研究・論文

search results

「2023年度」の研究・論文一覧 [ 4/4 ]

  • 藤原 幸則

    四半期開示制度の日本企業の経営に与えた影響 – 研究開発費に関する企業財務データのパネル分析 –

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    岸田文雄首相が所信表明演説(2021年10月8日)で四半期開示制度の見直しを表明して以降、金融庁の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループにおいて検討が行われてきたところ、2022年度報告書では四半期開示は維持し、取引所規則による決算短信に一本化するのが適切とされた。主に情報利用者の便益からの意見が大勢になっており、日本の四半期開示制度の経営に与える影響について、実証研究の十分な蓄積があっての政策決定とは必ずしも言えないものとなっている(そもそも日本での実証研究の数は非常に少ない)。そこで、本稿では、企業の長期的視点にかかわる研究開発に対して、四半期開示制度が短期利益志向を助長し、研究開発費の抑制などの影響を与えているかどうかの検証を企業財務データのパネル分析により試みた。以下はその要旨である。

     

    1. 四半期開示の導入による研究開発費の抑制の因果関係については、仮説として、四半期開示によって投資家の短期利益志向が強まり、それが企業に対する市場からの圧力となって経営判断を短期化させ、目先の利益を計上するために、研究開発費の抑制による財務内容の改善といった対応に頼る企業行動がみられる可能性があると考えた。投資家の短期利益志向を表す指標としては、投資家の株式平均保有期間の短期化、外国法人等株式保有率の上昇という二つのものがあるとみている。

    2. 四半期開示制度の導入による投資家の短期利益志向を表す指標をもとに、企業の長期的な研究開発活動にどのような影響を与えているかを企業の財務データによるパネル分析を行った。
    分析対象企業は、日本の各業界を代表し株式取引の多い日経225の株価銘柄企業(225社)とした。パネル分析では、研究開発費の推計モデル式を設定し、投資家の短期利益志向を表す指標の影響の統計的有意性を検証した。

    3. 今般の推計結果では、特に外国法人等株式保有率のパラメータの符合や統計的有意性に頑健な結果が得られた。短期利益を求めて、利益還元など強く求める海外投資家の市場圧力が、日本企業の研究開発費を抑制している可能性があることが示唆されたことになる。ただし、結果の評価は慎重に考える必要があり、分析対象企業の拡大やモデル式の一層の改善といった研究課題がある。また、今後、政策決定のエビデンス蓄積に向けて、筆者以外にも多くの研究者が、四半期開示制度の評価を試みる有益な実証研究を進めていくことを期待したい。

    PDF
  • 野村 亮輔

    都道府県別訪日外客数と訪問率:3月レポート No.46

    インバウンド

    インバウンド

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    野村 亮輔 / 稲田 義久 / 松林 洋一

    ABSTRACT

    【ポイント】

    ・JNTO訪日外客統計によれば、3月の訪日外客総数(推計値)は181万7,500人と、コロナ禍の影響が表れ始めた2020年2月以降、最高値となった。また、結果、1-3月期の訪日外客数は479万272人、20年1-3月期(399万9,827人)の水準を上回った。

    ・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば1月は149万7,472人。うち、観光客は1130万8,606人と2か月連続で100万人を超える水準となった。

    ・先行きについては日本の水際対策の終了により訪日外客の回復ペースが加速する可能性が高い。日本政府は4月29日以降、日本への渡航者に求めてきた72時間以内の陰性証明書やワクチン3回接種の証明書の提示を不要とした。水際対策が一部残っていた訪日中国人客についても同様の扱いとなるため、5月以降、回復が期待されよう。

     

    【トピックス1】

    ・関西3月の輸出は2カ月連続の前年比増加だが、伸びは前月から減速。一方、輸入は26カ月連続の同増加だが、伸びは2カ月連続で小幅にとどまった。関西の貿易収支は2カ月連続の黒字だが、黒字幅は縮小した。

    ・3月の関西国際空港への42万5,327人と、前月から増加し40万人超の水準となった。1-3月期では117万3,816人と前期から大幅増加し、全国と同様に20年1-3月期(69万4,997人)の水準を上回った。

    ・2月のサービス業の活動は、対面型サービス業を中心に改善。第3次産業活動指数は2カ月連続の前月比上昇。また対面型サービス業指数は宿泊業やその他生活関連サービス業が改善し2カ月連続で同上昇した。また、観光関連指数は旅行業や航空旅客運送業が大幅改善し3カ月連続の同上昇となった。

     

    【トピックス2】

    ・1月の関西2府8県の延べ宿泊者数は7,563.8千人泊、2019年同月比-10.0%と2カ月ぶりに減少に転じた。

    ・うち、日本人延べ宿泊者数は6,150.8千人泊と4カ月連続でコロナ禍前の水準を上回ったが、増加幅は前月から縮小。また、外外国人延べ宿泊者数は1,413.1千人泊、2019年同月比-40.8%と減少幅は前月から拡大した。

     

    【トピックス3】

    ・1-3月期の訪日外国人消費額は1兆146億円とコロナ禍前の9割近くを回復した。

    ・一般客1人当たり旅行支出(全目的)は21万1,957円となった。2019年同期比で+43.8%となりコロナ禍前を上回った。この背景には円安に加え、欧米豪を中心に長期滞在の旅行者が増加したことが単価の上昇に影響しているようである。

    PDF
  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.120-景気は足下改善、先行きも改善を見込む:サービス消費持ち直しも海外経済減速がリスク要因-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 新田 洋介 / 今井 功

    ABSTRACT

    ・ 関西の景気は足下改善、先行きも改善を見込む。足下、生産はコロナ禍前の水準を下回るが、2カ月ぶりの増産。雇用環境は持ち直しの動きに一服感がみられるが、消費・景況感は持ち直している。先行きはサービス消費を中心に改善を見込むものの、欧米を中心とした海外経済減速がリスク要因となろう。
    ・ 2月の生産は2カ月ぶりの前月比上昇。ただし、1月の大幅落ち込みを回復できておらず、依然コロナ禍前の水準を下回っている。
    ・ 2月は失業率が前月から上昇したと同時に、就業者数の減少が見られた。ただし、非労働力人口が横ばいであることから見れば、失業者の増加は転職意欲が高まっていることを反映している可能性がある。なお、新規求人数はサービス業を中心に大幅な増加が続いているため、今後も人手不足感が続こう。
    ・ 1月の現金給与総額は23カ月連続の前年比増加。しかし、消費者物価指数の上昇傾向が続き、実質では11カ月連続の減少となった。なお今回の春闘で妥結する賃上げ率は前年を上回り、高水準となる見通しである。
    ・ 2月の大型小売店販売額は17カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店は前年のまん延防止等重点措置の反動による外出機会の増加が売上増に寄与した。スーパーは5カ月連続の増加となったが、小幅にとどまった。
    ・ 2月の新設住宅着工戸数は3カ月ぶりに前月比減少したが、1月は大幅増加しており、1-2月期を均せばプラス基調となっている。
    ・ 2月の建設工事出来高は14カ月連続の前年比増加で、伸びは3カ月連続で加速した。特に公共工事の伸びが大きく全体に寄与した。また、3月の公共工事請負金額は3カ月連続で同増加し、1-3月期は前期から加速した。
    ・ 3月の景気ウォッチャー現状判断及び先行き判断DIはいずれも4カ月連続の前月比改善。マスク着用の制限緩和やインバウンド需要の回復が好影響した。
    ・ 3月の貿易収支は2カ月連続の黒字となった。1-3月期は2四半期連続の黒字だが、黒字幅は前年比縮小した。
    ・ 3月の関空への外国人入国者数は40万人超の水準まで回復。1-3月期ではコロナ禍の影響が表れ始めた20年1-3月期の水準を上回った。
    ・ 中国の1-3月期実質GDPは前年同期比+4.5%と前期から加速した。3月はサービス産業の大幅な改善に牽引され、経済は活気を取り戻しつつある。4-6月期の経済成長率は今期より小幅加速すると見込まれる。ただし、雇用は依然として持ち直しが緩慢であるため、今後持続的に加速するかは注視を要する。

    PDF