135回景気分析と予測<岐路に立つ回復シナリオ:供給制約と第6波のリスク – 実質GDP成長率予測:21年度+2.8%、22年度+2.6%、23年度+1.4% >
1. 11月15日発表のGDP1次速報によれば、7-9月期実質GDPは前期比年率-3.0%(前期比-0.8%)減少し、2四半期ぶりのマイナス成長となった。市場コンセンサスの最終予測(同-0.56%)から大幅に下振れた。なお、CQM最終予測の支出サイドは同-0.7%、生産サイドは同-3.8%、平均は同-2.2%であった。支出サイド予測が上振れたのに対し、生産データに反応しやすい生産サイドはむしろ実績に近い予測となった。通常、両モデルの予測は最終予測に向けて収束の方向に向かうが、今回は最後まで乖離した。このことは供給制約の影響がいかに強かったかを示唆している。
2. 7-9月期は4回目の緊急事態宣言期を含むため、民間最終消費支出を中心に低調なパフォーマンスとなった。実質GDP成長率(前期比-0.8%)への寄与度を見ると、国内需要は同-0.9%ポイントと2四半期ぶりのマイナス。うち、民間需要は同-1.4%ポイントと2四半期ぶりの大幅なマイナス寄与。ヘッドライン指標である、民間最終消費支出、民間住宅、民間企業設備のいずれもが大幅に減少。一方、純輸出は3四半期ぶりのプラス寄与だが、同+0.1%ポイントと小幅となった。緊急事態宣言の長期化や半導体不足など供給制約が大きく影響した結果といえよう。
3. 新たに、7-9月期GDP1次速報を追加、外生変数の想定を織り込み、21-22年度の日本経済の見通しを改定し、新たに23年度の予測を追加した。今回、実質GDP成長率を、21年度+2.8%、22年度+2.6%、23年度+1.4%と予測する。前回(第134回)予測に比して、21年度は-0.5%ポイント下方修正、22年度は+0.3%ポイント上方修正。供給制約と緊急事態宣言による7-9月期大幅マイナス成長を反映の結果、21年度を下方修正、また成長加速を後ずれさせたため22年度は上方修正となった。
4. 実質GDP成長率への寄与度をみれば、21年度は、民間需要(+1.6%ポイント)、公的需要(+0.4%ポイント)、純輸出(+0.8%ポイント)、すべての項目が景気を押し上げるが、民間需要は前年度の落ち込みに比すれば回復力に欠ける。22年度も、民間需要、公的需要、純輸出は前年と同程度の寄与となるが、23年度は民間需要、公的需要、純輸出の寄与度が前年から低下する。
5. 実質GDPを四半期でみれば、10-12月期は一旦制約条件が解消され、コロナ禍による貯蓄拡大(強制貯蓄)の影響で、民間最終消費支出の急拡大(リベンジ消費)が期待できる。このため、実質GDPの水準がコロナ禍前の水準を超えるのは22年1-3月期、コロナ禍前のピークを超えるのは23年1-3月期となろう。今回7-9月期のマイナス成長もあり、前回予測から1四半期遅れる。
6. 消費者物価指数の先行きについて、宿泊料と通信料は基調に対するかく乱要因となろう。エネルギー価格高騰で年後半以降前年比プラスに転じるが、サービス価格が下押し圧力となるため、消費者物価指数の基調は低調。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、21年度0.0%、22年度+0.8%、23年度+0.7%と予測する。
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