場コンセンサス最終予測(前期比年率-0.42%)を大幅に下回るマイナス成長となった。一方、CQM最終予測の支出サイドは同-1.8%と実績にほぼピンポイントとなった。
3. 7-9月期の実質GDP成長率(前期比-0.5%)への寄与度を見ると、国内需要は同-0.4%ポイントと2四半期連続のマイナス寄与となった。うち、民間需要は同-0.4%ポイントと2四半期連続のマイナス寄与。民間最終消費支出(同-0.0%)、民間住宅(同-0.1%)、民間企業設備(同-0.6%)及び民間在庫変動(同-0.3%ポイント)といずれも減少した。公的需要は同+0.0%ポイントと4四半期連続の小幅のプラス寄与。一方、純輸出は同-0.1%ポイントと2四半期ぶりのマイナス寄与となった。
4. 7-9月期GDP1次速報と新たな外生変数の想定を織り込み、2023-24年度日本経済の見通しを改定し、新たに25年度の予測を追加した。今回、実質GDP成長率を、23年度+1.5%、24年度+1.2%、25年度を+1.0%と予測。前回(第144回予測)から、23年度は-0.5%ポイント引き下げ、24年度は+0.1%ポイント上方修正した。23年度の修正については純輸出の寄与度引き上げを相殺する民間需要の大幅下方修正の影響が大きい。24年度は純輸出が前回から上方修正されたためである。
5. 23年度前半の内需は2四半期連続でマイナス寄与となった。実質賃金がプラス反転しないため、後半は民間消費の回復が緩やかで23年度の民間需要寄与は小幅のマイナスとなる。一方、交易条件の改善もあり貿易赤字が縮小し、また引き続き好調なインバウンド需要によりサービス輸出が増加し、23年度の純輸出の寄与は前年から大きくプラス反転する。インフレ高止まりの影響もあり、実質賃金のプラス反転は遅れ、25年となろう。このため24‐25年度の民間需要の寄与は小幅にとどまり、また純輸出の寄与も前年から低下する。
6. 23年度前半に3%台で高止まりした消費者物価インフレ率は徐々に減速する。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、23年度+2.8%、24年度+1.9%、25年度を+1.4%と予測する。23年度+0.1%ポイント、24年度を+0.4%ポイント、足下の円安を反映して前回予測からそれぞれ上方修正した。GDPデフレータは23年度に交易条件が前年から大幅改善するため+3.1%上昇する。このため、同年の名目GDPは+4.7%の高成長となる。24‐25年度については、交易条件改善の裏が出るため、GDPデフレータは24年度+0.5%、25年度+1.2%となる。※本レポートの詳細版については11/29(水)に公表予定
【予測結果の概要】
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2023年阪神・オリックス優勝の地域別経済効果-APIR関西地域間産業連関表による分析-
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ABSTRACT
2023年のプロ野球は、セントラル・リーグは阪神タイガース、パシフィック・リーグはオリックス・バファローズと、ともに関西に本拠地を置く球団が優勝した。本稿では、高林ほか(2023)に引き続き、阪神タイガースおよびオリックス・バファローズの優勝による経済波及効果について、APIR関西地域間産業連関表を用いて計測した。分析結果の概要は以下の通りである。
1. 両球団の優勝により全国で発生する経済波及効果は1,283億7,300万円となった。うち阪神による効果は1,011億5,800万円、オリックスは272億1,400万円と、阪神優勝の経済波及効果はオリックス優勝の4倍程度となっている。
2. 関西各府県での効果をみると、阪神の場合、大阪府268億7,000万円(効果全体の6%)、兵庫県172億1,800万円(同17.0%)。オリックスの場合、大阪府94億1,100万円(同34.6%)、兵庫県31億7,100万円(同13.0%)と、いずれも圧倒的に2府県に集中している。ただ阪神に比して、オリックスの経済波及効果は大阪府により大きく発生することがわかる。
3. 関西二球団の優勝による経済波及効果は、関西以外の地域でも479億円発生する。これは、関西以外の地域のファンによる消費に加え、関西での直接需要を満たすために関西以外の地域で一定程度の需要が発生していることを意味している。
4. 阪神のファン人数はオリックスの6倍であることを考慮すると、上記の数値から計算されるオリックスファンの1人当たり経済波及効果は阪神を上回っていることになる。この背景にはSNS等を通じたPR活動による着実なファン人口の増加に加え、より付加価値の高い消費単価の反映がある。
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2023年阪神タイガース優勝の地域別経済効果:速報版 -APIR関西地域間産業連関表による分析-
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ABSTRACT
今回の阪神タイガース優勝は慶賀に堪えない。本稿では、阪神タイガース優勝により発生する新規需要を球場観戦時の消費及び球場外の消費(優勝セール含む)に分けて想定した上で、APIR関西地域間産業連関表を用いてその経済波及効果を計測した。その際、地域経済に与える影響という視点が重要であり、この観点から分析を行った。分析結果を整理し、得られた内容は以下の通りである。
1. 阪神タイガースの優勝により全国で発生する経済効果総計は1,051億2,400万円、うち直接効果465億8,700万円、間接効果585億3,800万円となった。
2. うち、関西(2府8県ベース)の経済効果は686億9,600万円、関西を除くその他地域では364億2,800万円となる。
3. 地域間交易を考慮した関西地域間産業連関表の分析によれば、全体の効果は、関西に65.3%、その他地域に34.7%配分される。関西を除く地域では364億円の経済効果を発生させているが、その大部分は間接効果である。すなわち、関西での直接需要を満たすため、関西以外の他府県で一定程度の需要が発生していることを意味している。
4. 次に関西各府県での効果をみると、大阪府は306億4,400万円(29.2%)、兵庫県は172億7,000万円(16.4%)と圧倒的に2府県に効果が集中している。
5. 阪神のファン数は減少しているにもかかわらず、今回の優勝は一定の経済効果をあげている。これから得られる含意としては、新たなファン層の拡大やリピーター率の向上によりファン数の減少トレンドを抑制し、加えてファンサービスの高付加価値化による消費単価の引き上げにより一層の経済効果が期待できよう。