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「景気分析」の検索結果 [ 6/6 ]

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.61 -持ち直しの動き続くも、景気後退への警戒感強まる:懸念材料は海外経済の減速と物価高-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1. 2022年7-9月期の関西経済は、前期に続き緩やかに持ち直した。COVID-19感染第7波に対して行動制限措置は取られず、前年に比べて経済活動が正常化した。また前期に発生した中国のロックダウンの影響が、今期は幾分落ち着いた。しかし一方で、海外経済の減速懸念や物価高により景気後退への警戒感が強まっている。
    2. 家計部門は、持ち直している部分もあるが、物価高が回復の足かせとなっている。各種行動制限が解除となったことで百貨店販売は回復し、雇用環境も改善している。しかしながら、食料品やエネルギー価格など消費者物価の高騰により、センチメントや実質賃金などは弱い動きとなっている。
    3. 企業部門は、経済活動が正常化に向かっていること、また中国・上海のロックダウンの影響が落ち着いたことから、概ね緩やかに持ち直した。生産は幾分持ち直し、また設備投資計画についても積極的な姿勢がうかがえる。一方、原材料価格の高騰が続いていること、海外経済の減速などを警戒する向きもあり、景況感については足踏み状態にある。
    4. 対外部門は、財については輸出・輸入とも増加基調が続いている。特に輸入の伸びが大きく、貿易収支は赤字に転じた。輸出を地域別に見ると、米国向けおよびEU向けは堅調だったが、中国向けは鈍化した。インバウンド需要などのサービス輸出については、入国規制の緩和により、関空経由の外国人入国者数・百貨店免税売上で大幅な改善が見られる。
    5. 公的部門は、引き続き全国に比べて堅調に推移している。
    6. 関西の実質GRP成長率を2022年度+1.8%、23年度+1.1%、24年度+1.4%と予測。19年度・20年度の2年連続のマイナス成長から、21年度以降は1%台のプラス成長が続く。しかしコロナ禍からの回復としては力強さに欠く。日本経済予測と回復経路に大きな違いはない。
    7. 成長に対する寄与度を見ると、民間需要が22年度+2.3%ポイント、23年度+0.8%ポイント、24年度+1.2%と成長の牽引役となる。また公的需要も22年度から24年度にかけていずれも+0.2%ポイントと成長を下支える。域外需要は、22年度は-0.6%ポイントと成長を押し下げ、23年度以降も成長に対する貢献は大きくない。
    8. 今号のトピックスは「関西各府県GRPの早期推計」と「中国経済減速リスクと関西経済へのインパクト」を紹介する。後者の分析結果によると、中国の実質GDPが1%下落したと仮定すると、それに伴い関西の実質輸出が0.462%減少し、関西の実質GRPは0.12~0.13%減少する。

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①00’00”~02’56” :Executive summary

    ②02’57”~34’42”:第140回「景気分析と予測」<世界経済の減速を反映し、23年度成長率を下方修正に – 実質GDP成長率予測:22年度+1.7%、23年度+1.2%、24年度+1.4% ->

    ③34’43”~47:52:Kansai Economic Insight Quarterly No.61<持ち直しの動き続くも、景気後退への警戒感強まる:懸念材料は海外経済の減速と物価高>

    ④47’53”~53’33”:トピックス<「関西各府県GRP早期推計」「中国経済減速リスクと関西経済へのインパクト」>

    ※要旨およびフルレポートは以下にてご覧ください

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.60 -総じて持ち直しているが回復テンポはまだら模様:先行き弱含みだが関西全体での投資増が反転のポイント-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 郭 秋薇 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1.   2022年4-6月期の関西経済は、総じて緩やかに回復しているものの、部門、業種、規模などによって、好調な指標と停滞を示す指標が混在するまだら模様となっている。物価高、半導体不足等の供給制約、世界経済の減速、地政学的リスクの高まりなど景気下押し要因も多く、先行き不透明感が強まっている。
    2.  家計部門は、持ち直している部分もあるが、本格的な回復には至っていない。各種行動制限は解除となったことで百貨店では回復し、求人倍率も全国に比べると緩やかではあるが持ち直している。しかし物価高のペースに賃上げが追いついておらず、家計を圧迫している。
    3.  企業部門は、生産動向や景況感については総じて弱含みとなった。特に製造業で原材料価格の高騰や中国でのロックダウンの影響が大きい。一方、22年度の設備投資計画については、積極的な姿勢がうかがえる。
    4.  対外部門は、財については輸出・輸入とも増加基調が続いている。輸出を地域別に見ると、米国向けおよびEU向けは堅調だったが、中国向けはロックダウンの影響もあり欧米に比べると小幅な伸びにとどまった。インバウンド需要などのサービス輸出については、持ち直している。
    5.  公的部門は、全国に比べて堅調に推移している。
    6.  関西の実質GRP成長率を2022年度+1.8%、23年度+1.5%と予測。前回予測と比較すると、22年度は、民間需要・公的需要・域外需要のいずれも小幅ではあるが下方修正。23年度の下方修正は、世界経済の回復の遅れなど海外リスク要因を織り込み輸出を下方修正したことによる。
    7.  日本経済予測と比較すると、22年度は、関西での公的需要の寄与が全国よりも大きいことから、成長率全体も関西が全国を上回る。23年度は、大きな違いはない。
    8.  成長に対する寄与度をみると、民間需要は22年度+1.8%ポイント、23年度+1.2%ポイントと成長を牽引する。また公的需要も22年度+0.3%ポイント、23年度+0.3%ポイントと成長を下支える。一方、域外需要は22年度-0.2%ポイントと成長を押し下げ、23年度は成長に寄与しない。
    9.  今号のトピックスでは「関西経済の反転にむけて:大阪・関西万博、IRを梃子に」を紹介する。関西経済の反転の実現には、ベイエリアでの投資を端緒として、関西全体での投資増を持続する必要がある。

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①00’00”~02’19” :Executive summary

    ②02’20”~37’46”:第139回「景気分析と予測」<弱い輸出の見込みを反映し、成長率を下方修正に – 実質GDP成長率予測:22年度+1.5%、23年度+1.5% ->

    ③37’46”~58:59:Kansai Economic Insight Quarterly No.60<総じて持ち直しているが回復テンポはまだら模様:先行き弱含みだが関西全体での投資増が反転のポイント>

    ④59’00”~1’04’43”:トピックス<関西経済の反転にむけて:大阪・関西万博、IR を梃子に>

    ※要旨およびフルレポートは以下にてご覧ください

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.59 -経済活動の正常化に影差す海外要因:関西では中国ゼロコロナ政策の影響大-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    一般財団法人アジア太平洋研究所では、日本ならびに関西経済について、四半期ごとに景気分析と予測を行っています。2022年5月31日、最新の「日本経済予測」と「関西経済予測」を発表しました。経済見通しの説明動画を以下の通り配信しています。

     

    1. 1. 2022年1-3月期の関西経済は、従来型より感染力の強いオミクロン株の流行で新規陽性者数が第6波を迎えたことにより、再びまん延防止等重点措置が適用され、経済活動は停滞を余儀なくされた。またロシアによるウクライナへの軍事侵攻、原材料価格の高騰に起因する物価高、中国ゼロコロナ政策など海外リスク要因も景気回復に重荷となった。
    2. 家計部門は、第6波となる感染拡大とまん延防止等重点措置の適用により、弱い動きとなった。各種感染防止策が解除されるなど明るい材料もあるが、実質賃金や雇用など弱含みで、本格的な回復には至っていない。
    3. 企業部門は、生産動向、景況感、設備投資計画など、総じて弱含みである。オミクロン株による感染拡大、原材料価格の高騰、中国でのゼロコロナ政策の影響といったリスク要因が警戒されている。
    4. 対外部門は、財については輸出・輸入ともコロナ禍前の水準を上回り、増加基調が続いている。ただし中国向けは、ゼロコロナ政策の影響により弱含み。サービス輸出については、回復の兆しが見えてきた。
    5. 公的部門は、全国に比べて堅調に推移している。
    6. 関西の実質GRP成長率を2022年度+2.0%、23年度+1.9%と予測。21年度以降は2%前後のプラス成長が続き、23年度にはコロナ禍前のGRP水準を回復する。22年度は輸出を中心に-0.45%ポイントの下方修正。関西では、他地域に比べて中国ゼロコロナ政策の影響が大きい。23年度は-0.04%ポイントの小幅下方修正。
    7. 日本経済予測と比較すると、22年度は、成長率全体は同程度の伸びとなるが、中身がやや異なる。公的需要は、全国+0.1%ポイントに対して関西は+0.3%ポイントと関西が全国を上回る。一方域外需要は、関西では中国ゼロコロナ政策に関して全国以上に影響を受けるため、全国-0.0%ポイントに対して関西は-0.2%ポイントと成長を押し下げる。23年度は、大きな違いはない。
    8. 22年度は、民間需要が+1.9%ポイント、公的需要+0.3%ポイントと成長を下支える。一方、域外需要は輸出の伸び悩みから-0.2%ポイントと成長を押し下げる。23年度は、民間需要+1.2%ポイント、公的需要+0.3%ポイント、域外需要+0.4%ポイントと、3項目すべてがバランス良く成長に貢献する。
    9. 今号のトピックスでは、関西2府4県のGRP早期推計とロシアのウクライナ侵攻から見えてきた関西経済の諸リスクについて紹介する。

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.58 -不安材料多く、霞む本格回復への途:コロナ禍に加え国際情勢や物価高などが下押し圧力に-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1. 2021年10-12月期の関西経済は、新型コロナ「第5波」が収束し、緊急事態宣言等の感染抑止策が全て解除となった。これにより経済活動は正常化したものの、半導体不足に伴うサプライチェーンの混乱や物価高など足下で不安材料が多く、下押し圧力がかかる。

    2. 家計部門は、「第5波」の収束と緊急事態宣言の解除で、百貨店販売額などで持ち直しの動きが見られた。センチメントや所得は伸び悩んでおり、本格的な回復には至っていない。雇用環境も横ばい続きで、全国に比べて回復が遅れている。

    3. 企業部門は、前期から引き続いて足踏み状態にある。景況感は緩やかに回復しているが、生産は部材供給不足や物流逼迫の影響から弱い動きとなった。またエネルギー価格の高騰は企業収益を圧迫している。

    4. 対外部門は、財については輸出・輸入とも増加してコロナ禍前の水準を上回っている。特に資源価格高の影響により、輸入の伸びが顕著で、足下1月の貿易収支は赤字となった。インバウンド需要などのサービス輸出は、底ばいが続いている。

    5. COVID-19感染状況は、秋口から新規陽性者数の減少が続いていたが、感染力の強いオミクロン株の広がりにより、12月下旬以降急速に増加し「第6波」を迎えた。このため22年1月以降、まん延防止等重点措置が各自治体に順次適用され、再び経済活動が制限されている。

    6. 関西の実質GRP成長率を2021年度+2.6%、22年度+2.5%、23年度+1.9%と予測。22年度にコロナ禍前の水準に戻り、23年度もプラス成長を見込む。ただしコロナ禍の収束見通し、地政学的リスク、エネルギー価格の高進など、懸念材料が非常に多く、下振れリスクは大きい。

    7. 日本経済予測と比較すると、21年度から23年度にかけて、関西が全国の伸びを上回って推移する見込み。公的需要と域外需要の寄与が関西の方が大きい。

    8. 実質GRP成長率について、前回予測(12月23日公表)に比べて、21年度は-0.28%ポイントの下方修正、22年度-0.30%ポイントの下方修正、23年度は+0.2%ポイントの上方修正。21年度は、民間需要を中心に、需要項目いずれも下方修正。22-23年度は、輸出の伸びを下方修正。

    9. 2021年度は、民間需要が+1.0%ポイントと4年ぶりに成長押し上げ要因となる。公的需要はコロナ対策の効果から+0.5%ポイント、域外需要も+1.0%ポイントとそれぞれ堅調。22年度以降は、経済活動の正常化により3項目すべてがバランス良く成長に貢献する。

    10. 今号のトピックスでは、「DMOのインバウンド誘客の取り組みとその効果」および「足下の関西・台湾間貿易に基づく台湾のCPTPP加盟による影響の考察」と題する当研究所レポート2篇の概要を紹介する。

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①00:00~02:27 :Executive summary

    ②02:28~29:16:第137回「景気分析と予測」<遅れる日本経済の回復:リスクは変異株、原油高と為替安>

    ③29:17~42:14:Kansai Economic Insight Quarterly No.58<不安材料多く、霞む本格回復への途>

    ④42:14~44:42:トピックス1<京都府におけるDMOのインバウンド誘客の取り組みとその効果>
            トピックス2<足下の関西・台湾間貿易に基づく台湾のCPTTP加盟による影響>

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.55 -総じて持ち直しているが本格回復の道険し:変異株拡大で翻弄される回復パターン-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    一般財団法人アジア太平洋研究所では、日本ならびに関西経済について、四半期ごとに景気分析と予測を行っています。8月31日、最新の「日本経済予測」と「関西経済予測」を発表しました。経済見通しの説明動画を以下の通り配信しています。

     

    1. 2021年4-6月期の関西経済は、総じて持ち直しているが、コロナ禍の影響が続いていることから、本格回復にはまだ至っていない。部門や業種によって回復のパターンは不均一となっている。
    2.コロナ禍は依然として収束の見通しが立たない。ワクチン接種の進展は好材料であるが、変異株の拡大もあり関西でも新規陽性者が急増している。8月にはまず大阪府、次いで京都府と兵庫県、さらに滋賀県に緊急事態宣言が発令されるなど、関西における社会・経済活動は依然制約されたままであり、関西経済の回復に向けて重い足枷となっている。
    3. 家計部門は、前年に比べると社会・経済活動が幾分正常化していることから、緩やかながら持ち直しの動きが見られる。前年の反動もあるが総じて改善しており、センチメントなどコロナ禍前の水準を回復した指標もある。ただし回復パターンはコロナ禍の感染拡大状況によって一進一退の動きとなっており、本格的な回復とはまだ言いがたい。
    4. 企業部門は、総じて持ち直している。製造業は、生産や景況感などコロナ禍前の水準をおおむね回復している。非製造業も総じて持ち直しているが、製造業に比べるとやや力強さを欠いている。設備投資計画は、製造業・非製造業とも増勢が見込まれている。ただし製造業・非製造業とも、コロナ禍の影響が続く業種も散見され、回復パターンは不均一となっている。
    5. 対外部門は、財の輸出の持ち直しの動きが続いている。また輸入も持ち直している。一方、インバウンド需要などのサービス輸出は、全面的な入国制限解除がなされていないことから、回復の見込みが立っていない。
    6. 関西の実質GRP成長率を2021年度+3.2%、22年度+2.5%と予測。2020年度の大幅マイナスから反転して、21年度以降は回復に向かうが、ペースは緩やかである。GRPがコロナ禍前の水準を回復するのは実質・名目とも22年度以降となる。
    7. 前回予測に比べて、2021年度は-0.4%ポイントの下方修正、22年度は+0.4%ポイントの上方修正。21年度の修正は、民間需要の下方修正が主因である。前回予測以降に発現した変異株の拡大等により、民間需要、なかでも民間最終消費支出の回復が後ずれする。
    8. 成長に対する寄与度を見ると、2021年度は、民間需要が+1.6%ポイントと4年ぶりに成長押し上げ要因となる。ただし前年度の大幅マイナスを回復するには至らない。また公的需要+0.3%ポイント、域外需要+1.2%ポイントとそれぞれ底堅く成長を下支える。22年度も民間需要+1.9%ポイント、公的需要+0.3%ポイント、域外需要+0.3%ポイントと3項目すべてが景気を押し上げる。
    9. トピックスでは、第3次産業活動指数の変化による府県別・産業別への経済波及効果を産業連関表により試算した。コロナ禍での第3次産業減産により、生産額で約4.2兆円、粗付加価値額ベースでは2.4兆円、率にして約3%程度の影響があった。

     

    ※説明動画の一般公開は終了しました。会員企業の方は会員専用ページから閲覧可能です。

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.54 -持ち直しているが本格回復には道半ば:ワクチン接種を促進し、内需主導の確固たる成長を-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    一般財団法人アジア太平洋研究所では、日本ならびに関西経済について、四半期ごとに景気分析と予測を行っています。6月1日、最新の「日本経済予測」と「関西経済予測」を発表しました。経済見通しの説明動画を以下の通り配信しています。

     

    1. 2021年1-3月期の関西経済は、緩やかに持ち直している。ただしコロナ禍が依然続く中、緊急事態宣言等で経済活動が抑制されているため、家計部門や企業部門など内需部門の改善ペースは緩慢である。規模・業種によっても回復度合いに差が見られる。
    2. 2021年に入り、新規陽性者数は「第3波」の収束から「第4波」を迎えた。その「第4波」は4月末にピークアウトし、足下では収束に向かっている。ただし重症患者病床使用率は依然として高水準にあるため、4月以降、3度目となる緊急事態宣言が発令され、6月以降も継続となる。
    3. 新型コロナワクチンの接種が21年2月から開始となった。ワクチン接種の進展は、先行きの新規陽性者数の減少に加え、消費者心理の改善、先送りしていたペントアップ需要の発現に貢献しよう。
    4. 家計部門は、COVID-19の感染拡大や緊急事態宣言発令の影響から、総じて弱い動きとなっている。センチメントや所得・雇用環境など持ち直してはいるものの、前年の反動といった部分もあり、堅調な回復とは言いがたい状況である。
    5. 企業部門は、製造業と非製造業で回復度合いに差異が見られる。製造業は、輸出の回復を背景にして生産や景況感など持ち直しの動きが見られる。一方非製造業は、特に対面型サービスでコロナ禍の影響が根強く、弱い動きとなっている。
    6. 輸出の回復は鮮明となっている。中国向けに続き、米国・EU向けも足下で2019年同月の水準を上回った。一方インバウンド需要は回復の見込みが立たない。
    7. 関西の実質GRP成長率を2021年度+3.6%、22年度+2.1%と予測する。20年度の大幅マイナスから21年度以降回復に転じる。ただしコロナ禍前の水準に戻るのは22年度以降となる。前回予測(3月1日公表)に比べて、21年度は輸入を上方修正したため-0.2%ポイントの下方修正、22年度は成長の加速を見込み+0.5%ポイントの上方修正とした。
    8. 成長に対する寄与度を見ると、民間需要が21年度+2.2%ポイント、22年度+1.4%ポイントと2018年度以来3年ぶりにプラスとなり、成長を牽引する。また、公的需要・域外需要も成長を下支えし、バランスの取れた成長となる。
    9. 感染抑制と景気回復の両立に向け、ワクチン接種の進展は、経済活動再開を促進しよう。今後景気を加速していくにあたっては、外需のみに依存するのではなく、内需を刺激する経済対策も望まれる。経済活動の正常化には、過剰な自粛・萎縮は避け「正しく恐れる」ことが必要であろう。
    10. トピックスでは、関西各府県における2019-20年度のGRPの早期推計結果を紹介する。2020年度は関西2府4県いずれもマイナス成長となった。

     

    ※説明動画の一般公開は終了しました。会員企業の方は会員専用ページから閲覧可能です。

     

  • 藤原 幸則

    コロナ禍後の財政健全化に向けて

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    新型コロナウイルス感染症拡大防止による経済の影響が一段と深刻化している。政府においては、2020年度補正予算(第1号、第2号)を編成し、追加歳出総額のすべてを新規国債発行で賄うという財政出動に踏み出した。今般の補正予算で、財政状況の一段の悪化が避けられない。本稿では、新型コロナウイルス対策での財政出動による財政悪化のインパクトを試算し(暫定)、潜在的な財政破綻リスクの深刻化を確認するとともに、コロナ禍後の財政健全化に向けての議論の進展を期待して、今後考えるべき論点と思われるところを整理してみた。

    ※ 5月28日のAPIR「128回景気分析と予測」の名目GDP成長率予測値を試算に反映、一部修正

    PDF
  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.41 <足下の景気は堅調だが先行き下降局面を迎える-18年7-9月期GDP2次速報値反映>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰

    ABSTRACT
    1. 12月10日発表のGDP2次速報値によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率-2.5%と1次速報値(同-1.2%)から大幅下方修正された。最大の要因は民間企業設備の下方修正である。また17年度の第一次年次推計値、16年度の第二次年次推計値が公表された。結果、16年度の実質GDP成長率は下方修正(+1.2%→+0.9%)されたが、17年度は上方修正(+1.6%→+1.9%)された。
    2. 日本経済の先行きについては、7-9月期GDP2次速報を織り込み、実質GDP成長率を2018年度+0.7%、19年度+0.6%、20年度+0.8%と予測 (APIR『第120回 景気分析と予測』)。緩やかな回復を維持するが、低い成長率にとどまろう。
    3. 関西の実質GRP成長率を2018年度+1.4%、19年度+0.7%、20年度+0.5%と予測する。前回予測と比較すると、2018年度は7-9月期GDP2次速報値の結果と日本経済予測の下方修正を織り込み、18年度は-0.4%ポイントの下方修正とした。19年度・20年度は、民間需要を上方修正、外需を下方修正した結果、成長率全体では修正なしとなった。
    4. 実質GRP成長率に対する寄与度を見ると、2018年度は民間需要+1.0%ポイント、公的需要+0.1%ポイント、外需+0.3%ポイントと民需が成長を牽引する。19年度は民間需要+0.5%ポイントで、前年度と同様に景気を下支えするが、年度央の消費増税の影響もあり、寄与は小幅となる。公的需要は+0.1%ポイント、外需は+0.1%ポイントと成長への貢献は小さい。また20年度は民間需要+0.3%ポイントと消費増税の影響が顕在化し、民需の寄与はさらに小さくなる。公的需要は+0.2%ポイント、外需は+0.1%ポイントとなる。

    全国の成長率と比較すると、18年度は、所得環境での全国を上回る改善やインバウンド需要の加速により、全国より高い成長率で推移する。19年度以降は、消費増税の影響から日本経済予測と同様に関西でも成長率は減速し、全国並みの成長率となる。2020年度には、全国に比して関西では内需の貢献が小幅となり、日本予測の成長率が関西を若干上回る。

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  • 稲田 義久

    経済フォーキャスト

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2016年度 » 経済予測・分析、シミュレーション

    RESEARCH LEADER : 
    稲田 義久

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    数量経済分析センター長 稲田義久 甲南大学教授

     

    研究目的

    企業や政策主体(中央政府及び地方政府)にとって、正確で迅速な景気診断が、各主体の意思決定や政策判断にとって決定的に重要となる。本プロジェクトは、日本経済及び関西経済の高頻度の定点観測とともに、超短期予測モデル(CQM)や四半期マクロ計量モデルを用いてタイムリーで正確な短期経済見通しの提供に加え、刻一刻変化する経済に対する適切なコメントならびに政策評価を行うことを意図している。

     

    研究内容

    1. 月次レポートの作成

    経済の月次見通しに加え、関西経済の月次レポート(Kansai Economic Insight Monthly)を所内研究員の協力を経て毎月中旬以降に作成している。また翌月の初旬には関経連向けに『関西経済レポート』を提出している。この作業を通して所内エコノミストの分析力の向上を図っている。

    2. 日本経済予測・関西経済予測の四半期レポートの作成

    超短期予測の足下の正確な予測成果を反映し、QE(四半期GDP一次速報値)発表の1週間後に日本経済の四半期予測とともに関西経済の年次予測の四半期改訂が発表される。予測結果や予測改訂は、『景気分析と予測』と『Kansai Economic Insight Quarterly』として発表され、プレスリリリースされる。

    3. 府県別GRP早期推計と超短期予測

    各府県の県民経済計算確報値が発表され次第、5月予測では関西2府4県経済の成長率予測がアップデートされる。11月には、当該年度の月次指標を基にして超短期予測を行なう。

    4. 関西DSGEモデルの開発と関西GRP四半期QEデータベースの作成

    DSGEモデルの特性を活かし、地域固有の構造的課題の抽出や各種政策シミュレーションを行う。その際、DSGEモデルの実用にあたって考えられる課題に十分配慮する。またこのとき、関西の四半期データが必要になると思われるが、足りないところは線形補間や推定によって補い、必要に応じて新しい関西データの指標を作成する。

    また8月予測では関西2府4県経済の成長率予測がトッピクスとして発表される。これらの成果は関西各府県の早期推計として注目されている。また11月予測を受けて景気討論会を企画している。

     

    リサーチャー

    入江啓彰 近畿大学短期大学部准教授(早期推計、関西モデル、DSGEとデータベース)

    小川 亮 大阪市立大学大学院経済学研究科・経済学部准教授(早期推計、関西モデル)

    下田 充 日本アプライドリサーチ主任研究員(日本モデル、早期推計、関西モデル)

    松林洋一 神戸大学大学院経済学研究科 教授(DSGEとデータベース)

    岡野光洋 大阪学院大学講師(DSGEとデータベース)

    井田大輔 桃山学院大学経済学部 准教授(DSGEとデータベース)

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    研究成果はHP上で高頻度に提供。プレスリリースを行うことでマスコミに周知。一部成果はマクロモデル研究会やその他学会でも報告予定である。

    モデルを用いた関西経済の経済予測・構造分析の結果を客観的かつ定量的に示すことで、足元の経済情勢判断の材料として用いることが可能であるとともに、企業の経営戦略や自治体の政策形成を構築するうえでの重要な指針となり、関西経済の現状および構造的特徴を内外において説明する際の貴重な資料となりうる。

  • 稲田 義久

    経済の定点観測と予測

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2015年度 » 経済予測・分析軸

    RESEARCH LEADER : 
    稲田 義久

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    数量経済分析センター長 稲田義久 甲南大学教授

     

    研究目的

    企業や政策主体(中央政府及び地方政府)にとって、正確で迅速な景気診断が、各主体の意思決定や政策判断にとって決定的に重要となる。本プロジェクトは、日本経済及び関西経済の高頻度の定点観測とともに、超短期予測モデル(CQM)や四半期マクロ計量モデルを用いてタイムリーで正確な短期経済見通しの提供に加え、刻一刻変化する経済に対する適切なコメントならびに政策評価を行うことを意図している。

     

    研究内容

    1.週次予測

    特徴は、高頻度(超短期)予測がベースにある。よく知られた超短期予測モデル(CQM)の手法を用いて、週次ベースで日米経済に対する超短期予測が週末に行われる。毎翌週の初めに当該四半期の日米経済の成長率予測が発表される。また月末には、週次予測は月次レポートとして整理、要約される。予測結果は、いずれもHPで発表される。

    2.月次経済見通しの作成

    日米経済の月次見通しに加え、関西経済の月次レポート(Kansai Economic Insight Monthly)を所内研究員の協力を経て毎月中旬以降に作成している。また翌月の初旬には関経連向けに『関西経済レポート』を提出している。この作業を通して所内エコノミストの分析力の向上を図っている。

    3.四半期予測と年次予測の四半期改訂

    超短期予測の足下の正確な予測成果を反映し、QE(四半期GDP一次速報値)発表の1週間後に日本経済の四半期予測とともに関西経済の年次予測の四半期改訂が発表される。予測結果や予測改訂は、『景気分析と予測』と『Kansai Economic Insight Quarterly』として発表され、プレスリリリースされる。

    また8月予測では関西2府4県経済の成長率予測がトッピクスとして発表される。これらの成果は関西各府県の早期推計として注目されている。また11月予測を受けて景気討論会を企画している。

     

    リサーチャー

    入江啓彰 近畿大学短期大学部講師

    小川 亮 大阪市立大学大学院経済学研究科・経済学部専任講師

    下田 充 日本アプライドリサーチ主任研究員

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    研究成果はHP上で高頻度に提供。プレスリリースを行うことでマスコミに周知。一部成果はマクロモデル研究会やその他学会でも報告予定である。

  • 稲田 義久

    日本及び関西経済の短期予測

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2014年度 » 関西の成長戦略

    RESEARCH LEADER : 
    稲田 義久

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    研究統括 稲田義久

     

    研究目的

    定点観測として関西経済の月次変化を捉え、アジアの中の関西を意識した経済分析月次レポートの作成。また四半期毎にマクロ計量モデルを用いた日本経済の景気の現状分析と予測を行う。それと連動し関西経済の短期見通しを改訂発表する。本プロジェクトは、日米超短期経済予測(リサーチリーダー、熊坂侑三)の成果を短期予測に反映させており、より精度の高い予測と分析を目指している。また関西独自景気指標開発をさらに継続して実施する。

    研究内容

    月次分析レポート(『関西経済月次分析』)はAPIR研究員を中心に作成されており、レポートの準備作成は同時にエコノミストを育てるトレーニングの場ともなっている。四半期レポート(『景気分析と予測』、『関西エコノミックインサイト』)では、日本経済・関西経済の四半期要約とともに、タイムリーなトピックスを取り上げ、経済政策や各種イベントの経済的影響を分析する。これらの成果はHP上でリアルタイムに発表され、またコメンタリー、トレンドウォッチ、関西経済白書などに反映される。また平成25年度より開始した関西2府4県のGDPの早期推計を日経DMとの共同プロジェクトで全国展開する。

    リサーチャー

    下田 充 日本アプライドリサーチ研究所 主任研究員

    入江啓彰 近畿大学短期大学部講師

    小川 亮 大阪市立大学経済学部 専任講師

    岡野光洋 APIR研究員

    林 万平 APIR研究員

    木下祐輔 APIR研究員

    期待される成果と社会還元のイメージ

    関西各府県の足下GDP速報値や、アベノミクスや東京オリンピック招致等影響分析のタイムリーな提供は、企業や自治体の関係者の経営・政策判断に資する。

  • 熊坂 侑三

    今月のエコノミスト・ビュー(2011年8月)

    インサイト

    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    <国債の格付けを考える>

    8月5日、米国格付け会社のスタンダード&プアーズ社(以下S&Pと略す。また本文中で示される格付けは、全てS&Pによる格付けであ る)が、米国債の格付けを最上位の「AAA」から「AA+」に一段階引き下げた。これは史上初のことであり、金融市場は混乱している。米国は世界一の大国 であり、米ドルは世界経済の基軸通貨である。今その米ドルの信認が大きく揺らいでいる。「世界一安全な金融資産」と考えられてきた米国債の格下げが世界経 済に与える影響は小さくない。格付けは信用リスクを示す一指標に過ぎないが、マーケットが判断材料にする以上無視することはできない。
    格付けにおいて最も評価を下げているのはギリシャ国債である。2011年に入ってから既に計4度、「BB+」から「CC」にまで、8段階も引き下げられている(以下、格付けはいずれも自国通貨建て長期国債、7月31日現在)。

    日本国債の格付けは、現在、最上位から4番目のランクの「AA-」である。かつては日本国債も「AAA」であったが、2001年2月から2002年4月 にかけて3回にわたり格下げされ「AA-」となった。その後、小泉政権の下で行われた財政再建が評価され、2007年4月に「AA」に格上げされたが、今 年2011年1月に再び「AA-」に格下げとなっている。また4月には東日本大震災による財政負担増が懸念され、アウトルックが「安定的」から「ネガティ ブ」に変更された。
    国債は無担保であるが、事実上、家計や企業の担税力を担保に発行されている。すなわち国がデフォルトの危機に瀕した場合には、企業に対して増税してファイナンスするという手段がある。このため、国債の格付けは原則として国内事業会社の社債格付けの天井になる。
    国内の社債の格付けに目を転じると、大震災の補償が巨額になることを受けて東京電力の格付けが大幅に下げられている。また東電以外の電力会社の格付けも原 発の稼働率低下による業績悪化から低下傾向にある。債券の格付けは国や企業の信用リスクのみを見ており、成長力や社会的評価などは見ない。例えばソフトバ ンクの社債の格付け(BBB-)よりもNTTドコモの社債の格付け(AA)の方がはるかに高い。

    さて、日本国債の格付けは、政府債務残高対GDP比率からすると、むしろ高い格付けで踏みとどまっているようにも思える。2011年の日本の同指標は 212.7%にも達し、OECD加盟国中最悪である(数値はOECD Economic Outlook 2011による)。前述のギリシャの同指標は、157.1%と日本よりも低い。これは、日本国債が、潤沢な国内貯蓄によってファイナンスされていることが 大きな安定要因となっているためである。また、消費税率が低く増税の余地がある、と見られているとも考えられる。IMFは日本に対して、財政再建のため消 費税率を15%にまで引き上げることを要請している。
    国債が格付けされることは国民経済全体としての担税力の評価に加え、国の財政運営力も格付けされることを意味する。国が財政再建の道筋を明確に示すことが国債格付けの改善にもつながり、国内企業の信用力の天井を高めることになろう。

    [高林喜久生 マクロ経済分析プロジェクト主査 関西学院大学]

    日本
    <7-9月期経済は内需と純輸出が拡大し5%を上回るプラス成長>

    8月15日発表のGDP1次速報値によれば、4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率-1.3%となった。3期連続のマイナスであるが、市場コンセンサ ス(ESPフォーキャスト8月調査:前期比年率-2.80%)を上回る結果となった。最終週における超短期モデル(支出サイドモデルと主成分分析モデル) の平均成長率予測は同-2.5%と市場コンセンサスに近かった。うち、支出サイドモデル予測は同-1.0%、一方、主成分分析モデル予測は同-4.0%と なった。われわれが重視している支出サイドモデルの予測値はほぼ実績と同じ結果となった。

    グラフ(予測動態)からわかるように、震災の影響が色濃い4月データが更新された6月初旬の超短期予測は、4-6月期の実質GDP成長率を前期比年率 -6%台と予測していた。しかし、5月のデータが更新された6月下旬から7月初旬にかけて、予測は-4%台に上方修正された。以降、超短期予測は明瞭な アップトレンドを示し、6月データが出そろう8月初旬にはマイナス幅は大きく縮小した。四半期ベースでは3期連続のマイナスだが、月次ベースでみれば 3?4月の大幅な落ち込みは、5月以降に明瞭に持ち直しに転じている。このことから、日本経済は5月に震災の落ち込みから反転したといえよう。
    4-6月期のGDP1次速報値を反映した今週の超短期予測(支出サイドモデル)は、7-9月期の実質GDP成長率を、内需は引き続き拡大し、純輸出も増加に転じるため前期比+1.3%、同年率+5.2%と予測する。また10-12月期の実質GDP成長率を、内需の拡大幅は縮小するが純輸出は引き続き拡大するため、前期比+0.5%、同年率+2.1%と予測する。この結果、2011暦年の実質GDP成長率は-0.3%となろう。
    7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.1%となる。実質民間住宅は同+0.2%、実質民間企業設備は同+3.7%増加する。 実質政府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同+5.5%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+1.3%)に対する寄 与度は+0.9%ポイントとなる。
    財貨・サービスの実質輸出は同+6.5%増加し、実質輸入は同+5.6%増加する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.4%ポイントとなる。
    このように、日本経済は年後半にかけて内需の拡大、純輸出のプラス反転により、景気回復のモメンタムは非常に強いといえよう。10兆円程度と想定される3次補正予算の今後の効果にも期待が持てる。これに対して、ダウンサイドリスクは、世界経済のスローダウンによる輸出の減速、電力供給制約を回避(原発停止分を火力発電で代替する)するための燃料輸入の追加的増加が懸念される。追加的な燃料輸入は年3兆円を上回ると予測(第88回景気分析と予測を参照)されており、今後、純輸出の減速・反転が要注意である。

    [[稲田義久 KISER所長・マクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

    米国
    <米経済のリセッションリスクは政策当局にある>

    グラフ(米国経済超短期予測の動態)からわかるように、超短期予測は7-9月期における景気のスローダウンを予測し、FRBによる今年前半の景気の一時的 なスローダウンという見方を楽観的とみていた。実際に、8月9日のFOMC声明で今の景気のスローダウンが連銀の当初予想していた経済成長率よりもかなり 低いことを認めた。今度は逆に2013年中頃までのスローな経済動向を予想し、今までの異常な低金利をこの先約2年も継続することをこのFOMC声明で言 及している。経済というのは、常にジグザグに動きながら、一定のトレンドを形成していく。すでに、数回あった出口戦略の機会を見逃してきた上に、今度はこ の先2年間の金融政策の自由度を狭めてしまった。同グラフに見るように、7-9月期の景気は確かにスローダウンしてきたが、7月の中頃から上昇トレンドに 転換している。現時点の実質GDP伸び率は需要・所得両サイドの平均実質GDP成長率伸び率は前期比年率‐1.0%程度であるが、その他の実質アグリゲー ト指標(総需要、国内需要、国内購入者への最終需要)はGDPと同じように、7月半ばから上昇トレンドに転換し、今の時点ではそれらの指標は 1.5%?3.0%の伸び率になっている(グラフ「実質アグリテート指標の予測動態」参照)。
    8月2日の米債務上限引き上げ法案が成立した後、米経済への楽観的な見方が生じるはずであった。しかし、民主・共和党のリーダーシップの欠如から、政治家 はほとんど恒例とも言える債務上限引き上げ法案を来年の選挙目的に利用した。このことから、米国債のデフォルト懸念が声高に強調されるようになり、米経済 があたかもギリシャ経済、イタリア経済と同様と市場は捉えるようになった。今回の債務上限引き上げ法案に対する政治家のリーダーシップの欠如は、今後の財 政政策からの景気刺激策を非常に難しいものとしてしまった。
    現状、実質GDPでみた米国の経済成長率は低いが、自律的な回復基調にある。しかし、リセッションへのリスクは財政・金融当局の政策に対する自由度の喪失 である。更に、最近では著名なエコノミストがやたらにダブルディップリセッションを懸念する傾向にある。正直言って、この1,2年の彼らのダブルディップ リセッション懸念は外れているが、彼らの市場に与える心理的な影響は大きい。エコノミストの仕事はリセッションを予測することではなく、リセッションを回 避する方向へ導くことにあるのだが、何故か悲観的なコメントをするエコノミストが多くなった。一つには、リセッション予測が外れても、あまり責められるこ とはないからだろう。

    [ [熊坂有三 ITエコノミー]]

  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2010年11月)

    インサイト

    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    今月は補正予算の経済的効果について検討する。ここでいう補正予算とは、9月10日に「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」が閣議決定されたが、 うちステップ1として9月24日に決定された経済危機対応・地域活性化予備費を活用した緊急経済対策、及びステップ2として10月8日に決定された「円 高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」に係る平成22年度補正予算を対象としている。
    仕分けの過程で明らかになったように今回の内容は、22年度本予算で削減された内容の復活という印象を払拭できない。しかし、これまで成長を支えてきた輸 出の鈍化等から、先行きの不透明感が高まっている。円高が進行しており、輸出の更なる鈍化や製造業の海外シフトのリスクが高まっており、緊急経済対策の ニーズは高まっている。経済対策の必要性は高く、かつ、速やかな実施が重要といえよう。
    問題は実施規模とタイミングである。緊急総合経済対策、ステップ1が9,180億円、ステップ2が5兆901億円で合計6兆82億円である。項目のうち、 内容のわからないその他や金融支援を除いて実施規模を求め、またステップ1が2010年度内に、ステップ2が2011年度にわたって支出されるパターンを 想定すると、2010年度で2兆3,185億円、2011年度で2兆6,679億円となる。これらの補正予算額は、政府最終消費支出、公的固定資本形成、 家計への移転、企業への移転、民間最終消費支出、民間住宅の形態で追加需要となる。
    政策効果として、政府は今回の対策により、実質GDPを0.6%押し上げるとしている。われわれは「第85回景気分析と予測」においてこれを検証した (11月25日発表)。7-9月期のGDP1次速報値を更新して、新たに2010-2012年度の日本経済の成長パターンを予測した。この予測値には今回 の補正予算は含まれていない。次に補正予算を反映させたシミュレーションを行い、これと比較したものが補正予算の効果となる。下図が示すように、2010 年度末にかけてステップ1の効果が表れてくるが、効果の発動期間は2期間であるため2010年度平均では0.38%の押し上げ効果にとどまる。一旦、 2011年4-6月期に押し上げ効果は低下するが、これは家電エコポイント制度が3月に終了することから、4-6月期に民間消費の反動減が生じるためであ る。2011年度平均では乗数効果も表れ0.53%の実質GDP押し上げ効果がでてくるが、2012年度には効果が剥落し0.06%と押し上げ効果はほぼ ゼロとなる。

    日本
    <10-12月期はマイナス成長の可能性が高まるが、一時的な停滞にとどまろう>

    11月15日発表のGDP1次速報値によれば、7-9月期の実質GDP成長率はエコカー補助金等の駆け込み需要の影響で前期比+0.9%、同年 率+3.9%となった。4期連続のプラス成長となり、4-6月期の改定成長率同+1.8%から加速した。なお前年同期比では+4.4%と3四半期連続のプ ラスとなった。
    7-9月期の実績は、市場コンセンサス(2.31%:11月ESPフォーキャスト調査)を大きく上回ったが、超短期予測の平均値に近い結果となった。超短 期モデルの最終週の予測では、支出サイドモデルが同+2.0%、主成分分析モデルが同+4.4%、両者平均で+3.2%の予測となった。注目すべきは、超 短期予測は7-9月期の最初の月のデータが利用可能となる8月の終わりにはすでに3%台を予測していたことである。
    7-9月期の実質GDP成長率(前期比年率ベース)への寄与度を見ると、国内需要は+3.7%ポイントとなり、成長率に4期連続のプラス寄与となった。一 方、純輸出は+0.1%ポイントの寄与にとどまった。純輸出は6期連続で成長率を引き上げたが、その寄与度はほぼゼロとなった。データは、アジア向けの輸 出が減速したことと、1年を上回る補助金政策の終焉による駆け込み需要の影響が大きく出たことを示している。10-12月期には逆に反動減が出るため、マ イナス成長に陥る可能性が高い。
    今週の超短期予測では、実績としてごく一部の10月データしか予測に反映されていない。にもかかわらず、10-12月期の実質GDP成長率を、内需は小幅 拡大するが純輸出が縮小するため前期比+0.1%、同年率+0.4%と予測する。一方、1-3月期の実質GDP成長率を、内需は引き続き拡大するが、純輸 出は横ばいとなるため、前期比+0.5%、同年率+2.1%と予測している。
    10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.2%となる。現時点では小幅のプラスを予測している。実質民間住宅は同+4.4% 増加し、実質民間企業設備は同+0.6%増加する。実質政府最終消費支出は同+0.6%、実質公的固定資本形成は同-2.5%となる。
    財貨・サービスの実質輸出は同-1.8%、実質輸入は同-2.0%それぞれ減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度はマイナスに転じる。
    一方、主成分分析モデルは、10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率+0.1%と予測している。また1-3月期を同+1.6%とみている。
    この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、10-12月期が+0.2%、1-3月期が+1.9%となる。
    10月のデータがほとんど利用可能ではない現時点においてでも、超短期予測は10-12月期の日本経済をゼロ成長と予測しており、悲観的なデータが更新されるにつれてマイナス成長に陥る可能性が高まっているが、一時的な停滞にとどまるとみている。

    [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

    米国

    7-9月期の実質GDP(速報値)の伸び率(前期比年率)は+2%と超短期予測と同じであった。またコア個人消費支出価格デフレーターでみたインフレ率 も+0.8%と超短期予測とほとんど同じであった。また7-9月期データを更新した、10-12月期の実質GDP成長率については、今週の予測では 同+3.4%と高い成長率を見込んでいる。
    しかし、それに基づいての政策となると連銀と超短期モデルの考え方は全く異なる。連銀は彼らの“完全雇用、物価安定の2つの目標”から”2%経済成長、 1%インフレを失望的に低い”と判断し、11月3日のFOMCミーティングにおいて2011年中頃までに6,000億ドルの長期国債を購入することを発表 した。
    超短期モデル予測からすれば、1%のインフレ率は理想的である。米経済はデフレ状況でもなく、今のコモディティー価格の上昇、異常なドル安を考えれば、デ フレを懸念する状況ではなくむしろ、将来のインフレを懸念すべきである。2%という経済成長は確かに、雇用を急速に増やす成長率ではない。しかし、異常な 低金利を長期間続け、連銀のバランスシートを異常に膨らませてきた中で、効果の不確実な追加的数量的金融緩和政策を更に導入しなければならないほど低い経 済成長率でもない。連銀がデフレに敏感なのは、日本の1991年の土地バブル崩壊後の失われた20年がデフレによると考えているからである。
    確かに、バブル崩壊後にデフレの経済への悪影響はあったであろう。それが、20年も続くわけではない。更に、異常なゼロ金利で日本経済が立ち直らないのは 別の根本的な問題があるからである。すなわち、日本経済の長期停滞は1990年代から急速に進んでいるIT化によるグローバライゼーションに日本の企業が 対応できなくなっているからである。例えば、簡単なパンフレットやレストランのメニューを作る町の小さな印刷屋さえ、中国の印刷屋と競争をせざるを得なく なった。日本の印刷屋が中国の印刷屋と同じものを作る限り、品物の価格は下がり、賃金も下がらざるをえない。これはデフレではなく、グローバライゼーショ ンによる“要素価格の均等化”である。それ故、金融緩和政策を幾ら続けても、日本経済はよくならない。IT化によるグローバライゼーションに適応した、ビ ジネスモデルの導入とそれを促す経済政策が必要なのである。発展途上国からの安いあらゆる品物が先進国に即座に入るようになっている。この事実を見逃し、 いつまでも異常な低金利政策を続ければ、経済に副作用がでてくる。米国はすでに、異常なドル安により輸入業者や消費者の購買力が大きく減少している。金融 政策当局はいち早く“デフレ病”から抜け出すべきである。今の経済回復に対して、金融政策のできることには限りがある。

    [[熊坂侑三 ITエコノミー]]

  • -

    関西エコノミックインサイト 第5号(2010年2月25日)

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    ABSTRACT

    「日本経済のマクロ経済分析?関西経済の現況と予測?」研究成果報告
    (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部教授
    高林喜久生・関西学院大学経済学部教授)

    「関西エコノミックインサイト」は、関西経済の現況の解説と、計量モデルによる将来予測を行ったレポートです。関西社会経済研究所が公表する日本経済予測と連動しており、原則として四半期ごとに公表いたします。

    第5号(2010年2月)の概要は以下の通りです。

    1.2009年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+4.6%で3四半期連続のプラスとなった。関西経済もまた、緩やかではあるが回復の兆しを見せつつある。ただし政策効果と海外経済の復調による回復であり、持続性には疑問符がつく。

    2.アジア経済の堅固な回復によって外需は好調である。その結果、生産の回復のペースは緩やかながら全国を上回っている。家計部門は、所得環境の悪化や消 費者心理の停滞にもかかわらず、政策効果で下支えされている。企業部門は、外需という追い風はあるものの、依然設備と雇用の過剰感に直面しているため、雇 用情勢の急速な改善は期待できない。

    3.日本経済の最新予測を織り込み、関西の実質GRP成長率を2009年度 -2.8%、2010年度同+1.8%、2011年度同+2.0%と予測した。前回予測から2009年度は0.6%ポイントの上方修正となった (2010,2011年度は大きな修正はない)。修正の主要因は、より具体性を増した政策効果の反映である。2010年度以降の関西経済の成長を支えるの は民間需要と外需である。

    4.民主党政権の経済政策の効果は、関西の実質GRPを2009年度0.02%、2010年度0.21%、2011年度0.10%引き上げる。2010年 度以降は、子ども手当の支給など本格的に新政策の効果が表れるが、政府支出の削減と相殺され、関西経済に対する影響は相対的に小さい。

    PDF
  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2010年1月)

    インサイト

    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    民主党政権が誕生して4ヵ月が経過した。この間、政権支持率は低下しているが、今後の政策、特に経済対策について依然として国民の期待は高い。今月のト ピックスでは、民主党政権の政策(マニフェスト)効果について、マクロ計量モデルを用いたシミュレーションの結果を紹介しよう。
    新政権誕生後の経済政策上の重要事項は、(1)2009年度1次補正予算の事業見直し、(2)同2次補正予算および(3)2010年度予算案や税制改正 大綱の公表である。2010年度予算では、個々の政策の規模について、当初のマニフェストベースよりも実現可能性の高い金額が明らかになってきた。現時点 の最新情報と7-9月期GDP2次速報値を織り込み、民主党政権の政策効果を2009-2011年度にわたってシミュレーションした。
    考慮した民主党政策(マニフェスト)のメニューは、(1)子ども手当・出産支援、(2)高校無償化、(3)暫定税率の廃止、(4)高速道路無料化、 (5)農業の戸別所得補償、(6)雇用対策、である。2010年度については予算案、11年度はマニフェストに記載されている金額を想定している。このほ か(7)家電エコポイント、(8)エコカー減税、(9)生活の安心確保、(10)地方支援といった2009年度2次補正予算において予算が割り当てられた 政策も考慮されている。次に、財源捻出のための政策としては、(11)公共投資・人件費等の削減及び家計に関する事業見直しなどの歳出削減であり、 (12)たばこ増税、(13)扶養控除の廃止といった税制改正による家計に対する負担増である。以上の想定に基づき、鳩山内閣の政策効果を推計した。
    シミュレーション結果によれば、その政策は、2010年度に実質GDPを0.09%、2011年度に0.12%、それぞれ引き上げることになる。このよ うに、政策の成長貢献の程度は大きくないことがわかる。しかし、成長の中身をみると、民間消費は拡大するが、公共投資や政府の人件費(政府最終消費)が削 減されて、結果として経済を拡大させる純効果は非常に小さくなっているのである。たしかに、「コンクリートから人」という意味での政策効果は出ていると言 えるが、重要な問題は、民主党がどのような成長戦略を国民に示すかである。このままでは、結局、日本経済の行く末は輸出の動向によって決まるパターンに なっているのである。筆者は、日本の成長戦略の柱として環境部門を中心に国内外を問わず全面的に展開していくこと以外にないのではないかと考えている。 (稲田義久)
    注:本シミュレーションの詳細は、http://www.kiser.or.jp/ja/index.htmlの「第81回景気分析と予測」に掲載。

    日本
    <10-12月期は持続性に欠けるが、引き続き高めの成長率を予測>

    1月18日の予測では、12月の国内企業物価指数、輸出入物価指数、11月の民間機械受注、情報サービス業売上高、国際収支統計が更新されている。支出 サイドモデルは、10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率+4.6%と12月の見通しより下方修正されたものの、依然として高めの成長を予測してい る。超短期予測はGDP統計の推計基礎となる月次統計の変化を忠実に反映する、”Go by the Numbers”ともいえるテクニカルな予測手法である。
    一方、マーケットコンセンサスは、超短期予測に比べ低めの成長予測となっており、対照的である。1月14日に発表されたESPフォーキャスト1月調査で は、10-12月期の実質GDP成長率予測は同+1.82%と前月調査の+1.27%から上方修正されている。過去の経験からみて成長率予測のマーケット コンセンサスは金融市場の動向に比較的大きな影響を受ける。前回の12月調査ではドバイショックによる株価の下落や円高を反映して低めの予測となったが、 1月調査では株価の回復、円高の修正等の好条件により上方修正となったと考えられる。
    超短期予測によると、10-12月期の国内需要について、実質民間最終消費支出は景気対策の影響により前期比+0.6%と引き続き堅調な伸びとなる。実 質民間住宅は同+5.2%と4期ぶりのプラスなるが、実質民間企業設備は同-0.8%と低調である。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資 本形成は同+2.4%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+1.1%)に対する寄与度は+0.5%ポイントとなる。
    財貨・サービスの実質輸出は同+4.3%増加し、実質輸入は同-0.8%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.6% ポイントとなる。このように、内需が前期から反転拡大し、純輸出も引き続き拡大するため、4%程度の高い成長を予測している。一方、主成分分析モデルも、 10-12月期の成長率を前期比年率+7.1%と予測している。
    1-3月期は、純輸出は引き続き拡大するが、内需、純輸出とも拡大のペースが減速するため、前期比+0.1%、同年率+0.3%と予測している。この結果、2009暦年及び年度の実質GDP成長率はそれぞれ-5.1%と-2.3%となろう。

    [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

    米国

    1月15日の超短期予測は12月の鉱工業生産指数、小売販売額、消費者物価指数、輸出入物価指数、11月の企業在庫、貿易収支までを更新している。グラ フに見るように、10月の経済指標を更新し始めるや景気はスローダウンを始め11月25日の超短期予測は0%の経済成長率を示し、ダブルディップリセッ ションの可能性を一時的に示した。しかし、12月4日以降になり、11月の経済統計を更新し始めるとそれまでの実質GDPの下降トレンドは上昇トレンドに 転換し、1月15日の超短期予測では、2009年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.6%(支出サイドと所得サイドの平均)を示してい る。コア個人消費支出(PCE)価格デフレーター、GDP価格デフレーターでみた同期のインフレ率は約1.5%と落ち着いており、FRBのインフレ許容範 囲内(1%?2%)にある。しかし、PCE価格デフレーターはエネルギー価格の高騰により3.5%にまで上昇している。
    10-12月期の支出サイドの実質GDP成長率は4%を超える可能性が出てきた。これは在庫が少しずつ増え始めたことによる。在庫の成長率寄与度が3 %?4%になると予想されるのは、7-3月期の在庫調整が-1,410億ドルと大きいからである。しかし、景気回復が持続的に堅調とは言い難い。在庫を除 いた経済成長率を見れば、マイナス成長も考えられる。すなわち、実質最終需要の伸び率は下降トレンドを示しており、超短期予測は-1.0%の伸びとなって いる。2010年1-3月期も1%以下である。10-12月期の実質GDPの高い伸びにもかかわらず、米国経済の回復は緩やかであり、いまもって脆弱と見 るのがよいであろう。
    1月13日に発表されたFRBのベージュブックでは、12のうち10の地域連銀は景気の改善を報告している。輸出の伸び率の改善からもわかるように、多 くの地域で製造業が改善している。労働市場はいまもってほとんどの地域で悪いが、ニューヨーク連銀とセントルイス連銀は改善の様子を報告している。

    [[熊坂侑三 ITエコノミー]]

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    日本経済のマクロ分析

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2005年度

    ABSTRACT

    主査
    稲田 義久     甲南大学経済学部教授
    主査
    高林喜久生    関西学院大学経済学部教授
    委員
    地主 敏樹    神戸大学大学院経済学研究科教授
    (敬称略)

    本調査研究は、1976年、京都大学経済研究所の森口親司教授(当時)の主唱により、同研究所と関西経済研究センター(現関西社会経済研究所)との共同プ ロジェクトとして発足し、その後、1986年より、関西経済研究センター(現関西社会経済研究所)の単独プロジェクトとなった。理論と実態の融合をめざ し、学界の指導と協力を得て、在阪の大手会員企業・団体の若手スタッフ参加の下で「マクロ経済分析プロジェクト研究会」を組織している。
    本調査研究は、産学協同研究体制の典型として当研究所の研究活動・人材育成活動の核を成しており、「社会人のための大学院」を目指している。
    研究会活動の概要および研究成果の発表については以下の通り。

    ・特別研究
    会員企業、関連団体の若手スタッフ、当研究所員をメンバーとする「マクロ経済分析プロジェクト研究会」において、時宜に適した、関西経済の活性化に 資するテーマをマクロ経済の観点から取り上げる特別研究を、毎年実施している。その成果は、2月?3月頃に報告書として取り纏め、会員企業に提供するとと もに、広く企業・自治体・経済団体等を対象に発表会を実施している。

    ・日米中超短期予測フォーラム
    日米中の専門家が協力して各国経済の2四半期予測を月次ベースで行う。日米中3国間の経済相互関係にも留意した内容を盛り込んで、毎月中旬に研究所HPにて発表する。

    ・四半期経済予測(景気分析と予測)
    研究会において、予測作業に必要な景気の現状分析、外生変数の想定について共同作業を行っている。時代のニーズに合わせ、2005年度より「超短期 予測モデル」を使用し、予測インターバルを四半期から月次ベースへと移行、またその「超短期経済予測」結果により四半期経済予測の足元をかため、より精度 の高い景気見通しの実践に取り組んでいる。 四半期経済予測は「景気分析と予測」として四半期毎(2月、5月、8月、11月)に記者発表を実施している。

    ・景気討論会
    年2回(夏および新年)、民間・官界から外部講師を招いてパネルディスカッション形式で開催している。稲田主査による「景気分析と予測」(上記参 照)を基調報告とし、日本経済および関西経済の見通し、金融市場の現況と行方、政策運営のあり方など、時宜に適したテーマで幅広い議論が展開される。

    ・関西エコノミックインサイト
    関西経済の現況を全国の動きと比較しながら分析し、その動向を探るとともに、適宜、重要な経済問題をトピックスとして解説する。コンパクトかつ、ポイントを突いたレポートを目指すもので、原則として四半期毎(2月、5月、8月、11月)に当研究所HPにて発表する。