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「日本経済」の検索結果 [ 17/25 ]

  • 稲田 義久

    第118回景気分析と予測<企業部門中心の緩やかな回復が続くが成長率は低下>(2018.8.29revised)

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    企業部門中心の緩やかな回復が続くが成長率は低下-消費増税後の景気については不確実性が高まる-

    1.実質GDPは2016年1-3月期から8四半期連続のプラス成長、特に、17年1-3月期から2%超のプラス成長が続き、1%と推計される潜在GDP成長率を3四半期連続で上回った。このため、17年度は景気の回復を久方ぶりに実感できる年となった。この背景には、純輸出の回復とそれに続き内需(特に、民間企業設備)が回復するという好循環があり、しばらくはこの好循環が続くとみる。

    2.8月10日発表のGDP1次速報値によれば、4-6月期実質GDPは前期比+0.5%(同年率+1.9%)と2四半期ぶりのプラス成長となった。4-6月期の実績は、市場コンセンサス(ESPフォーキャスト8月調査)の前期比年率+1.46%より上振れたが、CQM最終予測(支出サイド)の同+2.0%とほぼ同じ結果となった。

    3.4-6月期実質GDP成長率への寄与度を見ると、国内需要は前期比+0.6%ポイント(同年率+2.4%ポイント)と好調で2四半期ぶりのプラス、純輸出は前期比-0.1%ポイント(同年率-0.5%ポイント)と2四半期ぶりのマイナスとなった。結果、1-3月期の景気の落ち込みは一時的なものであることを確認した。

    4.4-6月期GDP1次速報値を織り込み、2018年度の実質GDP成長率を+1.1%、19年度を+0.9%、新たに20年度を+0.6%と予測した。前回(第117回)予測に比して、19年度を+0.2%ポイント上方修正した。緩やかな回復を維持するという予測シナリオに大きな変化はないが、消費増税後の景気については不確実性が高い。

    5.ベースライン予測では、消費増税が予定通り実施されると想定。この影響で19年度後半の景気落ち込みは避けられない。ただ前回に比して、税率引き上げ幅が小幅で軽減税率が適用されること、実施時期が年度の真ん中であること、政府の経済対策、オリンピック需要の影響もあり19年度のマイナス成長は避けられよう。

    6.消費増税の影響は2020年に顕在化する。増税に伴う駆け込み需要増とその反動減は相殺されるが、増税に伴う実質所得減や消費者心理への悪影響は看過できない。前年比でみて、20年の最初の3四半期はゼロないし小幅のマイナス成長が続く。

    7.米国と中国の間で、貿易摩擦が進行している。トランプ政権は6月15日に中国の知的財産権侵害への制裁措置として500億ドルの中国製品に対して25%の追加関税を決定し、中国も同規模の報復関税発動を打ち出した。この直接の影響は今は限定的と見ているが、報復合戦が世界経済に波及すればその影響は大きい。

    8.この状況をシミュレーション(2018-20年に実質世界輸出の伸びが半減し、株価が20%低下)すると、名目世界輸出は2,780-1兆2,280億ドル程度減少し、結果、日本の実質GDPは標準予測から0.3%-0.6%程度減少する。1%程度の潜在成長率が続く日本経済にとって、小さくないインパクトである。

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  • 稲田 義久

    インバウンド先進地域としての関西+MICE

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2018年度 » 日本・関西経済軸

    RESEARCH LEADER : 
    稲田 義久

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    数量経済分析センター長 稲田義久 甲南大学教授

     

    研究目的

    日本経済が人口減少化の下で、将来に亘って持続的な経済成長を実現するためには、新たな成長戦略が必要となる。特に関西経済においては、インバウンド・ツーリズムの戦略的価値が高い。昨年度は、関西におけるインバウンド戦略を検討するための関西基礎統計の整理、マイクロデータによる分析に取り組んだ。

    研究の3つの方向:2017年度に引き続き、関西におけるインバウンド戦略を検討するために、以下の4つの軸を中心にバランスよく研究を進める。

    ①関西基礎統計の整理

    ②マイクロデータによる分析

    ③観光戦略の在り方

    ④MICEに関する調査分析

    特に研究の中心は、②である。具体的には、観光庁が訪日外国人客の消費実態等を把握し、観光行政の基礎資料とする目的で実施してきた訪日外国人消費動向調査個票・宿泊旅行統計調査個票(今年度データ取得予定)を用いたマイクロデータの分析である。

     

    研究内容

    <成長戦略立案のための実証分析>

    産業としての「インバウンド・ツーリズム」を確立するために、近畿運輸局などの協力のもと、エビデンスにもとづいた戦略が議論できるための実証分析を行う。

    具体的には「訪日外国人消費動向調査」等の個票データを用いて、消費品目別の需要関数を推定し、「爆買い」以降のインバウド需要決定の構造的要因を定量的に考察していく。

    <成長戦略立案のための課題の認識>

    政策担当官庁、推進組織、民間団体が認識する「爆買い」以降のマーケティング戦略をめぐる課題を議論できる場を提供し、その解決策を発信する。

    <関西のインバウンド需要の定量分析と他地域との比較分析>

    今年度の個票データを活用した分析により、観光エリアとしての調査分析が可能となり、より詳細な成長戦略立案への具体的な資料提供が可能となる。

    <観光施策についてより実現性のある研究>

    本研究により観光DMOや観光庁、民間の事業方針とマーケティング分析や効果検証が実現できる。

    リサーチャー

    大井達雄 和歌山大学観光学部 教授

    松林洋一 APIR主席研究員、神戸大学教授

    研究協力者

    柴谷淳一 国土交通省・近畿運輸局観光部計画調整官

    森 健夫 関西観光本部 事務局長

    濱田浩一 関西観光本部 事務局次長

    角倉洋介 日本旅行業協会 事務局長

    筒井千恵 関西エアポート㈱ グループリーダー

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    ・関西インバウンド基礎統計の整備

    ・マイクロデータによる分析成果

    ・関西観光戦略の課題の共有化

    ・関西の観光産業の成長戦略の立案

    ・観光ハードとソフトのインフラ整備の選択・集中

    ・DMOのKPIとその検証

     

    <研究会の活動>

    研究会

    ・2018年9月   第1回研究会開催(予定)

    ・2018年11月   第2回研究会開催(予定)

    ・2019年1月   第3回研究会開催(予定)

    ・2019年2月   第4回研究会開催(予定)

    ・2019年3月   第5回研究会開催(予定)

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  • 稲田 義久

    第117回景気分析と予測<117回予測:18年1-3月期GDP2次速報値反映>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    117回予測:18年1-3月期GDP2次速報値反映
    シミュレーション:米中貿易摩擦進行による日本経済への影響

    ・6月8日発表のGDP2次速報値によれば、18年1-3月期の実質GDP成長率は前期比-0.2%、同年率-0.6%となり、1次速報値(前期比-0.2%、同年率-0.6%)から変化なしである。一方、総合的な物価動向を示すGDPデフレータは前期比-0.3%と1次速報値(同-0.2%)から幾分下方修正された。
    ・過去に遡ってデータが改訂された結果、2017年の成長率は、1-3月期+0.1%ポイント、4-6月期+0.1%ポイント、10-12月期+0.5%ポイント、いずれも1次速報値から上方修正された。一方、7-9月期は-0.1%ポイント下方修正された。10-12月期の上方修正幅が比較的大きかったので、2017年度の実質成長率は+1.6%と1次速報値(+1.5%)から0.1%ポイント上方修正された。
    ・1-3月期GDP2次速報値を織り込み、2018年度の実質GDP成長率を+1.1%、19年度を+0.7%と予測。前回(第116回)予測に比して、18年度、19年度、いずれも変化なし。緩やかな回復を維持するという予測シナリオに変化はない。
    ・1-3月期が9四半期ぶりのマイナス成長であったが、足下のデータは1-3月期のマイナス成長は一時的であったことを示唆している。4月の民間消費(消費活動指数や消費総合指数といった供給側統計)と純輸出は、特に強い結果を示している。
    ・標準予測では、海外からの大きなショック(貿易紛争や金融ショック)が生じない限り、しばらく企業部門中心の回復が続くとみている。ただ、景気持続性の観点からは家計の実質所得の着実な拡大が課題である。
    ・米国と中国の間で、貿易摩擦が進行している。トランプ政権は6月15日に中国の知的財産権侵害への制裁措置として500億ドルの中国製品に対して25%の追加関税を決定した。中国も同規模の報復関税発動を打ち出した。今のところ、この直接の影響は限定的と見られているが、経済規模世界第一、第二位の国が報復合戦を起し世界経済に波及すればその影響は大きい。
    ・本予測のシミュレーションとして米中間の貿易摩擦が世界経済に波及するケースを検討する(後掲シミュレーション参照)。具体的には、実質世界輸出の伸びが半減するようなケースを想定する。2016年の実質輸出は前年比2%程度まで落ちたが、17年は5%超の伸びに戻り、いわゆるslow tradeを脱した。標準予測では18-19年は世界実質輸出が4%台後半で推移すると想定している。今この伸びが半減し16年のような貿易状況となった場合の影響を検討した。
    ・2018-19年に実質世界輸出の伸びが半減した場合、名目世界輸出は3,900-8,600億ドル程度減少する。結果、日本の実質GDPは標準予測から0.1-0.25%程度減少する。1%程度の潜在成長率が続く日本経済にとって、小さくないインパクトである。

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  • 稲田 義久

    第116回景気分析と予測<一時的な踊り場をこえ企業部門中心の回復が続く>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    一時的な踊り場をこえ企業部門中心の回復が続く-課題は家計実質所得の改善

    1.GDP1次速報値によれば、1-3月期実質GDPは前期比-0.2%(同年率-0.6%)と9四半期ぶりのマイナス成長となった。また季節調整のかけ直しや基礎統計の改定に伴い過去の値が改定され、2017年の3四半期はいずれも前回から下方修正された。結果、2017年度の実質GDPは+1.5%と3年連続のプラス成長となったが、実績は超短期最終予測(+1.7%)より低めとなった。

    2.1-3月期実質GDP成長率への寄与度を見ると、国内需要は前期比-0.2%ポイント(同年率-0.9%ポイント)と2四半期ぶりのマイナス、純輸出は前期比+0.1%ポイント(同年率+0.3%ポイント)と2四半期ぶりのプラスとなったが小幅の寄与にとどまった。実質GDPのマイナス成長は一時的で、これまで順調な回復の踊り場とみている。大雪や生鮮野菜価格の高騰による民間最終消費支出の小幅減少や民間住宅の低迷、加えて企業設備の減少や輸出の減速が複合的に影響している。

    3.1-3月期GDP1次速報値を織り込み、2018年度の実質GDP成長率を+1.1%、19年度を+0.7%と予測を改定した。過去値の下方修正から成長の下駄が低くなったため、前回(第115回)予測に比して、18年度+0.1%ポイント、19年度+0.1%ポイント、いずれも小幅の下方修正となった。ただ緩やかな回復を維持するという予測シナリオに大きな変化はない。

    4.ベースライン予測では、2019年10月に消費増税が予定通り実施されると想定している。この影響で19年度後半の景気落ち込みは避けられない。ただ前回(14年4月実施)に比して、税率引き上げ幅が小幅にとどまること、飲食料品と新聞には軽減税率が適用されること、実施時期が年度の真ん中であること、またオリンピック需要の影響もあり19年度のマイナス成長は避けられよう。

    5.海外からの大きなショック(貿易紛争や金融ショック)が生じない限り、しばらく企業部門中心の回復が続くが、景気持続性の課題は家計の実質所得拡大である。所得環境は改善しているが、春闘賃上げは3%を下回り厳しい状況である。加えて消費者物価が緩やかに上昇する中、非勤労者世帯を含む家計全体の実質可処分所得の伸びは実質雇用者報酬の伸びを下回る。実質民間最終消費支出の伸びは低調となる。

    6.原油価格は前回予測を上回る上昇となっている。これらの変化を織り込み、消費者物価コア指数のインフレ率は、18年度+1.1%、19年度は消費増税の影響で+1.6%と予測。国内企業物価指数は+2.1%、+2.4%。18年度はガソリン価格の高騰によりいずれも上方修正となった。GDPデフレータは、+0.1%、+1.1%と予測している。日銀は4月の展望レポートの中で、消費者物価コア指数の見通しを、18年度+1.3%、19年度+2.3%(+1.8%、除く消費税の影響)とみており、18年度を前回から0.1%ポイント下方修正した。この予測実現には依然困難が伴うと思われる。

     

    ※ 英語版はこちら

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  • 木下 祐輔

    北陸新幹線開業後、北陸と関西の結びつきはどう変わったか

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    木下 祐輔 / 馬場 孝志

    ABSTRACT

    2018年3月14日の北陸新幹線開業以来3年間の大学進学先や就職先などの「人」の流れに着目して分析した結果、北陸と関東間の関係性は強化される一方、関西間との関係性は相対的に弱くなっていることがわかった。
    現在関西では、北陸新幹線だけでなく、様々な交通インフラの整備計画が進行中である。財源の確保や、関係者間の利害調整など、いくつもの壁を乗り越える必要があるが、これらの事業は、国内に点在する地域資源を結び付け、新たなイノベーションを生むだけでなく、海外と国内地域を結ぶ交通ネットワークにも大きな経済的インパクトをもたらす可能性を秘めている。グローバルに開かれた日本経済を支える屋台骨として交通インフラ整備を位置づけ、より俯瞰的な視点から、検討を行うべきであろう。

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  • 稲田 義久

    第115回景気分析と予測<企業部門中心の回復の持続可能性に疑問符:課題は家計の実質所得拡大>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    企業部門中心の回復の持続可能性に疑問符:課題は家計の実質所得拡大

    1.GDP1次速報値によれば、10-12月期実質GDPは前期比+0.1%(同年率+0.5%)増加した。バブル期以来の8四半期連続のプラスだが、成長率は前期から減速した。季節調整のかけ直しや基礎統計の改定に伴い過去の値が改定され、2017年の3四半期はいずれも下方修正された。結果、2017暦年の実質成長率は6年連続のプラス成長となったが、+1.6%と予想より幾分低めの成長率となった。

    2.10-12月期実質GDP成長率の減速は輸入の増加、民間在庫変動の減少による。一方、民間最終消費支出は増加となったが前期の減少幅を回復できていない緩やかな回復で、民間企業設備と輸出が拡大し成長率を押し上げるという企業部門中心の景気回復といえよう。実質GDP成長率への寄与度を見ると、国内需要は前期比+0.1%ポイント(前期比年率+0.6%ポイント)と5四半期連続のプラス、純輸出は同-0.0%ポイント(同-0.1%ポイント)と2四半期ぶりのマイナスとなった。

    3.10-12月期GDP1次速報値を織り込み、2017年度の実質GDP成長率を+1.7%、18年度+1.2%、19年度+0.8%と予測を改定した。前回(第114回)予測に比して、17年度は過去値が下方修正されたが変化なし。18年度は+0.1%ポイント、19年度-0.1%ポイント、いずれも小幅の修正。予測シナリオに大きな変化なしである。

    4.ベースライン予測では、2019年10月に消費増税が予定通り実施されると想定している。この影響で19年度後半の景気落ち込みは避けられない。ただ前回(14年4月実施)に比して、税率引き上げ幅が小幅にとどまること、飲食料品と新聞には軽減税率が適用されること、実施時期が年度の真ん中であること、またオリンピック需要の影響もあり19年度のマイナス成長は避けられよう。

    5.今回の景気回復は2017年12月で「いざなぎ景気(1965年11月~70年7月)」を超えて戦後2番目の長さ(61カ月)となった。19年1月に「いざなみ景気(2002年2月~08年2月)」超えの可能性が見えてきた。海外からの大きなショック(貿易戦争や金融ショック)が生じない限り、しばらくは企業部門中心の回復が続くが、持続性の課題は家計の実質所得拡大である。

    6.原油価格の上昇幅を前回予測から上方修正。これらの変化を織り込み、消費者物価コア指数のインフレ率は、2017年度+0.8%、18年度+0.9%、19年度は消費増税の影響で+1.6%と予測。17年度は小幅の上方修正。国内企業物価指数は+2.7%、+1.9%、+2.7%。GDPデフレータは0.0%、+0.7%、+1.9%と予測している。日銀は1月の展望レポートの中で、消費者物価コア指数の見通しを、17年度+0.8%、18年度+1.1%、19年度+2.3%(+1.8%、除く消費税の影響)とみており、いずれも前回からは変化なしである。この予測実現には依然困難が伴うと思われる。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.37 <緩やかな内需の好循環で総じて改善している>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / CAO THI KHANH NGUYET / 生田 祐介 / 馬 騰

    ABSTRACT

    緩やかな内需の好循環で総じて改善している先行きは成長率低下を見込み、リスクの顕在化に注意

    1.2017年10-12月期の実質GDP成長率は、前期比年率+0.5%(前期比+0.1%)と8四半期連続のプラスとなった。成長に対する寄与度をみると、国内需要は+0.6%ポイントで5四半期連続のプラスとなった。民間消費や設備投資が堅調に成長を下支えしたが、在庫循環の進展から在庫品増加がマイナスの寄与となった。純輸出は同-0.1%ポイントと小幅ではあるが2四半期ぶりに成長を押し下げた。

    2.2017年10-12月期の関西経済は、前期に引き続き総じて堅調な改善ペースを維持した。家計部門は、消費者センチメント、所得環境、雇用環境など改善が見られ、堅調である。企業部門では、景況感は好調を維持し、生産も持ち直している。対外部門は輸出輸入とも拡大が続いている。公的部門は、底打ちの動きを見せている。

    3.関西の実質GRP成長率を2017年度+1.8%、18年度+1.5%、19年度+0.9%と予測する。前回の予測結果と比較すると、17年度は修正なし、18年度は+0.1%ポイントの上方修正、19年度は-0.2%ポイントと下方修正とした。

    4.実質GRP成長率に対する各需要項目の寄与度を見ると、先行きでの成長率低下は民需が主因である。2017年度は民間需要が中心となり成長に貢献する。18年度は前年度に似た民需中心の成長パターンとなるが寄与度はやや小さくなる。19年度は民需の寄与がさらに小幅となるが、外需とともに成長を下支えする。

    5.日本経済予測と比較すると、堅調な輸出にともなう外需の貢献から17年度以降は全国を上回る成長率で推移する。日本経済予測に比べて特に外需の貢献が関西では大きい。

    6.足下では総じて好調な関西経済であるが、在庫循環や景気先行指標などでは景気後退局面への移行を示唆するシグナルも見え始めている。標準予測に対するリスク要因として、円高進行リスク、地方金融機関の経営リスクを指摘している。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.36 <停滞を抜け、堅調な改善が続いている。実感のある景気回復を定着させよ>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / CAO THI KHANH NGUYET / 生田 祐介 / 馬 騰

    ABSTRACT

    停滞を抜け、堅調な改善が続いている。実感のある景気回復を定着させよ

    1.2017年7-9月期実質GDP成長率は前期比+0.4%(同年率+1.4%)と7四半期連続のプラス。市場コンセンサスにほぼ一致する結果であった。成長に対する寄与度をみると、国内需要は-0.2%ポイントで4四半期ぶりのマイナス。純輸出は同+0.5%ポイントと2四半期ぶりのプラスとなった。

    2.2017年7-9月期の関西経済は、堅調な改善ペースを維持した。家計部門は、堅調に推移している。住宅市場や雇用環境では改善傾向に一服感が出ているが、消費者センチメントや所得環境は、足下改善している。企業部門は、景況感は好調を維持しているが、生産は弱い動きであり、在庫は積み上がり局面を迎えている。対外部門は輸出輸入とも拡大が続いており、貿易収支は黒字基調が定着している。公的部門は、大幅な前年割れが続いていたが、足下では底打ちしている。

    3.関西の実質GRP成長率を2017年度+1.8%、18年度+1.4%、19年度+1.1%と予測する。日本経済予測の下方修正を反映した結果、前回の予測結果と比較して、2017年度は0.1%ポイント、18年度は0.3%ポイントのともに下方修正である。なお今回から19年度の予測を新たに追加した。

    4.実質GRP成長率に対する各需要項目の寄与度を見ると、2017年度は民間需要が+1.1%ポイント、公的需要+0.1%ポイント、外需+0.6%ポイントと、各項目がバランスよく成長に貢献する。18年度は民間需要+0.8%ポイント、公的需要+0.1%ポイント、外需+0.5%ポイント、19年度は民間需要+0.6%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、外需+0.3%ポイントとなる。成長に対する寄与度は徐々に減速していくが、バランスの良い成長パターンが続こう。

    5.日本経済予測と比較すると、2015-16年度の回復の立ち遅れから転じて17年度以降は全国を上回る成長率で推移する。内需の寄与は日本経済予測とほぼ同じであるが、外需はアジア向けを中心とした輸出の伸びが旺盛なことと純移出の貢献から、全国よりも寄与が大きくなる。

    6.県内GDP早期推計(2015-16年度実績見通し)を改定した。関西2府4県の実質GRP成長率(生産側)の実績見通しは、2015年度-0.0%、16年度-0.4%となる。日本経済(GDP)では15-16年度にプラス成長に回復していたのとは対照的に、関西は2年連続でマイナス成長であった。なお2017年度(超短期予測、参考値)は+1.4%と3年ぶりのプラス成長に回復する。

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  • 稲田 義久

    第114回景気分析と予測<7期連続のプラス成長を確認するが、課題は実質雇用者所得の拡大>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    7期連続のプラス成長を確認するが、課題は実質雇用者所得の拡大

    1.GDP1次速報値によれば、7-9月期実質GDP成長率は前期比+0.4%(同年率+1.4%)と7四半期連続のプラス。潜在成長率を上回る成長が続いている。実績は市場コンセンサスにほぼ一致した。なおCQM最終予測は、支出サイドが同年率+0.2%と実績よりも下振れた。

    2.実質成長率への寄与度を見ると、国内需要は前期比-0.2%ポイントと4四半期ぶりのマイナス、純輸出は同+0.5%ポイントと2四半期ぶりのプラス。4-6月期とは逆の回復パターンである。これまで成長を牽引してきた民間最終消費支出、民間住宅、公的固定資本形成が内需を押し下げた。一方、輸出は2四半期ぶりに増加。Slow trade脱却の兆しは明瞭で、日本経済にとって輸出市場の持続的回復が期待できる。

    3.7-9月期GDP1次速報値を織り込み、2017年度の実質GDP成長率を+1.7%、18年度+1.1%。今回新に19年度を+0.9%と予測した。前回(第113回)予測に比して、17年度は-0.3%ポイントと比較的大幅の、18年度は-0.1ポイントと小幅の、いずれも下方修正となった。17年度の下方修正は4-6月期の成長率が2次速報値で大幅下方修正(前期比年率+4.5%→+2.5%)された影響である。ただ、半期ベース(4-9月期)では前期比2%程度の堅調な成長となっている。

    4.ベースライン予測では、2019年10月に消費増税が予定通り実施されると想定している。この影響で19年度後半の景気落ち込みは避けられない。ただ前回(14年4月実施)に比して、税率引き上げ幅が小幅にとどまること、飲食料品と新聞には軽減税率が適用されること、実施時期が年度の真ん中であることなどから19年度のマイナス成長は避けられよう。

    5.今回の景気回復は2017年9月で「いざなぎ景気(1965年11月~70年7月)」を超えて58カ月と戦後2番目の長さとなった。19年1月に「いざなみ景気(2002年2月~08年2月)」超えの可能性も見えてきた。ただ今回の景気回復は途中に消費増税による景気の踊り場を含んでおり、景気回復の実感を伴うものではない。景気回復が持続可能となるため課題は実質雇用者所得の拡大となろう。

    6.原油価格の上昇幅を前回予測から上方修正した。これらの変化を織り込み、消費者物価コア指数のインフレ率は、2017年度+0.7%、18年度+1.0%、19年度は消費増税の影響で+1.7%と予測。前回から上方修正となっている。また国内企業物価指数は+2.7%、+2.0%、+2.8%となる。GDPデフレータは+0.1%、+0.9%、+1.5%と予測している。日銀は10月の展望レポートの中で、消費者物価コア指数の見通しを、17年度+0.8%、18年度+1.1%と前回からは下方修正しているが、19年度は+2.3%と変化なしである。この予測実現には依然困難が伴うと思われる。

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  • 稲田 義久

    第113回景気分析と予測<足下堅調な景気回復を確認するが、先行き持続性に難点>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    足下堅調な景気回復を確認するが、先行き持続性に難点

    1.GDP1次速報値によれば、4-6月期実質GDP成長率は前期比年率+4.0%(前期比+1.0%)と6四半期連続のプラス。潜在成長率を上回る成長が続いている。実績は市場コンセンサス(2%台前半)から大幅に上振れた。CQM最終予測は、支出サイドが同+2.8%、生産サイドが同+3.0%、平均同+2.9%である。

    2.基礎統計の追加と推計方法の変更の結果、過去値が遡及改訂された。16年度の四半期実質成長率のパターンを前回と比較すると、4-6月期こそ下方修正されたものの、7-9月期、10-12月期、1-3月期、いずれも上方修正された。結果、2016年度の実質成長率は+1.3%と前回から上方修正された。また17年度にかけての実質成長率の下駄が+0.6%と前回から上昇している。

    3.4-6月期実質GDP成長率への寄与度を見ると、国内需要は前期比年率+5.1%ポイントと3四半期連続のプラス、純輸出は同-1.1%ポイントと6四半期ぶりのマイナス。これまで成長を牽引してきた輸出は4四半期ぶりのマイナス、民間最終消費支出の大幅拡大、民間企業設備の好調、補正予算の影響が出だした公的固定資本形成の大幅増加が特徴といえよう。

    4.4-6月期GDP1次速報値を織り込み、2017年度の実質GDP成長率を+2.0%、18年度+1.2%と予測する。前回(第112回)予測に比して、17年度は+0.6%ポイントの大幅上方修正、18年度は+0.1ポイントの小幅上方修正。17年度にかけての成長率の下駄の影響もあり、大幅な上方修正となった。

    5.1-3月期、4-6月期に見られた民間最終消費支出の回復は消費性向の急上昇に支えられている。問題は好条件に支えられた消費性向の持続性である。緩やかな所得環境の回復に対してエネルギー価格の上昇から消費者物価が上昇し、実質可処分所得の伸びは減速する。合わせて消費性向が低下するため17年度後半から18年度の民間最終消費支出の伸びは減速しよう。

    6.原油価格の上昇幅を前回予測から下方修正した。これらの変化を織り込み、消費者物価コア指数のインフレ率は、2017年度+0.5%、18年度+0.8%と予測。前回から下方修正となっている。また国内企業物価指数は+2.1%、+1.6%となる。GDPデフレータは+0.3%、+0.3%と予測している。日銀は7月の展望レポートの中で、消費者物価コア指数の見通しを、17年度+1.1%、18年度+1.5%と引き続き下方修正しているが、この予測実現には困難が伴うと思われる。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.35 <緩やかな改善が続く関西経済>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / CAO THI KHANH NGUYET / 生田 祐介

    ABSTRACT

    緩やかな改善が続く関西経済

    1.2017年4-6月期実質GDP成長率は前期比年率+4.0%(前期比+1.0%)と6四半期連続のプラスとなった。市場コンセンサスから大幅に上振れた。国内需要の寄与度は前期比年率+5.1%ポイントと3四半期連続のプラス、純輸出は同-1.1%ポイントと6四半期ぶりのマイナス。内需主導型の堅調な回復となった。

    2.2017年4-6月期の関西経済は、緩やかな改善が続いている。家計部門、企業部門ともに持ち直しており、特に企業部門の景況感は先行きも明るい。またこれまで関西では改善が遅れていた所得環境でも、まだ楽観視はできないものの、ようやく上昇の気配が見えてきた。対外部門では、対アジアを中心に輸出輸入とも持ち直してきており、貿易収支は黒字基調が続いている。ただし公的部門は、弱い動きとなっている。

    3.関西の実質GRP成長率を2017年度+1.9%、18年度+1.7%と予測する。前回の予測結果と比較すると、関西経済の足下での底堅さと日本経済予測の上方修正を受けて、17年度+0.5%ポイント、18年度+0.4%ポイントとともに上方修正とした。なお過年度の実績見通しについては、前回予測から大きな修正はない。

    4.実質GRP成長率に対する各需要項目の寄与度を見ると、2017年度は民間需要が+1.1%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、外需+0.7%ポイントと、各項目がバランスよく成長に貢献する。18年度は民間需要+0.9%ポイント、公的需要+0.1%ポイント、外需+0.7%ポイントと前年度に比べるとやや内需が減速するが、前年度に続いてバランスの良い成長パターンを見込む。

    5.日本経済予測と比較すると、2015-16年度の回復の立ち遅れから転じて17年度は全国並み、18年度は全国を上回る成長率で推移しよう。内需の寄与は日本経済予測より小幅にとどまるが、外需はアジア向けを中心とした輸出の伸びが旺盛なことと純移出の貢献から、全国よりも寄与が大きくなる。

    6.インバウンド消費の関西経済に対する影響について分析した。訪日外国人消費は2016年の関西GRPを約0.86%、就業者を約1.25%押し上げる効果をもたらした。インバウンド需要は「爆買いから新たな拡張局面へ」移行したといえる。

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  • 稲田 義久

    インバウンド先進地域としての関西

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2017年度 » 日本・関西経済軸

    RESEARCH LEADER : 
    稲田 義久

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    数量経済分析センター長 稲田義久 甲南大学教授

     

    研究目的

    世界に通用する観光圏「関西」形成の必要性:日本経済が人口減少化の下で、将来に亘って持続的な経済成長を実現するためには、新たな成長戦略が必要となる。特に関西経済においては、インバウンド・ツーリズムの戦略的価値が高い。今や、その戦略のステージは、第1フェーズから「インバウンド先進地域としての関西社会をいかに設計していくのか」の第2フェーズにある。昨年度は、持続的経済成長を支える第2フェーズのテーマである「産業化」実現のキラーコンテンツとなり得る「健康」と「観光」を掛け合わせたウェルネス・ツーリズムの可能性について研究した。。

    研究の3つの方向:関西における第2フェーズのインバウンド戦略を検討するにおいて、本年度は以下の3つの軸を中心にバランスよく研究を進める。

    ① 関西基礎統計の整理

    ②マイクロデータによる分析

    ③観光戦略の在り方

    特に研究の中心は、②である。具体的には、観光庁が訪日外国人客の消費実態等を把握し、観光行政の基礎資料とする目的で実施してきた訪日外国人消費動向調査個票を用いたマイクロデータの分析である。

     

    研究内容

    <成長戦略立案のための実証分析>

    産業としての「インバウンド・ツーリズム」を確立するために、近畿運輸局などの協力のもと、エビデンスにもとづいた戦略が議論できるための実証分析を行う。

    具体的には「訪日外国人消費動向調査」の個票データを用いて、消費品目別の需要関数を推定し、「爆買い」以降のインバウド需要決定の構造的要因を定量的に考察していく。

    <成長戦略立案のための課題の認識>

    政策担当官庁、推進組織、民間団体が認識する「爆買い」以降のマーケティング戦略をめぐる課題を議論できる場を提供し、その解決策を発信する。

     

    リサーチャー

    大井達雄 和歌山大学観光学部 教授

    松林洋一 アジア太平洋研究所主席研究員、神戸大学教授

    研究協力者

    角谷敬二郎 国土交通省 近畿運輸局観光部 計画調整官

    森 健夫 関西観光本部 事務局長

    濱田浩一 関西観光本部 事務局次長

    角倉洋介 日本旅行業協会 事務局長

    筒井千恵 関西エアポート㈱ グループリーダー

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    ・関西インバウンド基礎統計の整備

    ・マイクロデータによる分析成果

    ・関西観光戦略の課題の共有化

    ・関西の観光産業の成長戦略の立案

    ・観光ハードとソフトのインフラ整備の選択・集中

    ・DMOのKPIとその検証

     

    <研究会の活動>

    研究会

    ・2017年6月13日   キックオフミーティング開催

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  • 稲田 義久

    第112回景気分析と予測<着実な回復を予測するが、リスクは輸出の停滞とインフレの加速>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    着実な回復を予測するが、リスクは輸出の停滞とインフレの加速

    1.GDP1次速報値によれば、1-3月期実質GDP成長率は前期比年率+2.2%と5四半期連続のプラスとなった。潜在成長率を上回る成長が続いている。実績は市場コンセンサス(ESPフォーキャスト5月調査:+1.71%)から上振れた。CQM最終予測は、支出サイドが同+3.4%、生産サイドが同+1.5%、平均同+2.5%であった。実績は支出サイド予測より下振れ、両サイド平均にほぼ等しくなった。

    2.1-3月期実質GDP成長率への寄与度を見ると、内需は前期比年率+1.5%ポイントと3四半期ぶりのプラス、純輸出は同+0.6%ポイントと3四半期連続のプラスとなった。内需外需バランスよく実質GDP成長率に寄与した。輸出の3四半期連続のプラス、民間最終消費支出の回復、減少が続いていた在庫投資のプラス転換が今回の特徴といえよう。結果、2016年度の実質GDP成長率は+1.3%と2年連続のプラス、名目GDP成長率は+1.2%と5年連続のプラス成長となった。

    3.1-3月期GDP1次速報値を織り込み、2017年度の実質GDP成長率を+1.4%、18年度+1.1%と予測する。前回(第111回)予測に比して、17年度は変化なし、18年度-0.1ポイント下方修正となった。予測結果に大きな変更はないが、内容的にはより輸出拡大に支えられた回復である。

    4.この数年、世界貿易の伸びが世界GDPの伸びを下回る状況が続いていたが、2017年以降はこの関係が逆転する。これを予測に反映して、日本の輸出の伸びは前回予測より強めとなった。ただし、米トランプ政権による貿易戦争や深刻な政策ミスがないという条件付きである。

    5.1-3月期に見られた民間最終消費支出の回復は、2017年度はあまり期待できない。雇用者数は増加するが、賃金の伸びが減速することに加えエネルギー価格の上昇から消費者物価が上昇し、結果、実質賃金の伸びがマイナスに転じるためである。着実な回復は18年度となろう。先述した米国発の貿易戦争に加え、消費者物価インフレの加速が回復シナリオにとってリスクとなろう。

    6.原油価格の上昇幅を前回予測から下方修正した。これらの変化を織り込み、消費者物価コア指数のインフレ率は、2017年度+0.7%、18年度+0.8%と予測。前回から下方修正となっている。また国内企業物価指数は+1.9%、+1.0%となる。GDPデフレータは-0.1%、+1.0%と予測している。日銀は4月の展望レポートの中で、消費者物価コア指数の見通しを、17年度+1.4%、18年度+1.7%としているが、この予測実現には困難が伴うと思われる。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.34 <停滞を抜けて内外需とも好材料が見られる関西 先行きの力強い改善に期待>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / James Brady / CAO THI KHANH NGUYET / 生田 祐介

    ABSTRACT

    停滞を抜けて内外需とも好材料が見られる関西 先行きの力強い改善に期待

    1.2017年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.2%(前期比+0.5%)となった。5四半期連続のプラス成長で、潜在成長率を超える成長率が続いている。GDP成長率に対する寄与度をみると、国内需要が+1.5%ポイント、外需が+0.6%ポイントとバランスの良い成長となった。特に輸出と消費が成長を牽引した。

    2.2017年1-3月期の関西経済は、内需・外需の両方に好材料が見られはじめ、先行きの力強い改善に期待を持たせる内容となった。家計部門、企業部門ともに持ち直している。対外部門についても、対アジアを中心に輸出輸入とも持ち直してきており、貿易収支は黒字基調が続いている。一方、公的部門は、弱い動きとなっている。また所得環境については、前年割れが続き、全国の伸びと比べて低調である。

    3.関西の実質GRP成長率を2017年度+1.4%、18年度+1.3%と予測する。足下での景気指標の持ち直しの動きを反映して、前回予測から17年度+0.3%ポイント、18年度+0.2%ポイントのそれぞれ上方修正とした。また過年度の実績見通しについては県内GDP早期推計の改定を反映し、15年度は修正なし、16年度は-0.6%ポイントの下方修正とした。

    4.実質GRP成長率に対する各需要項目の寄与度は、2017年度は民間需要が+0.6%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、外需+0.6%ポイント、各項目がバランスよく成長に貢献する。18年度も内需外需ともに成長を牽引するパターンが続き、民間需要+0.6%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、外需+0.6%ポイントと見込む。

    5.日本経済予測と比較すると、関西の成長率自体は全国に近い結果となるが、需要項目の寄与のパターンは異なる。民需は所得環境の回復の動きが緩慢であることから、民間消費の貢献が全国に比べて小さく、公的需要も日本経済予測に比べて小幅にとどまる。一方外需については、アジア向けを中心とした輸出の伸びが旺盛なことと純移出の貢献から、全国よりも寄与が幾分大きくなる。

    6.2015-16年度の県内GDP早期推計を改定した。関西2府4県の実質GRP(生産側)の合計は、2015年度が84.98兆円、16年度が84.80兆円となり、実質成長率では2015年度-0.06%、16年度-0.21%と予測される。全国でプラス成長が続いたのとは異なり、15-16年度の関西経済は、横ばいで停滞したことになる。

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  • 稲田 義久

    第111回景気分析と予測<新推計GDPを反映し成長率予測を上方修正>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    新推計GDPを反映し成長率予測を上方修正

    1.GDP1次速報値によれば、10-12月期実質GDP成長率は前期比年率+1.0%(前期比+0.2%)と4四半期連続のプラスとなった。潜在成長率を上回る成長が続いている。実績は市場コンセンサス(ESPフォーキャスト2月調査)から幾分下振れた。なおCQM最終予測は、支出サイドが前期比年率+1.0%、生産サイドが同+1.3%、平均同+1.1%と、ピンポイントの結果であった。

    2.10-12月期実質GDP成長率への寄与度を見ると、内需は前期比年率-0.0%ポイントと小幅ながら2四半期連続のマイナス、純輸出は同+1.0%ポイントと2四半期連続のプラスとなった。内需は引き続き低調であるが、輸出の大幅プラスが実質GDP成長率プラスの主要因といえよう。

    3.米国大統領選後から就任式まで続いていた円安・株高の好調な風は幾分変化の兆しを見せている。トランプ大統領のダイナミックな政策対応が今後の国際環境をめぐる見通しの不確実性を強めているからだ。多くの米国経済のベースライン予測にみられるように、政策効果が表れる2018年は17年より成長加速が期待されている。ただし、貿易戦争や深刻な政策ミスがないという条件付きである。

    4.10-12月期GDP1次速報値を織り込み、2016年度の実質GDP成長率は+1.2%、17年度+1.4%、18年度+1.2%と予測する。前回(第110回)予測に比して、16年度0.2%ポイント、17年度0.3%ポイント、18年度0.3ポイント、いずれも上方修正となった。上方修正の主たる理由は、GDP推計方法の変更である。

    5.財政政策として「未来への投資を実現する経済対策」及び第2次補正予算の効果を期待したが、10-12月期の公的固定資本形成は2四半期連続の前期比マイナスとなった。公的需要は17-18年度にわたり景気を下支えしよう。18年度は保守的な当初予算を想定するため影響は幾分減じるが、これまでのパターンからすれば新たな補正予算成立の可能性が高い。

    6.12月のガソリン価格は25カ月ぶりに前年比プラスとなった。これらの変化を織り込み、消費者物価コア指数のインフレ率は、2016年度-0.2%、17年度+0.8%、18年度+1.0%と予測。前回から上方修正となっている。また国内企業物価指数は-2.4%、+1.8%、+1.0%となる。GDPデフレータは-0.1%、-0.1%、+0.8%と予測している。日銀は1月の展望レポートの中で、消費者物価コア指数の見通しを、16年度-0.2%、17年度+1.5%、18年度+1.7%としているが、この予測実現には困難が伴うと思われる。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.33 <岐路に立つ関西経済、持ち直しの動きを持続できるか 内需の好循環で成長を持続しリスクに備えよ>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 林 万平 / 木下 祐輔 / James Brady / CAO THI KHANH NGUYET

    ABSTRACT

    岐路に立つ関西経済、持ち直しの動きを持続できるか 内需の好循環で成長を持続しリスクに備えよ

    1.2016年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.0%(前期比+0.2%)となった。市場コンセンサスより下振れたが、APIR超短期予測とほぼ一致する結果であった。在庫循環の進展から在庫品増加がマイナスに寄与したこともあり、国内需要は小幅ながら2四半期連続のマイナスとなったが、輸出の大幅増で外需が下支えした。4期連続のプラス成長で、日本経済は潜在成長率よりも高い成長率で推移している。

    2.2016年10-12月期の関西経済は、緩やかな回復を示した。家計部門は、持ち直しの動きがみられる。消費者心理や百貨店販売額、雇用環境は改善しており、個人消費は底堅く推移している。企業部門も持ち直している。生産は増加基調が続いており、在庫調整が進展している。輸出は対アジアを中心に底打ちしている。

    3.景気の懸念材料として、所得環境の停滞と、企業の景況感の伸び悩みがある。所得環境は2016年下期以降マイナス圏での推移が続いており、これが消費の伸びの足枷となっている。また企業の先行き見通しは諸々の不確実性に伴うリスクからやや消極的となっている。持続的で底堅い景気回復、また諸々のリスクに対する備えのために、所得環境の改善を通じた内需の好循環が必要であろう。

    4.関西の実質GRP成長率を2016年度+0.8%、17年度+1.1%、18年度+1.1%と予測する。前回予測と比較して、2016-17年度はそれぞれ0.2%ポイント、0.3%ポイントの上方修正。足下での輸出の回復から外需の貢献を前回よりも大きく見積った。18年度は民需を上方修正、外需を下方修正した結果、トータルでは修正なしである。

    5.2016年度は民間需要が+0.4%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、外需+0.2%ポイントで、主に内需が成長を押し上げる。17年度は外需も緩やかに復調し、民間需要+0.4%ポイント、公的需要+0.3%ポイント、外需+0.4%ポイントと、各項目がバランスよく成長に貢献する。18年度には民需の貢献がより大きくなり、民間需要+0.6%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、外需+0.3%ポイントとなる。

    6.日本経済予測と比較すると、関西の成長率は日本経済予測の結果より下回って推移する。所得環境の回復の動きが緩慢であること等から、民需の伸びが全国に比べて小さいため。公的需要も、日本経済予測に比べて貢献は小さい。外需については、純移出の貢献から、17年度以降は全国よりも寄与が幾分大きくなる。

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  • 稲田 義久

    第110回景気分析と予測<7-9月期純輸出の上振れを反映し成長率予測を上方修正>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    7-9月期純輸出の上振れを反映し成長率予測を上方修正

    1.GDP1次速報値によれば、7-9月期実質GDP成長率は前期比年率+2.2%(前期比+0.5%)と3四半期連続のプラスとなった。実績は市場コンセンサスやCQM予測からから上振れ、ポジティブサプライズとなった。

    2.7-9月期実質GDP成長率への寄与度を見ると、内需は前期比年率+0.4%ポイントと小幅ながら3四半期連続のプラス、純輸出は同+1.8%ポイントと2四半期ぶりのプラスとなった。純輸出の大幅プラスが実質GDP成長率プラスの主要因である。

    3.国際環境を見れば、BREXITに加えドナルド・トランプ氏の大統領選勝利は、世界経済に新たな不確実性とボラティリティ―をもたらした。トランプ大統領誕生の世界経済に与える影響の度合いは、(1)保護主義のポピュリズム、(2)成長加速のポピュリズムのどちらが、彼の主要なテーマとなるかで決まる。われわれは後者をメインシナリオと考えるが、いずれのテーマの実現にもしばらく時間がかかり、先行き不確実性は極めて高いといえよう。足下、日本経済にとっては円安・株高の好調な風が吹いているが、これがいつまで続くかの見極めが重要である。

    4.7-9月期GDP1次速報値を織り込み、2016年度の実質GDP成長率は+1.0%、17年度は+1.1%、18年度は+0.9%と予測する。前回(第109回)予測に比して、16年度0.3%ポイント、17年度0.1%ポイント、いずれも上方修正となった。なお、今回新たに18年度を予測した。16年度は7-9月期の好調な純輸出を反映して前回予測から上方修正した。

    5.財政政策として「未来への投資を実現する経済対策」及び第2次補正予算の効果を考慮した結果、公的需要は16-17年度にわたり景気を下支えする。18年度は保守的な当初予算を想定するため影響は幾分減じる。

    6.足下消費者物価コア指数は前年比マイナスが続いている。これを織り込み、同指数のインフレ率は2016年度-0.4%、17年度+0.5%、18年度+1.0%と予測。国内企業物価指数は-2.7%、+0.4%、+0.3%となる。GDPデフレータは-0.1%、-0.4%、-0.1%と予測している。日銀は10月の展望レポートの中で、消費者物価コア指数の見通しを、16年度-0.1%、17年度+1.5%、18年度+1.7%としているが、実現には困難が伴うと思われる。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.32 <足下は停滞局面続くも先行きに緩やかな持ち直しの兆し>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 林 万平 / 木下 祐輔 / James Brady / CAO THI KHANH NGUYET

    ABSTRACT

    足下は停滞局面続くも先行きに緩やかな持ち直しの兆し

    1.2016年7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.2%(前期比+0.5%)となった。3四半期連続のプラス成長で、事前の市場コンセンサスを大きく上回る結果となった。家計消費をはじめとする国内需要は振るわなかったが、純輸出が高い伸びを示し、GDP成長率を押し上げた。

    2.足下の関西経済は、停滞局面を抜けて、先行きに緩やかな回復の兆しが見られはじめた。家計部門は、弱めの動きとなっている。消費者心理は改善しつつあるが、所得環境は足下で伸び悩んでいる。雇用環境では依然堅調な改善が続いているとはいえ、ペースはやや鈍化傾向にある。一方企業部門は、景況感や生産などで弱い動きから持ち直しの動きが見られる。域外取引では、貿易収支は黒字基調であるものの、輸出と輸入はともに停滞が続いている。

    3.関西の実質GRP成長率を2016年度+0.6%、17年度+0.8%、18年度+1.1%と予測する。前回の予測結果と比較すると、2016年度は小幅の下方修正、17年度は修正なしである。今回から18年度の予測を新たに追加した。

    4.日本経済予測と比較すると、関西の成長率は2016-17年度にかけて日本経済予測の結果より下回って推移すると見込む。所得環境の回復の動きが弱いこと等から民需の伸びは比較的緩慢である。また輸出の停滞から外需の寄与も全国に比べて小さい。一方18年度は、中国経済の復調で外需が伸び、全国よりも高い成長率を見込む。

    5.2016年度は民間需要が+0.4%ポイント、公的需要+0.2%ポイントと内需が成長を押し上げるが、外需は成長に対して寄与しない。17年度は小幅ながら各項目がバランスよく成長に貢献する。18年度は、民間需要+0.5%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、外需+0.4%ポイントと、民需と外需の貢献が拡大する。

    6.県内GDP早期推計(2014-15年度実績見通し)を改定した。関西2府4県の実質GRP成長率(生産側)は2014年度+0.28%、15年度が-0.09%と予測。一部に堅調な成長を続ける府県があるものの、経済規模の大きい大阪府の景気が振るわないことなどにより、回復軌道になかなか乗れない状況にあったと見込まれる。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.31 <関西経済は弱い基調が定着、先行きも好材料に乏しい>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 林 万平 / 木下 祐輔 / James Brady / CAO THI KHANH NGUYET

    ABSTRACT

    関西経済は弱い基調が定着、先行きも好材料に乏しい
    民需外需は牽引力不足、景気対策の効果も関西では期待薄

    1.4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.2%(前期比+0.0%)と2四半期連続のプラスとなった。閏年要因を除けば年前半は小幅のプラス成長であり、日本経済は緩やかに回復しているといえる。寄与度を見ると、内需は前期比+1.2%ポイントと2四半期連続のプラスだが、純輸出は同-1.0%ポイントと4四半期ぶりのマイナス。

    2.関西経済は、足下弱い基調が定着しつつあり、かつ先行きも好材料に乏しい。家計部門は、前期から引き続いて弱含んでいる。企業部門は、景況感や生産などで足下では弱い動きが見え始めている。域外取引では、輸出と輸入の失速が続いており、かつマイナス幅が拡大し続けている。

    3.関西の実質GRP成長率を2016年度+0.7%、17年度+0.8%と予測する。前回予測と比較すると、2016年度は0.1%ポイントの下方修正、17年度は0.2%ポイントの上方修正となった。また景気対策の影響の大小の違いにより、関西の成長率は日本経済予測の結果より若干下回って推移すると見込む。

    4.成長に対する寄与度を見ると、2016年度は民間需要が+0.4%ポイントと3年ぶりにプラスに転じる。公的需要も+0.2%ポイント、外需も+0.1%ポイントと小幅ではあるが各項目ともプラスの寄与となる。17年度も、民間需要+0.3%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、外需+0.3%ポイントと各項目ともプラスの寄与となる。しかしいずれも小幅にとどまり、景気を牽引するような力強さには物足りない。

    5.8月2日、政府は新たな景気対策を閣議決定した。民需や外需の牽引力に期待しづらい関西経済において、公的需要が景気を幾分下支えする役割を果たそう。ただし関西では景気対策の影響が限定的となることから、公的需要の寄与は全国に比べると小幅にとどまる。

    6.2015年の関西経済におけるインバウンド需要の影響は歴史的なものであった。(1)訪日外国人消費は2015年の関西GRPを0.76%程度説明している。関西におけるインバウンド・ツーリズムの影響力は年々高まっているが、特に、15年のGRPに対する寄与は前年の1.73倍となっている。(2)就業者についてみると、15年は1.10%程度押し上げたことがわかる。15年の雇用押し上げ効果は前年比1.67倍である。

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  • 稲田 義久

    第109回景気分析と予測<新経済対策を考慮し予測を小幅上方修正>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    新経済対策を考慮し予測を小幅上方修正

    1.GDP1次速報値によれば、4-6月期実質GDP成長率は前期比年率+0.2%(前期比+0.0%)と2四半期連続のプラスとなった。実績は市場コンセンサスから幾分下振れた。内閣府は季節調整において閏年調整を行っておらず、その分4-6月期の成長率を押し下げたようである。閏年要因を均せば、年前半2四半期は小幅(1%程度)のプラス成長となり、景気は緩やかな回復といえよう。

    2.4-6月期実質GDP成長率への寄与度を見ると、内需は前期比+1.2%ポイントと2四半期連続のプラスだが、純輸出は同-1.0%ポイントと4四半期ぶりのマイナスとなった。民間最終消費支出と民間住宅が伸び公的固定資本形成も増加する一方で、民間企業設備と輸出が減少したのは懸念材料である。

    3.2015年以降足下まで、財貨・サービス輸出の伸びは前期比プラス・マイナスを繰り返しており、均せば横ばいの動きとなっている。BREXITの影響は当面は限定的だが、今後は一定の影響が出てくる。米国経済の回復は緩やかで、中国経済も低迷から脱出できていない。しばらくは、日本経済にとって輸出市場の回復見込みは薄い。

    4.4-6月期GDP1次速報値を織り込み、2016年度の実質GDP成長率は前年を幾分下回る+0.7%、17年度は+1.0%と予測する。前回(第108回)予測に比して、16年度0.2%ポイント、17年度0.3%ポイント、いずれも上方修正となった。16年度は純輸出が世界経済の低迷、円高の進行から前回予測から下方修正、一方民間需要と公的需要が上方修正された。民間最終消費支出や民間住宅が幾分回復するが、企業設備が低調で輸出が減少し、成長牽引役が不在の状況となる。

    5.前回予測における財政政策の想定は、消費増税の再延期と補正予算の効果のみであった。今回は新たに経済対策(「未来への投資を実現する経済対策」)の影響を考慮した結果、公的需要は16-17年度にわたり景気を下支えする。純輸出は横ばいだが、民間需要と公的需要が成長を支えるパターンである。

    6.足下消費者物価コア指数は前年比マイナスが続いている。これを織り込み、同指数のインフレ率は2016年度-0.2%、17年度+0.6%と予測。国内企業物価指数は-2.7%、+0.1%となる。GDPデフレータは+0.2%、+0.2%と予測している。日銀は7月の展望レポートの中で、消費者物価コア指数の見通しを、16年度+0.1%、17年度+1.7%としているが、実現には困難が伴うと思われる。

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