Kansai Economic Insight Quarterly No.39 <緩やかな改善を継続できるか、岐路に立つ関西>

2018-08-28

緩やかな改善を継続できるか、岐路に立つ関西-足下は踊り場、山積するリスクと課題

1.2018年4-6月期実質GDP成長率は前期比+0.5%(同年率+1.9%)と2四半期ぶりのプラス成長となった。実質GDP成長率への寄与度は、国内需要が前期比+0.6%ポイントと2四半期ぶりに成長を押し上げた。特に民間最終消費支出と民間企業設備の貢献が大きかった。一方純輸出は同-0.1%ポイントと2四半期ぶりのマイナス。結果、1-3月期の景気の落ち込みは一時的なものであることを確認した。

2.2018年4-6月期の関西経済は、おおむね緩やかに改善しているが、一部の指標には弱い動きも見られ、踊り場局面が続いている。家計部門は、所得環境や雇用環境など緩やかに改善しているが、消費者心理は悪化した。企業部門では景況感は改善が続き、今年度の設備投資計画は極めて旺盛であるが、生産は一進一退で足踏み状態。対外部門は輸出輸入とも拡大しており、インバウンド需要も堅調である。公的部門は、一進一退で停滞している。なお大阪北部地震の影響は限定的。

3.関西の実質GRP成長率を2018年度+1.8%、19年度+1.0%、新たに20年度+0.8%と予測する。前回予測と比較すると、18年度は+0.5%ポイント、19年度は+0.1%ポイントのそれぞれ上方修正。また過年度の実績見通しについて、16年度の成長率を+0.1%、17年度+2.5%とした。

4.実質GRP成長率に対する寄与度を見ると、2018年度は民間需要+1.1%ポイント、公的需要+0.1%ポイント、外需+0.6%ポイントと民需と外需がバランス良く成長を下支えする。19年度は民間需要+0.4%ポイント、公的需要+0.1%ポイント、外需+0.5%ポイントで、民需の寄与が小幅となる。20年度は民間需要+0.1%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、外需+0.6%ポイントとなり、消費増税の影響が顕在化して、民需の寄与はさらに小さくなる。

5.全国と比較すると、18年度は、所得環境の回復やインバウンド需要の再加速により、全国を上回る成長率で推移する。19年度以降は、消費増税の影響から日本経済予測と同様に関西でも成長率は減速する。

6.2017年のインバウンド需要の経済波及効果を推計した。17年の関西インバウンド消費需要(直接効果)は前年比+16.4%増加し、その波及効果により関西のGRPに対して1%程度貢献できるようになった。急増するインバウンド需要に対応し、特に爆買いの2015年以降は、大規模で急速な宿泊施設への投資が進んでいる。稼働率等から見ていまのところ過剰投資の傾向はみられない。

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本稿では観光庁『訪日外国人消費動向調査』の個票データを用いて、インバウンド需要の決定要因について定量的に考察する。具体的には11の国、地域からの訪日外国人の消費額の決定要因を、2015年第1四半期から17年第4四半期までの各期のクロスセクションデータを用いて分析する。分析結果より、為替レートや世帯収入などインバウンド需要の基本的決定要因は有意にプラスの影響を与えていることが明らかとなった。為替レートの変動は訪日外国人の収入の多寡よりも強く作用しており、その影響は自国通貨が円に対して割安であるほど大きくなっていることが確認できた。またビザ緩和は発動当初には強く影響しており、徐々にその効果が低下していく点も明らかとなった。 APIR_Trend_Watch_56
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関西経済, 月次レポート,KEIM

・5月の生産は2カ月連続で増産となった。結果、4-5月平均は1-3月期平均比+0.6%上昇した。近経局は生産の基調判断を「生産は底堅い動きがみられる」と4カ月ぶりに上方修正した。 ・6月の貿易収支は2カ月ぶりの黒字だが、輸出、輸入ともに減少しており、貿易総額は対中国を中心に7カ月連続で減少。 ・6月の景気ウォッチャー現状判断DIは、2カ月連続で前月から悪化し、7カ月連続で50を下回った。ゴールデンウィークの反動減の影響やG20サミットによる企業の売上減少がみられる。 ・4月の関西2府4県の現金給与総額は2カ月連続の前年比マイナス。実質現金給与総額も2カ月連続で同マイナスとなった。 ・5月の大型小売店販売額は2カ月ぶりに前年を上回った。高額品の好調に加え、気温の上昇の影響で百貨店もスーパーも季節品の売り上げによりプラスに寄与した。 ・5月の新設住宅着工戸数は前年比-27.5%と2カ月連続で減少。減少幅は2009年8月以来最大。分譲の大幅減少が影響した。 ・5月の有効求人倍率は前月比小幅のマイナスだが、求人数、求職者数ともに5カ月ぶりに増加した。一方、完全失業率は前月比横ばいだが、労働力人口、就業者数いずれも増加している。雇用情勢に引き続き改善がみられる。 ・5月の建設工事出来高は15カ月連続で前年比増加した。好調なインバウンド需要は宿泊業の建設投資の増加に寄与している。6月の公共工事請負金額(季節調整値)は3カ月ぶりに前月比減少した。結果、4-6月期は3四半期ぶりに前期比小幅減少した ・6月の関空の外国人入国者数は9カ月連続で前年比増加し、2018年6月以来の二桁の伸びだが、前年同月の自然災害の影響が一巡したためである。 ・中国4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+6.2%で、1992年以降で最低の伸び率であった。また、6月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は5月から横ばい、2カ月連続で50を下回っている。
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・4月の生産は6カ月ぶりの前月比プラス。結果、4月実績は1-3月期平均比-0.5%下落した。近経局は生産の基調判断を「足踏みをしている」と前月から引き続き据え置いた。 ・5月の貿易収支は4カ月ぶりの赤字。輸出、輸入ともに減少しており、貿易額は6カ月連続で縮小。米中貿易摩擦の影響を受け、対中貿易額は7カ月連続で減少している。 ・5月の景気ウォッチャー現状判断DIは、2カ月ぶりに前月から悪化し、6カ月連続で50を下回った。月初は大型連休の好影響が見られたが、その後は節約志向が強まった。 ・3月の関西2府4県の現金給与総額は3カ月ぶりの前年比マイナス。実質現金給与総額も3カ月ぶりに同マイナスとなった。 ・4月の大型小売店販売額は2カ月ぶりの前年比マイナス。百貨店はインバウンド需要の影響でプラスに寄与したが、スーパーは、気温の影響もあり、季節品の不調によりマイナスに寄与した。 ・4月の新設住宅着工戸数は主に貸家の大幅減少が影響し、2カ月ぶりに前年同月比減少した。分譲も減少したものの、持家は引き続き増加した。 ・4月の有効求人倍率は前月比小幅のプラスだが、求人数、求職者数ともに4カ月連続の減少。一方、完全失業率は前月比横ばいだが、労働力人口、就業者数いずれも減少している。雇用情勢には一服感がみられる。 ・4月の建設工事出来高は14カ月連続で前年比増加した。5月の公共工事請負金額は2カ月連続の増加となった。補正予算の効果が出ている。 ・5月の関空の外国人入国者数は8カ月連続で前年比増加だが、一桁台の伸びが続いている。国籍別にみると、3月の中国からの入国者は6カ月連続で前年比増加だが、台湾からは2カ月連続、韓国・香港からは10カ月連続でいずれも同減少している。 ・中国の5月の製造業購買担当者景況指数は2カ月連続で前月から悪化し、3カ月ぶりに景気分岐点を下回った。また、対米貿易収支は4カ月連続で拡大したが、貿易総額は6カ月連続で減少していることに注意。 APIR_KEIM_Vol74_統合版