研究者紹介

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井上 建治

井上 建治2023年8月現在

APIR 総括調査役

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  • 井上 建治

    コロナ禍と関西のホテル建設-コロナ禍に宿泊事業者はどのように対応したのか-

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    井上 建治 / 野村 亮輔 / 稲田 義久

    ABSTRACT

    コロナ禍の社会的影響が和らぐ中、インバウンド需要は足下急速に回復しつつある。また大阪・関西万博を見越してその取り込みを図るための宿泊施設建設投資も活発化してきている。建設投資は時間を要するので、コロナ禍における宿泊事業者の対応が非常に重要となる。本稿は基礎統計や独自調査から関西の大型ホテル建設投資動向を分析し、その特徴を明らかにする。得られた結論を整理すると以下のようになる。

     

    1.足下、インバウンド需要は急速に回復しつつある。訪日外客の消費単価は3割以上増加しており、訪日旅行の高付加価値化と訪日外客の長期滞在化が進んでいる。

    2.供給側の対応である大型ホテル建設(APIR独自調査)は、件数・規模ともに訪日外客が集中する大阪府、京都府に集中している。ブランド別では、国内は2020年をピークに、以降平均4件程度で推移している。一方、外国ブランドは万博を見据え、着実な開業を予定している。

    3.宿泊費のグレード別にみれば、2017年から20年までは宿泊費が比較的リーズナブルな物件が約85%を占めていた。しかし、コロナ禍を経た23年以降は外国ブランドのホテルを中心に宿泊費の高い物件が60%へと増加している。

    4.平均建設事業費をみれば、国内と外国ブランドの間では大きな差は見られないが、1室あたりの建設事業費をみれば、外国の方が高付加価値を目指した投資規模となっている。

    5.コロナ禍が始まった2020年に多くの大型物件が開業を迎えた。このため、廃業したホテルや他社にリブランドした物件、また建設中断や開業を遅らす物件が散見された。うち、アパホテルは、多数の物件を「COVID-19軽症者の受入れホテル」に転用し営業を継続させた。また星野リゾートは、休業中及び建設中の物件を買収し、ホテル事業部門や従業員を移籍させた。アパホテルと星野リゾートはパンデミックに柔軟に対応しつつ客室数を増やし、国内客のみならず再開したインバウンド訪日外客を着実に取り込み始めている。

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