「税制改革」の検索結果
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「抜本的税制改革に向けた調査研究」最終報告 (2008年4月)
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2008年度
ABSTRACT
((社)関西経済連合会委託調査研究)
主査:
跡田直澄 慶應義塾大学商学部教授ゆるやかな経済成長を続ける日本経済ではあるが、実際の成長率は2%程度と低迷している。経済構造改革は着実に進み、法人税収等にはその成果が明確に現 れている。一方、政府の財政構造改革はその端緒についたばかりであり、その成果はまだほとんど現れていない。にもかかわらず、先の参議院選挙の結果を勘案 すると、構造改革路線の一時的後退も予想されるところである。
しかしながら、日本経済の再生には政府の構造改革は不可欠である。肥大化した財政のスリム化により、民間部門の活性化をはからなければ21 世紀の高齢社会は乗り切れない。この点からみれば、今、取り組まなければならない課題は、やはり、歳出の徹底的な削減であり、同時に民間活力の増強にむけ た税制の再構築である。そして、その結果を踏まえて、超高齢社会を乗り切るための次なる改革を考えることである。
そこで、本研究では、総合的な財政改革とマクロ経済パフォーマンスとの関係をシミュレーション分析を踏まえて検討し、改革の必要性とそのあり方を模索し てみる。さらに、財政改革の中でも税制改革 は 経済のさまざまな側面に影響を与えることになるので、その影響を考慮しながら、抜本的改革のあり方を議論してみた 。第1章 2011年度までの財政の状況を予想しながら、取り組むべき改革を明らかにする。
第2章 法人課税の実効負担分析に基づき税制が企業の投資行動に与える影響を明らかにし、減税の必要性に言及する。
第3章 所得格差の原因を明らかにした上で、所得課税における給与所得控除、所得控除、さらには税率表のあり方を議論する。
第4章 消費税の増税根拠を再考し、増税時期や増税論議における消費税偏重の問題を検討する。
第5章 財源格差と地方課税の問題をとりあげ、法人税割と事業税を地方消費税に交換した場合のシミュレーションを行い、その影響を踏まえて税源交換のあり方を検討する。
終 章 本報告書における分析結果を再述するとともに、その意義をまとめ今後の課題に言及する。 -
「抜本的税制改革に向けた調査研究」中間報告 (2007年9月)
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2007年度
ABSTRACT
((社)関西経済連合会委託調査研究)
主査:
跡田直澄 慶應義塾大学商学部教授
担当:
前川聡子 関西大学経済学部准教授緩やかな経済成長を続ける日本経済ではあるが、実際の成長率は2%程度と低迷している。経済構造改革は着実に進み、法人税収等にはその成果が明確に現れ ている。一方、政府の財政構造改革はその端緒についたばかりであり、その成果はまだほとんど現れていない。にもかかわらず、先の参議院選挙の結果を勘案す ると、構造改革路線の一時的後退も予想されるところである。 しかしながら、日本経済の再生には政府の構造改革は不可欠である。肥大化した財政のスリム化により、民間部門の活性化をはからなければ 21世紀の高齢社会は乗り切れない。この点からみれば、今、取り組まなければならない課題は、やはり、歳出の徹底的な削減であり、同時に民間活力の増強に むけた税制の再構築である。そして、その結果を踏まえて、超高齢社会を乗り切るための次なる改革を考えることである。 そこで、本受託研究では、総合的な 財政改革とマクロ経済パフォーマンスとの関係をシミュレーション分析を踏まえて検討し、改革の必要性とそのあり方を模索している。さらに、財政改革の中で も税制については、経済のさまざまな側面に与える影響を考慮しながら、その抜本的改革のあり方を議論している。
この中間報告では、
第1章 2011年度までの財政の状況を予想しながら、取り組むべき改革を明らかにする。
第2章 財政収支を長期的に展望しながら、次なる改革をどうすべきかの検討資料を提示する。 -
関西における女性就業率の拡大に向けた提言「女性は関西で夢を描けるか?鉄は熱いうちに打て」
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2015年度 » 関西の成長牽引産業
ABSTRACT
リサーチリーダー
主席研究員 前田正子 甲南大学教授
研究目的
アベノミクスの成長戦略では女性の活躍が重視されている。今後は少子高齢化で労働力人口が減少し人手不足が予想されており、女性の能力は社会に欠かせない。だが、関西には女性が夢を描いて働ける場があるのだろうか。一方、関西の女性は「できれば働きたくない」という人が多いという説もある。
能力のある女性が関西で働く場がないのか、それとも女性が働く意欲を失うのは、本人の責任だろうか、親や周りの大人の責任だろうか、それとも企業の責任だろうか。女性の問題は様々だが、今回の調査では特に関西の大卒女性に焦点を当て、高い教育を受けた女性たちが関西に留まり、その能力を地域の職場で生かす意欲を持ち、それを実現していくためには、何が必要かを探る。
研究内容
女性の活用に関しては様々な提言が出ているが、多くのものが、年金や税制改革・保育所整備・柔軟な働き方・仕事の見える化・成果主義といった同じような項目となっているが、例えばそれを個々の企業や職場に具体的にどう導入するかにはまだ壁がある。また、すでに女性を対象とした様々な調査も実施されている。そこでより関西ならではの課題や問題点を明らかにするために、関西の自治体や企業の聞き取りだけでなく、大学卒業時の女性の進路や大学での進路指導なども踏まえ、関西の女性の実態や職場の課題を明らかにする。また企業で働くことだけでなく、女性自らが社会的起業やNPO設立など、求められる社会的ニーズにこたえる仕事づくりが可能かどうかについても検討する。
そのなかで、関西の女性たちが、その能力を地域や職場で生かす意欲を持ち、それを実現していくためには、何が必要かを探る。
リサーチャー
加藤久和 明治大学教授
長町理恵子 日本経済研究センター 大阪支所主任研究員
オブザーバー
藤原由美 大阪府 商工労働部女性の就業推進チーム課長補佐
森田文子 関西電力 ダイバーシティ推進グループダイバーシティ推進部長
佐野由美 21世紀職業財団 関西事務所長
梅村その子 関西経済連合会 労働政策部ダイバーシティ担当部長
宇野優子 関西経済連合会 労働政策部主任
期待される成果と社会還元のイメージ
報告書をまとめ、高い教育を受けた女性が、その能力を地域の職場で生かす意欲を持ち、それを実現していくためには何が必要か、高校・大学での教育、就職先での経験、自体の施策、等それぞれの段階で提案する。報告会も実施し、企業、自治体、大学等に広く発信する。
高校や大学での女子学生へのキャリア教育を実施する際、企業や自治体での女性育成の際、さらに地域の女性の活性化や地方創生を模索する行政の施策形成に活用されたい。
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2011年版関西経済白書「つながる関西パワーで新たな日本へ」(2011年9月)
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2011年度
ABSTRACT
財団法人関西社会経済研究所はこの度、「2011年版 関西経済白書?つながる関西パワーで新たな日本へ」を発行しました。
2011年版白書は、3部構成になっており、第Ⅰ部は「日本経済、関西経済の見通しと課題」と題し、日本及び関西経済を解析するとともに、東日本大震災からの復興に向けての関西の役割を述べています。
第Ⅱ部は、「新たな社会へ関西産業の力」と題し、関西発展のための「民」の方向性として、関西の設備投資と医療産業に焦点を当てて分析しています。
第Ⅲ部では、「自治体改革先進地域・関西」と題し、関西発展のための「官」のありかたを、自治体運営と地域成長政策の2つの側面から分析、記述しています。●第Ⅰ部 日本経済、関西経済の見通しと課題
第1章 日本経済の動きと関西経済?復興における関西経済の役割?
第2章 日本及び関西経済が抱える構造的課題から
特集1 民主党政権の税制改革●第Ⅱ部 新たな社会へ関西産業の力
第3章 新たなグローバル時代への企業投資
第4章 医療先進地域・関西を目指して
特集2 KANSAIグリーン・イノベーション●第Ⅱ部自治体改革先進地域・関西
第5章 関西自治体運営のゆくえ
第6章 関西成長に向けた地域デザイン
資料編 データでみる関西2011年9月7日発売
定価2,500円(税込み)政府刊行物センター及び関西の大手書店(旭屋書店、紀伊国屋書店、ジュンク堂書店など)で発売。
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抜本的税財政改革研究会2010年度報告書(2011年4月)
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2011年度
ABSTRACT
2010年度税財政に関する調査研究を実施しましたので、成果を発表いたします。
本研究は抜本的税財政改革研究会(主査:関西大学経済学部教授 橋本恭之氏)を中心に実施いたしました。 -
第2号 子ども手当等に関する調査研究(2009.12.01)
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インサイト » 分析レポート
/ DATE :
ABSTRACT
◎財団法人関西社会経済研究所(所在地:大阪市北区中之島6?2?27)では抜本的税制改革研究会(主査:関西大学経済学部教授 橋本恭之氏)を中心に子 ども手当などの新政策の影響や子ども手当が生涯所得に与える影響に関する調査研究を実施しましたので、成果を発表いたします。
1. アンケートによる子ども手当や定額給付金などの経済へのインパクト推計
(1)各論
○子ども手当の賛否
・「賛成」及び「どちらかといえば賛成」が53.4%で、国民の高い期待が伺える。
(アンケート結果3ページ参照)
?前回調査(2009年8月)に比べて、7.5%ポイントの増加(45.9%→53.4%)で、国民の期待は高まっている。○子ども手当の経済効果
・追加的消費の消費性向は平均12.6%程度であり、 通常の消費性向の約70%に比べると、経済効果は限定的と考えられる。(同上4ページ参照)○子ども手当の使途
・子ども手当の使途は、「将来に備えた貯蓄」が最多となった。(同上5ページ参照)
これは支給の時期が適切でないため、実際の資金需要期への備えとするものと考えられる。
或いは貯蓄比率が高いのは資金需要を上回る手当てとなっている可能性が考えられる。
・年収別にみた子ども手当の使途は、高所得層は教育向けの割合が高いのに対し、低所得はレジャー向けの割合が高く、支給の手段が適切でないと考えられる。(同上6ページ参照)
?教育格差の拡大、そして階層の固定化も懸念され、教育クーポン等の検討も必要と考えられる。○子ども手当と出生率
・合計特殊出生率に与える効果は+0.038程度(参考:H⑳1.37)である。(同上7ページ参照)
今回の子ども手当を少子化対策の一環ととらえる考え方があるので出生率上昇効果を推計したが、効果は限定的であり、少子化対策としては有効な施策とはいいがたいと考えられる。(2)今後への示唆
・子ども手当は国民の支持を得ている政策と考えられる。
・しかし、効率的な施策とするために、支給金額、支給対象時期、支給方法の3つの観点から吟味を行うことが、国民経済的に求められているのではないか。
.子ども手当が生涯所得に与える影響
・これから子育てを行う場合、全ての階層で生涯手取り所得は増加する。
*子ども手当による増収と配偶者控除及び扶養控除の廃止による増税を考慮。
・子どもがいない大卒・大企業の既婚世帯の場合、生涯手取り所得は270万円減少。
・現時点で42?47歳に達している世帯では生涯手取り所得がマイナスになる。2. 子ども手当が生涯所得に与える影響
・これから子育てを行う場合、全ての階層で生涯手取り所得は増加する。
*子ども手当による増収と配偶者控除及び扶養控除の廃止による増税を考慮。
・子どもがいない大卒・大企業の既婚世帯の場合、生涯手取り所得は270万円減少。
・現時点で42?47歳に達している世帯では生涯手取り所得がマイナスになる。 -
今月のトピックス(2009年9月)
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/ DATE :
ABSTRACT
8月30日に行われた衆議院総選挙で、民主党を中心とする野党勢力が議席の3分の2を確保した。この結果、今後の経済に対する政策アプローチが大きく変 わることになる。今後の民主党の政策運営については、同党のマニフェストを除いて具体的な金額などを盛り込んだ形での発表はまだ行われていない。ここで は、民主党マニフェストの「工程表」から政策運営が経済にもたらす影響を推計しよう。
表1は、民主党のマニュフェストの工程表をベースに、景気対策支出額を見たものである。マニフェストでは2009年度に対して最終(2013)年度にな るほど支出金額は明確になるが、それ以外の年では一部支出金額の支出状況は不明確である。そのため、2010年度から12年度の金額については、工程表を ベースに実現可能性を考慮して推計した。
主な項目は、①子ども手当・出産支援 (同1.3(2013年度時点の所要額5.5兆円)、②暫定税率の廃止(同2.5兆円)、③医療・介護の再生(同1.6兆円)、④高速道路の無料化兆 円)、⑤農業の戸別所得補償(同1.0兆円)などである。要するに家計に対する所得補償型政策が中心となっていることがわかる。一方、これらの財政支出の財源は、①予算の組み替えによる無駄な歳出の削減(2013年度時点で9.1兆円)、②「埋蔵金」や資産の活用(同5.0兆 円)、③税制見直し(同2.7兆円)によってファイナンスされることになっている(表2参照)。しかし、2010年度からの早急な実施が困難なものもあ る。特に、公共事業のスリム化や税制改革などである。支出財源が確保できない場合は国債発行によって賄われることになる。
以上のような支出と財源の見通しから財政バランスの見通しをまとめると、2010年度、2011年度は支出が拡大する一方で、財源の手当てが間に合わないため、財政赤字が拡大することになる(表3上段)。
GDPに与える影響では、純支出額に着目する必要がある。純支出額の計算には、支出である「埋蔵金」や資産の活用はコストがかからないから考慮しない。 したがって、純支出額は支出措置額から歳出削減額(予算の効率化)・増税額(税制改革)を減じた額となる(表3中段)。またGDP成長率には、この純支出 額の年度間増減幅が影響する(表3下段)。この増減幅が拡大する2010年度、2011年度にはGDP成長率が押し上げられることになる。2012年度、 2013年度には、増税や歳出削減が進み、増減幅が縮小するため、GDP成長率を押し下げることになる。最後に、この純支出増減幅を基に、関西経済に対する影響を試算しよう(表4)。試算では、GRP成長率に直接寄与する政策として、子ども手当・医療介護 の再生・農業の戸別所得補償・暫定税率の廃止の4つの政策を取り上げて計算した。また工程表の支出額は日本全国を対象とした額であるため、これに関西の世 帯数割合17.1%を乗じて、関西への影響額としている。さらに、関西経済予測モデルの消費関数の長期消費性向0.464を乗じて追加的消費支出金額を計 算している。これを関西のGRP(89.4兆円、2010年度の予測値)と比較する。この結果、2010年度には0.4%程度、2011年度には0.3% 程度のGRP押し上げ効果となる。しかし、2012年度、2013年度には-0.3%、-0.5%とGRPにマイナス効果をもたらすことになる。
以上、経済効果を示した。より詳細な分析のためには、家計調査報告に基づいた所得階層別の分析が必要となろう。民主党政権が考える内需、特に、家計消費 の刺激を起点とする経済成長シナリオにより、どのような成長パスが実現されるのか、今後の政策運営動向に注視しなければならない。 (稲田義久・入江啓彰)
日本
<7-9月期、内需は久方ぶりにプラス成長に転じるも、持続性に疑問>9月11日発表のGDP2次速報値によれば、4-6月期の実質GDP成長率は前期年率+2.3%となり、1次速報値(同+3.7%)から下方修正となった。
実質GDP成長率下方修正の主要因は、民間企業在庫品増加である。実質民間企業在庫品増加は1次速報値の前期比-2.0%ポイント(寄与度年率ベース) から同-3.1%ポイントへと下方修正された。在庫調整が想像以上に進展していることを確認した。今後は在庫投資の積み上げが期待され、先行きにとっては 悪くない結果である。
9月14日の予測では、8月の一部のデータと7月のデータがほぼ更新され、また4-6月期のGDP統計2次速報値が追加されている。支出サイドモデル は、7-9月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大し、内需も小幅拡大するため、前期比+0.9%、同年率+3.6%と予測する。
10-12月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大するが、内需が横ばいとなるため、前期比+0.5%、同年率+1.9%と予測している。この結果、2009暦年の実質GDP成長率は-5.5%となろう。
7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.5%となる。実質民間住宅は同-0.8%、実質民間企業設備も同-2.1%といずれも マイナスながら小幅の減少にとどまる。7月の工事費予定額(居住用)と資本財出荷指数は前月比ともにプラスになっており、7-9月期の民間住宅や企業設備 が前期比で安定化する可能性が出てきた。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資本形成は同-1.0%となる。このため、国内需要の実質 GDP成長率(前期比+0.9%)に対する寄与度は+0.3%ポイントとなり、久方ぶりに内需が景気を引き上げる。
財貨・サービスの実質輸出は同+5.7%と増加するが、実質輸入は同+1.9%にとどまる。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.5%ポイントとなる。
一方、主成分分析モデルは、7-9月期の実質GDP成長率を前期比年率+3.6%と予測しており、支出サイドからの予測と一致している。また10-12月期を同+3.4%とみている。
この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、7-9月期が+3.6%、10-12月期が+2.6%となる。
日本経済は4-6月期以降、内需が小幅ながら緩やかなプラス成長に転じている。しかし、今後は、民主党による補正予算の見直しも含め補正予算の政策効果 が剥落してくるため、経済のプラス成長の持続性には疑問が出ている。2010年度の民主党の消費拡大効果が出る前に一時的にマイナス成長に陥る可能性があ ることを指摘しておく。[[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]
米国
グラフに見るように、8月の雇用統計を更新した時点で超短期モデルは2009年7-9月期の実質GDP成長率を+1.3%と予測している。これは2008年4-6月期以来1年振りのプラス成長である。
支出サイドから実質GDP成長率が急速に上昇した主な理由の一つには”Cash-For-Clunkers Program” (エコカー購入促進システム)により、自動車購入が増え実質個人消費支出が増えたことが上げられる。超短期モデルは実質耐久財の個人消費支出が2009年 7-9月期に11.9%(前期比年率)伸びると予測し、個人消費支出全体の伸び率を同+2.0%と予測している。エコカー購入促進システムによる購入が自 動車の在庫減になればその分GDP成長率の増加は相殺されるが、新車の生産につながればGDP成長率は高まる。支出サイドからの経済成長率上昇のもう一つ の大きな理由は実質住宅投資が7-9月期に同9.1%伸びると予想されていることによる。これは7月の民間住宅建設支出が2.3%(前月比)と大幅に上昇 したことによる。実質住宅投資の伸び率がプラスに転じるのは2005年10-12月期以来14四半期振りのことである。
一方、所得サイドからの実質GDP成長率プラス転換の主な理由は2009年4-6月期の統計上の誤差が2,250億ドルと大きくなり、その結果7-9月 期の統計上の誤差も2,280億ドルになると超短期モデルが予測していることである。この統計上の誤差はGDP比率でみると1.6%に相当する。もう一つ の理由は、1-3月期、4-6月期とそれぞれ前期比-14%、同-5%と大きく落ち込んだ賃金・俸給が7-9月期には0%にまで持ち直すと予想されている ことが挙げられる。
しかし、7-9月期経済のプラス成長の持続性には問題が残る。エコカー購入促進システムが8月24日で終了し、今後の個人消費支出の落ち込みが予想され る。また、住宅市場に回復の兆しが見えたものの今度は商業用不動産市場が悪化していることがある。所得サイドにおいても失業率が8月には9.7%と 1983年以来の高い水準になり、遅行指数とはいいながら労働市場の回復にはまだかなりの時間がかかるとみられ、個人消費支出の鍵をにぎる賃金・俸給の堅 調な伸びが今もって期待できない。このように、米国経済は7-9月期に一旦プラス成長に戻るものの、その持続性には多くの懸念が残る。[ [熊坂侑三 ITエコノミー]]
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第1号 第45回衆議院総選挙を終えて (2009.9.10)
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ABSTRACT
財団法人 関西社会経済研究所
1.「新しい国のかたち」の模索 文責(浜藤豊)
今や、日本は外にあっても内にあっても大変な時期である。我々は安心と自信を回復するために政治を鍛え直さなければいけない。この国の統治の立て直しを 誰に託すかを判断し、「新しい国のかたち」の建設を始めるのがまさに8月30日であった。その建設を進めていくに当たって克服すべき課題は多いが、大きく 分けてみるならば次の3つに集約できる。
(1)経済構造の脆弱さ
(2)政治、行政に対する不信感
(3)巨額の財政赤字
これらが複雑に絡み合って内外の環境激変に対応しきれなくなり、持続的な成長イメージが描けない状況に陥っている。<3課題に対する対策>
第一に、構造的に弱い日本経済の足腰を強くするには、民間の活力を最大限に引き出す経済社会の確立を目指さなければならない。
そのためには、日本国内の成長力を強化するとともに、海外の成長力を取り込むことが肝要である。国内面では、
①雇用機会の拡大や女性・高齢者の労働参加の促進
②省エネ設備・製品の開発・普及に向けた対策
③成長戦略のための技術開発促進による産業強化策
(例)新たなサービス産業(医療、介護分野等で)の創出 など一方、海外成長力取り込みでは
①グローバル化に対応した法人税減税などの税制改革
②WTO中心型とEPA,FTA締結促進型との併用による自由貿易体制の確立
③競争力強化対策の拡充
(例)日本への直接投資の促進(秩序ある資本の流出入を実現する市場の形成) など第二に、政治や行政に対する不信感を取り除いて国民が安心できる制度を構築するにはどうすればいいのかの問題である。行政の失敗が政治への不信につながっていることから
①無駄が生み出す財政赤字の排除の仕組みを取り入れた予算制度・公務員制度の改革
(例)民間経営手法(PDCAサイクルなど)の採用②住民選択を尊重する地域重視型社会の実現及び国・地方の役割分担を明確にした上での権限委譲
(例)地方税財源確保のための補助金、交付税、税源配分見直し。道州制導入 など③グローバル化・高齢化にも対応可能な社会保障制度の再構築
(例)高齢者が安心して受けられる医療制度の再確立、派遣労働者へのセイフティーネット強化 など第三に、財政の健全化の問題が重くのしかかっている。このまま赤字が膨らみ続けると、現下の景気悪化に伴う赤字財政の拡大も加わって、将来世代が受ける 公共サービスレベルの低下も心配される。しかも、2015年には団塊世代が65歳の年金受給年齢に達し、本格的な高齢社会に突入することになる。その時期 までに財政再建への道筋をつけておかなければならない。具体的には、
①歳出削減と成長による、基礎的財政収支の赤字幅の削減、及び黒字化の時期
②成長・増税・歳出削減による、国・地方の債務残高の対GDP比のピークアウトを図る目標時期
を明確化しておく必要がある。
今、日本に求められていることは、現実を正しく認識し、先に述べた3つの課題に対する構造改革を推し進め、国内外の変化に柔軟に対応できる「新し い国のかたち」を構築していくことである。そこで、以下では、現在示されている各党のマニフェストがこの国の将来を示し得るものになっているのかを検討し てみたい。2.マニフェストに求めること 文責(島章弘)
8月30日に実施された総選挙の結果、民主党が衆議院の過半数以上の議席を占めた。総選挙では多くの事が議論されたが、当然、政策議論が主体であり、その中心に各党のマニフェストが存在したといえる。
近年、国政選挙におけるマニフェストの存在意義が高まっている。各党は従来以上にマニフェスト作成に努力し、国民そして各界も高い関心を払うようになって きた。マニフェストは各党の国民へのコミットメントであり、その内容を豊かにすることは日本の将来にインパクトがあると考える。
ここでは、各党の2009年衆議院選挙に向けたマニフェストを概観し、これまでの議論や各界からの期待を踏まえ、さらに求めたいことを列挙してみた。マニフェスト評価を出発点として、政策議論の一層の活発化を期待したい。■各党ともに多くの行政サービスの具体策を示しているが、その源泉となる国富の創出に関する記述が少ない。
厳しい国際競争下、各党のマクロ経済政策や産業振興施策には一層の充実が求められる。今、求められるものはいかに内需を喚起するか、いかに国際競争力を 有する産業を発展させるかである。この結果、過度に外需に依存しない持続可能な経済発展が可能となり、国の税収を増加させ、政策が豊かなものになる。
1990年代、米国経済は長期にわたる好況を謳歌し、「もはや景気循環はなくなった」とする「ニューエコノミー」論が活発に語られるほどであった。これ によって、巨額の財政赤字は解消され、クリントン政権を引き継いだ直後のブッシュ政権が実施した10年間で1.3兆ドルを超える減税プログラムが実現され た。■不況下のマニフェストであり、セイフティーネット充実の必要性から全体として政策が増加している感が否めない。
各党ともに行政の無駄排除を掲げているが、新政策の増加から結果として政府が関与する領域が広くなり大きな政府となる可能性がある。政府が関与する領域が広い社会経済システムを選択するのか、政府関与が少ないシステムを関与するのかの問題提起が欲しいところである。■金融危機そのものに対する政策が少ない。
現在の経済不況の発端となったのが金融危機である。株価は世界的に回復基調にあるが、根本的な問題は継続しており、国や地方の財政問題などこれから影響 が本格化する領域もある。こういったマイナス影響への対応策及び危機の再発防止への対応といった政策の提示が求められる。■環境問題目標の達成手段についての国の関与に関する記述が少ない。
原子力利用の充実を唱えている政党もあるが、これまでの原子力利用の実績を見ると、安全問題など克服すべき課題が大きく具体策に欠ける。また、日本の1 人当たり一次エネルギー消費は世界的にみて高いものであるが、個別産業のエネルギー効率でみると多くの産業で世界のトップ級になっている。技術開発の芽も 少ない状況では、削減目標数値先にありきでは、製造業の海外移転を促すだけになりかねない。さらに、排出権取引市場の設置も真の意味での環境問題進展への 寄与は期待できない。
エネルギー分野で信頼度が高いBP統計によれば、2008年の日本の人口1人当り一次エネルギー消費量は中国の2倍以上である。しかし、鉄鋼業でみると 中国の製鉄所のエネルギー原単位は日本に比べ10%から20%悪いなど、ほぼ全ての産業で日本は優れた効率を達成している。日本の産業界が今のレベルから 飛躍的にエネルギー効率を向上させるのは相当困難である。こうした情勢下で、より厳しい目標を設定するには、より具体的な政策が求められる。■税制改正に関する体系立った提案がない。
抜本的改革との表現を使っているところもあるが、メッセージはそれだけであり中身が不透明である。暫定税率など一部の税廃止と税控除措置見直しを提唱しているところもあるが、税体系全体に関するメッセージが欠けている。
逆進性がある消費税と累進性がある所得税とを中核として税負担をしている国民にとっては、負担構造のあり方についてむしろ受益と負担の関係から議論が行われて然るべきである。
また、多くの党は中小企業の法人税率引き下げを提唱しているが、これは緊急経済対策的な色彩が濃いものであり、法人税全体に関する議論こそが、グローバル経済下では重要である。■地方分権推進の考えは鮮明であるが、内容が説明不足。
道州制導入を明確にしている政党は三層型地方分権制度であるのに対し、現状より広域化させた基礎自治体をベースとする政党は二層型地方分権制度といえよう。 それぞれの違いが国民生活にいかなる違いをもたらすかのメッセージが伝えられていない。個別分野ごとにマニフェストを概観し、これまでの議論や各界からの期待を踏まえ、求めることを列挙してみた。
更に、個別分野ごとの議論ではなく、マニフェスト全体にかかわるポイントを指摘してみたい。マニフェストは数値や時期が明示された政策目標と合理的に選 択された明確な手段が提示されるべきである。今回、多くの政党のマニフェストは政策目標は提示されているが、具体的で明確な政策手段が示されているとの評 価をするのは難しいといえる。
「政策形成能力」には、まだまだ問題があることを強く指摘しておきたい。また、この政策を実現・実行するのが「実現力」・「実行能力」といわれている が、前者は議院内閣制であれば政権をとるかとらないかの問題であり、後者は行政組織に対する管理能力の問題である。したがって、実現・実行の問題はマニ フェスト上の問題ではない。各党には、むしろ「政策形成能力」の向上を強く求めたい。3.日本の未来を示し得る政策への期待を込めて 文責(浜藤豊)
前節では、現在までに公表されたマニフェストを前提に不充分な点を指摘してきた。日本は今、2つの大きなうねりに翻弄されている。すなわち、外にあって はグローバル化が急速に進むなかでの昨年来の経済危機、内にあっては高齢化・少子化の2つである。経済のグローバル化のうねりの象徴と対策としては、
①背後から迫りくる中国(GDPで追い抜かれる) → 実効性のある産業育成戦略の立案
②外国資金による国内金融資本市場の撹乱 → 新しい市場監視ルールの確立(投機資金の規正)
などがあり、高齢化・少子化のうねりの象徴と対策としては
①人口減少の始まり → 外国人労働力・移民の受入体制の整備
②出生率の長期的低迷 → 結婚・出産阻害要因の除去(高校編入制度の未整備、婚外子対応など)
などが挙げられる。
グローバル化、高齢化・少子化が進展するなかでも持続的成長を図るためには、政府による体系的な実効性のある成長戦略が必要であると同時に、『民間企業 も成長していかなければ!』という覚悟をもって民間でも自らの成長戦略を構築することも重要である。官民共同による成長があってこそ社会は安定するので あって、子育てや雇用への安心もその延長線上に見えてくる。
直面している危機を一刻も早く脱出し、これからの「新しい国のかたち」を構築していかなければならない。各党のマニフェストは政策内容としてはまだまだ不 十分な部分もあり、我々国民も充分にその内容を理解できているとは言い難いが、民主党に政権がバトンタッチされることになった今、マニフェスト通り誠実に 政策実現されるかをよくウォッチしていくことが肝要である。4.有権者意識調査 文責(長尾正博)
(財)関西社会経済研究所では、8月8日、9日の両日にわたって、楽天リサーチの全国サンプル1000人を対象に、インターネットを通じて、各党政策に対する有権者の意識調査を実施した。その3週間後(8月30日)衆議院選挙の投開票が行われ、獲得議席数が、多い順に、民主党308、自民党119、公明党21、共産党9、社民党7、みんなの党5、国民新党3、その他8議席という結果になった。前述の調査によれば、比例区の投票先政党については、民主党32.4%、自民党9.8%、公明党2.0%、共産党4.3%、社民党1.1%、国民新党0.5%であった(その時点で、まだ決めていない又は投票しないという方の合計は49.4%であった。)ので、実際の獲得議席数と同様の傾向を示していたことになる。例外は共産党であったが、同党に投票した有権者は比例区で7.0%であり、獲得票という意味では、これも、調査結果が反映されたと言える。
調査結果の詳細については、「No5 各党政策に対する有権者の意識」というタイトルで、(財)関西社会経済研究所ホームページのリサーチペーパー欄に掲載しているが、その一部は下記の通りである。(1)支持の理由
自民党の場合、支持する政党だから(56.1%、複数回答、以下同様)と政権を委ねるのに信頼できるから(35.7%)が突出しており、具体的な政策を評価していることにはなっていない。一方、民主党の場合、国の無駄遣いを解消し(55.2%)、官僚主導体制を打破し(45.1%)、国の構造改革を積極的にすすめてくれそう(26.5%)だからというのが支持の理由である。(2)個別のマニフェスト評価
個別政策(特に民主党)について、それぞれ賛成か反対かについて聞いた結果を、賛成比率の高いものから並べると下記のグラフの通りとなった。また、比例区投票先別(民主党と自民党)にもクロス分析したところ、「子ども手当て」と「高速道路無料化」では、意見が分かれた。とくに子ども手当てについて、中学生以下のこどもがいない家庭では、賛否が互角であった。(3)経済・財政運営方針に対する有権者の賛否
経済並びに財政に関する運営方針についても、その支持度合を計測した。
この質問は難易度が高くなる為、「どちらともいえない。わからない。」という方が、経済運営で53%、財政運営で38%と多くなる。残りの明確に賛否を示された方の中で、どちらを支持するかについて聞いたところ下記の通りとなった。“
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抜本的税財政改革研究会2008年度報告書(2009年7月)
研究プロジェクト
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ABSTRACT
◇抜本的税財政改革研究会◇
本研究会では国と地方の構造改革に資する政策提言を目指して研究を行ってきた。
2008年度は次のテーマで研究を行い報告書にとりまとめた。
・小泉改革の検証
・消費税率の引き上げについて
・法人税課税と設備投資
・定額給付金の経済分析
・租税支出の推計と経済的意義
・たばこ税増税について
残された課題については、2009年度において引き続き検討を行うこととする。2008年度抜本的税財政研究会報告書
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「受益と負担の観点から見た税制と社会保障制度改革に関する研究・研究」成果報告 (2007年4月)
研究プロジェクト
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ABSTRACT
((社)関西経済連合会委託調査研究)
(主査: 橋本恭之・関西大学経済学部教授
アドバイザー:跡田直澄・慶應義塾大学商学部教授)わが国の地方税制が法人課税に過度に依存している状況は是正されるべきとの見方に立ち、地方税としての法人課税の見直しの方向性について検討した。 ま た、19年度税制改革に向けて減価償却制度の見直しが課題として挙がっており、特に償却可能限度額・残存価額の引き下げを行った場合、企業の設備投資にど のような影響を与えるかを研究した。
成果報告書の構成は以下の通り。
1. 地方法人課税の見直しについて
2. 減価償却制度見直しによる影響について
3. 2006年将来人口推計と社会保障制度の受ける影響『受益と負担の観点から見た税制と社会保障制度改革に関する調査・研究』
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「受益と負担のあり方に関する研究」中間報告 (2006年9月)
研究プロジェクト
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ABSTRACT
(主査:橋本恭之 関西大学経済学部教授)
本研究会の目的は、過去に実施された税制改革が国民生活にどう影響し、種々の改革の前提材料となる歳入見積の妥当性についても検証し、歳出・歳入改革が将来的に及ぼす影響を計測するための予備研究である。
本報告書は2部から構成される。
第1部では、所得税、法人税、消費税について予算策定時の税収見積額と決算額の相違を検証し、これまでの税収見積がどの程度正確なものであったか、公債発行増大による財政状況悪化が税制予測に恣意性を与えてないかを検証した。その結果、1. 消費税は予算と決算の乖離は殆どない。
2. 所得税や法人税は、予算と決算の乖離があり予算税収は課税ベースだけでなく前年度の公債発行額による影響を受けている。第2部では、90年代に実施の税制改革が国民生活に与えた影響を計測した。その結果、
1. 税制改革全期間通じて現在価値で約35.99兆円の減税超過となっていた。当然、平均的家計の厚生水準は改善されていた。
2. 所得税の特別減税が家計の満足度に与えた影響は大きくなく、税率表改正による恒久な税制改革が与える影響が大きいことがわかった。
詳細は、添付報告書を参照下さい。 -
地方分権”三位一体改革”についての有識者見解集 (2003年6月)
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研究プロジェクト » 2003年度
ABSTRACT
平成15年6月2日(財)関西社会経済研究所担当 宮原
●趣旨
地方分権に向け、三位一体の改革論議(補助金の廃止・縮減、交付税の改革、地方への税源移譲)が、それぞれ対立点を抱えながらも大詰めに近づいた。 この改革は、地方分権への大きな一歩であるが、論議の結果によっては、逆に、後退、スケジュールの遅れにもなりかねい恐れもある。関西は地方分権において 学界・経済界等各界あげて全国を先導してきた。こうした背景もあり、今回、急遽、本問題についての有識者の見解をとりまとめたものである。これが、地方分 権のための三位一体の「真の改革」に貢献することを期待するものである。(有識者の見解収集期間:5月22日?5月30日)●見解をお寄せ頂いた有識者(順不同)
新川達郎 同志社大学大学院総合政策科学研究科長・教授
中川幾郎 帝塚山大学大学院法政策研究科教授
森信茂樹 政策研究大学院客員教授
林宏昭 関西大学経済学部教授
林宜嗣 関西学院大学経済学部学部長・教授
齊籐愼 大阪大学大学院経済学研究科教授
田中英俊 同志社大学大学院総合政策科学研究科客員教授
知原信良 大阪大学大学院法学研究科教授
大住荘四郎 新潟大学経済学部教授
長谷川裕子 関西経済連合会産業地域本部地域グループ次長
岸秀隆 監査法人トーマツ代表社員・公認会計士
上村多恵子 京南倉庫株式会社代表取締役●有識者見解の要約 (文責:事務局)
* 新川達郎 同志社大学大学院総合政策科学研究科長・教授
・ 三位一体改革は国と地方の財政規律の確立であり、地方自治体の自己決定・自己責任体制の強化である。
・ 現在の改革論議には、それが目指す新たな社会像が見えない。成熟、低成長、少子高齢化のなかでの地域社会をセフティネットにした社会像としての分権化社会の創造と言う視点が大切。
・ 基本的なことよりも、増税ありき、補助金・交付金の削減先行がまかり通っているのは問題。改革の議論の仕方が問題。
・ 地方自治の財政自主権を保障する改革が必要。* 中川幾郎 帝塚山大学大学院法政策研究科教授
・ 地方自治体の非効率と国依存体質の原因は、中央集権支配に基づく補助金・交付金システム。
・ 税財源の委譲がなければ、地方の自己決定・自己選択は絵に描いた餅。財政窮迫とは別次元の問題。
・ 財政調整機能は簡素な方式にし、基本的には共同税を主に構成にすべき。* 森信茂樹 政策研究大学院客員教授
・ 危機的な財政赤字を踏まえ先ず、国・地方を通じた効率的な税の使い方を考えるべき。
・ 補助金を通じた国の関与・規制は原則撤廃。公共事業では、国の補助事業を廃止・縮減。
・ 地方の財政収支尻を保障する「交付税制度」そのものを廃止し、自治体間の調整は、一人当たり税収の均等化という客観的な調整に改め、その規模も縮小。
・ 補助金・交付税の削減によって確保される財源をもとに、地方へ税源移譲する。過去の国の債務(公共事業の国債充当分)も、その一部を国から地方へ移譲。
・ 財政諮問会議のような政府レベルの論議に、当事者の自治体の責任者を出席させ、効率化の具体的な数値をコミットさせることが必要。自治体の行政サービスの無駄は国をはるかに超える。
・ 三位一体改革、は各省、総務省、財務省、地方公共団体が一両づつ損をする「四方一両損」の改革で、最終的には、住民が受益するという改革であるべき。* 林宏昭 関西大学経済学部教授
・ 国庫支出金の改革では、事業の責任、財政的責任が曖昧な現状を見直すべき。国庫負担の基準を施設や職員数ではなく、人口、高齢者、児童など財政需要を中心に改めるべき。
・ 税源移譲として、消費税収の地方への配分割合を高め、所得税減税と合わせた所得割住民税の比例化を検討すべき。
・ 「地域のための負担」という住民意識、「住民の負担による行政」と言う行政側意識の確立が大切。* 林宜嗣 関西学院大学経済学部学部長・教授
・ 地方財政の効率化と地方分権改革は別個の問題。三位一体は同時並行で進めるべき。
・ 地方の歳出削減と地方交付税の縮減は改革のゴールであり、手段ではない。
・ 中央集権の実体をきっちり押さえた上での改革案でなければ、三位一体は迷走。* 齊籐愼 大阪大学大学院経済学研究科教授
・ 大きな改革の場合、マクロや国民生活へのメリットを明らかにすべき。
・ 財源難の下で地方分権を実現するには、受益と負担がキーワード。歳出水準を調整するか、あるいは負担水準を調整するかといういわゆる「限界的財政責任」(現在これは専ら地方債に依存)を明確にすべき。* 田中英俊 同志社大学大学院総合政策科学研究科客員教授
・ 地方分権が真に実体を持つには、国から自主財源を移管し地域が住民・企業・NPOとも一体となり自らの責任で政策の立案・遂行ができるようにすべき。* 知原信良 大阪大学大学院法学研究科教授
・ 三位一体は同時決着すべき。
・ 全国共通の固有財源と地方独自の自主施策の両方が必要。単に国からの税源移譲だけを求めていたのでは国民の理解が得られない。* 大住荘四郎 新潟大学経済学部教授
・ 歳出の削減と増税の具体的目標を設定する。
・ 優良自治体と一般自治体に振り分け、原則、優良自治体への国庫補助は撤廃、交付金は大幅削減。交付金の算定基準も人口などに局限する。
・ 将来、優良自治体になれなかった自治体は窓口機能のみをのこし、一般事務は都道府県がになう。* 長谷川裕子 関西経済連合会産業地域本部地域グループ次長
・ 財政改革優先の考えは問題。三位一体は地方の自立・分権改革が目的。
・ 中央集権そのものが財政需要を肥大化。
・ まず交付税を改めるべき。交付税税源は地方に移譲し、新たに、住民に見える財政調整の仕組みを構築すべき。* 岸秀隆 監査法人トーマツ代表社員・公認会計士
・ 地方公共団体における受益と負担の明確化が地方分権改革の目的。
・ 義務教育はナショナルミニマムであり国庫が負担しても良い。
・ 地方共同税の創設は地方の独自財源としての性格が明確になるので良い。
・ 財政調整交付金を恒久的措置とする場合は、「国が法令で一定の行政水準の維持を義務づけている事務を国が保障するための機能」に限定すべきである。
・ 「国税、地方税とも増税を伴う税制改革が必要」との案には絶対反対。* 上村多恵子 京南倉庫株式会社代表取締役
・ 地方分権・地方主権の確立は、東京ではめったに話題にならないが、関西はじめ、地方ではずっと問題にしてきた。
・ 明治政府以来の東京を中心とする中央集権、官主導、平等志向、欧米キャッチアップ志向等を基礎とした国のあり方を、根本的に見直す大きな「国家のモデルチェンジ」である。
・ 「その時代に」「その地域に」「そこに住む」人々が、自ら考えもう少し身近に行動できる新しい国と地方の関係を創る必要がある。
・ 国・地方の歳出削減を含めた四位一体論で進めるべきものである。国の財政再建を優先するため、国庫補助金負担や地方交付金の削減が先で、本格的な税源移譲は後からという考え方はおかしい。