研究成果

research

関西経済の反転にむけて:大阪・関西万博、IRを梃子に

Abstract

1.  関西経済のシェアは、大阪万博が開催された1970年度に19.3%のピークを記録した後、2つの石油危機を経て1989年には16.2%にまで低下した。1991年にシェアは17.1%と一時的に反転したものの、1990年代後半には再び15%台に低迷し、今日に至っている。

2.  2018年11月に博覧会国際事務局(BIE)総会で25年国際博覧会の開催国に日本(大阪)が選ばれたことは、これまでの関西経済の将来に対する鬱々とした雰囲気を一変させた。このため、大阪・関西万博及びIR関連投資による関西経済反転の可能性に大いに期待が高まっている。

3.  成長率方程式による分析から、関西経済の地盤沈下の原因が相対的な投資不足にあることが分かった。また関西の投資率(非住宅固定資本形成/域内総生産)が1%ポイント上がれば、関西の実質成長率は0.46%ポイント上昇する。具体的には、1兆円の投資増は投資率を1.16%ポイント押し上げ、関西の経済成長率を0.54%ポイント引き上げることになる。

4.  日本経済が足下の潜在成長率で成長すると仮定し、また、関西が全国を0.5%ポイント程度上回る成長率で伸びるケースを仮定し、その場合の関西経済のシェアを計算した。2030年度には16.2%、2040年度には17.1%に上昇し、1980年代前半の関西経済のシェアを回復することになる。

5.  2025年大阪・関西万博の開催とそれに伴う交通インフラの整備、またその後に想定されているIR関連投資は十分に1兆円を超えるものである。課題は、大阪・関西万博やIRを端緒としていかに持続的に内外から投資を呼び込めるかである。またいかに“儲かる産業”を創出するかが課題となる。大阪・関西万博のレガシーとして世界に関西の魅力を認知してもらい、人材や資金の好循環を実現することが重要である。今これを広く議論すべきである。

本文

はじめに

本稿のねらいは、関西経済の1970年以降の50年にわたる地盤沈下(経済のシェアの低下)の原因を分析し、その反転の可能性を探ることにある。筆者は、大阪・関西万博を控え関西経済の反転の準備が整い、反転の可能性が高まってきたとみている。
1.では、まず地盤沈下する関西経済の推移を時系列的に説明する。
2.では、関西経済の地盤沈下の原因が相対的な投資不足にあることを分析する。
3.では、大阪・関西万博開催や、それに続く統合型リゾート(IR)関連投資等が関西経済反転の起爆剤となる議論を説明する。おわりにでは、関西経済反転を実現するための課題を議論する。

 

1. 地盤沈下する関西経済:15%経済へ転落

まず関西経済の規模(関西2府4県の名目域内総生産(GRP)の合計)と全国のそれ(名目国内総生産(GDP))を比較しよう。1955年度以降長期にわたる関西経済のシェアの計算に当たっては、6種類の県民経済計算と2種類の国民経済計算を接続して関西と全国の長期時系列を作成した。

 

1-1. 関西経済のシェアは、大阪万博後の20年で急速に低下

関西経済のシェアは大阪万博が開催された1970年度に19.3%のピークを記録した後、2つの石油危機を経て1989年には16.2%にまで一気に低下した。バブルの影響もあり関西経済のシェアは1991年に17.1%へと一旦反転したものの上昇は一時的なものにとどまった。以降1990年代後半には再び低迷し、2000年度に16%を割り込み、今日に至るまで15%台で低迷している(図1)。

1-2. 反転の兆し

2015年以降、好調な対中国向け輸出とサービス輸出(訪日外客による消費の増加)という2つの輸出に支えられた関西経済は、2018年には低迷の色を濃くする。この背景には、米中貿易摩擦の進行からくる影響に加え、6月18日の大阪北部地震発生、9月4日の台風21号の被害で関西国際空港が閉鎖されるという自然災害中心の暗いニュースがあった。しかし、11月23日に博覧会国際事務局(BIE)総会で2025年国際博覧会の開催国に日本(大阪)が選ばれたことは、これまでの関西経済の将来に対する鬱々とした雰囲気を一変させた。なお、7月20日にはカジノを含む統合型リゾート(IR)実施法が成立している。このため、大阪・関西万博及びIR関連投資による関西経済反転の可能性に大いに期待が高まった。その後、2020-2022年のコロナ禍により、日本経済及び関西経済は大幅な調整を迫られたが、関西経済反転の可能性は25年の大阪・関西万博の開催を間近かに控え現実味を帯びてきたといえよう。

 

2. 関西経済の地盤沈下の原因は投資不足

ここでは、まず成長率の決定要因を示し、関西経済の地盤沈下の原因が投資不足にあることを説明する。

 

2-1. 成長率の決定要因

関西経済のシェアが持続的に低下することは、関西経済の成長率が関西以外の地域の経済成長率を持続的に下回ることを意味する。ここでは、関西経済の成長率の低下の原因を探る。
ハロッドの経済成長の基本方程式は、次式のように表される。すなわち、t 期の経済成長率(ΔYt / Yt-1)は t-1 期の投資率をt期の限界資本係数で除したものとなる。

 

ΔYt / Yt-1=(ΔKt-1 / Yt-1)/(ΔKt-1 / ΔYt)=投資率/限界資本係数
Yt : 実質 GDP、Kt:資本ストック、ΔYt=Yt -Yt-1 ただし、ΔKt=Kt-Kt-1=It(投資)

 

この成長方程式は、GDPのうち貯蓄を通じて資本蓄積(投資)に回る比率が高いほど経済成長率は高くなることを意味する。

 

2-2. 経済成長率と投資率は比例的な動き

図2-1は、関西経済の実質(GRP)成長率と投資率との関係を見たものである。ここでの投資率は、GRPと非住宅固定資本形成(=民間企業設備+公的企業設備+一般政府)との比率である。図からわかるように大きな経済ショック(石油危機や世界金融危機)の時期を除けば、関西経済の成長率は投資率と比例的な関係にあることが分かる。

 

 

次に、成長方程式に基づき関西経済の非住宅投資率と経済成長率の関係を回帰分析した結果が、表2-1である。推計期間は1971~2018年度である。推計結果からわかるように、関西の前期の投資率(SRN(-1):非住宅固定資本形成/名目GRP)が1%ポイント上がれば、関西の今期の成長率(GRPH)は0.46%ポイント上がることになる5。なお推計にあたっては、大きな経済ショック期(1974年、75年、2009年)についてはダミー処理をしている。

この式の意味を、具体的な数値例でみていこう。2018年の関西の名目GRPは86.13兆円であるから、1兆円の投資追加増は投資率を1.16%ポイント(1/86.13*100)押し上げることになる。すなわち、次年度の関西の経済成長率を0.54%ポイント(0.46*1/86.13*100)引き上げる。
なお、日本経済の実質(GDP)成長率と非住宅投資率の関係を後掲参考表2に示した。全国の成長率を説明する投資率の係数は0.479と関西とほぼ同じである。すなわち、投資率の格差が成長率の格差をよく説明することが分かる。

 

 

2-3. 関西経済の地盤沈下と投資不足

次に投資率の推移を関西と全国とで比較してみよう。まず非住宅ベースの投資率の推移を見よう(図2-2)。関西経済と日本経済の投資率は、高度成長期のピーク(日本:1969年26.8%、関西:25.8%)から2度の石油危機の影響もあり低下トレンドを示したが、1980年代半ばに底を打つ。80年代後半はバブルの影響もあり投資率は一旦上昇に転じたが、バブル崩壊後は再び下方トレンドを示している。2000年に入り、下方トレンド底打ちの後、2013年には反転の兆しを見せている。なお、非住宅ベース投資率の構成内訳である民間企業部門と公的部門の動向については、後掲の参考図1及び図2を参照のこと。

1996年に至るまで、関西の投資率は一貫して全国の投資率を下回っていた。格差はピーク時の1%ポイントから最大3.6%ポイントまで拡大した。すなわち、一貫して関西の投資不足が続いたことになる。以降、全国と関西の投資率の格差は1%ポイント以下にとどまっており、2009-2010年度には投資率格差は逆転している。1990 年代半ばに至るまで、関西の非住宅の投資率は全国の投資率より一貫して低かった。このことは、関西の経済成長率が全国のそれを一貫して下回っていたことを意味しており、その原因は関西の相対的な投資不足にあったといえよう。

 

 

表 2-2 は全国と関西の平均的な投資率の差を期間別にみたものである。1965-1989年度においては、全国と関西の非住宅の投資率の平均差は2.27%ポイント、1990-1992年度においては、1.72%ポイント、1993-2018年度においては、0.33%ポイントとなっている。バブル崩壊後に全国と関西の投資率格差は大きく縮小しており、関西と全国の成長率格差もかなり縮小してきている。すなわち、関西以外の地域での成長率減速が相対的に目立つようになってきたといえよう。

非住宅の投資率の格差を民間企業部門(民間企業設備)と公的部門(公的企業+一般政府)に分けて分析しよう。1965-1989年度においては、全国と関西の非住宅の投資率の格差(100%)の主因は民間部門(23.6%)ではなく、公共工事を中心とした公的部門(76.4%)にある。関西の公共投資のシェアが全国に比して低下しており、公共部門の投資不足の拡大がこの期間の特徴である。1990-1992年度においては、非住宅投資率の格差は民間企業部門と公的部門で同程度となっている。1993-2018年度においては、格差拡大の大部分は公的部門(207.1%)で生じており、民間企業部門(-107.1%)では格差は逆転している。全期間を通じて、関西の公的部門の投資率格差は縮小しており、また2021年の関西の公共工事は全国の伸びを上回っており、格差が逆転していることに注意。

 

 

3. 大阪・関西万博、IRを関西経済の反転につなげるために

3-1. 関西経済と日本経済の平均成長率

1.でみたように関西経済のシェアは大阪万博開催の年にピークを記録した。しかし、以降下方トレンドを示し、バブル崩壊以降は長く 15%台に低迷した。
2.では、関西経済の地盤沈下の原因は成長方程式から関西経済の相対的な投資不足にあるとした。したがって、投資不足が解消できれば(投資率が上昇すれば)、関西経済の反転が期待できることになる。
先行きを考える前に過去を振り返ろう(表3-1)。関西経済は高度成長期において、平均成長率は全国を上回ったため、前掲図1が示すように関西経済のシェアは上昇した。1980年代、1990年代の平均成長率は関西、全国ともに低下するが、関西の方が減速の程度が強い。2000-2021年度の平均成長率は、全国が0.6%、関西経済は0.3%とほぼゼロ成長となる。

 

 

内閣府によれば、2021年度の日本経済の潜在成長率は0.5%まで減速してきている。先行き、全国経済が0.5%の潜在成長率で伸びるケースに比較して、関西経済の成長率は、全国の潜在成長率の仮定から0.5%ポイント、1%ポイント加速する2つのケースを想定した。この想定の背景には、2-2.で示したように、1兆円程度の追加投資が関西の経済成長率を0.54%程度引き上げるという推計がある。大阪・関西万博やその後IRへの投資増をはじめとして、海外から更なる投資を呼び込むことができれば、関西経済の反転は可能となろう。以下では、関西の成長率加速による、関西経済反転のシミュレーション結果を示そう。

3-2. 関西経済反転のシミュレーション

ベースラインの作成に当たって、ベンチマーク(2021年度)の日本の名目GDPを541.6兆円、関西の名目GRPを84.2兆円とする。日本の名目GDPは実績であるが、関西の名目GRPは確報が2018年度までしか利用可能でないため、APIRの最新の予測値を用いた。
22年度以降については、日本経済が0.5%の潜在成長率で成長すると仮定した。また実質GDPと名目GDPが同率で伸びると仮定している。これらのベースラインに比して、関西が全国を0.5%ポイント上回る成長率(1%)で伸びるケース1を仮定し、関西・全国のシェアを計算した。これによれば、2030年度には 16.2%、40年度には17.1%に上昇する。結果、関西経済は1980年代前半のシェアを回復することになる(図3-1)。

 

 

次に、ケース1(追加投資約1兆円/年)に比して、関西の成長率(1.5%)が全国を1.0%ポイント上回るケース2(追加投資約2兆円/年)を想定して、関西・全国のシェアを計算した。このケースでは、2030年度には17.0%、40年度には18.7%に上昇しており、関西経済は1973年におけるシェアを回復することになる(図3-2)。

 

 

 

おわりに

本稿では、関西経済の50年にわたる持続的な低下の原因を全国に比しての投資不足にあるとした。
成長率と投資率の関係から、1兆円程度の追加的な投資は、関西の成長率を0.54%ポイント程度引き上げることが分かった。また関西経済が日本経済の成長スピード(潜在成長率)を0.5%ポイント上回るシミュレーションでは、2030年度の関西経済のシェアは足下の15.2%(2018 年度)から16.2%、40年度には 17.1%に上昇する可能性を示した。
2025年大阪・関西万博の開催とそれに伴う交通インフラの整備、またその後に想定されているIR関連投資は十分に1兆円を超えるものである。本稿で示したシミュレーションは、それなりの根拠に基づいた投資増の影響を示したものである。
課題は、大阪・関西万博やIRを端緒とした投資増の持続可能性である。これを保証するためには、いかに内外から投資を呼び込めるかがポイントとなる。またいかに“儲かる産業”を呼び込めるか、また“儲かる産業”への転換をどのようにイメージするかも重要なポイントとなろう。関西経済のインフラを整え、反転の条件が整ってきた今、大阪・関西万博のレガシーとして世界に関西の魅力を認知してもらい、結果として人材や資金の好循環を実現することが重要である。経済界、関係機関とともに議論を進めていきたい。

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    AUTHOR : 
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    ABSTRACT
    • 関西の景気は、足下局面変化、先行きは悪化の兆しがみられる。足下、生産は3カ月ぶりの増産だが、10-12月期で均せば低調。雇用環境は失業率が4カ月連続で改善したが、有効求人倍率は悪化が続く。消費は年末商戦や好調なインバウンド需要で堅調。貿易収支は12カ月ぶりに赤字に転じた。自動車生産停止や中国経済減速のリスクもあり、先行き悪化の兆しがみられる。
    • 12月の生産は3カ月ぶりの前月比上昇だが、10-12月期では3四半期ぶりの減産。生産は低調である。
      23年通年の失業率は前年比横ばいだが、労働力人口と就業者数はともに増加し、雇用の回復は順調に進んだ。しかし、10-12月期は労働力人口と就業者数が前期よりいずれも減少し、就業率は低下した。足下では雇用回復の勢いがやや弱くなっている。
    • 11月の現金給与総額は24カ月ぶりの前年比減少。インフレの高止まりにより実質賃金は減少が続き、減少幅は前月より拡大した。
    • 12月の大型小売店販売額は27カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店はインバウンド需要の増加や身の回り品などの好調で、22カ月連続のプラス。スーパーも15カ月連続で拡大した。
    • 12月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりに前月比増加した。持家、分譲は減少したものの、貸家は増加となったためである。
      堅調な公共工事の影響もあり、12月の建設工事は24カ月連続の前年比増加。しかし、1月の公共工事請負金額は前年比減少に転じている。
    • 1月の景気ウォッチャー現状判断は3カ月ぶりに悪化。令和6年能登半島地震の発生によりサービス関連を中心に悪影響を及ぼした。一方、先行き判断は3カ月連続の改善。春節によるインバウンド需要増加の期待が寄与した。
    • 1月の貿易収支は12カ月ぶりの赤字だが、赤字幅は前年比大幅縮小。輸出は9か月ぶりに同増加に転じた。ただし、春節の時期のずれの影響もあるため、注意が必要である。一方、輸入は10カ月連続で同減少した。
    • 1月の関空経由の外国人入国者数は2カ月連続で70万人超の水準となり、インバウンド需要は堅調に推移している。
    • 1月の中国経済は、前月より大きな改善が見られなかった。消費者物価指数の低下傾向が顕著になっており、不動産市場の不況も続いている。また、企業の景況感も低迷している。ただし、2月の春節連休は例年より1日多くなっており、観光などレジャーの消費は前年より伸びる可能性が高いため、1-3月期の景気は10-12月期よりわずかな改善が見込まれる。
    【関西経済のトレンド】

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    Kansai Economic Insight Quarterly No.68 -内外需の回復鈍く、足踏みが続いている:先行き24年度以降は民需と輸出の持ち直しで緩やかに改善-

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    AUTHOR : 
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    ABSTRACT
    1. 2023年10-12月期の関西経済は、内需・外需ともに回復の動きが鈍くなっており、足踏みが続いている。家計部門では消費者センチメント、所得、雇用と多くの指標で伸び悩んでいる。企業部門では、景況感は堅調であるものの、生産は一進一退で弱い動きとなっている。対外部門は、インバウンド需要はコロナ禍前の水準以上に回復しているが、財輸出は前年割れが続いている。
    2. 家計部門は足踏み状態にある。大型小売店販売はインバウンド需要など客足の回復で堅調であるが、センチメント、所得・雇用環境、住宅市場など幅広い指標で弱い動きとなっている。物価上昇ペースは緩やかになってきたものの、賃上げ機運にも落ち着きが見られ、実質賃金の目減りが個人消費に影を落としている。
    3. 企業部門は、緩やかに持ち直しているが、生産など一部に弱い動きが見られる。景況感は製造業・非製造業ともに持ち直した。また今年度の設備投資計画は今のところ製造業・非製造業とも旺盛となっている。ただ生産は一進一退続きで、3四半期ぶりの減産となるなど回復の足取りは鈍い。
    4. 対外部門のうち、財貿易は輸出・輸入ともに低調である。輸出では全国と対照的に、関西は3四半期連続の前年割れとなっている。一方インバウンド需要は順調に回復している。関空経由の外国人入国者数、免税売上高などではコロナ禍前の水準を回復し、その後も増加傾向が続いている。
    5. 公的部門は、万博関連需要を背景に、引き続き堅調に推移している。
    6. 関西の実質GRP成長率を2023年度+1.4%、24年度+1.5%、25年度+1.5%と予測。22年度以降1%台の緩やかな回復基調が続き、24年度以降は日本経済を上回る伸びとなる見通し。前回予測に比べて、23年度は+0.1%ポイントの上方修正、24年度は-0.1%ポイントの下方修正、25年度は+0.1%ポイントの上方修正。
    7. 成長に対する寄与を見ると、民間需要は23年度+0.3%ポイント、24年度+0.9%ポイント、25年度+1.2%ポイントとなり、24年度に入って緩やかに回復する。公的需要は万博関連の投資により23年度+0.4%ポイント、24年度+0.3%ポイントと成長を下支えるが、25年度には剥落する。域外需要は、23年度は+0.7%ポイント、24年度+0.3%ポイント、25年度+3%ポイントとなる。
    8. 日本全体に比べて、予測期間通じて関西経済が増勢となる。23年度は設備投資を中心に民間需要・公的需要ともにやや増勢となる。一方外需は中国向け輸出の停滞から全国に比べると寄与は小幅となる。24年度は設備投資や公共投資など万博関連需要により全国を上回る伸びとなる。25年度も域外需要の押し上げから関西が全国を上回る。
    9. 今号のトピックスでは「令和6年能登半島地震の北陸3県経済への影響」および「大阪・関西万博の経済波及効果」を取り上げる。

     

    予測結果表

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①00’00”~01’46”: Executive summary

    ②01’46”~24’13”: 第147回「景気分析と予測」

    <依然遠い内需主導の回復、厳しい内外需好循環への道>

    ③24’13”~34’51”: Kansai Economic Insight Quarterly No.68

    <内外需の回復鈍く、足踏みが続いている:先行き24年度以降は民需と輸出の持ち直しで緩やかに改善>

    ④42’06”~42’34”: トピックス<令和6年能登半島地震と北陸3県経済-フロー、ストック、人流を中心に->

  • 稲田 義久

    147回景気分析と予測:詳細版<依然遠い内需主導の回復、厳しい内外需好循環への道- 実質GDP成長率予測:23年度+1.3%、24年度+0.8%、25年度+1.1% ->

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT
    1.  2月15日発表のGDP1次速報によれば、10-12月期の実質GDPは前期比年率-0.4%(前期比-0.1%)減少し、2四半期連続のマイナス成長。市場コンセンサスの最終予測(同+1.28%)は実績を大幅に上回った。またCQM最終予測の支出サイドは同+2.0%、生産サイドは同+1.7%、平均は同+1.9%と、実績を大幅に上回った。
    2.  10-12月期の実質GDP成長率(前期比-0.1%)への寄与度を見ると、国内需要は同-0.3%ポイントと3四半期連続のマイナス寄与。うち、民間需要は同-0.2%ポイントと3四半期連続のマイナス寄与。民間最終消費支出、民間住宅、民間企業設備及び民間在庫変動といずれも減少した。公的需要は同-0.1%ポイントと7四半期ぶりのマイナス寄与。一方、サービス輸出(知的財産権等使用料)の大幅増という特殊要因もあり、純輸出は同+0.2%ポイントと2四半期ぶりのプラス寄与。結果、2023年の実質GDPは前年比+1.9%と3年連続のプラスとなった(前年:同+1.0%)。
    3.  10-12月期の国内需要デフレータは前期比+0.4%と12四半期連続のプラス。交易条件は4四半期連続で改善の後横ばい。結果、GDPデフレータは同+0.4%と5四半期連続の上昇となった。このため、名目GDPは前期比+0.3%、同年率+1.2%となり、2四半期ぶりの増加。結果、2023年の名目GDPは前年比+5.7%と3年連続のプラス。バブル崩壊の影響が残る1991年の+6.5%以来の高成長である。
    4.  10-12月期GDP1次速報と新たな外生変数の想定を織り込み、2023-25年度日本経済の見通しを改定。実質GDP成長率を、23年度+1.3%、24年度+0.8%、25年度を+1.1%と予測。前回(146回予測)から、23年度は-0.4%ポイント、24年度は-0.7%ポイント、25年度-0.1%ポイント、それぞれ下方修正。24年1-3月期は輸出の反動減や自動車の減産から低迷が予想される。24年前半は内需主導の回復は遠のき、外需との好循環は厳しい。回復が見込まれるのは24年後半以降となろう。
    5.  実質賃金がプラス反転しないため、10-12月期の民間最終消費支出は3四半期連続の減少、24年1-3月期の回復も緩やかにとどまり、結果、23年度の民間需要寄与は-0.3%ポイント。一方、交易条件の改善もあり貿易赤字が縮小し、また引き続き好調なインバウンド需要によりサービス輸出が増加し、23年度の純輸出の寄与は+1.3%ポイントと前年から大きくプラス反転する。実質賃金のプラス反転は、インフレ高止まりの影響が剥落する24年後半以降となろう。このため24‐25年度の民間需要の寄与は小幅にとどまり、また純輸出の寄与も前年からほぼ横ばいとなる。
    6.  23年度前半に3%台で高止まりした消費者物価インフレ率は徐々に減速する。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、23年度+2.8%、24年度+2.0%、25年度を+1.4%と予測する。前回予測から変化なし。23年度に交易条件が前年から大幅改善するためGDPデフレータは+3.8%上昇する。このため、同年の名目GDPは+5.2%の高成長となる。24‐25年度については、交易条件改善の裏が出るため、GDPデフレータは24年度+1.5%、25年度+1.8%となる。
    予測結果の概要

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①00’00”~01’46”: Executive summary

    ②01’46”~24’13”: 第147回「景気分析と予測」

    <依然遠い内需主導の回復、厳しい内外需好循環への道>

    ③24’13”~34’51”: Kansai Economic Insight Quarterly No.68

    <内外需の回復鈍く、足踏みが続いている:先行き24年度以降は民需と輸出の持ち直しで緩やかに改善>

    ④42’06”~42’34”: トピックス<令和6年能登半島地震と北陸3県経済-フロー、ストック、人流を中心に->

  • 野村 亮輔

    都道府県別訪日外客数と訪問率:12月レポート No.55

    インバウンド

    インバウンド

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    野村 亮輔 / 稲田 義久 / 松林 洋一

    ABSTRACT

    【ポイント】

    ・JNTO訪日外客統計によれば、12月の訪日外客総数(推計値)は273万4,000人、2019年同月比+8.2%と2カ月ぶりのプラス。2023年通年では年後半の回復が影響し、2,506万5,862人となり、コロナ禍前の8割程度(19年比-21.4%)を回復した。

    ・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば10月は251万6,623人。観光客は224万5,892人でコロナ禍前(19年同月比+3.1%)を回復した。

    ・訪日外客の先行きについては、回復が遅れている訪日中国人客の動向が気になるところである。2月は10日から春節が始まり、中国人客の増加が期待されている。一方で、中国経済減速の影響もあるため、大幅な増加は見込めず、緩やかな回復にとどまる可能性が高い。

    【トピックス1】

    ・関西12月の輸出は8カ月連続で前年比減少。また、輸入は9カ月連続で減少し、8カ月連続で2桁のマイナスであった。結果、輸入の減少幅が輸出のそれを大きく上回ったため、貿易収支は11カ月連続の黒字となった。

    ・12月の関西国際空港への72万1,677人となり、12月単月で過去最高を記録。2023年通年では652万5,158人となり、コロナ禍前の8割弱(19年比-22.1%)を回復した。

    ・11月のサービス業の活動は悪化傾向が続く。第3次産業活動指数は3カ月連続の前月比低下。また、対面型サービス業指数は2カ月ぶりに同低下した。観光関連指数も飲食店、飲食サービス業や宿泊業が低下に寄与し、3カ月連続の同低下となった。

    【トピックス2】

    ・10月の関西2府8県の延べ宿泊者数は11,417.1千人泊、2019年同月比では+10.1%となった。前月に引き続き外国人宿泊者の増加が延べ宿泊者全体の増加に寄与した。

    ・うち、日本人延べ宿泊者数は7,709.1千人泊、2019年同月比+4.7%と2カ月連続の増加。また、外国人延べ宿泊者数は3,708.0千人泊となり、同+23.1%と3カ月連続で増加した。

    【トピックス3】

    ・2023年10-12月期における訪日外国人消費額(1次速報、全目的ベース)は1兆6,688億円、19年同期比+37.6%と2四半期連続のプラス。23年通年では5兆2,923億円となり、過去最高額を更新した。

    ・2023年10-12月期の1人当たり旅行支出(全目的)は21万201円となった。2019年同期比+28.0%と、4四半期連続のプラス。1人1泊当たり旅行支出でみれば、2万5,493円となり、2019年同期比+30.5%増加した。費目別では、宿泊費、飲食費、交通費、娯楽等サービス費、買物代いずれも増加した。

     

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.129-景気は足下局面変化、先行きは悪化の兆し: 自然災害の影響や生産の下振れがリスク要因-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 関 和広 / 野村 亮輔 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 吉田 茂一 / 宮本 瑛 / 新田 洋介 / 壁谷 紗代

    ABSTRACT
    • 関西の景気は、足下局面変化、先行きは悪化の兆しがみられる。足下、生産は2カ月連続の減産となり、弱い動き。雇用環境は失業率が3カ月連続で改善したが、7-9月期と比べて回復は緩やかである。消費は優勝セールや好調なインバウンド需要の増加もあり堅調。貿易収支は黒字だが、依然輸出入とも減少が続いており、貿易活動は停滞している。自然災害の影響や自動車生産停止による生産の下振れリスクもあり、先行き悪化の兆しがみられる。
    • 11月の生産は2カ月連続で前月比低下しており、低調な動きとなった。業種別では汎用・業務用機械を中心に減産が目立った。
    • 11月の失業率は前月から改善し、労働力人口と就業者数はいずれも増加に転じた。ただし、回復は緩やかであるため、10‐11月平均は依然7-9月期より低調である。足下労働需要の動きは弱く、製造業や建設業に加えて、サービス業での新規求人も減少した。
    • 10月の現金給与総額は23カ月連続の前年比増加となり、伸びは2カ月連続で拡大した。一方、実質ベースでは減少が続いているが、名目賃金の伸びが前月より拡大したため、減少幅は2カ月連続で前月より縮小した。
    • 11月の大型小売店販売額は26カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店はインバウンド需要の高まり、身の回り品と衣料品などの好調で、21カ月連続のプラス。スーパーも14カ月連続で拡大した。
    • 11月の新設住宅着工戸数は4カ月ぶりの前月比減少となった。持家、貸家と分譲はいずれも減少した。
    • 11月の建設工事は前年比23カ月連続の増加。足下の伸びは低いものの3カ月連続で加速した。また、12月の公共工事請負金額は前年比大幅増加した。結果、23年通年では全国に比して関西の伸びは大きなものとなった。
    • 12月の景気ウォッチャー現状判断は2カ月連続の改善。コロナ5類移行後、初めての年末商戦などの開催が好影響した。先行き判断は2カ月連続の改善したものの、能登半島地震の影響を考えると1月指標は悪化の可能性が高い。
    • 12月の貿易は輸出入ともに前年比減少。輸出は8カ月連続で前年比減少したが減少幅は小幅にとどまる。輸入は高騰していたエネルギー価格の落ち着きから9カ月連続の減少。結果、貿易収支は10カ月連続の黒字となった。
    • 12月の関空経由の外国人入国者数は70万人を超え、12月単月過去最高を記録。23年通年は年後半の回復が影響し、コロナ禍前の7割強の回復となった。
    • 中国の10-12月期実質GDPは前期から加速した。その結果、23年通年の経済成長率は+5.2%となり、政府目標の「5%前後」を小幅に上回った。ただし、足下では雇用回復の遅れと不動産市場の不況は依然として改善が見られず、生産と消費の回復は勢いが鈍化している。そのため、1-3月期の経済成長率は前期より大きな改善は見られないだろう。
    【関西経済のトレンド】
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  • 稲田 義久

    大阪・関西万博の経済波及効果 -最新データを踏まえた試算と拡張万博の経済効果-

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 野村 亮輔 / 高林 喜久生 / 入江 啓彰 / 下山 朗 / 下田 充

    ABSTRACT

    本稿の目的は、万博関連事業費などの最新データを踏まえた大阪・関西万博の経済波及効果の試算を示すとともに拡張万博の重要性を主張するものである。今回の試算の背景にはCOVID-19パンデミックやロシアのウクライナ侵攻の影響によるインフレの加速と供給制約の高まりがある。このような環境下においても、大阪・関西万博を開催することには重要な意義があるとわれわれは考える。万博開催が、関西経済、ひいては日本経済の反転に向けてのチャンスであり、これを生かすことは、反転を実現するための将来への投資でもある。分析結果の要約と含意は以下のとおりである。

    1. 今回の最終需要は、万博関連事業費7,275億円、消費支出8,913億円と想定した。前回より前者は1,381億円(前回比+23.4%)、後者は1,047億円(同+13.3%)の上振れとなった。
    2. 上記最終需要をもとにAPIR関西地域間産業連関表を用いて経済波及効果を計算した結果、生産誘発額は夢洲会場のみで発生する基準ケースで2兆7,457億円、夢洲会場以外のイベントによる追加的な参加(泊数増加)を想定した拡張万博ケース1で3兆2,384億円、加えてリピーター増を考慮した拡張万博ケース2で3兆3,667億円。前回よりそれぞれ3,698億円(前回比+15.6%)、4,509億円(同+16.2%)、4,849億円(同+16.8%)と上振れた。
    3. 得られた試算値は、最終需要が発生した場合、その需要を満たすために直接・間接に一定の産業構造の下でどの程度の需要が諸産業に発生するかを計算したものであり、明瞭な供給制約がないことを前提としている。その意味で本試算値は一定の幅を持って理解される必要がある。
    4. また、試算結果を実現するためには供給制約の緩和は必須である。そのためにDXの活用が重要となり、それが日本の潜在成長率を高めることになる。加えて万博が海外の旅行者に興味を持ってもらうためには、万博と絡めた旅行コンテンツの磨き上げが重要となる。
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  • 野村 亮輔

    都道府県別訪日外客数と訪問率:11月レポート No.54

    インバウンド

    インバウンド

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    野村 亮輔 / 稲田 義久 / 松林 洋一

    ABSTRACT

    【ポイント】

    ・JNTO訪日外客統計によれば、11月の訪日外客総数(推計値)は44万800人となり、6カ月連続で200万人を超えた。なお、中国人客を除いた総数は218万2,500人(同+29.1%%)で、5カ月連続でコロナ禍前を上回っている。

    ・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、9月は218万4,442人となった(2019年同月比-3.9%)。うち、観光客は190万5,162人(同-0.4%)とコロナ禍前をほぼ回復。商用客は9万7,835人(同-36.5%)、その他客は18万1,445人(同-11.8%)であった。

    ・2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」により、これまで順調に回復してきた訪日外客への悪影響が懸念されている。突発的なリスクに弱いインバウンド需要に対して、日本の危機対応力を磨き上げ訪日外客に訴求していく戦略が必要である。すなわち、旅行先での「安全・安心」の確保に加え、ストレスなく旅行ができる「安堵」を得られることが重要となろう。

     

    【トピックス1】

    ・関西11月の輸出額は前年同月比-7.7%と7カ月連続の減少。また、輸入額も同-12.6%と8カ月連続で減少し、7カ月連続で2桁のマイナス。輸出、輸入いずれも減少だが、後者の落ち込み幅が前者を上回り、貿易収支は10カ月連続で黒字を維持した。

    ・11月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は66万3,795人と2カ月連続で60万人超の水準となった。

    ・10月のサービス業の活動は2カ月連続で悪化し、足踏みがみられた。第3次産業活動指数は2か月連続で、対面型サービス業指数は3カ月連続でいずれも前月比低下。また、観光関連指数も2カ月連続で同低下した。

     

    【トピックス2】

    ・9月の関西2府8県の延べ宿泊者数は10,375.7千人泊。外国人延べ宿泊者の増加が全体に寄与した影響もあり、2019年同月比では9カ月ぶりに増加に転じた。

    ・うち、日本人延べ宿泊者数は7,413.3千人泊と6カ月ぶりに2019年同月の水準を上回った。また、外国人延べ宿泊者数は2,926.4千人泊で、2019年同月比+19.8%と2カ月連続でコロナ禍前を上回った。日本人延べ宿泊者に比して外国人の回復の方が先行している。

     

    【トピックス3】

    ・2023年7-9月期における関西各府県の訪問率をみれば、大阪府39.5%が最も高く、次いで京都府30.2%、奈良県8.7%、兵庫県5.8%、和歌山県1.3%、滋賀県0.9%と続く。

    ・2023年7-9月期の関西2府4県の訪日外国人消費単価(旅行者1人1回当たりの旅行消費金額)は19年同期比+12.1%増加。費目別では、飲食費は減少したが、その他費目が増加した。

    ・関西の訪日外客数と消費単価を用いて、2023年7-9月期の関西における消費額を推計した。結果、訪日外客消費額は1,253億2,262万円となり、19年同期比-5.5%と、コロナ禍前の9割超を回復。全国の消費額が同+17.7%とコロナ禍前を回復したのに比して、関西の回復は依然遅れている。

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